パワレポ連動企画
Power Supply Unit 診断室「ADATA Technology XPG CYBERCORE 1000 PLATINUM」編
DOS/V POWER REPORT 2022年夏号の記事を丸ごと掲載!
2022年11月16日 07:30
ADATA Technologyの名はメモリやSSDでご存じだろう。最近はゲーミング向けパーツにも力を入れており、「XPG」ブランドとしてメモリ関連製品はもちろんキーボードやマウスのようなゲーミングデバイス、さらにはケースやケースファン、CPUクーラーまで広範囲に手掛けている。
今回紹介するのは「XPG CYBERCORE 1000 PLATINUM」。同社の電源としては3製品目。初めて手掛けたハイエンドモデルだ。基本的な仕様としては、80PLUS Platinum認証の定格出力1,000Wを実現しつつ、750Wクラスと変わらぬ奥行き16cmのコンパクトさも兼ね備えた製品で、また上位機種として、日本のコンセント規格のギリギリを攻める1,300Wモデルも用意している。
これらXPG CYBERCORE PLATINUMシリーズは、主にゲーミングPCやレンダリングなどを行なうハイスペックPC用の電源と言えるだろう。
製品名 | 出力 | 奥行き | 80PLUS認証 | 実売価格 |
---|---|---|---|---|
XPG CYBERCORE 1300 PLATINUM | 1,300W | 16cm | Platinum | 38,000円前後 |
XPG CYBERCORE 1000 PLATINUM | 1,000W | 16cm | Platinum | 32,000円前後 |
安定した出力とNidec協業ファン ADATA初のハイエンドクラス電源
1,000Wという大出力なのに、上部に電源を配置するケースでもフロントの光学ドライブをジャマしないコンパクトさが魅力だ。
また全世界のHDD用スピンドルモーターのシェア80%を持つ日本電産(Nidec)とコラボレーションした独自ファンを採用。羽根のひねりや形状、細かな性能にこだわった静音ファンは、フル回転させてもエアコンの運転音に消えてしまうほどの静かさだ。ファンが回転し始めるしきい値もかなり高めの設定。高負荷でもベンチマーク程度の短時間の負荷では回転することがなかった。
実際に触って気になった点としては、若干だがコネクタの挿さり具合が悪かった。電源のコネクタは「電力を供給するための最重要部品」なので品質が気になるところだ。少しキツくても奥までしっかり挿し込むよう心掛けたい。
電源ケーブル長はCPU系が75cm、ストレージ系が第1コネクタまで60cmと長く、大型ケースにも対応している点がうれしい。
本製品に限らないが、注意したいのはコンセント問題。定格出力1,000Wの本製品だが最大消費電力は1,300W(13A)、1,300Wモデルは最大1,500W(15A)なので、実質的に壁コンセント(規格上限1,500W)1個をふさいでしまうことに注意したい。
CPU | AMD Ryzen 9 3900XT(12コア24スレッド) |
マザーボード | ASUSTeK ROG Crosshair Ⅷ Hero (WI-FI)(AMD X570) |
メモリ | Kingston HyperX Savage DDR4 HX430C15SBK2/16(PC4-24000 DDR4 SDRAM 8GB×2) |
ビデオカード | ZOTAC GAMING GeForce RTX2080(NVIDIA GeForce RTX 2080) |
SSD | Solid State Storage Technology Plextor M8Se(G) PX-512M8SeG[M.2(PCI Express 3.0 x4)、240GB] |
OS | Windows 11 Pro |
室温 | 17℃ |
暗騒音 | 33.9dB |
アイドル時 | ベンチマーク終了10分後の値 |
高負荷時 | 3DMarkを実行中の最大値 |
動作音測定距離 | ファンから約15cm |
電力計 | Electronic Educational Devices Watts Up? PRO |
出力の安定性はピカイチだが細部にはさらなる改善の余地も
電解&固体コンデンサともに日本メーカー製のものを多用していてハイエンド感たっぷり。しかし奥行き16cmに収めるためか、随所で熱源とコンデンサがかなり接近している。またフィルムで銅版をパウチしたシートが内部4カ所に用いられていた。
よい面もあるが、気になる部分も…
同社電源初のハイエンドモデルとしてリリースされた「XPG CYBERCORE 1000 PLATINUM」。+12Vの安定性やコンパクトなサイズ感などよい面もあるが、初のハイエンド製品だけあってリプルノイズのような気になる部分もある。
リプルノイズについて。平滑回路自体は日本メーカー製の電解+固体コンデンサでしっかりしているし容量不足とも思えない。そこから推測すると、トランスから平滑回路の間に挟まっている2次側整流回路の最後のツメが甘く、交流成分を吸収できないのではないだろうか。製品では周囲からのノイズという判断でトランス周辺にシールドを入れているが、これが見誤りである可能性もあるかもしれない。また、小型化を目指したのはよいが、全体的にコンデンサの熱対策が二の次になっている印象だ。
一方で、驚くべきはEPS12Vの安定性だ。振れ幅は0.1V未満。ATX24ピンやPCI Expressも0.3〜0.4V以内の降下で下げ止まり感がある。ゲーミングPC用電源に求められるのは、CPU/GPUを安定動作させつつ性能を引き出せること。ゲーミングブランドのXPGシリーズの電源としては、これを目指し、実現できていると言えるだろう。
電圧計測方法 | 三和電気計器 PC-20を3台使用し、各コネクタの電圧を計測 |
リプル計測方法 | Pico Technology PicoScope2204を使用しアイドル時に計測 |
診断票:高い安定性がゲーミング向き ADATA電源の船出はまずまずか
ゲーミング電源の本質である高い安定性という面では老舗の製品にも負けていない。12.0Vの基準電圧には心意気も感じる。しかしそのほかの面ではまだこなれていない部分も。電源メーカーとして見れば、ADATAはまだ生まれたばかり。今後経験を積み、技術を蓄積していければゲーミングに限定されない良質な電源を作れるようになるのではないだろうか。
[TEXT:藤山哲人、検証協力:長畑利博(アイティースリー)]
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