ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

マイクロソフトとアスキーが生んだMSX その2~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~

永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、“マイクロソフトとアスキーが生んだMSX その2”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。


マイクロソフトとアスキーが生んだMSX その2


グラフィック面を強化したMSX2の誕生

『レイドック』は、MSX2がサポートしたハードウェア縦スムーススクロールを使った、縦スクロールシューティングゲーム。当時は、その画面の美しさに思わず息をのんだ。
日本ファルコムから発売された『ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー』は、パソコンではMSXシリーズでしか発売されなかった唯一の「ドラゴンスレイヤー」シリーズ。

 MSXが登場してから2年後の1985年、2世代目となるMSX2が発売される。

 ビデオプロセッサ(VDP)を変更し、文字規格とメモリの最低値を整備しただけのマイナーチェンジ版だったものの、新しいVDPの表現力は当時のパソコンの常識を覆すものだった。

 このグラフィック能力を活かし、『悪魔城ドラキュラ』『レイドック』『ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー』『アシュギーネ』といった名作なども次々に登場。代わりに価格は上昇してしまい、キーボードとのセパレートタイプでは20万円程度の機種も見られた。

 しばらく後に一部のキーボード一体型は3万円程度と安くなり、6万円以下の低価格機と10万円クラスの標準機、そしてセパレートタイプ型の20万円台高級機という3ラインで形成されることとなる。なお、1986年6月からMSXの登録商標がマイクロソフトからアスキーへと移行したことも、併せて記しておこう。

マイナーすぎる変更で、あまり話題を呼ばなかったMSX2+

『YsII』のような大作もMSXシリーズで発売されるようになり、プラットフォームとしても普及したことを示していた。ソフトもROMカートリッジからFDでの供給となり、大容量化も進む。

 そのMSX2から3年後、1988年には再びVDPを変更した新規格機種MSX2+が発表される。新たにピクセル単位での横方向スクロール機能が追加され、一部ソフトでは機種判定でMSX2+とわかると、ハードウェア横スクロール機能を使うようなものもあった。

 また、漢字ROMを標準搭載し、FDD規格や内部スロット配置の標準化、FM音源YM2413(OPLL)カートリッジ、FM-PAC(MSX-MUSIC)規格の取り込みが行われるものの、参入したのは三洋電機とソニー、松下電器産業の3社のみと寂しい限り。変更点が少なく、直近にFDD搭載の廉価版MSX2が発売され、あまり注目されなかった。

 ハードとしての話題性には欠けていたが、ソフトはコナミや日本ファルコム、マイクロキャビンなどから続々とリリースされ、ソフトがハードを引っぱるかたちになっていた。MSX2+がFDDの普及に貢献し、供給はROMカートリッジから徐々にフロッピーディスクへとシフトしていく。

MSXシリーズ最終規格、MSXturboR

 そして1990年、CPUにR800を採用して16bitマシンとなったMSXturboRが発売される。R800は16ビットCPUではあったが、MSXturboRでは乗算が追加された早いZ80としてしか使っておらず、さらには互換性確保のためにZ80も搭載していた。

 本体を発売したのは松下電器1社のみで、発足時のメーカーはほぼ全面撤退。肝心の本体価格は10万円を超え、ヒットにはほど遠かった。当時PC-9800シリーズ互換機としてEPSONから発売されていた互換機最廉価版の12万円と違わない値段になってしまい、優位性を打ち出せなかったことも売れなかったことの一因だろう。CPUとメモリの強化、8ビットPCM音源の録音再生機能、さらには標準でワープロソフトを搭載するなど頑張ってはいたが、結果的にMSXシリーズの最終機種となってしまった。

 以降、コンパイルやマイクロキャビンといったソフトハウス、唯一の専門誌として残った『MSX FAN』などが活動を続けるも、最終的には『MSX FAN』の休刊で一度は幕を閉じる。その後、紆余曲折を経て“1チップMSX”などのかたちで現代に復活を遂げるが、それは次の機会に譲ることにしよう。

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