ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

随所に“ネタ”が散りばめられたMSX版『パロディウス』

プレイヤーが操作できる5作品の主人公達が、ゆる~い感じで描かれています。その絵柄に反して、ゲームの難易度はかなり歯ごたえのあるものに仕上がっていました。

 1985年、アーケードゲームとして『グラディウス』をリリースしたコナミは、パソコンなどへ移植を行いました。中でも、MSX版はアーケード版には無かったオリジナル要素を含めたことや、PC-88版・X1版さらにはファミリーコンピュータ版と違いレーザーがアーケード版ライクに長かったなどの特徴もあり、大ヒットとなります。これを受けて、MSXをプラットフォームとした『グラディウス2』や『沙羅曼蛇』といった作品が1987年に登場したのに続き、翌88年に発売されたのがこの『パロディウス』でした。

 本作は、タイトル通り『グラディウス』のパロディが多数含まれているのですが、それ以外にも随所に“ネタ”が散りばめられています。そんな本作のストーリーは、以下のような感じでした。

主役となるのは、5作品の主人公達。デモ画面で、参戦することになったいきさつ(?)が語られます。なお、『グラディウス』の機体はビックバイパーですが、本作ではビッ“グ”バイパーでした。

 西暦1988年、受験シーズンのまっさかり、全地球規模で人々は夢を失っていた。若者たちは受験地獄に苦しみ、子どもたちは親よりもゲームバソコンを大切にすると言い、大人たちは日々の暮らしに追われ、世界各国ではスパイが暗躍し紛争が絶えず、民主主義と共産主義の衝突による第三次世界大戦勃発の不安は高まり、占星術師と科学者は地球の滅亡を説き、そして人々は次第に夢を見失っていった……

 今ここに宇宙を旅し、巡り会った星の人々に夢と希望を与えるプログラマー「タコ」がいた。彼は修行の場を宇宙に求め、新しいエンターテイナー「夢プログラマー」として大成したのだった。全宇宙に夢と希望を与え、平和の芽を植えてやるのが彼の究極の芸だったが、しかし、そうは問屋がおろさなかった。宿敵バグの出現であった!

デモ画面も、『グラディウス2』のパロディとなっていました。『グラディウス2』を遊んだ人なら、思わずニヤリとしてしまう演出です。

 タコがプログラムして人々に与えた夢や希望をバグが喰い蝕んでしまうのだ。バグを倒すには、もう一度かつてのデビューの地である地球を訪れるしかないと考えたが、そこは今や言頭で説明したような有様。これはバグの仕業に他ならない。これ以上地球が悪くならないうちにバグを倒し、地球人の夢を取り戻さなくては!

 その頃偶然、隠居生活を送りムーン旅行に出かけていたビッグバイパーが、小惑星近辺で地球人の夢をメイン料理にし、いただきますをしているバグを発見する。タコは立ち上がった。そして、いきなりこじつけのような形で登場したビッグバイバーと、強引ともいえる人選により、ベンギン、ゴエモン、ポポロンをバートナーとし、小惑星帯に向けて旅立ったのだ。彼らの行く手には、いかなる運命が待ち構えているのか!そりゃあんた、やってみな分からんわな。

どの機体も性能は同じなので、見た目で選んで問題ありません。道中のパワーアップカプセルは、選択した作品にちなんだものになります。タコがチューハイなのは、この当時に宝酒造からタコハイという缶チューハイが発売されていたのをパロっているためです。
敵を倒すと、“ひ”“で”“ぶ”“!”の文字が順番に表示されるという芸の細かさ。この単語はもちろん、『北斗の拳』で敵が倒される時に叫んだ言葉です。

 と、物語はいささか投げやりな感じで結ばれていますが、プレイヤーは5作品の主人公達から1種類を選び、バグ退治へと向かうことになります。基本的なルールは『グラディウス』などと同じシューティングゲームで、敵を倒して出現したパワーカプセルを回収し、目的のゲージが光ったところでパワーアップボタンを押し自機をパワーアップさせ、更なる先へと進んでいくとというものでした。こうして各面を攻略していき、最終面のバグを倒せばクリアとなります。

 これまでのシリーズと違っていたのは、ゲーム全編にわたってパロディとノリツッコミ、そして“何でもあり”な雰囲気が盛り込まれていることでした。例えば、システム自体は『グラディウス』を踏襲していますが、そのパワーアップゲージはスピードアップが「速う(はよう)なんで!」、レーザが「多い日も安心」などだったほか、なんと取るとパワーアップがすべて失われてしまう「何(な)~んやそれ!」が、なぜか“パワーアップ”ゲージの一部に含まれているのです。これぞ、何でもありの最たるものではないでしょうか。

