ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
“最強の8ビットパソコン”の称号を得た機種の1つ「日立 S1」
2020年8月18日 06:05
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、日立家電販売株式会社が1984年から85年末にかけて発売していたパソコン「S1」シリーズを取り上げます。
1978年9月という、いち早い段階でパーソナルコンピューター・ベーシックマスターを発売した日立は、その後ベーシックマスターIIやベーシックマスターレベル3などをリリースしていきました。そして、8ビットマシンでは始めて1Mバイトという大容量メモリ空間を実現したマシンとして登場したのが、今回取り上げたS1です。
1984年春に発売されたMB-S1/10が128,000円、しばらくしてから市場に流通した、漢字ROM搭載&日本語ワープロソフト同梱のMB-S1/20が178,000円でした。
広告では「CPUには、6809の高速バージョンとなる68B09Eを採用。さらに、12個の専用LSI(ゲートアレイ)を開発・搭載して完成をみました」と謳っています。
また、当時市場に流通していた他機種と比べてグラフィックの描画速度が速かったことなどから、「走るS1」というキャッチコピーをつけていました。
“<S1>ゲームプログラマー訪問 HUDSON SOFTの巻”という広告では、S1版『暴走特急』を手がけていたハドソン東京のSE、小山俊典さんに話を聞いている中で「これは裏話なんですが、『暴走特急』というソフトを<S1>用に移植したら、早すぎてゲームにならないんですね。やむを得ず、タイム処理をかませて、故意に遅くしたんですが、驚きましたね。」という話題を出すほどで、いかに他機種よりも早いのか、ということを前面に押し出していたのが印象に残っています。
実際に、当時の雑誌にはいくつかのベンチマーク結果が掲載されていましたが、それによるとPC-9801の5MHzよりは早く、PC-9801Eの8MHzより若干遅い程度でした。ちなみにそのテストでは、FM-7はPC-9801より少しだけ早く、PC-8801は話にならないほど遅い数値が出ています。
スペックとしては、CPUにクロック2MHzの68B09Eを搭載。メモリエリアは1MBで、RAMが標準106KB、最大618KBとなっていました。グラフィック画面は、640×200で8色または320×200で8色2画面表示が可能となっています。
サウンドはPSG8オクターブ3重和音で、ボタン一つでS1モードとL3(ベーシックマスターレベル3互換)モードが切り換えられました。
最初に登場した2機種以外にも、1984年末には5インチ1MBFDD1基搭載のMB-S1/30と、FDD2基を搭載し漢字ROMも内蔵したMB-S1/40の2モデルが追加で発売されています。
1985年夏にはMB-S1/10に漢字ROMとスーパーインポーズカードのほか、ジョイスティック端子と、拡張PSG音源を搭載してステレオ出力に対応した黒いMB-S1/10AVを、更に85年末には当時流行し始めていたパソコン通信に対応すべくリリースされた、電源オンでホスト局が10表示され、ユーザーがIDとパスワードを追加設定するだけでオートログオンやオートスタートが実現するMB-S1/15とMB-S1/45を、それぞれ市場へと送り出しています。ただし、オートスタートのためには別売りのハイブリッドフォンHP-12またはモデムカードが必要でしたが……。
MB-S1/30は198,000円、MB-S1/40が298,000円、MB-S1/10AVは178000円、MB-S1/15が148,000円、MB-S1/45が298,000円という、当時としては性能を考えると若干高いかな? という感覚のパソコンだったと思います。
しかし、1985年頭に発売されたPC-8801mkIISRのインパクトが強かったほか、S1では富士通とシャープ、NECに奪われた勢いを戻すことはできず、この後はMSXのHシリーズへと注力していくことになります。