パワレポ連動企画

【CPU定点観測所 第6回】X3Dシリーズ追加とともにデータ一新、定番から新モデルまで、最新CPUの力関係が一目瞭然!

DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!

X3Dシリーズ追加とともにデータ一新

 前回(2023年春号)からの差分は、テスト項目を一部見直しし、全モデルでテストを再実施したこと。

 旧世代代表のCore i7-6700K環境以外同じセットアップ(Resiable BAR、メモリ整合製、ローカルセキュリティ機関の保護を有効)としている。

 まず「CINEBENCH R23」では全体に第13世代Coreの上位勢がややスコアを落としRyzen 7000シリーズとよい勝負になった。2023年に入りWindows 11のセキュリティ関連の機能が変わっているので、今後もこの関係が維持されるか断言できるものではない。またRyzen 7000X3Dシリーズは同格のX付きモデルに対しTDPが下がっている分スコアも低いなど、各CPUの特徴を再確認できる結果になった。

3D V-Cacheを搭載したダイのみで構成されているため、上位モデルのようなセットアップのコツを必要とせず、確実にゲームを最高のパフォーマンスで動かせる。半面コア数が8基なので動画エンコードなどマルチスレッド性能はひかえめ。

実ゲームではX3Dシリーズが猛威を振るう

 実ゲームでの検証はベンチマーク機能のある「Call of Duty: Modern Warfare Ⅱ(CoDMW2)」と「Mount & Blade: Bannerlord Ⅱ(MB2)」に変更。MB2は登場キャラ数を最大にすることでCPU負荷が高くなることから採用した。いずれの環境もRTX 4080を使っているが、GPU側にボトルネックが出るのを防ぐため画質設定は最低としている。

 まずCoDMW2はRyzen 9 7950X3Dを筆頭にZen 4世代のX3Dシリーズがトップ3を独占。旧世代のRyzen 7 5800X3Dも健闘しているが、設計の新しいRyzen 7000シリーズや第13世代Coreの上位モデルには今一歩およばない。

 キャラの制御で並列度の高いMB2では状況が一変。2CCD構成のRyzen 9 7950X3D/7900X3Dは順位を落とした一方で、3D V-Cache搭載CCDしか持たないRyzen 7 7800X3Dが最速となる点に注目。3D V-Cacheを持たないRyzen 7 7700XがRyzen 9 7950Xを上回る点から、CCDまたぎによる処理の遅延が発生していることが分かる。このあたりそれぞれのCPU設計と絡めて考えると非常におもしろい。

混戦気味のクリエイティブ系

 クリエイティブ系テストは従来と同様に「Photoshop」と「Lightroom Classic」を実際に動かす「UL Procyon」のスコアと「HandBrake」による3分の動画のエンコード時間で比較した。

 まずUL ProcyonはCore i9-13900KSと13900Kがトップ2となったが、これはLightroom Classicを使ったBatch ProcessingテストがRyzen勢よりも高スコアで終わったこが大きい。その一方で「HandBrake」を見るとUL Procyonでは3位のRyzen 9 7950Xが逆転トップに。大容量の3次キャッシュを備えるRyzen 7000X3DシリーズはどちらのテストでもX付きに比べると順位が下がるなど、X3Dシリーズのゲーム性能全振りという側面が再確認できた。

3D V-Cacheを搭載したゲーム用CCDと非搭載だが高クロック動作のCCDを組み合わせ、ゲーム性能を最大化しつつクリエイティブ系にも強いという異色のCPU。性能を引き出すためにはXbox Game Barの更新など独特の手順が必要な点に注意したい。

ワットパフォーマンスではRyzenが圧倒的

 今回より消費電力測定はElmorlabs「PMD」を使用し、CPU用のEPS12Vに流れる電力を直接測定した。アイドル時とHandBrakeテスト実施時の消費電力(平均値)を取得し、エンコード処理におけるCPUの消費電力100Wあたりのフレームレートも比較した。

 これまでの観測結果どおり第12/13世代Coreが高負荷時の消費電力の多さで際立っているが、TDP 170WのRyzen 9 7950Xもかなり高い。一方ワットパフォーマンスではTDP 65W版のRyzen 9 7900がトップに立ち、以降8位までRyzen勢が占める。また、Ryzen 7000シリーズはアイドル時の消費電力が多いのはマザーだけでなくCPUにも原因があるということが判明するなど、テスト方法を見直すメリットは十分得られた。

汎用性の高い7950X3Dとゲーム特化の7800X3Dに挟まれ中途半端な印象だったが、現行CPUの中で比較するとバランスのよい出来になっていると感じた。過電圧焼損問題も解決したようなので、もう安心して組めそうだ。
【検証環境】
<LGA1700>マザーボードASUSTeK ROG MAXIMUS Z790 HERO(Intel Z790、DDR5)
<LGA1151>マザーボードASUSTeK Z170-A(Intel Z170)
<Socket AM5>マザーボードASUSTeK ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI(AMD X670)
<Socket AM4>マザーボードASRock X570 Taichi Razer Edition(AMD X570)
<共通>メモリG.Skill Trident Z5 NEO F5-6000J3038F16GX2-TZ5N(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2 ※各CPUの定格で動作)、G.Skill Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2 ※各CPUの定格で動作)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 4080 Founders Edition
システムSSDCorsair CSSD-F1000GBMP600[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
データSSDSilicon Power SP002TBP34A80M28[M.2(PCI Express 3.0 x4)、2TB]
電源SuperFlower LEADEX TITANIUM 1000W(1,000W、80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro(22H2)
Call of Duty:Modern Warfare Ⅱ内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを「FrameView」で計測
Mount & Blade Ⅱ:Bannerlord内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを「FrameView」で計測、※Intel系マザーボードのパワーリミットはすべて無制限に設定
HandBrake4K@60fps動画(約3分)をプリセットの“Super HQ 1080p30 Surround”でMP4/MKV形式に書き出すのに要した時間
アイドル時OS起動10分の平均値
HandBrake時HandBrake実行時の平均値
電力計Elmorlabs PMD

[TEXT:加藤勝明]

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 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年夏号」の記事をまるごと掲載しています。

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