パワレポ連動企画

髙橋敏也の改造バカ一台 その255「夏休み先取り!リサイクルPCの末路」

DOS/V POWER REPORT 2022年春号の記事を丸ごと掲載!

 本コーナーは基本的に行きあたりばったり、成り行き任せで構成されている。一応、担当編集さんとはネタの打ち合わせをしているのだが、まあ内容がブッ飛んでいるためか編集さんに理解してもらうのが大変なのである。いや、理解されないまま「ま、最後はなんとかなるだろう」とOKを出されているような気もする。

 ここで問題なのはその内容を現実のものとする側、すなわち私のほうも「ま、なんとかなるだろう」と考えていることだ。まさに行きあたりばったり、成り行き任せなわけだが、それでうまくいけば結果オーライなのである。そう、問題は「うまくいかなかったとき」なのである。表現方法を多少変化させるなら「失敗」したときということだ。

 もうここまで来ればみなさんお分かりと思うが、要するに今回は「遺憾な結果」と言うか正直に言うと「大失敗」したのである。いや、アイディアはよかったのよ、アイディアは。

 あのね、格好のいいプレゼンみたいに表現するとね、「リサイクルを基本としサスティナブルな自作PC本体ケースを想定、大きなトレンドとなっているSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)も踏まえた上で展開するコンテンツ」とかなるわけですよ。

 でも、大雑把に言っちゃうとね、「普段捨ててるアルミ缶とかペットボトルを使ってPCケースを作ってみよう!」とかいう小学生の夏休みの工作(今、そういうのがあるかどうかは知らないけど)並みの話なのである。

 実際、ネタ出しの段階で編集さんから「着地点としては夏休みの工作になるのか、それとも素晴らしい出来になるのか?」と質問されたぐらい。ちなみに私の答えは「その中間ぐらいですかね」である。

 そしてその結果誕生したリサイクルPCの出来はというと「小学生の夏休み工作以下」という大惨事になったしまったのだ。今回はそのテンマツをお伝えしたい。

飲みが足りない

 繰り返しになるが話は単純、今回のテーマは「アルミ缶やペットボトルをリサイクルして本体ケースを作る」である。そのために不肖・髙橋、いつもより缶チューハイやハイボール、そしてペットボトルのお茶を多めに飲んで頑張った(飲みたかったから、ではなく仕事のためである)。だが読みが甘く、アルミ缶もペットボトルも足りなかったというオチが付くのだが。

こっ、この企画のために飲んだんだからねっ!
今回の主役たち。いつも飲んでる缶チューハイだの、ハイボールだののアルミ缶!そして朝食と一緒に飲んでるお茶のペットボトルたち。今回はこれらが主役!
普段は中をすすいでからつぶして捨てるアルミ缶だが、この日のためにつぶさずためておいた。まあ結構飲むのですぐにたまるんですけどね(この企画のために飲んだりもしたw)

 さてまずアルミ缶。私の頭の中では「アルミ缶は薄いから加工も楽だろう」という考えがあった。いや、確かにそのとおりなのだが、問題は「薄過ぎる」という点にあった。その薄さが逆に加工を難しくしたのである。

そして登場する謎の刃物たち!といってもどこの家庭にもある、ごく普通の刃物なので心配はいりません
刃物の使い方はこう!まず、コインだってブチ切れるBUCK社のナイフ、ジェネラル(No.120)をブッ刺してアルミ缶に穴をあける!
ナイフで開けた穴から金切りバサミを突っ込み、アルミ缶を切っていく!

