ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち

シリーズ1作目にして高い完成度を誇った光栄の「信長の野望」

これは、少し後に発売されたMSX版のパッケージです。初期にリリースされた機種用のパッケージは、カセットテープのケースを2周りほど大きくした箱に入っていました

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、今も続く光栄(現・コーエーテクモゲームス)のシリーズ作品から「信長の野望」1作目を取り上げます。

「信長の野望」は、同社のさまざまなゲームと一緒に宣伝されてきました。こうしてみると、懐かしいタイトルがたくさんあるのが分かります

 「川中島の合戦」などから連綿と続く光栄のシミュレーションゲームですが、その一つの完成点ともいえるのが、この「信長の野望」です。ゲームデザイナーのシブサワ・コウ氏が一人で作り上げた本作は、現代に至るまで続く「信長の野望」シリーズの原点となりました。「信長の野望」以前のシミュレーションゲームは、歴史を反映した戦力で戦うのがほとんどでしたが(真珠湾攻撃時の日本軍とアメリカ軍の戦力を再現し、その状態からプレイするポニカの「真珠湾攻撃」など)、「信長の野望」では戦争を仕掛けるまでにどのように過ごすかで、史実通りでは無い戦いを展開することができたのが画期的でした。

タイトル画面では、「信長の野望」のロゴと共に、お馴染みの兜がLINE文を使用して描かれます。ちなみに、ディスクドライブを搭載したMSX2+では、この後に止まってしまいました。そのため、メモリを32KB以上積んだMSX1を引っ張り出すことに……

 ゲームは1560年の春から始まり、プレイヤーは信長として全国統一を目指します。といっても1作目は17カ国しかないため、それらを自国にしてしまえばクリアということになります。季節ごとに1度回ってくるターンでコマンドを入力し、ある程度の自力がついたところで戦争を仕掛け、他国を占領して領土を増やし、そしてまた富国に励む……戦争シミュレーションに富国強兵を取り入れたスタイルに仕上がっていましたが、複雑ではなくシミュレーションゲーム初心者にもわかりやすく作られていたため、それまでの本格的ウォーシミュレーションゲームよりも敷居が低く、ユーザー層を確実に広げていきました。また、後のシリーズではお馴染みとなる“配下武将”というものが存在せず、すべてを大名一人で行うためシンプル、というのもメリットだったと思われます。

ゲームは、四半期に一度回ってくるターンで、コマンドを入力するだけです。何はともあれ、民や兵への施しが重要となって来ます
戦争は、ヘックス画面で行われます。大名の所属する第1部隊以外は、どれも強さは変わりません。地形によって有利不利があるので、それを見極めて戦いを仕掛けることになります

 驚くべきことに本作は、バランス調整をほとんどしていないそうです。脳内プレイを毎日続け、問題無いと思ったので実際に一日二日徹夜で遊んでみたところ十分に面白かったということで、バランス調整をした記憶がないと本人が語っていました。また、大半の機種では使用言語がBASICだったことから改造も容易で、「東大版・信長の野望」なんてものをユーザーが勝手に作っていた、という逸話もあるそうです。

 今でもプレイする機会は数多く用意されていると思いますので、気になった人は遊んでみては如何でしょうか?