中ボスや各ステージ最後に待つボスは、いずれも個性的な仕上がりになっています。ステージ1の中ボスモアイの攻撃は、鼻くそのような泡を飛ばしてくるというもの。他にも唇×8など、見た目はアレですが手強い敵が揃っていました。

 さらに、パワーカプセルの中には取るとパワーアップゲージがルーレットのように点滅するものが混ざっているなど、これまた“何でもあり”な要素が含まれていました。しかも、これらのシステムは後に発売される『パロディウスだ!』などでも使用されていて、気づけばシリーズを通しての1要素、となっていたのが面白いところです。

 パワーアップに関しては他にも、『ツインビー』で使われていたパワーアップベルも登場しました。ベルの色はショットを撃ち込むごとに黄色→白(ヨコワープ)→淡い緑(タテワープ)→水色(時間よ止まれ!)→紫(菊一文字や!)→青(いたずらドリル)→緑(上向レーザ)→赤(前向レーザ)→黄色→……と変わり、黄色は画面内の敵が全滅、白と淡い緑は画面端から反対の端へと移動出来るようになるといった効果があります。

 この、ヨコワープやタテワープを使わないと絶対にクリアできない場所や、第二惑星(ステージ2)のボスである“第二巨大戦闘母艦・三択手(ジャンケンポン)”のようなジャンケンに負けると有無言わせずステージの最初からやり直しにさせられてしまう部分など、これまた“何でもあり”の要素で、全編を通しての良いアクセントになっていると言えました。

ステージ3のボスにたどり着く前には、岩の大雨を避けなければならなかったり、ステージ4の道中は上下の空間が繋がっていることを利用してルートを探し出さないといけないなど、さまざまな趣向が凝らされていました。

 パッケージには記載されていないものの、ゲーム中のタイトル画面に表記されているサブタイトル“~タコは地球を救う~”は、24時間テレビのキャッチコピー“愛は地球を救う”のパロだったり、敵を倒した時には“ひ”“で”“ぶ”“!”と、『北斗の拳』で相手が倒される時に放つ断末魔が表示されるなど、パロディ要素もふんだんに盛り込まれています。

 そんな本作の難易度ですが、『沙羅曼蛇』や後に発売される『ゴーファーの野望 Episode II』ほどは高くないものの、ザコ敵からして手強い動きをしてくるため、慣れるまではかなり難しく感じられたものでした。なによりもルーレットのパワーカプセルが最大の敵で、取ったら最後、どこかでパワーアップボタンを押さない限りは、以降のパワーアップカプセルをどれだけ回収しても一切無意味というのが一番手強い相手だったかもしれません(笑)。

 お馴染みのエクストラステージも、入口が全6ステージ中3カ所に隠されていて、例によって得点カプセルや1Upカプセルが取り放題に!最後には『グラディウス2』のボスが自機より小さい状態で登場するのですが、そのスケールを超える圧倒的なレーザを撃って攻撃してくるため、非常に手強い戦いを強いられます。もっとも、エクストラステージに入らなかった場合は通常ルート+通常ボスとの戦いが待っているのですが、それよりも簡単という話もありました。

エクストラステージでは、得点カプセルが取り放題!しかし、パワーアップを間違えると先に進めず潰されてしまうことにも……。ちなみに、ステージ1のエクストラステージ入り口は、中ボスモアイの後頭部下です。

 他にも特筆すべき点として挙げられるのが、豪華な楽曲です。どのステージにもクラシックの名曲をアレンジしたBGMが用意されているのですが、その完成度が非常に高く、ノリノリになってカラダも動いてしまうほどでした。

 “何でもあり”と聞くと適当に作ったのかと思ってしまいますが、どちらかというと「大人が本気で遊んだ結果がこうなりました」という作品に仕上がっていて、バランス調整やキャラクターの細かい動きなど、適当な部分が見あたらないほど。アーケード版やX68000版『パロディウスだ!』がクリア出来るという人にも、ぜひそれらシリーズの原点となった『パロディウス』をプレイしてもらいたいです。

広告では「史上最大のギャグ戦」とのキャッチコピーのもと、主人公5人(匹、機)と各ステージのボス達の写真が掲載されていました。
一部の画像は、書籍版とは異なるものを掲載している場合がございます。