パワレポ連動企画

【高橋敏也の改造バカ一台 その257】最狂復活!毛電脳2022

DOS/V POWER REPORT 2022年秋号の記事を丸ごと掲載!

 本誌2001年2月号に「20世紀最後の世界初マシン? 毛電脳」、そして翌月2001年3月号に「21世紀の最初を飾るマシン 毛電改」という記事を書いた。今から20年前、しかも20世紀と21世紀をまたいでお前は何をやっている、いややらかした。と言うか20年前からまったく成長していない髙橋である。

 ちなみに「世界初の毛が生えた自作マシン」である毛電脳は、そのものズバリ「毛が生えた電脳」である。要するにフカフカの毛が生えたフェイクファーなどを本体ケースに貼り付け「毛が生えた、毛が生えた」と主張したわけである。20世紀の最後に爆誕した、世界初ならぬ世界で一番意味のないPCだった。

 もちろんそこで満足する私ではない。翌月には友人まで巻き込んで「とりあえず頭髪を載せた(だけ)」のPCを作ってみた。今になって思うと、よくまあこんな企画が通ったものだ。寛大だなあ、DOS/V POWER REPORTは。

初代毛電脳&毛電改。毛電脳は今見てもかわいいが、毛電改はどうしてこうなった……

 それはともかく本連載は前回でめでたく、記念すべき256回を迎えることができた。PC野郎Aチームにとっては200回記念よりも、256回記念のほうが重要なのは周知の事実。それを無事迎えることができ、257回という新たな扉を開くにあたって担当編集氏より提案があった。ちなみに本コーナーの担当編集はDOS/V POWER REPORT編集者ではなく、なぜか大変偉くなった先代編集長のSSK氏のままである。

「リバイバル企画しましょう!昔やったおもしろい企画を現代に甦らせましょう!伝説の毛電脳ですよ、毛電脳2022!」

 「貴様は何を言っているんだ」を地でいく提案である。しかしまあ、20年前の企画をもう一度やってみるというのはおもしろいかもしれない。不肖・髙橋がいかに成長していないかを証明するのにもいいし、現代技術で甦る毛電脳と言うのも興味深い。というわけで私はこの提案に乗っかったのであった。

毛電脳2022の電脳部
Core i5-12400、メモリ16GB、M.2 NVMe 512GBのSSD、そしてCPUクーラーはNoctuaのNH-L9i-17xxを選んだ。NHL9i-17xxを選んだのは電脳コア部分を薄くするため
ASRockのDesk Miniは組みやすいのでアッという間に完成。
これでそこそこのパフォーマンスを発揮するマシンができあがったわけだ

これで完成!ではなく狂気の始まり

はいっ! 15.6型のモニタを縦置きにして組み合わせ、意識高い系のコンパクトで使えるシステム一丁上がり! そう、ここで止めておけばよかったのだ、ここで止めておけば……
ある野望を胸にまずはDesk Miniの解体作業に入る。マザボ部分を取り出すわけだが、スイッチ類も含めて分解が非常に楽なのがうれしい
取り出されたDesk Miniのマザボ。CPUクーラーをNoctuaにしたおかげで多少重いが超薄型にできた。スイッチやLEDはDesk Miniのものを流用。これが「電脳コア」となる

「また毛の話をしてるよ……」

 先ほども書いたが20年前の毛電脳は自作PCにフェイクファーで毛を生やしたものだった。まあ次の毛電改では「頭髪」という部分に鋭く切り込んだつもりがグダグタに終わったわけなのだが、今回は毛電脳2022である。あ、全然関係ないけど「毛電脳2022」って「サイバーパンク2077」みたいで格好いいよね。うん、全然関係ないわ。

 それはそれとして毛電脳2022は「頭髪」で真っ向勝負である。毛と言えば頭髪!「また毛の話をしてるよ……」、別に股毛の話をしているわけではない。今回はしっかり自作PCに頭髪を生やしてみよう!そういうことなのだ!毛のないところに煙は立たず、一発ネタ玉砕覚悟の企画なのだ!

