夏のイチオシ!PCパーツ特集

第2世代PCI-E 4.0 SSDは容量も最高性能もアップ!「CFD PG4VNZ」の挙動を深堀りする!

4TB版も追加される最速SSDはキャッシュの使い方がさらに洗練 text by 北川 達也

“CFD Gaming"ブランドの最上位SSD、「CFD PG4VNZ(CSSD-PG4VNZ)」シリーズ。4TBモデルが間もなく登場予定だ

 Phison製のコントローラを用いた最速クラスのSSDのリリースにも力を入れているCFD販売。現在の最上位製品は“CFD Gaming"のブランドで展開されているNVMe SSD「CFD PG4VNZ(CSSD-PG4VNZ)」シリーズである。同シリーズは、読み出し/書き込みともに現在の最速クラスの性能を実現。それでいて競合ひしめくハイエンドSSDの中ではほかより手に入りやすい価格なのである。その時点で“おいしさ”が伝わると思うが、なかでも2TBモデルは、突出した書き込み性能を実現していることから大きな注目を集めている。

 CFD PG4VNZシリーズは、これまで500GB、1TB、2TBの3モデルで展開されていたが、まもなく4TBのモデルも追加される予定だ。正式リリースに先駆けて4TBモデルの試作機をお借りできたので、市場トップクラスの速度の2TBモデル、現在の売れ筋容量のど真ん中である1TBモデルとともに、その実力を見てみよう。

最速クラスの性能と大容量を同時に実現、4TBモデルもまもなく登場!

 最初にCFD PG4VNZシリーズのスペックについて説明しておこう。CFD PG4VNZシリーズは、Phison製のPCI Express 4.0対応コントローラ「PS5018-E18」を採用したNVMe SSDである。公称最大読み出し速度は、1TB以上のモデルはすべて7,000MB/s、500GBモデルでは6,500MB/sを実現。公称書き込み速度は、4TBおよび2TBモデルが6,850MB/s、1TBモデルは5,500MB/s、500GBモデルは2,850MB/sを実現している。発売中の2TBの最大書き込み速度は、現在市場に流通している製品の中でも最速性能となっており、4TBモデルもこれに並ぶ。また、外部バッファメモリとしてDDR4 DRAMを搭載。容量は記憶容量の1/1000で、4TBモデルは4GB、2TBモデルが2GB、1TBモデルが1GB、500GBモデルが512MB。

CFD PG4VNZシリーズ(左が2TBモデル、右が1TBモデル)は全モデルヒートシンク非搭載。「冷却はマザーボード搭載のヒートシンクで」という割り切りのよさはコストダウン的にうれしいポイント
CFD PG4VNZシリーズに採用されているPhison製のコントローラ「PS5018-E18」。TSMCの12nmプロセスで製造された8チャンネルのコントローラで、arm Cortex R5を3コア搭載している
バッファメモリはDDR4 DRAM。容量はモデルにより異なり、500GBモデルが512MB、1TBモデルが1GB、2TBモデルが2GB。間もなく登場予定の4TBモデルは実に4GBに達する
【CFD PG4VNZの主な仕様(4TBモデルは試作機のもの)】
型番CSSD-M2M4TPG4VNZCSSD-M2M2TPG4VNZCSSD-M2M1TPG4VNZCSSD-M2M5GPG4VNZ
容量4TB2TB1TB500GB
インターフェースPCI Express 4.0 x4
プロトコルNVMe 1.3
コントローラーPhison PS5018-E18
NANDフラッシュMicron 3D TLC(B27B)
DRAMDDR4 4GBDDR4 2GBDDR4 1GBDDR4 512MB
最大シーケンシャルリード7,000MB/s7,000MB/s7,000MB/s6,500MB/s
最大シーケンシャルライト6,850MB/s6,850MB/s5,500MB/s2,850MB/s
最大ランダムリード650K IOPS650K IOPS350K IOPS170K IOPS
最大ランダムライト700K IOPS700K IOPS700K IOPS600K IOPS
TBW3,0001,400700350
保証期間5年

