パワレポ連動企画
髙橋敏也の改造バカ一台 その255「夏休み先取り!リサイクルPCの末路」
DOS/V POWER REPORT 2022年春号の記事を丸ごと掲載!
2022年7月13日 00:00
本コーナーは基本的に行きあたりばったり、成り行き任せで構成されている。一応、担当編集さんとはネタの打ち合わせをしているのだが、まあ内容がブッ飛んでいるためか編集さんに理解してもらうのが大変なのである。いや、理解されないまま「ま、最後はなんとかなるだろう」とOKを出されているような気もする。
ここで問題なのはその内容を現実のものとする側、すなわち私のほうも「ま、なんとかなるだろう」と考えていることだ。まさに行きあたりばったり、成り行き任せなわけだが、それでうまくいけば結果オーライなのである。そう、問題は「うまくいかなかったとき」なのである。表現方法を多少変化させるなら「失敗」したときということだ。
もうここまで来ればみなさんお分かりと思うが、要するに今回は「遺憾な結果」と言うか正直に言うと「大失敗」したのである。いや、アイディアはよかったのよ、アイディアは。
あのね、格好のいいプレゼンみたいに表現するとね、「リサイクルを基本としサスティナブルな自作PC本体ケースを想定、大きなトレンドとなっているSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)も踏まえた上で展開するコンテンツ」とかなるわけですよ。
でも、大雑把に言っちゃうとね、「普段捨ててるアルミ缶とかペットボトルを使ってPCケースを作ってみよう!」とかいう小学生の夏休みの工作(今、そういうのがあるかどうかは知らないけど)並みの話なのである。
実際、ネタ出しの段階で編集さんから「着地点としては夏休みの工作になるのか、それとも素晴らしい出来になるのか?」と質問されたぐらい。ちなみに私の答えは「その中間ぐらいですかね」である。
そしてその結果誕生したリサイクルPCの出来はというと「小学生の夏休み工作以下」という大惨事になったしまったのだ。今回はそのテンマツをお伝えしたい。
飲みが足りない
繰り返しになるが話は単純、今回のテーマは「アルミ缶やペットボトルをリサイクルして本体ケースを作る」である。そのために不肖・髙橋、いつもより缶チューハイやハイボール、そしてペットボトルのお茶を多めに飲んで頑張った(飲みたかったから、ではなく仕事のためである)。だが読みが甘く、アルミ缶もペットボトルも足りなかったというオチが付くのだが。
さてまずアルミ缶。私の頭の中では「アルミ缶は薄いから加工も楽だろう」という考えがあった。いや、確かにそのとおりなのだが、問題は「薄過ぎる」という点にあった。その薄さが逆に加工を難しくしたのである。
イメージとしてはナイフでアルミ缶に穴をあけ、そこから金切りバサミを突っ込み切断し、アルミ缶の「開き」を作るという感じ。そして得られた極薄のアルミ板を加工して本体ケースの一部にしようとしたのだ。実際、ナイフで穴をあけるのも金切りバサミで開きにするのもまったく問題なし。
だがアルミ缶は「薄すぎ」なのだ。金切りバサミで切ろうとすると、何と裂けてしまうのである。結果得られる極薄アルミ板は想像より小さく、頭の中で描いた設計図どおりに使おうとすると、今度はアルミ缶が足りないという事態に陥ってしまう。
さらに「薄すぎ」問題が傷口を広げる。「極薄のアルミ板でも必要に応じて何枚か重ねれば強度は得られるだろう」などと考えていた時期が私にもありました。実際にはかなりの枚数を重ね合わせるか、何かしらの構造、たとえばハニカム的な構造をサンドイッチするなどしないと、必要な強度を得られないのである。そして何をするにしても足りないアルミ缶……
余談だがアルミ缶の加工はある程度の危険を伴う。まず何より切り口が鋭利なので手を切るし、小さな切りくずは刺のように刺さるのだ。慎重に作業を進め、切りくずを常に掃除機で吸い取るといった配慮が必要となる。そして本体ケースに使うなら想像以上の量が必要になることも重要。
この段階でほぼほぼ詰んだわけだが、締め切りと人生の終焉は待ってくれないのである。泣く泣く作業を進めていく。
ペットボトルは足りなくなる!