 すいません、白状します。当初は「毛電脳2022やってやるぜ!」とか意気込んでいたのですが、なんか疲れちゃって「あ~この企画は適当にお茶を濁して、余った時間でツーリングにでも行こう」とか思ってたんですよ、ええ。そこで用意したのがコンパクトベアボーンのベストセラーASRockのDesk Mini(B660)、そして縦置き可能な15.6型のモニタである。

 Desk Miniは超コンパクトな上に、ここが重要なのだが「縦置き」が可能である。Desk Miniを縦置きにして、そこにウィッグ(カツラ)をかぶせればあら不思議!毛電脳2022のできあがりである。同じように縦置きしたモニタにもウィッグをかぶせればあら不思議! 毛モニタの完成である。メインは毛Desk Miniにして、オチに毛モニタを持ってくればいいだろう、なんて考えてました……すいません。

 実際に、Desk Mini B660にCore i5-12400を搭載し、メモリ16GB、SSD 512GBで普通に動くマシンは組んだ。モニタにウィッグをかぶせてみるとキモイが笑えるということも分かった……が、しかし。

それでいいのか、髙橋!?

 ここに来て私の内なる毛魂が燃え上がったのである。

スケキヨではなく、クサナギ的な何か。

毛電脳はサイバーパンクの悪夢を見るか?

 素子ぉぉぉぉぉぉ!

 とりあえず叫んでおく。毛、毛髪、そして頭髪。頭髪と言ったらあなた、やっぱり頭部がないと話にならないでしょう!Desk Miniにウィッグかぶせればそれはそれでおもしろいと思うが、それはあくまで載っけただけ。2022を名乗るには力不足である。そこで用意したのがトルソー、いわゆるマネキンヘッドである。このマネキンヘッドにウィッグをかぶせて、ヘアカットの練習や研究を行なうらしいのだが……。うん、生首ですね。

 まずは生首もといマネキンヘッドをしげしげと眺め触り、その構造などを確認する。この辺りからSAN値がどんどん削られていくのが自分でも分かる。ともかくマネキンヘッドの構造はだいたい理解した。表皮代わりのシリコン樹脂(のようなもの)にスチロール系の充填材が入れてあるようだ。ならばまずはその表皮をはぐところから始めなくては。

止めときゃよかった……。だが、賽は投げられたのだ。毛電脳と言われて「毛ならやっぱり頭でしょう!」とか思いつつ購入した、いわゆるマネキンヘッド(トルソー)、ヘアカットの練習台である。便宜上、ここでは「素子」と呼称する
この辺りから自分が何をしているのか分からなくなってくる。まずは頭皮もとい表面を覆う樹脂表皮を超音波メスもとい超音波カッターで切開、除去する
内部には形状を保つためのスチロール系の充填材が入っているので、それを手術用鋸もとい金鋸で切断切削して取り去る。この辺りで当初の目的を見失う

 取り出したのは超音波メスならぬ超音波カッター。この表皮のような素材と超音波カッターの相性は抜群で、さくさく刃が入っていきペロリと表皮をはくことができた。この段階でSAN値はほとんどゼロである。そしてむき出しになった頭蓋骨もとい充填材を金鋸で切ったり削ったりして、Desk Miniのマザボが入るスペースを確保していく。SAN値、マイナスに突入。

電脳コアをインストールする
電脳コアを移植し、とりあえず「素子ぉぉぉぉぉぉ!」と叫んでみる。叫びに意味はない。切除部分がまだ浅いようだ
切除部分を拡張し、ギリギリ電脳コアが収まるようにする。
サイバーパンクと言うべきか、はたまた狂気の行ないというべきか

 マネキンヘッドのもの言わぬ眼を見つめつつ、作業は進んでいく。削ってできた空間にDesk Miniのマザボを固定してみる。多少はみ出すものの、なんとか収まったようだ……と、この段階で髙橋は気付くのである。CPU、メモリ、ストレージが一体になったマザボが、マネキンヘッドとはいえ「頭部」に収まっている。これってもしかして「電脳」じゃね? はい、みなさんご一緒に……。

 素子ぉぉぉぉぉぉ!

 このまま頭髪を生やさずにおけば「電脳2022」である。ここにウィッグを追加、毛髪頭髪を追加することによって「毛電脳2022」は完成するのである!というわけで不肖・髙橋はおずおずと用意してあったウィッグを取り出すのであった。

とりあえず再び「素子ぉぉぉぉぉぉ!」と叫んでおく。とくに意味はないが、こう叫ぶと心が落ち着く
無事、ヘンタイ狂気系のコンパクトで使えるシステム一丁上がり……。いや今回は「毛電脳2022」だから!毛がないから!