 NANDメモリは、Micron製のONFI NV-DDR3 1200MT/sの速度に対応した3D TLC NANDメモリ「B27B」を採用している。2TBモデルでは、ダイあたり512GbitのNANDメモリを32基、4TBモデルでは同1024GbitのNANDメモリを32基搭載し、32並列での動作に対応している。これによって、6850MB/sという書き込み速度を実現しているようだ。ちなみに、1TBモデルは512GbitのNANDメモリを16基搭載しており16並列、512GBモデルは512GbitのNANDメモリを8基搭載しており8並列となっている。1TBモデルや512GBモデルの最大性能が4TB/2TBと比べて低いのは、並列数が少ないためである。

CFD PG4VNZ 4TBモデルではダイあたり1,024GbitのNANDメモリを採用。1パッケージあたり4積層で512GBの容量がある。これを両面で8枚実装して4TBの容量を実現している
4TBモデル(写真左)と2TBモデル(写真右)の基板。チップ数こそ同じだが、コントローラなどの配置が異なっている

 なお、2TBモデルと4TBモデルは、両面実装であることは共通だが基板設計は異なっている。4TBモデルは、コントローラが中央寄りに配置され、その両脇にNANDメモリが配置されているが、2TBモデルではM.2のインターフェースよりにコントローラが配置されている。

前世代の製品と比較して性能は大幅アップ! 公称値どおりの最大性能

 ここからは、各種ベンチマーク結果からCFD PG4VNZシリーズの性能を見ていこう。CFD PG4VNZシリーズは、何度かファームウェアのバージョンアップが実施されているため、1TBモデルと2TBモデルは、すべて最新のファームウェアにバージョンアップしてベンチマークを実行している。また、ベンチマークソフトには、最大速度を計測する「CrystalDiskMark 8.0.4」とアプリケーションの起動や操作などをシュミレートすることによってストレージの体感性能を計測する「PCMark 10 Full System Drive Benchmark」を使用した。

 PCMark 10 Full System Drive Benchmarkは、初期状態の未使用時と50%ほどデータを保存した状態の2パターンの性能を計測している。また、比較用として前世代の「CFD PG3VNF(CSSD-PG3VNF)」シリーズの2TBモデルの計測も行なっている。

 テスト環境は、以下にまとめておくが、ベンチマークはマザーボードをケースに装着しないバラック状態で行なっている。また、ヒートシンクを利用する場合は、マザーボード付属のヒートシンクを利用している。

【検証環境】
CPUIntel Core i5 11600K(6コア12スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX Z590-F GAMING WIFI
(Intel Z590)
メモリDDR4-3200対応メモリ 32GB
(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)
グラフィックス機能Intel UHD Graphics 750(CPU内蔵)
システムSSD512GB M.2 SSD(PCI Express 3.0 x4接続)
OSWindows 10 Pro 64bit版
電源玄人志向 KRPW-P630W/85+
(630W、80PLUS Bronze)
CrystalDiskMark 8.0.4の計測結果

 まずは、最大速度を確認できるCrytalDiskMarkの結果だが、CFD PG4VNZシリーズはずべての容量のモデルでほぼ公称どおりの最大の性能を発揮した。4TB/2TBモデルはともにシーケンシャル(SEQ1MQ8T1)の最大読み出し速度は約7,000MB/s、書き込み速度は6,800MB/sオーバーを記録。前世代のCFD PG3VNFと比較して、読み出しが約2,000MB/s、書き込みが約2,500MB/sも高速化されている。1TBモデルも読み出しは約7,000MB/s、書き込み速度は5500MB/sとほぼ公称値通りだった。

 また、CFD PG4VNZシリーズはCFD PG3VNFと比較して4KBのランダム速度も高速化されていることにも注目しておきたい。CFD PG4VNZの2TBモデルは、同様容量のCFD PG3VNFと比較して、Random 4K Q1T1の速度が読み出しで約13MB/s、書き込みで約70MB/sも速い。4KBのランダム速度は、小さなファイルのアクセスが多いOSやアプリの起動に影響を与えるため、体感性能アップにつながる。

