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TUFのゲーミングPSUは先進的で意欲的!ASUS「TUF Gaming 750W Gold」【Power Supply Unit 診断室】

DOS/V POWER REPORT 2023年春号の記事を丸ごと掲載!

「TUF」のゲーミングPSUは先進的で意欲的

 ASUSTeKのメインストリームゲーマー向け「TUF Gaming」シリーズから新たな電源が登場した。従来のTUF電源は80PLUS Bronze認証、ケーブル直付け、出力も550/650W出力だったので、消費電力が増大傾向にある最近のPCでは出力不足感が否めなかった。新モデル「TUF Gaming Goldシリーズ」では80PLUS Gold認証を得るとともに、出力も大出力側に振っている。合わせて奥行き15cmのコンパクトさ、フルプラグイン方式も盛り込まれ、使い勝手のよい1グレード上の製品に仕上がっている。

 さらにGeForce RTX 40シリーズで採用された12VHPWRにもネイティブ対応している。12VHPWR対応ビデオカード自体には変換アダプタが付属するので従来までの電源でも問題はないとは言え、スッキリ1本で直結できるのはメリットだ。加えて12VHPWR対応電源はまだ大出力・高機能モデルが中心で、比較的小出力・低価格のモデルを投入したのは価値がある。しかもASUSTeKの最新技術力を見せ付けるかのように小型トランス、ジャンパレス、細かなデジタル化、そしてチョークを使わないコンデンサだけによる2次側平滑といった新機軸を盛り込む先進的かつ意欲的な製品だ。

ASUSTeK Computer TUF Gaming 750W Gold(実売価格:20,000円前後)
規格:ATX、定格出力:750W、ファン:13.5cm角(底面)、80PLUS認証:Gold、ケーブル:フルプラグイン、電源コネクタ:ATX24ピン×1、ATX/EPS 12V×2、Serial ATA×5、ペリフェラル×4、12VHPWR×1、PCI Express 6+2ピン×3、サイズ(W×D×H):150×150×86mm

※実売価格は3月上旬時点のもの

Lineup
製品名出力奥行き80PLUS認証実売価格
TUF Gaming 1000W Gold1,000W15cmGold30,000円前後
TUF Gaming 850W Gold850W15cmGold26,000円前後
TUF Gaming 750W Gold750W15cmGold20,000円前後

使い勝手もアップグレード フルプラグインに大口径静音ファン

電力配分はいたって標準的でゲーミングとしては小出力
+12Vは62Aで最大744W。ここからDC−DCコンバータで+3.3/5Vを供給するがそれぞれ最大25A、合計130Wとなる。いたって標準的だ。5Vスタンバイは3Aありスマホの急速充電も余裕

 TUF Gaming Goldシリーズには750/850/1,000Wモデルがラインナップされているが、どれも奥行き15cmというコンパクトさが特徴だ。また、使い勝手のよいフルプラグイン方式でケーブル長も十分な長さである。これなら大きなゲーミングPCケースでも大丈夫。電源の置き場所も、トップ、ボトムを問わず利用できるだろう。スリーブケーブルも採用しており、ケースの角などでケーブルが引っかかりにくい。ケーブルをまとめるコーム(櫛型のケーブル押さえ)は付属しないので、表に出る部分のケーブルをきれいにまとめたい場合は別途用意したい。

12VHPWR対応で次世代ビデオカードもO K!
GeForce RTX 40シリーズで採用された12VHPWRに対応。ケーブル側も芯が太いので発熱の心配も小さい。GeForce RTX 40シリーズでは今後のミドルレンジでも12VHPWR化が進む可能性があり、対応PSUで将来に備えよう!

 +12V出力は最大62A。DC−DCコンバータを介して+ 3.3/5V(ぞれぞれ25A)を生成する方式だ。12VHPWRは最大600Wとその規格どおりの説明がされているが、実際の供給電力はもちろん電源の性能に依存する。本製品はPCI Express 6+ 2ピンが3系統ということから考えて最大450W程度が実際のところだろう。もちろん最大出力の話なのである程度余裕を持たせておいたほうがよい。

長めのスリーブケーブル採用でゲーミング向け大型ケースにも対応
ATX24ピンは61cm、EPS12Vは65cm、PCI Express(12VHPWR含む)は67.5cmとケーブルは長め。Serial ATAは1段目が40cmで以降12cm間隔でコネクタが2基のものと3基のものが付属。ペリフェラルは1段目40cmで以降15cm間隔で4基コネクタが付いているものが1本付属す

