ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

“24桁・10進演算”が可能なカシオ独自のパソコン「FP-1100」

本体とキーボードが分離しているセパレート型で、ちょっとした高級感を醸し出していました。テンキー部分に“000”や“STOP/CONT”キーがあるのが、他機種にはない特徴です。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、MSX参入前のカシオが発売した独自規格パソコン「FP-1100」です。発売は1982年。

 カシオと言えばシャープと共に電卓戦争を勝ち抜いた覇者で、電卓戦争では価格競争で常に先頭争いを演じてきました。そのカシオがパソコンを発売するということで、それを知った当時のユーザーは誰もが、きっと価格面で頑張るだろうと思っていました。

本体正面から見ると、横に入った黒のラインがスリムさを印象づけます。なお、キーボードは本体直付けで、分離することはできません。

 その期待を背負って市場へと送り出されたのが、カシオのFP-1000とFP-1100です。広告では、FP-1000はグリーンCRT対応モデル、FP-1100がカラーCRT対応モデルと書かれていました。

 スペックは、メインCPUにZ-80Aコンパチ(4MHz)、サブCPUにμPD7801G、ROMはメインが36KBにサブが8KB、RAMはメイン64KBでサブが48KB(FP-1000は16KB)。インタフェースはCRTとCMT、プリンタと拡張スロットです。

広告も、さまざまなバージョンが用意されていました。翌年には16ビットパソコンのFP-3000も発売され、こちらも大々的に広告がうたれています。

 FP-1100の特徴は、グラフィック面では解像度640×200ドットで8色の表示が可能という、当時のFM-8(218,000円)やPC-8801(228,000円)と同じスペックだったにも関わらず価格が128,000円と、両機種と比べても10万円も安かったことにあるでしょう。

 カシオらしく、搭載したC82-BASICはBCD(Binary Coded Decimal:2進化10進法)演算方式を採用していたため、簡単に言うならば演算時の桁落ちによる精度の劣化が起きないようになっています。ビジネス分野では計算誤差の出ないBCD方式が望まれていたため、業務用ソフトには恵まれました。

本体背面は左から、リセットボタン、プリンタポート、デジタルRGB出力端子、モノクロ出力端子、CMTインタフェース、それらの上にワンプッシュで接続可能な拡張スロットが2つ用意されていました。

 他にもカシオのお家芸とも言える、メモリ上に最大で10組のプログラムを同時に置くことも可能です。相互にサブルーチンコールなども行えるので、さまざまな使い方ができました。BASICから“SYSTEM”とコマンド入力することで、一覧も表示させられます。珍しいのはBASICの変数にカタカナが使えたことで、「FOR ループ=1 TO 100:NEXT ループ」のような記述ができました。

キーボードはステップスカルプチャ方式を採用しています。ファンクションキーは薄い水色で、BREAKキーは薄い赤で色分けされていました。

 FP-1100のグラフィックは、FMシリーズのようにテキストとグラフィックが同じ画面に描かれる仕組みになっていました。ただしスピードは速くなく、使い勝手も飛び抜けて良かったわけではありません。さらに、グラフィックRAMやキーボードといったデバイスが低速なサブCPU側にぶら下がっていたほか、通常の手段ではサブCPUに直接アクセスすることができないため、スピードを必要とするゲームには厳しい機種となってしまいました。

 この後、カシオは16ビットマシンであるFP-3000をリリースしますが、その後はMSXへと舵を切り、PV-7などでヒットを飛ばすこととなります。