ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

ビジネスマシンのソードが発売したゲームパソコン「m5」

灰色の蓋の部分には、当時としてはおしゃれなフォントで「m・5」と記されています。蓋を開けると、右側にカートリッジを挿入するスロットが現れます

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、ソード電算機システム社が1982年にリリースしたパソコン「m5」です。

 ソード電算機システム社(ソード社)といえば、それまではビジネス向けPCを中心としてパソコン業界で名を馳せていた会社でした。1980年前後のパソコン雑誌を見ると、あちこちで同社の名前を目にすることができるかと思います。

 そんなソード社がリリースしたビジネス向けではないパソコン、それがm5でした。広告でのキャッチコピーは「B5サイズ 手に乗る未来」で、本体が本当に小さく、B5サイズにも関わらずさまざまなゲームが動く、確かに未来を感じさせる部分もあるパソコンです。

大きさが分かるように、5インチフロッピーディスクを一緒に配置しました。こうして見ると、本体の小ささとACアダプタの巨大さが感じられると思います。

 ソフトは、カセットテープだけでなくカートリッジでも提供されていました。そのため、それを本体に挿し込むだけで即遊ぶことができます。1982年には、似たようなコンセプトのパソコンとしてトミー(当時)のぴゅう太、バンダイ(当時)のRX-78がありました。

 その中でm5は、当時ゲームセンターにてヒット作を次々と送り出していたナムコ(当時)、コナミ(当時)、アイレムなどがソフトを供給していた強みを活かし、売上台数を伸ばしていました。ちなみに、用意されたタイトルはナムコから『ディグダグ』『パワーパック』『ワープ&ワープ』『タンクバタリアン』『ボスコニアン』『ギャラックス』などで、コナミが『プーヤン』『スーパーコブラ』『ガッタンゴットン』など、アイレムが『ムーンパトロール』と、時代を考えればそうそうたるラインアップだったと言えるでしょう。

m5は広告にあるように、最初に発売されたm5のほか、蓋がなくなり形状が若干変更されたm5Jr.(29,800円)、形状はほぼ変わらずキーボード部分もグレーになったm5Pro(39,800円)、さらにタカラからOEMとして発売されたゲームパソコンM5(39,800円)がありました
各種周辺機器も、豊富に用意されていました。3インチフロッピーディスクドライブを使うには拡張ボックスを用意する必要がありましたが、拡張ボックスには3スロットが用意されていたので、BASICカートリッジにくわえ32KB拡張メモリ・カートリッジを同時に挿し込んで使うことも可能でした

 最初に掲載された広告には細かなスペックが書かれていて、それによるとCPUはZ80A、ビデオコントローラにTMS9918A、サウンドジェネレータはSN76489Aを採用していたことが分かります。重量はたったの800gで、この当時としては最軽量の部類に入るでしょう。RF出力だけでなくビデオ出力も備えているため、今でも簡単にテレビと接続できるのは有難い部分です。

背面は左から電源コネクタ、CMT端子、プリンタポート、コントローラ接続端子(左右)、音声出力端子、ビデオ出力端子、RF出力端子となっています。
電源は本体ではなく、ACアダプタの側面についています。

 ユーザーRAMは4kbytesですが、標準付属品であるカートリッジのBASIC-Iを挿すことで8kbytesになりました。キーボードは、個々のキーが五角形になっているという従来にないデザインが斬新ですが、ゴム製なので若干使いづらいのが惜しいところです。右シフトキーの上にスペースキーが配置されているのも、本機だけの特長でした。なお、ゲームメインで使用するなら必須とも言えるジョイパッドは、別売り10,000円となっていました。

キーボード部分のアップです。右上にリセットと書かれたキーがありますが、触ると即リセットされるわけではないので問題無いです。SHIFTキーを押しながら操作すると、STOP(もしくはBREAK)キーのような役目も果たします
付属のBASIC-Iカートリッジを挿入して電源を入れると、このような画面が表示されます。コピーライト表記も無い、シンプルさが際立ちます。カーソルは、入力モードに対応したアイコンになっています。ちなみに、テープからデータを読み込む際は「old“ファイル名”」のようですが、「TAPE」とコマンドを入力すると最初に見つけたプログラムを自動でロードするようです

 m5はヒットしたのでそれなりの台数が出荷されていますが、後継となるm5Proとm5Jr.はほとんど見かけないので、もし手元にある人がいれば大事にしてほしいと思います。