ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち
80年代中期のパソコン事情 ~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~
2021年12月14日 00:00
連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。
今回取り上げるページは、“80年代中期のパソコン事情”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。
80年代中期のパソコン事情
アドベンチャーゲームからRPGへとシフトする80年代中期のパソコンゲーム
80年代中期を84年から86年とすれば、まさに激動の時代がここにあったといえるだろう。「ドラゴンスレイヤー」シリーズ、「ハイドライド」シリーズ、「夢幻の心臓」シリーズなど、数え切れない名作シリーズの1作目が、この時期に登場しているのだ。
84年といえば、前年から続くアドベンチャーゲームのブームが少しずつ落ち着いてきた時期。システムも進化し、英語でしか受け付けなかった単語がカタカナ入力でも反応するようになり、英単語探しという呪縛から逃れる作品が誕生していた。
グラフィック面も強化され、ラインを引いてから中身の色を塗っていくライン&ペイント方式から、場面移動すると即画面が表示される瞬間画面表示方式を採用するタイトルも増えている。
ビジュアルも、デジタイザから実写映像を取り込んだ画像などを使用するソフトも現れ、さらには高速でアニメーション処理するゲームも登場してプレイヤーの度肝を抜いた。
しかし、RPGの人気に推されるようにアドベンチャーゲームは徐々に本数を減らし、変わって隆盛を誇るRPGが数を増やす。80年代初期をアドベンチャーゲームの時代と定義するなら、80年代中期はRPGの時代ではないだろうか。
それを象徴するのが1984年に登場した『ザ・ブラックオニキス』や、85年に発売された『ウィザードリィ』『ウルティマ』などだろう。少し前の1983年には光栄から『ダンジョン』が、日本ファルコムからは『ぱのらま島』がリリースされ、RPG時代の幕開けを予感させていたが、その扉を本格的に開けたのが、その3本ではないだろうか。
『ザ・ブラックオニキス』は非常にシンプルで、3Dで描かれた迷宮内を探索しつつ最終目的のブラックオニキスを手に入れることを目的としてゲームを進めていく。戦闘はターン制で行われ、強力な武器を持つほどに与えるダメージが大きくなり、防具も高価なものほど受けるダメージも少なくしてくれる。装備を変更するとグラフィックも変わるため、視覚的にも目新しく見えたものだ。パーティーの各キャラクターごとに経験値が設けられ、ある程度強い敵を倒さないと増えない仕組みになっていたため、必然的に強敵のいるフロアへと進まなければならないバランスが絶妙だ。
システムは『ウィザードリィ』に似ているものの、日本デビューは『ザ・ブラックオニキス』のほうが早かったため、RPGをメジャーにしたタイトルといえば本作となるだろう。余談ではあるが、現在プレイする一番手っ取り早い方法は、アスキーから発売されたムック本『蘇るPC-8801伝説 永久保存版』を手に入れることだ。
メーカー主催のゲームプログラムコンテストがスタープログラマーやヒット作を誕生させた!
同じ1984年には「夢幻の心臓」シリーズ1作目だけでなく、10月には80年代を代表するゲーム「ドラゴンスレイヤー」シリーズ1作目の『ドラゴンスレイヤー』が、12月にはハイドライド・シンドロームと呼ばれる現象を起こした『ハイドライド』が誕生しており、まさに和製RPGの夜明けともいえる年だ。
その翌年1985年、黒船襲来ともいえる『ウィザードリィ』1作目が日本の各機種向けに発売となる。のちに登場する数多のRPGに多大なる影響を与えることになった作品であり、数多くのプレイヤーから睡眠時間を奪った屈指のタイトルだ。
ワイヤーフレームで表示された3Dダンジョン内をマッピングしながら探索し、狂王トレボーから指示されたワードナの魔除けを持ち帰るのが目的。探索中に敵と遭遇すると戦闘シーンに切り替わりコマンド入力のターン制へと移行し、敵のHPを0にして全滅させれば勝利となる。これを繰り返して経験値を獲得してキャラクターを育て、徐々に探索範囲を広げていくという、コンピュータRPGのフォーマットを作った作品ともいえる。
このシステムは日本人にマッチしたようで、以降30年に渡ってシリーズ作品やシステムを流用したタイトルがリリースされ続けることになった。