ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

3.5インチFDDを搭載したNEC「PC-9801UV21」

外見はPC-9801UV2と変わらないように感じますが、ロゴの入っている部分が奥に凹んでいるか、それともフラットかで見分けがつきます。キーボードは、UV2と同じものでした。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、NECから1987年6月に発売となったPC-9801Uシリーズの3機種目、PC-9801UV21を取り上げました。

正面から見ると、UV2と違いドライブ部分だけが凹んでいるデザインになっていることがわかります。左から順に、リセットボタン、クロック切り替えスイッチ、ボリュームつまみ、ディップスイッチ、キーボードコネクタとなります。主電源スイッチは、銘板とともに左側面についていました。
背面は左に拡張スロットがあり、その下にマウスコネクタ、RS-232Cコネクタ、アナログRGB接続端子、デジタルRGB接続端子、1MBフロッピーディスクインタフェース、プリンタポートと並んでいます。拡張スロットの右側にはラインアウト端子があり、その右側にサービスコンセントと電源が配置されていました。

 1982年に誕生した初代PC-9801は、フロッピーディスクドライブを内蔵しないモデルでした。その翌年に発売されたPC-9801Fは5インチ2DDに対応したFDDを、そして1985年には5インチ2HDに対応したFDDを搭載するPC-9801Mが登場します。そんな流れの中、“トランスポート・パソコン”と銘打ってデビューしたのが、本体に3.5インチFDDを内蔵したPC-9801U2でした。

 実際に持ち運ぶかどうかはともかくとして、小型のプラズマディスプレイと合わせて利用することで機動性を確保したというキャッチコピーが付けられたことから、PC-9800シリーズの新たな可能性を模索していたというのがわかります。この機種は1代限りで終わらず、翌年にはメインメモリを増量して16色ボードとFM音源を搭載し、ほかにもいくつかのパワーアップを行ったPC-9801UV2がリリースされました。

 そして1987年、さらなるブラッシュアップを行い満を持して市場へと投入されたのが、PC-9801UV21となります。簡易的に5インチFDDを採用したモデルで説明するならば、PC-9801VM2に対するVM21のような関係、と考えるのが手っ取り早いかもしれません。

「私の仕事場に、私の98。」というキャッチコピーで、個人事業主へのアピールを行っていました。最初からメインメモリを640KB搭載していたことも、ウリとして押し出しているのがわかります。

 PC-9801UV21は広告によると「個人業務にたずさわる人やデスクにパソコンをおいて知的ビジネスを展開する人をはじめ、ビジネスからホビーまであらゆるパーソナルユースを強力にサポートします」と謳っていました。

 同時期のラインアップとしてはPC-9801VM21やPC-9801VX2などがあったのですが、PC-9801VM21が390,000円、PC-9801VX2は433,000円だったのに対して、PC-9801UV21の価格は3.5インチではあったもののFDDを2基搭載して318,000円と、5インチFDD内蔵モデルよりも割安。会社が経費で購入するのであれば少々お高い値段設定でも良かったのかもしれませんが、広告で謳うように個人が買うのであれば、5インチFDD内蔵機種よりも安い方が良い、という考えからこの定価設定になったのかもしれません。

 特徴としては、標準搭載のメインメモリが前機種UV2と比べて1.7倍の640KBになったこと、VM21に比べて体積は約半分に、重量は2/3になったことが挙げられます。CPUには、μPD70116-10(V30)(8/10MHz)を採用したほか、グラフィック面では640×400ドットで4096色中16色を2画面、サウンドはFM音源3声とPSG音源3声の6重和音8オクターブを再生可能と、UV2と変わらないスペックとなっています。

同時期のハードディスクですが、エプソンが発売していた20MBのHDDは定価198,000円でした。それでも、ちょっと前から比べると、価格はずいぶんと下がっています。
この時期はパソコン通信サービスが徐々に盛り上がってきた頃ということもあり、NECもこのような通信機器を発売していました。広告中の“キャプテン”という単語が、ものすごく時代を感じさせてくれます。

 この頃から少しずつ盛り上がってきたパソコン通信サービスにも対応できることを謳うべく、広告には「NECのパソコン通信サービスPC-VANへのアクセスが容易な通信ソフトTeletool、パソコン同士のネットワークを実現するMS-NETWORKSやホストコンピュータとの通信を行うための各種エミュレータを用意」とも書かれていました。周辺機器として、オートホンやモデムボードなども準備されていたので、これらのハードを合わせて購入した人もいたのではないでしょうか。

 ちょうどこの時期、NECはPC-9800シリーズが初代PC-9801発売以来の出荷台数が100万台を突破したということで、「PC-9800システムフェア」と銘打ったイベントを池袋サンシャインシティで開催していました。PC-98シリーズ用の市販アプリケーションも3000本を超え、それらを一冊に集大成した「PC-9800シリーズアプリケーション百科'87」という本も登場しています。

こちらが、当時のFDの価格が掲載されていた広告です。それ以外にも、増設メモリが1メガで20,000円近いお値段だったりしていますが、この金額を出して自分のPCをパワーアップさせてた人も大勢いたかと思います。

 しかし、この時期でもまだまだ3.5インチフロッピーディスクの価格は安くはなく、PC-9801UV21が発売された頃の雑誌広告を見てみると、マクセルのフロッピーディスク1枚あたりの単価が、5インチ2Dでは170円、5インチ2DDで260円、5インチ2HDでも300円のところ、3.5インチ2Dが550円、3.5インチ2DDで650円、3.5インチ2HDに至っては900円という価格。後々、3.5インチモデルが5インチモデルを押しのける時代がやってくるわけですが、それまではまだまだ3.5インチフロッピーディスクは高価な買い物でした。とはいえ、5インチFDD搭載モデルにはないFM音源を最初から積んでいたということで、ゲームメインの人にはマッチした機種だったかもしれません。

 PC-9801UV21はこの後、ダウンサイジングを行ったPC-9801UV11のほか、PC-9801UR/UFといった型番へと進化していくことになりますが、それらはまたの機会に譲ることとします。