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【CPUクーラーマニアックス】24cmクラスなのにワンランク上の冷却性能、Phanteks「GLACIER ONE 240 T30」

DOS/V POWER REPORT 2022年秋号の記事を丸ごと掲載!

24cmクラスなのにワンランク上の冷却性能期待を上回る静音性も魅力

Phanteks GLACIER ONE 240 T30
クーラータイプ:簡易水冷、付属ファン:12cm角×2、取り付け方式:バックプレート 実売価格:33,000円前後 ※価格は9月上旬時点のもの

CONCEPT:スリムなヘッドはミラーキャップ装着で華やかに

 GLACIER ONE 240 T30は、ハイエンドケースメーカーとして有名なPhanteksから発売されている簡易水冷クーラー。性能に定評のある大手AsetekのOEM製造で、24cmクラスのラジエータを搭載しながらも36cmクラス並みの性能を発揮すると話題になった製品だ。高性能製品らしく、Ryzen Threadripperにも対応しているのもポイント。

ヘッドとラジエータ

 最大の特徴はラジエータの厚みが38mmと分厚いことだ。ラジエータサイズは、120×273× 38mm(W×D×H)となっており、厚み以外は一般的な24cmクラスと同等なので、長さ的にはケースに搭載する際の自由度が高い。ただし、厚みのあるラジエータ、厚みのあるファンの組み合わせは、ラジエータの装着位置を選ぶかもしれない。とくにケースの天板部に搭載する際には干渉しやすいだろう。

銅製ベースプレートは丸型。サイズ的にRyzen Threadripperはフルカバーできないが、それ以外のCPUの場合はほぼカバー可能だ
インフィニティミラーキャップはシンプルながらも特徴的な光り方をする。付属のケーブルを使用してマザーボードに接続すればユーティリティ制御にも対応

 付属ファンの「PH-F120T30」は12cm角のPWM仕様で、裏面のスイッチで三つの回転設定が選べる。最高回転数はAdvancedモードを使用した際は3,000rpmと高い。一方でHybridモードを使用すれば回転数が50%以下になるとファンを停止させる準ファンレス動作となる。

インフィニティミラーキャップはヘッドにかぶせて装着する仕組。マグネット式で着脱は簡単。チューブを出す方向でキャップの向きも決まる
GLACIER ONE 240 T30のヘッドは背が低いのも特徴。マザーボードのVRMヒートシンクとほとんど変わらないほどで、ケースに組み込めば内部空間が広く感じられる

 イルミネーション機能だが、水冷ヘッドに取り付ける専用カバー「インフィニティミラーキャップ」が付属。アドレサブルRGB LEDとミラーを組み合わせた構造となっており、シンプルなデザインながら奥行きが感じられる光り方をする。

FAN:30mm厚の高性能ファンが付属

 付属ファンの「PH-F120T30」は、台湾のSUNONとの共同開発品で、強度や熱膨張率に優れる液晶ポリマー素材ファンブレードや磁気浮上ベアリングを搭載。厚みも30mmと一般的な12cm角ファンよりも5mm分厚い。軸部分に3段階の回転数の切り換えスイッチが搭載されており、最大風量は最大回転数3,000rpmを誇る「Advanced」モード時に101cfmとかなり強力。それ以外には最大回転数2,000rpmの「Performance」モード、50%以下でファンを停止する「Hybrid」モードも搭載。

付属ファンの「PH-F120T30」
2本のケーブルが搭載されており、デイジーチェーン接続に対応。ファンだけでなくポンプをまとめることも可能
動作モードの切り換えスイッチが軸部分に搭載されている。出荷時は真ん中の位置の「Performance」モードとなっている

SET UP:部品点数は多めだが組み立てやすい

 リテンションキットはAsetek製のため組み立ては初心者でも簡単に行なえるだろう。唯一注意が必要なのがLGA1700マザーへ使用する際で、バックプレートとヘッド側のブラケット、スタッドが専用品になっている。とくに気を付けたいのがスタッドで、わずかに短くなっているため、LGA1200系のものを間違えて使うと密着が悪くなり冷却性能が十分に発揮されない可能性がある。

バックプレートは2枚で、一つはLGA1700用の手裏剣型、もう一つはIntel汎用のもの。LGA2011/2011-v3/2066やAM4/TR4/sTRX4マザーボードでは純正のバックプレートを利用する。ファン固定用の長ネジは36mmと39mmの2種類があり、39mmのものは同社のLED搭載ファンアクセサリ「HALOS RGB FAN FRAMES」を追加する際に用いる。ほか、チューブ用のクリップも付属する

 水冷ヘッドのポンプはファンと配線をまとめられるが、個別にPWM制御できることを考えると別々に接続するのが好ましい。

LGA1700マザーに取り付ける際は、中央にスリットの入った専用スタッドを使用する。ここを間違えると密着度が悪くなるので注意
ヘッドを装着する。ここもAsetek製OEMの簡易水冷クーラーでは一般的な手順だ。マグネット式のカバーはヘッドの取り付け完了後に装着する
マザーボードでイルミネーション制御をする場合は、付属の変換ケーブルを使う必要がある

BENCHMARK TEST

24cmクラスらしからぬ冷却性能を発揮

 比較検証には36cmクラスのEnermax「LIQMAXⅢ ARGB ELC-LMT360-ARGB」を用いた。CINEBENCH R23を10分間実行した際は、Performanceモードで比較製品よりも1℃低い78℃、高回転設定のAdvancedモードでは77℃まで低下した。

 FF14ベンチマークの結果を見ると、CPU温度が低くファンの回転数が低い状態だと、分厚いラジエータの風抜けの悪さが仇となって温度が少し高くなるようだ。Core i7-12700Kでのテストだが、この性能があればCore i9やRyzen 9の発熱も冷却可能だろう。動作音は高負荷時に43.6dBとかなり低い値を記録。Advancedモードでは54.4dBだったので、温度差を考えるとPerformanceモードが優秀な印象だ。

36cmクラスが搭載できないケースの救世主

  • 24cmクラスでは最高峰の冷却性能
  • 静音性も素晴らしい
  • 全体的にこだわりを感じる

 AsetekのOEM製品ではあるが、分厚いラジエータや高性能ファンなど性能を底上げする工夫が施されたことで、36cmクラス並みの性能を実現している。ファン回転数を絞ると静音性がよいのもこの製品の特性。上限2,000rpmのPerformanceモードをベースに、低回転時は風抜けを改善するために800 〜1,000rpmを目安に回転数を少し上げて使うカスタム設定をマザーボードユーティリティで作成するとよいだろう。

【検証環境】
CPUIntel Core i7-12700K(12コア20スレッド)
マザーボードMSI MAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4(Intel Z690)
ビデオカードMSI GeForce RTX 3060 Ti GAMING X TRIO(NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti)
メモリMicron Crucial CT2K8G4DFS832A(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2)
SSDWestern Digital WD Blue SN570 NVMe WDS500G3B0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、500GB]
電源MSI MPG A850GF(850W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro
グリス親和産業 OC Master SMZ-01R
室温25℃
暗騒音30dB以下
アイドル時OS起動10分後の値
高負荷時CINEBENCH R23 Multi Coreを10分間連続実行した際の最大値
CPU温度HWiNFOのCPU Packageの値
そのほかの温度HWiNFOの値
動作音測定距離ファンから20cm

[TEXT:清水貴裕]

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