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ハイエンドで驚異の世代交代!電力性能比が大幅更新も価格・サイズは上昇傾向【PCパーツ100選 ビデオカード編】

DOS/V POWER REPORT 2023年冬号の記事を丸ごと掲載!

4Kゲーミングが “快適”な時代にいよいよ突入!

 2022年はAMD/NVIDIAともに新アーキテクチャの「GeForce RTX 40シリーズ」、「Radeon RX 7000シリーズ」を投入。

 今回両陣営とも最上位から投入を始めたが、4Kや8K解像度でも高フレームレートを実現するためのスペックやレイトレーシング性能の強化、さらにAV1ハードウェアエンコーダ対応など、次世代に向けてゲームシーンを再定義するような製品だ。ただ4Kで遊ぶだけではなく、“快適”というキーワードが追加された。

 フルHDゲーミング向けGPUでもDirectX 12 Ultimate対応GPU(RTX 3050/RX 6500XT以下)が登場し、2023年以降はより付加価値の高いGPUの時代になるだろう。

2022年末の主要GPUのおおまかな序列

 もう一つ、2022年はIntelが約四半世紀ぶりにディスクリートGPU「Arc Aシリーズ」で復帰した記念すべき年でもある。秋以降ミドル~エントリー帯に製品を投入し、次世代(Arc Bシリーズ)への足がかりを築いた。

ミドル以下の本格更新は2023年に持ち越し。Intel Arcは課題も

 エントリー帯は2022年前半にRadeonのRX 6500 XTを皮切りにRTX 3050といったDirectX 12 Ultimate対応GPUに置き換わった(GTX 1630は例外)。

 ミドル~アッパーミドル帯GPUの動きは乏しかったが、IntelがArc Aシリーズの上位モデル「Arc A750/ A770」の2モデルを投入したのが数少ない動き。ただ、競合のRTX 3060 TiやRX 6600 XTに比べると性能にはまだ開きがあり、クリエイティブ系アプリ対応の遅れなど、課題を多く残したままのローンチとなった。

GTX 1630は今や希少なGeForce系エントリー製品。RX 6400などと比較するとNVEncの搭載や画面出力数などで勝るが、性能的にはもの足らない。GTX 1660などの後継モデルはいつになる!?
Arc A770は性能的には既存GPUにおよばなかったが、DirectX 12 Ultimate対応を筆頭にAV1エンコーダやAI処理用のユニット(XMX)まで搭載するなど、先端のトレンドを貪欲に取り入れている

DLSS 3でPCゲーミングのパフォーマンスを新境地に導く

 GeForce RTX 40シリーズで採用されたAda Lovelaceアーキテクチャは、レイトレーシングとDLSSの強化が主軸となった。最上位のRTX 4090は16,384基という過去最大級のCUDAコアを備え、TGP(カード電力)450W、補助電源は12VHPWRという飛び抜けたスペックを特徴としている。

RTX 40シリーズでは“Optival Flow Accelerator”でフレームを分析することでCPUの力を借りずに新フレームを生成する

 だがRTX 40シリーズで真に注目すべきはDLSS 3に含まれる「DLSS Frame Generation」。新フレームをGPUパワーのみで生成することでフレームレートを倍増させるというものだ。AMDの「FSR 3」はまだ開発中であるため、GPUによるフレーム生成技術は現状RTX 40シリーズだけの技術である。

RTX 40シリーズは3スロット厚&300mm超の巨大さのほか、12VHPWR専用でTGP 450Wという振り切った設計が話題を呼んだ

 またRTX 40シリーズではTSMC 4Nプロセスを採用したことで微細化の度合いはRadeonに並んだが、モノリシック構造のダイは歩留まりや価格面では不利に働く。今後登場するであろう下位モデルではチップレット構造のAMDに対し厳しい戦いとなるだろう。

