ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

“手書きタブレット”を備えた日立のMSX2「H3」

本体右上にある“手書きタブレット”が最大の特徴です。それ以外はオーソドックスな作りで、筐体デザインもH2からの流れを組んだものとなっています。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、工藤夕貴さんがイメージキャラクターを務めてきた日立のMSX、Hシリーズから「H3」です。発売は1985年。

 1983年にMSX規格がアナウンスされると、H1を皮切りにMSXハードを市場へと投入してきた日立でしたが、1985年に発表されたMSX2規格に則った機種も、同年にリリースしています。それが、“口ではいえず、絵はがきします。”とのキャッチコピーで登場した、手書きタブレットを標準搭載したH3です。

 スペックとしては、RAM64KB+VRAM64KBを内蔵。RF出力やコンポジット出力、アナログRGB出力も標準装備して、H3だけの手書きタブレットを搭載し、本体標準価格99,800円という値付けでした。

手書きタブレットは、約40cmの長さまで伸ばすことができます。感触としては、以前紹介したZX81のキーボードと同じように、ヘコヘコとしています。
H3発売となる1985年11月10日から、その年の12月末日までに購入した人には、もれなくドキドキ絵はがきセットがプレゼントされるキャンペーンも行われました。

 手書きタブレットですが、指やペン先で手書きされた文字を内蔵のソフトで認識して、文字コードとしてコンピュータが取り込むような仕組みになっています。認識できる文字はひらがなやカタカナ、英数字に一部記号、そしてグラフィック文字で、認識プログラムは拡張BASICのコマンドとしても利用できるので、自作プログラムからも使うことができました。

 本体を起動するとメニュー画面が表示され、そこから内蔵ソフトを立ち上げるようになっています。同梱されているプログラムのうち、『スケッチ』は付属タブレットを画面のポインタとして利用する描画ソフトで、『スケッチ時計』は時計をデザインできるアプリケーションでした。

本体右側面上部には、手書きタブレット取り外しレバーとトリガーペンの入力端子が、下には電源スイッチが用意されています。
左側面にはCMT端子と手書きタブレットのオン/オフスイッチのほか、ジョイスティック端子が2つ設けられていました。

 また、ソフト『絵葉書ワープロ』がカートリッジで同梱されていて、これを使うと暑中お見舞いやバースデーカード、ラブレター(!)などをデザインすることができます。使用できる漢字は、ハガキで使われる頻度が高い240文字を内蔵していますが、別売りの漢字ROMも使用可能。しかも“色別プリント機能”を利用すれば、当時市販されていた『プリントゴッコ』などの簡易印刷機を用いてカラー印刷を行うための原版を、簡単に作成することができました。

背面には左からチャンネル選択、RF出力端子、音声出力端子、映像出力端子、アナログRGB出力端子(DIN8ピン)、プリンタポートが並んでいます。

 なかなか尖った機能を内蔵していたH3ですが、発売された1985年末はNECがPC-8801mkIIFRなどを、富士通はFM77AVを、シャープはSuperMZことMZ-2521やX1turboIIといったハードを発売していたほか、少し前にはPC-6601SRやPC-6001mkIISRがNECより登場。さらには、ヤマハから同じMSX2のYIS604/128(RAM128KB、VRAM128KBを搭載)が同一価格の99,800円でリリースされるという、さながらパソコン戦国時代のようなタイミングでした。そのためH3だけでなく、似た時期に市場投入されていた同社のパソコンS1共々、あまり目立つことができなかったという間の悪さが記憶に残っています。

 ちなみに、ちょうどこの頃にMSXが100万台を突破したということで、一部の広告には“ひろがるMSXなかま100万台。”とのキャッチとアイコンも掲載されていました。