20年でパーツは大幅進化。では毛は?

毛電脳には毛! ということでわけも分からず購入したウィッグ(カツラ)の数々。まあ使わなかったものは私が女装するときにでも活用しよう
しげしげとウィッグを観察して分かったのは、頭にかぶるためのかなりしっかりしたネットをベースに植毛されているということ。そういうものなのかと感心する

三つ編みお下げは可、ツインテールは……

 なにはともあれウィッグをマネキンヘッドにかぶせてみる。飛び出したマザボが多少ジャマはするものの、結構しっくりウィッグがかぶさった。と言うか生首感がさらに強まった。よし、これで毛電脳2022は完成……なのだけども!やっぱり何かが足りない。足りぬ、足りぬ、工夫が足りぬ!

暗い部屋に置いてあると、マジ怖い
とりあえずかぶせてみた!毛のおかげで電脳コアが隠れ、一見すると普通の生首に見える。とりあえず「素子……」と呟いてみる。この時点でSAN値はゼロである
「やっぱりキンパツでしょう!」とかいいながら、別のウィッグも試してみる。「フヒヒ……」とか含み笑いをしながらの作業である。もうダメかもしれない

 せっかくの頭髪である、ここは一つヘアスタイルを変えておシャレの一発でもしてみたいものである。ロングヘアー?ならばツインテールでしょう!(SAN値、さらにマイナス)ということでわが愛しのポニョ嫁登場である。20年以上改造バカやっている私でも、ロングヘアーのヘアスタイルなんていじったことがないわけで。

「ポニョ嫁様、お忙しいところ申し訳ありませんが、この髪をツインテールにしていただけませんか?」

「なにバカなことやってるじゃ! 任せておくじゃ!」

 はい、ダメでした。ウィッグは着脱させる都合上、固定はせずかぶせただけである。そうすると頭髪の根元がしっかりしていないのでツインテールは難しいらしいのだ。これは後で気が付いたことなのだが、マネキンヘッドに付属するピンでウィッグをある程度固定してやれば可能だったかもしれない。

ヘアアレンジで思い切りオシャレを楽しもう★
毛があるなら髪形でおシャレしなくちゃ!とか思いつつポニョ嫁の協力を得てツインテールにチャレンジしたが失敗、なぜか三つ編みになる(本文参照)。まあ、これはこれでいいか……フヒヒ……

 ツインテールはダメでもそこはそれ、天下のポニョ嫁様。ウィッグをコシコシしてアッという間に三つ編みお下げをこさえてくれたのである。うーん、これはこれでいいっ!(SAN値の概念すら分からなくなった)さらにポニョ嫁様はヘアクリップ(というのか?)を二つ使って器用になんちゃってツインテールを作ってくれたのだ。いいですね!

どうしてもツインテールにしたいという私の希望に応え、ポニョ嫁がヘアクリップを使って「なんちゃってツインテール」を作ってくれた。いいじゃないですか!萌えるじゃないですか!(意識混濁)

 とまあ、これが毛電脳2022のあらましである。正直、途中から「フヒヒ……」という低く小さな笑い声が絶えない明るい職場となってしまった、フヒヒ……。

嫁の前でこれを作る気持ちが分かりますか?
「毛電脳なら毛モニタでしょう!」とか言いつつモニタにもウィッグをかぶせてみる。ポニョ嫁の冷たい視線が痛いのだが、人生ここまで来るともう後戻りはできない
とりあえずできあがり。毛電脳2022。フヒヒ……

 もし私が正気を失ったとしたら、それは全部SSK氏が悪いのである! 私はちっとも悪くない! もともと私に正気なんてあるのか!? ない! ならいいか! フヒヒ……。

モニタに続いてマウスもやってみましたが… …
おまけ。キンパツちゃんと一緒に写っていた謎の毛のかたまり、ポニーテールタイプの付け毛なのだがその正体は……
マウスでした! って使えるか、こんなものぉぉぉぉぉぉ! 素子ぉぉぉぉぉぉ!

完成!令和の毛電脳!!ツインテール装備で萌えにも完全対応!!!

モニタやマウスに毛を生やしても怖かったり使いにくかったりするので、「実用的」にセットアップしてみた。これでどこに出しても恥ずかしくない立派な自作PCシステムの完成である

[TEXT:高橋敏也]

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