GeForce RTXのハイエンドモデルの主な仕様
RTX 4090RTX 4080RTX 3090 Ti
CUDAコア数16,3849,72810,752
レイトレーシングコア第3世代第3世代第2世代
Tensorコア第4世代第4世代第3世代
ブーストクロック2.52GHz2.51GHz1.86GHz
ビデオメモリGDDR6X 24GBGDDR6X 16GBGDDR6X 24GB
メモリインターフェース幅384bit256bit384bit
メモリ速度(実質)21Gbps22.4Gbps21Gbps
NVIDIA DLSS第3世代第3世代第2世代
NVIDIA Encoder (NVENC)第8世代×2第8世代×2第7世代
AV1デコード/エンコード〇/〇〇/〇〇/―
カード電力450W320W450W
推奨システム電力850W750W850W

対抗馬のRDNA3世代Radeonも最上位から順次登場

 AMDのRDNA 3アーキテクチャを搭載したRadeon RX 7000シリーズは、民生用GPUとしては初のチップレットデザインを採用。GPUコアを収めたGCD(Graphics Compute Die)は先端のTSMC 5nm、Infinity Cache+メモリコントローラだけを分離したMCD(Memory Cache Die)は6nmと使い分けることで、コストダウンを強く志向している。

RX 7900 XTXのチップ。中央にGCD、周囲に六つのMCDが配置されている。ハイエンドだけあってGCDの面積はかなり大きい

 RDNA 3世代の第1弾GPUであるRX 7900 XTX/XTはRDNA 2世代よりもメモリバスが広く、4K/8K環境でのゲーミングを視野に入れている。映像出力にDisplayPort 2.1を採用することで、8Kでもリフレッシュレート165Hz表示に対応できるとうたっているが、これは将来への先行投資か。

MCDを6nm(7nmの改良版)で製造する理由は、Infinity Cacheを含むため5nmで製造してもほとんどシュリンクしないからだ

 また動画のハードウェアエンコーダは他社に追随してAV1にも対応。AMDはXILINXのAI技術を追加、文字や人物の顔などを認識し画質を上げる技術を加えるなど、一味違うものに仕上げてきている。

Radeon RXのハイエンドモデルの主な仕様
Radeon RX 7900 XTXRadeon RX 7900 XTRadeon RX 6950 XT
ストリーミングプロセッサー数6,1445,3765,120
Ray Accelerator数968480
ブーストクロック2.5GHz2.4GHz2.31GHz
ゲームクロック2.3GHz2GHz2.1GHz
ビデオメモリGDDR6 24GBGDDR6 20GBGDDR6 16GB
Infi nity Cache96MB80MB128MB
メモリインターフェース幅384bit320bit256bit
メモリ速度(実質)20Gbps20Gbps18Gbps
AV1デコード/エンコード〇/〇〇/〇〇/―
カード電力355W300W300W
推奨システム電力800W750W850W

最新&既存GPU 22製品 一斉ベンチ GPUの世代交代で勢力図はどう変わる?

 ここではRTX 40シリーズやRX 7000シリーズを含む現行GPU22製品を横並びで比較するが、誌面のスペースの都合で隙間モデル的なGPU(RTX 3060 Tiなど)は除外した。検証環境は今回から、CPUがCore i9-13900K、OSはWindows 11の22H2にスイッチ。

 「3DMark」では左グラフ(ラスタライズ系テスト)ではRadeon(とくにRX 7000シリーズ)が健闘する一方、右グラフ(レイトレーシング系テスト)ではGeForceが強い。

 TBP比較(右)は「サイバーパンク2077」を使用した。上位GPUほど消費電力は大きいが、RTX 40シリーズとRX 7000シリーズの消費電力(平均)には大きな差がないことが示されている。

超高フレームレート命の軽量FPSでの性能は?

高いフレームレートでプレイしたいeスポーツ系タイトル。オーバーウォッチ2はGeForceが強い オーバーウォッチ2:©2022 Blizzard Entertainment, Inc.

