ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

89,800円とお手頃価格で登場した日立の「ベーシックマスターJr.」

キーボードと本体が一体型の、質実剛健なデザインです。シックなカラーリングで高級感がありますが、手ごろな価格が設定されていました。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は日立が1981年末に発売した機種「ベーシックマスターJr.」を取り上げました。

 マイコン時代の初期御三家と言えばNEC・シャープ・日立でしたが、その日立が発売していた「ベーシックマスター」シリーズの名前を冠し、10万円以下という価格でデビューしたのがベーシックマスターJr.です。

 Jr.という名付けがされましたが、ベーシックマスターやベーシックマスターレベル2シリーズの最終モデルとなりました。この後に発売されたベーシックマスターレベル3では、それまでの機種とは互換性がなくなります。

当時の広告では、「親子でコンパクト」や「走れ、TURBO感覚。Jr」とうたわれていました

 ベーシックマスター、ベーシックマスターレベル2は白い直方体のような形をしていましたが、ベーシックマスターJr.ではデザインが一新されました。キーボードはステップスカルプチャ構造を採用し、従来機種と比べて入力がしやすくなっています。また、間違えて押すことがないよう、BREAK/RESETキーの周囲にはカバーが用意されました。ちなみにこのキー、通常はBREAKキーとして機能しますが、カナ記号キーを押しながら押下された場合はリセットボタンとなります。

真上から見ると、非常にシンプルな印象を受けます。渋いカラーリングが、当時は高級機感を醸し出しているように思えました。

 電源スイッチの場所やキーボードレイアウトは、ベーシックマスターを踏襲した配置でした。そして他機種と違い、キーボードにカーソルキーが備わっていないというのが大きな特徴と言えるでしょう。

 CPUには、HD46800を採用。メインメモリは標準で16kbytesでしたが、本体内部への増設により最大で63.5kbytesまでの拡張が行えます。256×192ドットのグラフィックも用意されましたが、残念ながらBASICの命令ではサポートされていませんでした。カセットテープで供給されていたカラーグラフィックユーティリティを使うか、機械語で直接操作する必要があります。なお、カラーを表示するには別売りのカラーアダプタが必要でした。

 音楽は、音色は5種類あり、3オクターブの単音を発声させることが可能です。また、従来機種のBASICとは互換性があるため、過去の資産を活かせるのも特徴の一つでした。

背面は左から、CMT端子、デジタルRGB出力端子、音量つまみ、プリンタポート、ビデオ出力端子、拡張ポートとなっています。

 価格は89,800円とお手頃で、前機種となるベーシックマスターレベル2 IIが148,000円だったことを考えれば、6万円ものプライスダウンを実現したこととなります。しかし、ベーシックマスターJr.の少し前にはNECから、PC-6001が同じ89,800円で登場していました。PC-6001はオプション無しで家庭用テレビに接続でき、カラーも使え、さらには8オクターブ三重和音が奏でられたということで、ベーシックマスターJr.は発売早々、厳しい戦いを強いられることとなります。

 この後、ベーシックマスターシリーズはレベル3、レベル3マーク2、レベル3マーク5が登場し、最終的にはS1へと辿りつきます。