ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
東芝のMSX第1弾「HX-10D」
2026年1月20日 08:05
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、1983年11月頃に発売された東芝のMSX規格初参入となるMSX(1)機種の、HX-10Dを取り上げました。
1983年にMSX(1)規格が誕生すると、数多くのメーカーが参入を表明することとなります。早くもその年には各社から実機が発売されるのですが、ソニーや富士通、ナショナルなどに混じって早い時期に新機種をリリースしたのが、これまで「PASOPIA」シリーズを投入してきた東芝でした。MSX向けには新たなブランド“PASOPIA IQ(パソピアの知能)”を打ち出し、その第1弾として登場したのが搭載メモリ16KBytesのHX-10S(スタンダード)と、今回取り上げたHX-10D(デラックス)になります。
発売時期に書かれた『月刊ASCII』83年11月号の記事によると、「従来発売していたPASOPIA7/5はホビイストを中心とした上級マニア向けを対象とし、PASOPIA IQはホームユースを対象に一般家庭で家電製品として扱えるマシンという考え方を取っていた」とのメーカーの思惑があったとのことでした。価格は、HX-10Sが55,800円、HX-10Dが65,800円となっています。発売時期ですが、広告や記事が11月発売の各雑誌に掲載されていたことを考えると、1983年11月頃ではないでしょうか。
HX-10Dの基本的なスペックはMSX(1)準拠で、メモリ搭載量は前述したとおりデラックスの名前に恥じない64KBytesとなっています。本体に搭載されたカートリッジスロットは1つで、これは同時期に発売された富士通のMSX(1)機種・FM-Xと同じ数でした。なお、FM-Xは価格が49,800円と若干安く、他にこの時点で販売されていたナショナルのCF-2000(搭載メモリ16KBytes)やソニーのHB-55(11月21日発売・搭載メモリ16KBytes)がカートリッジスロットを2基備えて54,800円、日立のH1(搭載メモリ32KBytes)はメモリがCF-2000やHB-55よりも多くカートリッジスロットを2基装備して62,800円だったことを考えると、メモリ64KBytesでカートリッジスロット1基・65,800円という価格は、非常によく考えられた値付けというのが分かると思います。用意された本体カラーはブラックとレッドの2種類というバリエーションがあって、ブラックでは本体上面がシルバー、レッドはブラックとなっていました。
本機は、登場した時点から他のMSXでは見られなかった“ワープロに早変わり”や“すぐワープロにも発展”というように、ワープロとして活用できることを謳っていたのが珍しい部分です。広告でも、日本語ワードプロセッサシステム構成として、本体の他に「増設I/OスロットHX-E600(9,800円)/プリンタインタフェースカートリッジHX-P500(7,800円)/漢字ROMカートリッジHX-M200(29,800円)/データレコーダPA7230(12,800円)/ドットプリンタII PA7253(139,000円)/アンテナ切り替え機HX-T300(1,500円)」を揃え、日本語ワープロソフトの『漢字君 Ver.1.0』を用意することで、日本語ワープロになるとの案内をしていました。ちなみに、合計すると266,500円にもなってしまいますが、確かにワープロ専用機を揃えることを考えれば安かった……のかもしれません。
ちなみに、増設I/OスロットのHX-E600は2スロット仕様ですが、後に本体背面ではなくカートリッジスロットにカートリッジを挿入することで4スロットまで拡張が可能となるHX-E601も、42,800円で発売されました。
1983年後半の時期は、MSX(1)を投入したメーカーはすべて本体メモリが16KBytesまたは32KBytesで、唯一東芝だけが64KBytesを採用しています。この時代は、これだけで他社との差別化が図れたと思われますが、実際のところはこの時点では64KBytesを活かせるMSX-DOSのようなソフトが出ていなかったため、どちらかというと宝の持ち腐れだったかもしれません。とはいえ、活かす方法が少なかったのは他機種での2基搭載カートリッジスロットも同じで、1983年時点ではメモリ16KBytesでカートリッジスロット1基でも問題なかったかと思われます。
このHX-10シリーズはその後、プリンタポートを搭載したHX-10DPと、映像出力にRGB21ピン端子を搭載したHX-10DPNという機種が登場したほか、本体デザインを変更して日本語ワープロソフト『漢字君 Ver.2.0』を内蔵ソフトとした姉妹機種のHX-20シリーズなども販売され、MSX(1)機種としてはそれなりに有名になっていきます。なお、HX-10D時点でのイメージキャラクターは横山やすしさんで、キャッチコピーは「夢中で遊べ、夢中で学べ」でした。
そんな東芝はこの6年後に、世界初となるA4ファイルサイズのノートパソコン「DynaBook J-3100SS」をリリースすることとなるのですが、こちらは機会を改めて紹介したいと思います。