 CPU検証とは異なり、ここでは最高画質設定で検証を行なった。「レインボーシックス シージ」ではフルHDで平均500fpsを超えるGPUが22製品中8製品、平均240fps以上でも16製品を占めるほど負荷が軽い。今期追加されたRX 7000シリーズはフルHDではフレームレートが頭打ちになっているが、今後のドライバ改善で直る可能性はある。

 一方「オーバーウォッチ2」ではGeForce系が全般的に好調。とくにRTX 40シリーズが突出した実力を発揮した。RX 7000シリーズも旧世代のRX 6950 XTよりフレームレートが伸びているが、新しいInfinity Cacheとメモリバス幅の広さというRX 7000シリーズのメリットを活かし切れていない印象。こちらもドライバの改善での変化に期待したい。

やや重めのゲームではRadeonが輝くシーンも

Radeonが得意とするForze Horizon 5だが、RTX 40シリーズは性能の高さで結果を出す Forza Horizon 5:©2022 Microsoft

 「Call of Duty:Modern Warfare II」は全般的にRadeonが有利で、RX 7900 XTXがRTX 4090をフルHD ~ WQHDで上回るフレームレートを発揮。今後ドライバの熟成が進めばさらに差は広がることが期待できる。RTX 40シリーズも旧世代GeForceに比べると高速化しているが、フルHDで伸び悩んでいるようだ(逆に高解像度では伸びやすい)。

 「Forza Horizon 5」もRadeonへの最適化が進んだゲームだが、RX 7000シリーズはドライバの熟成度の問題かRX 6950 XTより下の結果に。最速を叩き出したRTX 4090では、4K解像度でも平均144f p s近くなるなど、広いメモリバス幅と多量のCUDAコア数の力を印象付けた。2023年登場予定の下位モデルの性能がどこまで出るか楽しみだ。

レイトレーシング系ではGeForceが圧倒的

今号の新顔ビデオカード
上位モデルの追加がメインだが、RX 6750 XTは今回からASRockのRadeon RX 6750 XT Challenger Pro 12GB OCに変更した

 このページはレイトレーシングを効かせた「F1 22」および「サイバーパンク2077」での検証だ。RX 6500 XTやArc A380などの新世代エントリーGPUでは超低fpsながら動作するが、TuringベースのGTX 1660などでは設定をONにすることもできない(いずれもGPUのDirectX 12 Ultimate対応が必須)。

 この両タイトルはGeForce系が安定して強い。F1 22ではRX 6800 XT以上であればWQHDでも高fpsを出せるが、レイトレーシング処理が重いサイバーパンク2077では、Radeon系は全体に低調。ただし、現役最速のRTX 4090でも4Kで遊ぶには最低でもDLSSが必須。近日正式実装のDLSS FGを利用しなければ、快適に遊ぶのは難しい。

2022年のレコメンドに値する“GPU”は?

 ビデオカード編のゴールド/シルバーレコメンドは特定のビデオカードではなく、GPUそのものに対し授与することにした。

 まずゴールドレコメンドは文句なくRTX 4090だ。今回実施したほとんどベンチマークで異次元のパフォーマンスを発揮したというのがその理由だが、ラスタライズ、レイトレーシングを問わない強さと、実ゲームでの実装が進むDLSS FGによるパフォーマンスブーストが素晴らしい。

 消費電力が大きいとか変換ケーブルの挿しが甘いと燃えるかもとかという弱点はあるが、それらを差し引いても純粋性能が高いというメリットは抜群だ。

電力消費が大きいのは欠点だが、それを補って余りあるパフォーマンスは当代最強。DLSS FGによるフレーム生成対応も素晴らしい

 シルバーレコメンドは2製品。まずは最新のRX 7900 XTXだ。価格やビデオメモリ搭載量の多さなど優れた面もあるが、今回の検証では性能が伸びきらなかったこと、レイトレ処理ではまだRTXシリーズと真っ向から勝負できないなどからシルバーにとどめた。

RX 7900 XTXはレイトレーシング処理に弱点はあるが、従来型のレンダリングは強い。AV1エンコーダに搭載されたAIによる高画質化も◎

 二つめのシルバーはRDNA 2世代のRX 6400に。仕様上の制約は大きいが、エントリーGPUにDirectX 12 Ultimate対応を持ち込んだという歴史的な功績を高く評価した。

PCI Express x4接続や同時画面出力数などスペックの制約も大きいが、エントリーGPUでもDirectX 12 Ultimate対応にした実績を評価した

本誌&AKIBA PC Hotline! 読者はコレが気になった!!