 イメージとしてはナイフでアルミ缶に穴をあけ、そこから金切りバサミを突っ込み切断し、アルミ缶の「開き」を作るという感じ。そして得られた極薄のアルミ板を加工して本体ケースの一部にしようとしたのだ。実際、ナイフで穴をあけるのも金切りバサミで開きにするのもまったく問題なし。

 だがアルミ缶は「薄すぎ」なのだ。金切りバサミで切ろうとすると、何と裂けてしまうのである。結果得られる極薄アルミ板は想像より小さく、頭の中で描いた設計図どおりに使おうとすると、今度はアルミ缶が足りないという事態に陥ってしまう。

 さらに「薄すぎ」問題が傷口を広げる。「極薄のアルミ板でも必要に応じて何枚か重ねれば強度は得られるだろう」などと考えていた時期が私にもありました。実際にはかなりの枚数を重ね合わせるか、何かしらの構造、たとえばハニカム的な構造をサンドイッチするなどしないと、必要な強度を得られないのである。そして何をするにしても足りないアルミ缶……

ブスッといっちゃってください
フタと底を切り離してから胴体部分を切り開く!これで超薄アルミ板の完成!(実はこの作業をしている最中に、今回の失敗をほぼ確信した)
ペットボトルのほうは超音波カッターで自由自在にカット!ペットボトルと超音波カッターは相性がいいので、マジでサクサク切ることができる(でもこの段階で失敗を確認した。詳しくは本文で)

 余談だがアルミ缶の加工はある程度の危険を伴う。まず何より切り口が鋭利なので手を切るし、小さな切りくずは刺のように刺さるのだ。慎重に作業を進め、切りくずを常に掃除機で吸い取るといった配慮が必要となる。そして本体ケースに使うなら想像以上の量が必要になることも重要。

 この段階でほぼほぼ詰んだわけだが、締め切りと人生の終焉は待ってくれないのである。泣く泣く作業を進めていく。

先生とのおやくそく“数カ月前に見た”とか言わないこと
そうは言ってもパーツがなければ始まらない。まずはLIAN LIのSFX電源ユニットを用意。どこかで見たような……
お次はCore i5-11400がインストールされたGIGA-BYTEのZ590搭載Mini-ITXマザーボード。小さくていいですね。でもどこかで見たような……
最後はGeForce RTX 2070 SUPERを搭載したZOTACのデュアルファンのビデオカード。はい、そうです!これらのパーツは以前やったWindows 11マシンからの使い回しです!
話は簡単、用意したコアパーツをうまくまとめつつ、アルミ缶とペットボトルで本体ケースのようなものを作ろうというのだ。まさにリサイクル!などと考えていた時期が私にもありました……

ペットボトルは足りなくなる!

 脳内設計図は完璧だった。まず、すべてを搭載したMini-ITXマザーボードを用意し、そこにコンパクトなSFX電源ユニットを接続、さらにビデオカードも比較的コンパクトなものを使用。こうしてコアパーツを小さくまとめ、それを包むようにアルミ缶とペットボトルで本体ケースを作成する。完璧である(用意したコアパーツがWindows 11マシンからの流用だというのはここだけの秘密)。

こんなに薄かったのかっ!軟らかかったのかっ!!
アルミ缶は開きにしてアルミ板とし、それを重ねてマシンのベースとなるプレートを作ろうと思っていた。が、うまく切断するのに一苦労。薄過ぎて裂ける!
それでも枚数を確保し、ホットボンドで接着しながら重ねてみるが……
全然強度が足りない!何かしらのプレートを挟むか、あるいはもっと枚数を重ねるか。とにかく強度が足りない!

 しかし脳外の現実は厳しかった。まずコアパーツを載せるベースプレートをアルミ缶から切り出したアルミ板で作ろうとしたら強度が不足し、さらにアルミ板も足りないという事態。泣く泣く厚手のイラストボードを切り出して、ベースプレートの強度を確保した。

 次はペットボトルの出番である。ペットボトルに関しては何度か加工したことがあって、その特性などは分かっている「つもり」だった(「つもり」という点が悲しい)。まず切り出しに関して言えば伝家の宝刀、超音波カッターを使えばサクサク切ることができる。もちろんカッターナイフでもハサミでも切ることができるわけで、逆に接着するならホットボンドが有効である。

 ここでまた脳内設計図を引っ張り出す。ベースプレートはアルミ缶から切り出した極薄アルミ板を使用(失敗)、本体ケースの前面側面背面天板は切り出したペットボトルのかけらをホットボンドで接着しながら組む予定だったのである……。

 はい、失敗。アイディア自体に問題はないのだが、とにかくペットボトルが足りない。板状のかけらを切り出すにしても、本数が足りないのである!

