パワレポ連動企画
3D NANDの登場で変わるSSDのラインナップ ~性能・価格を左右するコントローラとメモリ 3~
【パワレポ連動:買いの最新SSD総チェック(7)】
2016年9月6日 12:10
こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2016年10月号」の第1特集「超高速・大容量・低価格 重要キーワードと製品を一気読み 買いの最新SSD総チェック」を掲載する。
第8回ではSSDのNANDメモリについて解説する。3D NANDの登場によりさらなる大容量化への道が見えてきた。現状では製造コストがネックだが、今後の低価格化に期待したい。
本特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2016年10月号は全国書店、ネット通販にて8月29日(月)に発売。第2特集は、ワット数だけではない電源の見えない箇所を徹底比較「2016年登場のニューフェースを徹底検証! 新顔ATX電源大品評会」。特別企画は、可視化されるとなぜか外へ出たくなる「ガジェット活用で楽しく生活改善 IT派の活動量計入門」、もっとも手に触れるものだけに、自分に合ったものを使いたい「スイッチ、レイアウト、デザイン……アナタの決め手は? キーボード選び放題」、キーボードにこだわるならこちらも妥協したくない「ゲーミングモデルを中心に続々登場! 新世代高機能マウス30製品」を掲載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。
今号の特別付録は、小冊子「市場に並ぶ140超の製品をまるっと収録 電源名鑑 2016」。第2特集と合わせ、電源選びの参考にどうぞ。
-買いの最新SSD総チェック-
3D NANDの登場で変わるSSDのラインナップ ~性能・価格を左右するコントローラとメモリ 3~
今さら聞けない? SSDの基礎知識/トレンド 2
性能・価格を左右するコントローラとメモリ
SSDの性能や価格を決定付けるコントローラやメモリ。現在はどのようなトレンドにあり、今後どんな進化を遂げていくのだろうか。
3D NANDの登場で変わるSSDのラインナップ
■先行するSamsungを主要3陣営が追撃
昨年まではSamsung 1社のみが3D NAND搭載SSDを販売していたが、今年に入り、東芝/ Western Digital(旧SanDisk)陣営、Intel/Micron陣営、SK hynixといったNANDメーカー陣営もいよいよ3D NANDの量産を開始した。これによって、3D NAND採用SSDの本格普及の兆しが見えてきている。
3D NANDは、従来のプレーナ(平面)型のNANDメモリとは異なり平面方向の密度を上げるのではなく、高層マンションのように立体構造を取ることによって大容量化を実現するNANDメモリだ。その最大のメリットは、蓄えられる電荷の量が大幅に増加し、書き換え回数が現在のプレーナ型のNANDメモリより1桁多い数万回レベルに、記録速度が約2倍に高速化されることである。
ただ、3D NANDは製造の難度が非常に高いという難点もある。現状ではプレーナ型NANDメモリのような歩留まりは実できておらず、価格が高くプレミアム品の位置付けに近い。実際に、もっとも早く3D NANDの量産を開始したSamsungでさえ今のところ他社には3D NANDを供給しておらず、14nmプロセスのプレーナ型NANDを開発したりプレーナ型NAND採用のSSを投入したりと「一気に3D NANDへ!」という当初の勢いからは一歩後退した印象を受ける。一方で、いよいよ3D NAND搭載SSDの出荷を開始したMicronのように、今後は3D NAND搭載SSDに注力するというメーカーもある。同社では、コンシューマ向けに3D NAND搭載SSDを出荷することでまず数を確保し、生産しつつ歩留まりを上げ、3D NANDの価格を下げたいとしている。
以上を総合すると、今後のSSDのラインナップは、次項の表のようなイメージになる可能性が高い。3D NAND搭載製品は、NANDメモリそのものの価格が高いため、当初はNVMe SSDなどのハイエンドモデルやエンタープライズ向けモデル主体で展開されることになるだろう。ハイエンドモデルは3D TLC NANDが主流で、エンタープライズは3D MLC NANDが主流になるだろう。ミドルレンジの製品は、Serial ATA SSDでプレーナ型のMLC NAND。ローエンドは、3D NANDの価格がある程度低下するまではこのままプレーナ型TLC NANDが採用され続けることになる。また、NANDメモリの価格しだいだが、ミドルレンジとハイエンドの中間に、プレーナ型MLC NANDのNVMe SSDや3D TLC NANDのSerial ATA SSDをラインナップする可能性が考えられる。現時点では、Micronの3D TLC NAND採用SDD、Crucial MX300がこのレンジの製品だ。
■組み込み系製品が低価格化を先導
3D NANDの普及によって、SSDの大容量化も加速する。というのも、現在の3D NANDのシリコンダイあたりの最大記録容量は、Intel/Micron陣営が出荷中の3D TLC NANDの384Gbit(48GB)。これを現在最大である16積層のダイスタッキングでパッケージすると1チップで768GBの記録容量を実現できる。このチップを利用すると、2チップで1.5TBのSSDを製造でき、わずか3チップで2TBを超えるSSDを製造することも理論上は可能だ。なお、Samsungや東芝/ Western Digital陣営、SK hynixでは、256Gbit(32GB)の3D MLC NANDを出荷。256Gbit品なら16積層のダイスタッキングでパッケージすることで、1チップあたりの記憶容量は512GBとなり、4チップで2TBのSSDを製造できる。
プレーナ型NANDのシリコンダイあたりの記録容量は、MLC/TLCともに128Gbit(16GB)で止まっているが、3D NANDは積層数を増やすことで、今後も記録容量を増加させていくことになる。すでにSamsungは512Gbit(64GB)の3D TLC NANDの開発を行なっており、同社を追う東芝/ Western Digital陣営やIntel/Micron陣営も、同容量の3D TLC NANDの開発を行なっていることを明らかにしている。3D NANDのシリコンダイあたりの記録容量が512Gbitに増加すると、わずか1チップで1TBのSSDを製造することも可能になる。
ひとまず価格を見ないことにすれば、2.5インチサイズのHDDの最大記録容量を上回る記録容量を持つSSDを簡単に設計できる時代がすぐそこまで近付いてきているのだ。
【「QLC」NAND って何?】
QLC(QuadLevel Cell)とは、一つのメモリセルに「4bit」の情報を書き込むNANDメモリである。以前から存在した技術ではあるが、プレーナ型NANDでは、TLCよりもさらに1桁書き換え回数が減るというデメリットがあるため実用化にはいたらなかった。しかし、3D NANDの登場とともに、アーカイブ用途向けの大容量で安価な記録媒体を実現する技術として再び注目を集めている。原理上記録速度はTLCよりも遅くなるが、読み出し速度はほとんど変わらないため、用途をアーカイブに限定すれば「安価で大容量」というメリットのほうが大きい、というわけだ。
[Text by 北川達也]
【DOS/V POWER REPORT 2016年10月号は8月29日(月)発売】
★第1特集「超高速・大容量・低価格 重要キーワードと製品を一気読み 『買いの最新SSD総チェック』」
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