 GeForce、Radeonともに最上位から2製品がデビュー。人気投票で注目を集めたのもその4製品で、期待感や羨望が感じられるコメントが多数寄せられた。

 ただ、ハイエンド製品が手の出しにくい価格帯になってしまったことを惜しむコメントも同様に多く、そのことは5位にRTX 3060 Tiが入ったことからも透けて見えてくる。次の舞台ではもっと手頃な製品が主役になるはずだ。

Best5
順位製品名得票数
1位NVIDIA GeForce RTX 4090785
2位AMD Radeon RX 7900 XTX476
3位NVIDIA GeForce RTX 4080456
4位AMD Radeon RX 7900 XT344
5位NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti292
【検証環境】
CPUIntel Core i9-13900K(24コア32スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG MAXIMUS Z790 HERO(Intel Z790)
メモリG.Skill F5-6000J3038F16GX2-TZ5N(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2 ※DDR5-5600動作)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 4090 Founders Edition、NVIDIA GeForce RTX 4080 Founders Edition、NVIDIA GeForce RTX 3090 Founders Edition、NVIDIA GeForce RTX 3080 Founders Edition、NVIDIA GeForce RTX 3070 Founders Edition、ZOTAC ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC、GIGA-BYTE GeForce RTX 3050 GAMING OC 8G、NVIDIA GeForce RTX 2060 Founders Edition、ZOTAC ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 AMP 6GB GDDR5、ZOTAC ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 OC GDDR6、AMD Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード、AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスカード、PowerColor Red Devil Radeon RX 6950 XT 16GB GDDR6、AMD Radeon RX 6800 XT リファレンスカード、ASRock Radeon RX 6750 XT Challenger Pro 12GB OC、ASRock Radeon RX 6650 XT Challenger D 8GB OC、GIGA-BYTE Radeon RX 6600 EAGLE 8G、Sapphire SAPPHIRE PULSE RADEON RX 6500 XT GAMING OC 4GB GDDR6 HDMI/DP、玄人志向 RD-RX6400-E4GB/LP、Intel Arc A770 Limited Edition、ASRock Arc A380 Challenger ITX 6GB OC
システムSSDCorsair CSSD-F1000GB MP600[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
データSSDSilicon Power SP002TBP34A80M28[M.2(PCI Express 3.0 x4)、2TB]
電源Super Flower LEADEX TITANIUM 1000W(1,000W、80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro
Total Board PowerNVIDIA「PCAT」を使用して計測したカード単体の消費電力
高負荷時サイバーパンク2077を同一地点で5分放置した際の平均値と最大値
アイドル時OS起動10分後の安定値
レインボーシックス シージAPIは“Vulkan”、画質“最高”+レンダースケール100%に設定、ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
オーバーウォッチ 2画質“エピック”、FSR “オフ”、フレームレート上限は600fpsに設定、マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
Call of Duty:Modern Warfare II画質“極限”、アンチエイリアス“ウルトラ”、DLSSおよびFSRは“オフ”に設定、ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートをCapFrameXで計測
Forza Horizon 5画質“エクストリーム”、アンチエイリアス“ウルトラ”、DLSSおよびFSRは“オフ”に設定、ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートをCapFrameXで計測
F1 22画質“超高”、アンチエイリアス“TAA+FidelityFX”に設定、ゲーム内ベンチマーク機能(コース設定は“モナコ”& “ウエット”)再生中のフレームレートをCapFrameXで計測
サイバーパンク2077画質“レイトレーシング:ウルトラ”、DLSSおよびFSR 2は“オフ”、群衆密度は最大に設定、ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートをCapFrameXで計測

[TEXT:加藤勝明]

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