 まさかペットボトルを得るために大量のドリンクを買うわけにもいかず、巨大ペットボトルを得るため4リットルの甲類焼酎を買うわけにもいかず……。

強度対策とか安全対策とか……
もう時間的にも後戻りはできないので、なんとか前へ進んでみる。マザーボードが乗る部分、裏面にアルミ缶の底面を貼り付けてみたが……とくに変化なし(強度的に)
写真では分かりづらいのだが、ペットボトルから切り出した板をアルミ板の上に貼ってある。マザーボード裏面とアルミ板を直接接触させたくなかったからだ
敗北感に打ちひしがれながらも作業を進める。大きめに作ったベースプレートをカットしていく
ベースプレートに強度がないので、電源ユニットはとても固定できない。このままだと持ち上げることもできないだろう
強度を確保するため、厚手のイラストボードをベースに。アルミ缶とペットボトル以外の材料は使いたくなかった……

 さらに追い討ちをかけたのが時間のなさだ。細かく細かくペットボトルを刻んで、それで得られたかけらを積み重ねていけば(ホットボンドで接着しながら)、なんとかそれなりに見られるものができたかもしれない。だが、締め切りと人生の終焉は待ってくれないのである(パート2)。なんとかしたいが、どうにもできないこの悲惨な状況……。

夏休みの工作の締切直前に同じ気分を味わったような記憶が
この辺りから何をどうしていいか、自分でもまとまらなくなってきた。それでもペットボトル1本目を固定
2本目……
3本目のペットボトルはカットして固定。まあこれぐらいではどうにもならんな
謎に迫力だけは出てきた
前面に出ているアルミ板を固定したペットボトルに巻いてみた。ほらね、アルミ板の表裏が逆だったら飲料の柄が出て、ちょっとリサイクル感出たのに……
「ヤケになった人類が、何をするか見せてやるっ!」。はい、ペットボトルを2本ほど上に固定してみました……(情けない)

コアパーツにペットボトルを貼っただけ……になりました

 アルミ缶から切り出したアルミ板で作ろうと思っていたベースプレートは、厚手のイラストボードに助けてもらい、本体ケースで言うところのパネルとなる部分をペットボトルで作ろうと思ったら量も時間も足りない。これぞまさに大失敗、別の言い方をするなら「完璧な失敗」と言うべきか。これでちゃんとコアパーツ部分、要するにPCとしては動作するところがまた物悲しい。

この見た目でWindows 11が動くだけですごい気がしてきた
さらにヤケになって最後の最後にアルミ缶を一番上に載せてみたが「だからなに?」状態。リサイクル感がまるでゼロ、自作PCのコアパーツにペットボトルとアルミ缶をくっつけただけになった
もちろん動きます、普通に使えます、でも見た目なんだかなあです。ん〜これはもっとアイディアを練ってからやるべき企画であった

 行きあたりばったり、成り行き任せだとこうなる!反面教師としては大変キレイな終わり方と言ってもいい。そして「着地点としては夏休みの工作になるのか、それとも素晴らしい出来になるのか?」と質問した担当編集さんには、「小学生の夏休み工作以下の出来となりました、申し訳ありません」とこの場を借りて謝罪したいと思います。引き合いに出した小学生のみなさんにも謝罪します。

 まあ空気を読まずに言うと、もし現在も夏休みの工作的な宿題があるなら「自作PC+α」というのは決して悪くないと思うのだ。とくに本体ケースは段ボールでも、プラの収納ボックスでも作ることができる。透明、半透明なプラの収納ボックスを使えばARGBの電飾で豪華に見せるといったことも可能だ。またスペックに配慮しておけば、PCとしての実用性も兼ね備えられる。

 そんなわけで夏休みに自由工作の課題がある小学生のみなさんは、今年で59歳になる初老のおっさんを反面教師にして、素晴らしい本体ケースを作ってください。おっさんは草葉の陰から応援しています……

消費社会と締め切り厳守への警鐘が鳴り響く中、完成!
暗いところで見るとマザーボードの電飾とか、それなり格好いいんだけどなあ。あ、ファンを光らせるの忘れたw

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