ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち
80年代中期のアダルトソフト事情Part2(後半)~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~
2023年1月31日 07:05
連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。
今回取り上げるページは、“80年代中期のアダルトソフト事情Part2(後半)”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。
80年代中期のアダルトソフト事情Part2(後半)
ソフトベンダータケルでも販売されたエロゲー
時は1980年代後半。16ビット機の出荷台数が8ビット機を上回り、PC-8801の背後からPC-9801時代の足音が響き始めていた頃。この時期に活躍したアダルトゲームメーカーのなかにグレイトがあった。「トワイライトゾーン」シリーズ(1作目はアドベンチャーゲーム、以降ロールプレイングゲーム)で知られるが、注目したいのは1986年発売のCG集『美しき獲物たちだ。
世間一般といえば、アダルトソフトの主戦場であるパソコンから離れたところにあることで強みを持ったファミコンにも、結局アダルトの波は届いていた。任天堂からのライセンス非公認で、しばしばファミコンやディスクシステム用のエロゲーが作られたのだ。1986年製で伝説的なのが、よりにもよってといおうか『スーパーマリオブラザーズ』をパロディーしたエロゲー『スーパーマルオ』(昭和通商)だ。電話注文やごく限られたショップ販売でこっそり売り出されるも、あっというまに任天堂にバレて発売中止になった。
そんなふうにソフト関係で騒がしかった1986年だが、この年はゲームの売り方そのものに関してユニークな存在が現れた時期でもある。「ソフトベンダータケル(TAKERU・武尊)」という装置が電機店などに設置されたのだ。
これは簡単にいうとパソコンゲームの自動販売機だ。まずタッチパネル画面で作品を選ぶ。すると空のフロッピーディスクやMSX用ROMが出てくる。それを装置の書き込みドライブに入れるとゲームが保存される。ラインナップは店頭で時期を逸した旧作の再利用が多かったが、TAKERU専売ソフトも出た。この装置はとくに、アダルトソフトを店員と対面で買うのが恥かしいユーザーに重宝された。普及台数は全国で約300台ほど。1997年まで続いたので11年間も健闘したことになる。
アーケードでは脱衣麻雀ゲームが人気に
さて、波乱だった前年から明けて1987年がやってくる。これは一転、後に90年代を支える新鋭が次々芽を出す輝かしい時期の幕開けとなった。
皮切りとなったのはフェアリーテールのデビューである。順番としては、まず「天使たちの午後」シリーズのジャストから有限会社キララが独立。そのキララの下でアダルトソフトを制作するブランドとして、フェアリーテールが創設されたという流れだ。F&Cの「F」が誕生した瞬間である。
フェアリーテールのデビュー作はアドベンチャーゲーム形式の『ふぇありぃてぃる』。工事人を装った男が留守番中のセーラー服少女をあの手この手で口説いてパンツをもらおうとするゲームで、結末が3種類ある。「クリア」「ゲームオーバー」という両極端ではなく、今でいうマルチエンディングが業界で広く採用される足がかりの一端として記念できる。
フェアリーテールは同じ87年に『リップスティック』も出している。1巻がロリ、2巻は女子高生……と属性まとめのCG集だ。これは内容よりも、あとで紹介する作品につながる前フリとして題名をおさえておいて頂きたい。
パソコンエロゲーの外側でも、1987年には大きなうねりが起きている。アーケードで脱衣麻雀ゲーム『スーパーリアル麻雀PII』(セタ)が稼動開始したのだ。「II」なので1作目があるわけだが、そちらはリアル志向の純然たる麻雀ゲームでヒットしなかった。そこでアニメーターの田中良を起用。デザイン、絵コンテ、作画監督を本職に任せたことで大成功する。プロのアニメ声優の声をつけたアニメ仕立てヒロイン達が恥じらいながら肌をさらす高品質な脱衣ムービーが支持を集め。脱衣麻雀ゲーム分野における金字塔として10年続く人気シリーズ化につながった。
ファミコンの非公認エロゲーとは別に、家庭用ハードのなかにエロ要素が浸潤していく窓口として、1987年に目立つのはやはりPCエンジンの発売だろう。アーケード脱衣麻雀ゲームが移植されるケースが相次いだほか、上半身の露出までのお色気要素が入ったゲームがちょくちょく出て1990年代まで「エロいゲームはやりたいけどパソコンエロゲーは敷居が高いなあ」という青少年たちに愛好された。