ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

MSX2+マシンの発売直前にデビューしたソニーのMSX2「HB-F1XDmk2」

見た目はほぼHB-F1XDと同じで、大きく違うのは右上のFDD部分のカラーリングです。グレーであればmk2で、赤の場合はF1XDでした。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、ソニーが1988年9月に発売したMSX2パソコン、HB-F1XDmk2となります。

本体右側面には、3.5インチフロッピーディスクドライブが1基と、その下にジョイスティックポートが2つ配置されていました。
背面は左から、RGB出力端子、オーディオ出力端子、ビデオ出力端子、チャンネル切り替えスイッチ、RF出力端子、プリンタポート、CMT端子、カートリッジスロット、電源スイッチと並んでいます。

 1983年に初めて登場したMSX規格のパソコンはその後、1985年にMSX2規格を採用したモデルが発売されます。それからしばらくはMSX2パソコンがリリースされていましたが、MSX2+規格が発表される1988年、9月21日に市場へと送り出されたのが、ソニーの“キーボード一体型MSX2パソコン”としては最終モデルとなった、HB-F1XDmk2でした。ちなみに、キーボード分離型としてはHB-F500などがありましたが、そちらはまたの機会に紹介したいと思います。

 HB-F1XDmk2は、外見のデザインは以前に発売されたHB-F1XDと同じで、文字配置などの細かな部分を除けば大きく異なるのは右上フロッピーディスクドライブ部分のカラーリングだけとなります。これが赤だった場合はHB-F1XDで、グレーならばHB-F1XDmk2でした。ブランド名“HITBIT”のロゴも、HB-F1XDではFDDの文字の左側でしたが、mk2では機種名の下に移動されています。

 スペックとしてはRAM64KB、VRAM128KBを搭載し、漢字ROMは載っていませんでしたがFDDを1基を装備していました。それでいて、価格はHB-F1XDの54,800円から下がり、49,800円という値付けになっています。もちろん、HB-F1シリーズには欠かせないスピードコントローラ(スピコン)と連射スライダも内蔵。CPU動作を一時停止させるPAUSEボタンも健在です。間違えて押す可能性がきわめて低いリセットボタンも、HB-F1XDと同じ場所に置かれていました。

HB-F1XDとmk2の、真上から見た写真を並べてみました。こうして見ると右上の色以外に、“TWO CARTRIDGE SLOTS”部分の書き方と矢印、そして機種名が書かれた場所のみが違っているのがわかります。

 広告で強力にプッシュされていたのは、もれなく付いてくる専用ツールディスクの「特製プログラミングおたすけディスク」と題したFDです。ここには、BASICプログラミングツールとして(1)グラフィック切り替えアニメ(2)グラフィック画面ハードコピー(3)基本楽器・音階プログラム(4)スプライトパターン作成プログラム(5)カーソル、ジョイスティック、マウス入力ルーチン(6)シューティングプログラムが収録されていたほか、「グラフィックエディター」や“キミと同じMSX仲間がつくった秀作ゲーム。キミのプログラマー魂に火をつけるぞ。”と題された「特選ゲーム集」が5本、そして目覚まし時計/ディスクコピー/関数グラフ/MSX-DOS/ベーシックファイラーが入っていました。

 謳い文句に「ゲームで遊ぶか。ゲームをつくるか。ますます身近なご新機」を掲げ、「ゲームは、遊ぶ時代からつくる時代へ。ソニーのヒットビット。」とのキャッチコピーを打ち出していたことからもわかるように、ソニーとしては“プログラミング”という方向性で売りたかったのが読み取れます。

 しかし裏を返せば、どの方向で宣伝すれば良いのかが難しかった新機種ということでもあるわけで、当時の営業担当の人はかなり苦労したのではないかと思われます。もちろん、HB-F1XDから安くなったという大きなポイントはあるわけですが、ソニーはこの1ヶ月後にMSX2+規格のパソコン・HB-F1XDJをリリースするわけで、HB-F1XDmk2を発売即購入した人の中には悔しい思いをした人もいたかもしれません。

 この時期は『イースII』や『テラクレスタ』、『サイオブレード』といった有名タイトルが登場していて、ラインアップ的にもなかなか豊作に恵まれていました。『王家の谷 エルギーサの封印』や『アレスタ』『パロディウス』などのMSXオリジナルタイトルも発売され、MSX陣営の元気さがうかがえたものです。

 ちなみに上記で登場したMSX2+規格ですが、1988年9月8日に発売されたMSXマガジン10月号に速報として掲載されていました。その特集記事の最後に、FS-A1FにROMカートリッジを挿し込んで、そこから外部の液晶ディスプレイに画面を出力するという実験を成功させた写真が載っていたのを見て、ものすごいことをしているな……と感心したものです。

広告では、付属するディスクについて大々的に宣伝されていました。この1ヶ月後には新規格MSX2+パソコンが登場するのですが、似たような運命を背負ったパソコンが以前にもあったような……