ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
NECパソコンで悩んでいた人にとってはある意味夢のようなハード「三菱電機 MULTI8」
2020年4月7日 08:05
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、三菱電機が123,000円という価格で発売したパソコン「MULTI8」です。発売は1983年。
1980年代前半のパソコンには、他メーカーの機種との互換性を持つハードが少なからず存在しました。以前、この連載でも取り上げたSANYOの「PHC-25」などがそうですが、今回取り上げた三菱のMULTI8も、そんな互換性を持つパソコンの1機種です。
スペックはカタログによると、CPUにZ80A相当品(4MHz)を採用、メインメモリは64Kbytesで、GVRAMが48kbytesでした。解像度は640×200ドットで8色が表現でき、PSGによる三重和音の出力が可能です。当時の雑誌などを調べると5月下旬から6月上旬に発売されているようですが、価格は同じ年の3月に発売されたNECのPC-8001mkIIと同じ123,000円という値付けとなっていました。
ざっと仕様を見る限りではPC-8801に近く、それでいてPSG音源も鳴らすことができ、しかも値段はPC-8001mkIIと同じいうことで、PC-8001mkIIの値段でワンランク上のスペックを手に入れられるという、NECパソコンで悩んでいた人にとってはある意味夢のようなハードでした。
ところが、市販ソフトに恵まれなかったこともあり、『マイコンBASICマガジン』『ログイン』などで広告を見かけるものの、実際に購入まで踏み込んだ人はそれほど多くなかったと思われます。ただし、スペックや解像度が似通っているため、PC-8801やFM-7、X1向けの音楽やCGプログラムなどであれば容易に移植ができるので、そういった点では重宝したのではないでしょうか。
互換性に関してはN-BASICのプログラムが読み込めるという話が出ていますので、そのあたりを実際に検証してみました。すると、N-BASICで保存したプログラムは問題無く読み込むことができたほか、PC-8001mkIIのN80-BASICで保存したプログラムもロードできることが分かりました。ただし、N80-BASIC固有の命令(CMD LINEなど)は、若干文字化けします。
さらに、PC-8801のN88-BASICで作られたプログラムも試してみたところ、600ボーでカセットテープに保存されていれば読み込むことができました。しかし、コマンドの文字化けも多いため、実用性に関しては今ひとつという感じです。
N-BASICからの移植が簡単かどうかも軽く見てみましたが、ゲームでは重要となるキースキャンの命令文“INP”関数に関して引数がN-BASICとは変化しているなど、それなりに手直しする部分は多そうに感じられました。アスキーキャラクターを使用したタイトルや画面などを改めて入力する手間が省ける、という程度で考えれば便利に使えそうです。
グラフィック周りは640×200ドット8色でパレットも使えるため、PC-88と同じように扱えそうに思えたのですが、N88-BASICのPAINT文にはあるタイリングペイントが、MULTI8のM-BASIC 80のPAINT文には存在しないため、このあたりで若干の苦労が発生するかもしれません。
価格で考えるとコストパフォーマンスの非常に優れたマシンで、これでソフトが揃っていれば覇権を握れたかもしれない……今ならば、そんなことを夢想してしまうハードかと思います。