脳内設計図は完璧だった。まず、すべてを搭載したMini-ITXマザーボードを用意し、そこにコンパクトなSFX電源ユニットを接続、さらにビデオカードも比較的コンパクトなものを使用。こうしてコアパーツを小さくまとめ、それを包むようにアルミ缶とペットボトルで本体ケースを作成する。完璧である(用意したコアパーツがWindows 11マシンからの流用だというのはここだけの秘密)。
しかし脳外の現実は厳しかった。まずコアパーツを載せるベースプレートをアルミ缶から切り出したアルミ板で作ろうとしたら強度が不足し、さらにアルミ板も足りないという事態。泣く泣く厚手のイラストボードを切り出して、ベースプレートの強度を確保した。
次はペットボトルの出番である。ペットボトルに関しては何度か加工したことがあって、その特性などは分かっている「つもり」だった(「つもり」という点が悲しい)。まず切り出しに関して言えば伝家の宝刀、超音波カッターを使えばサクサク切ることができる。もちろんカッターナイフでもハサミでも切ることができるわけで、逆に接着するならホットボンドが有効である。
ここでまた脳内設計図を引っ張り出す。ベースプレートはアルミ缶から切り出した極薄アルミ板を使用(失敗)、本体ケースの前面側面背面天板は切り出したペットボトルのかけらをホットボンドで接着しながら組む予定だったのである……。
はい、失敗。アイディア自体に問題はないのだが、とにかくペットボトルが足りない。板状のかけらを切り出すにしても、本数が足りないのである!
まさかペットボトルを得るために大量のドリンクを買うわけにもいかず、巨大ペットボトルを得るため4リットルの甲類焼酎を買うわけにもいかず……。
さらに追い討ちをかけたのが時間のなさだ。細かく細かくペットボトルを刻んで、それで得られたかけらを積み重ねていけば(ホットボンドで接着しながら)、なんとかそれなりに見られるものができたかもしれない。だが、締め切りと人生の終焉は待ってくれないのである(パート2)。なんとかしたいが、どうにもできないこの悲惨な状況……。
コアパーツにペットボトルを貼っただけ……になりました
アルミ缶から切り出したアルミ板で作ろうと思っていたベースプレートは、厚手のイラストボードに助けてもらい、本体ケースで言うところのパネルとなる部分をペットボトルで作ろうと思ったら量も時間も足りない。これぞまさに大失敗、別の言い方をするなら「完璧な失敗」と言うべきか。これでちゃんとコアパーツ部分、要するにPCとしては動作するところがまた物悲しい。
行きあたりばったり、成り行き任せだとこうなる!反面教師としては大変キレイな終わり方と言ってもいい。そして「着地点としては夏休みの工作になるのか、それとも素晴らしい出来になるのか?」と質問した担当編集さんには、「小学生の夏休み工作以下の出来となりました、申し訳ありません」とこの場を借りて謝罪したいと思います。引き合いに出した小学生のみなさんにも謝罪します。
まあ空気を読まずに言うと、もし現在も夏休みの工作的な宿題があるなら「自作PC+α」というのは決して悪くないと思うのだ。とくに本体ケースは段ボールでも、プラの収納ボックスでも作ることができる。透明、半透明なプラの収納ボックスを使えばARGBの電飾で豪華に見せるといったことも可能だ。またスペックに配慮しておけば、PCとしての実用性も兼ね備えられる。
そんなわけで夏休みに自由工作の課題がある小学生のみなさんは、今年で59歳になる初老のおっさんを反面教師にして、素晴らしい本体ケースを作ってください。おっさんは草葉の陰から応援しています……
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