ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

カートリッジスロットを標準で3つ備えたMSX「MPC-3(WAVY3)」

横に並ぶカートリッジスロットと大きなカーソルキー、その上にある4つのボタンが特徴です。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、SANYOが発売した3カートリッジスロットMSX「MPC-3」を取り上げました。発売は1985年。

 MSX規格には数多くのメーカーが参入したため、どこも特徴を出すべく知恵を絞り出していましたが、SANYO(三洋電機株式会社)のMPC-3が採用したのは“標準仕様でカートリッジスロットを3つ備える”というものでした。

 ほとんどのMSXはカートリッジスロットが1つ、または2つで発売されていて、一部機種はアタッチメントを付けることなどで3スロットになるものもありましたが、MPC-3は最初から3つのカートリッジスロットを装備しているという、ちょっと異色のハードです。発売価格は46,800円で、発売時期は広告掲載が始まった1985年3月近辺かと思われます。

赤色のパワーボタンと緑のリセットボタン、大きなカーソルキーが一際目立ちます。カーソルキーのタッチはフワッとした感じですが、シューティングゲームも遊びやすいタッチです。
当時の広告ではMPC-3は脇役で、メインはライトペン付きのMSXパソコン「MPC-10MKII」でした。MPC-10MKIIは、オプションのグラフィック拡張ユニットと接続すれば、解像度が512×204ドット・512色中16色カラーへとパワーアップ。

 基本仕様はMSX1ですが、搭載したRAMは16kbytesでプリンタポート非搭載と、かなり割り切ったスペックとなっていました。特徴である3スロット仕様ですが、これらはカーソルキー上に配置されているカートリッジセレクトボタンで、アクティブにするスロットを選ぶことが可能となっています。

 電源オン時には、すべてのカートリッジスロットに緑の“LOADING”ランプが点灯しますが、A、B、Cの“CARTRIDGE SELECT”ボタンを押すと、それに対応したランプのみが灯り、そのスロットだけがアクティブになる仕組みでした。

背面は非常にシンプルで、左からCMT端子、オーディオ出力端子、ビデオ出力端子、RF出力端子、チャンネル切り替えスイッチとなっています。

 最初に、3スロットすべてにカートリッジを挿し込んでおいてから電源を投入するとAスロットのソフトが起動しますが、起動中にBやCのCARTRIDGE SELECTボタンを押せば即座にリセットがかかり、押したボタンに対応するスロットに挿さっているタイトルが立ち上がります。このおかげで、いちいちカートリッジを抜き差しする手間が省けるだけでなく、カートリッジやスロットの接続部分にも余計な負担をかけないというメリットもありました。

 もちろん、複数挿すことで特別な効果が得られる仕組みにも対応しています。その場合は、一度電源を落としてから再度起動するか、CARTRIDGE SELECTのFREEと書かれたボタンを押すことで全スロットを有効にする必要がありました。

正面右下には、ジョイスティックポートが2つ用意されていました。邪魔にならないよう、若干奥まった場所に配置されています。

 この時期、SANYOはRAMを64KB搭載し、豊富な拡張端子を装備した標準価格55,800円のMPC-6(WAVY6)と、ライトペンに対応した標準価格75,800円のMPC-10MKII(WAVY10MKII)というラインアップで攻めていましたが、カートリッジのゲームを中心に遊ぶのであれば、実はMPC-3が1番コストパフォーマンス的には良かったのかもしれません。メモリ16kbytesに物足りなさを感じるかもしれませんが、カセットテープのゲームを遊ばなければ不便を感じなかったと思います。

 SANYOは、この後もMSX2、MSX2+でハードをリリースし、長らくMSX市場とお付き合いし続けることになります。