 搭載ファンは13.5cmと大口径。低負荷だと回転を停止する仕様なので、ケースファン側でエアフローを確保する運用がよいだろう。

同じ80PLUS GoldのSuper Flower製750Wモデルと比較したところ、アイドル時では1W高く、高負荷時では5W高く出た。80PLUS Gold認証の範囲を逸脱することはないが、ごくわずかに省エネ性は低いという結果に
暗騒音が35.2dBだったため、負荷にかかわらずどんなに耳を澄ませても音は聞こえなかった。ただ電源投入時に一瞬、最大回転数までファンを回す際は少し聞こえた
【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
マザーボードMSI MPG X570 GAMING PRO CARBON WIF(I AMD X570)
メモリKingston HyperX Savage DDR4 HX430C15SBK2/16(PC4-24000 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX2080(NVIDIA GeForce RTX 2080)
SSDSolid State Storage Technology Plextor M8Se(G)シリーズ PX-512M8SeG[M.2(PCI Express3.0 x4)、240GB]
OSWindows 11 Pro
室温18℃
暗騒音35.2dB
アイドル時ベンチマーク終了10分後の値
高負荷時3DMarkを実行中の最大値
動作音測定距離ファンから約15cm
電力計Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

ジャンパレスにデジタル化 コストは抑えつつも設計は先端

インレット裏まわりは電線を使って100Vをスイッチなどに引き回すのが通常の電源だが、本製品は1本も電線を使わないジャンパレス仕様となっている。おそらくノイズ対策だろう
Active PFC・1次側平滑回路。1次側はルビコンの105℃品電解コンデンサ。出力750Wながら330μFを2個搭載して計660μF。瞬電にも耐えられるレベルの総容量としている。ヒートシンクと接近し過ぎているところは寿命の点でちょっと心配
2次側平滑回路。2次側は2,200μF電解コンデンサ×7、コネクタ裏にも大量の固体パスコン。安価だが定評のある台湾TEAPO製を採用し計15,400μFという大容量で平滑化。通常はチョークコイルも入れるのだが見当たらず。デジタル化されているのではないかという印象だ
【藤山の注目ポイント】
基板を見るとほかとは明らかに違う小さなチップたち。チョークコイルもPFCで使っているだけで2次側には見当たらない。もしかするとかなりデジタル化しているのかもしれない。スマホの充電器や電気自動車の開発が急速に進んだ結果、炭化シリコン(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といった新しい部材が登場、小型電源でもハイパワーを扱えるようになり半導体も小さくなった。さらにトランスもそれを追いかけるように小さくなっている。ジャンパレスとともに最新部品を詰め込んだ意欲的なPSUだ。

今後の12VHPWR世代ミドルレンジGPUにぴったり

 これまでTUF電源がターゲットとしていたのはライトゲーマーで、出力も550/650Wといったものだったが、時代は確実に変わってきている。本製品はシリーズ最小出力だが750Wと十分で、ミドルレンジGPUにも拡大する勢いの12VHPWRに対応してきた。メインストリームゲーマーに向け、最新ビデオカードの安定性・安全性を強化し、合わせてTUFの高耐久を提供する製品だ。

降下幅はそれなりに大きい
基準電圧はEPS12V、PCIExpressが12.0V付近。ATX24ピンとPCI Expressは高負荷でも0.4Vの降下で踏みとどまり下げ止まり感もしっかりしている。EPS12Vは開始後に0.3Vの降下が見られたがその後は安定

 静音性については文句なしでほぼ無音。ただ低負荷時はファンの回転を止めてしまう仕様で、この仕様をON/OFFするスイッチはない。せっかく高圧、静音、低回転のファンなので常時回転のオプションが欲しかったところだ。

規則的な波形なので交流成分が取り除けていないのだろう
ノイズは標準的なPSUという感じ。チョーク不使用、電解コンデンサだけで平滑しているわりにはかなり頑張っているというイメージだ

 また今後のほかの電源基板設計に影響を与えそうなジャンパレス、超小型トランス、デジタル化など、ASUSTeK渾身の先進的で意欲的なところも見せてもらった。わずかにノイジーなところもあったが、電源の本質である「安定した電力供給」という点では満足できる。750Wなのに1次側に660μFの大容量コンデンサを配し、急激な電力需要増加にも対応。電圧降下も最大で0.4V。降下してもしっかりとした下げ止まり感があり、高性能ビデオカード搭載ゲーミングマシンにはピッタリの電源と言えるだろう。

低ノイズだが周期的に疎と密が見られる
長周期で見るとノイズが大きく密になっている部分と、小さく疎になっている部分が見られる。比較対象が低ノイズなので目立っているが、ノイズ自体が大きいということはない
【検証環境】
電圧計測方法三和電気計器 PC-20を3台使用し、各コネクタの電圧を計測
リプル計測方法Pico Technology PicoScope2204を使用しアイドル時に計測、そのほかは上記と同じ

診断票:電源に変革をもたらす先進設計を見た!

 超小型トランス、ジャンパレス、デジタル化に加え今後主流となるだろう12VHPWRに対応したガチのゲーミングPSUだ。ノイズ面は改良の余地が残るものの抜群の電力安定供給力はさすが「TUF」だ。

[TEXT:藤山哲人、検証協力:長畑利博(アイティースリー)]

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