PCMark 10 Full System Drive Benchmarkの計測結果

 実際に体感性能を計測するPCMark 10 Full System Drive BenchmarkのスコアもCFD PG4VNZシリーズはCFD PG3VNFと比較してアップしている。CFD PG4VNZの2TBモデルは、初期状態で2523のスコアをマークしており、このスコアは同容量のCFD PG3VNFと比較して約1.1倍も高い。

PCMark 10 Full System Drive Benchmark―Adobe系アプリの詳細結果
PCMark 10 Full System Drive Benchmark―Microsoft Officeの詳細結果

 また、アプリケーションごとの詳細な結果を比較した場合も、CFD PG4VNZシリーズはCFD PG3VNF対してほとんどのアプリケーションで上回っている。なかでも強かったのは、Adobeのクリエイティブ系のアプリケーションやExcelやPowerPointなどのビジネスアプリである。これらのアプリケーションにおいて、CFD PG4VNZシリーズはCFD PG3VNFに対して圧勝している。

PCMark 10 Full System Drive Benchmark―ゲームの詳細結果

 唯一の例外は、ゲーム系の結果である。Battlefield VではCFD PG3VNFが勝り、Call of Duty Black Ops 4はほぼ同等、OverwatchではCFD PG4VNZシリーズの勝ちといった感じで、1勝1敗1引き分けだった。この理由はテスト結果からだけでは確実なことが言えないのだが、Battlefield Vに関してはワークロードがCFD PG3VNFに適していたのかもしれない。

 なお、CFD PG4VNZシリーズは未使用の初期状態と50%使用した時点での差はほとんどなかった。今回テストした製品は、4TB/2TB/1TBのモデルであったため、50%使用の状態でも物理的な空き容量が大きい。たとえば、4TBモデルでは2TBもの空き容量がある。SSDは物理的な空き容量が大きいほど、性能が低下しにくい。これを前提に考えると、性能低下が発生しなかったのは順当な結果と考えることもできる。

特徴的なSLCキャッシュの使い方

 次に、SSDの高速化技術の一つで複数セルを利用した疑似的なSLC領域、“SLCキャッシュ”の挙動を詳しく見てみよう。実際のテストから推測するに、CFD PG4VNZシリーズは、SLCキャッシュに書き込んだデータをすぐさまTLC領域に移動するというよくある使い方ではなく、かなり特徴的な使い方のようだ。

 CFD PG4VNZシリーズは、SLCキャッシュに使用可能な記憶容量のほぼすべてを割り当てる仕様となっているが、その一方で“連続ライト時の最大書き込み容量”に制限が付けられているのだ。たとえば、1TBモデルでは連続ライトを行なうと100GB強ほど記録した時点で書き込み速度が低下する。2TBモデルでは200GB強、4TBモデルでは400GB強で書き込み速度が低下する。この速度低下は一見するとSLCキャッシュ切れのように見えるが、実は、キャッシュ切れではない。あくまでも連続書き込みの最大容量に達したための速度低下となっている。

CFD PG4VNZの1TBモデルで、100GB書き込み→10秒休憩→100GB書き込み→10秒休憩→100GB書き込み→10秒休憩→100GB書き込みというワークロードを実行したときの書き込み速度と消費電力の推移(横軸は経過時間)。合計200GBまではすぐに消費電力が下がるが、300GB目を書き込むと消費電力が下がらない
Point 1:消費電力がすぐに落ちるのは、100GB書き込み後にSLCキャッシュ内のデータをTLC領域に移動させていないためと推測される
Point 2:SLCキャッシュ内のデータをTLC領域に移動させているため、書き込みが終わっても消費電力が落ちない
Point 3:300GBを超えるデータを書き込んだためSLCキャッシュが枯渇し、書き込み速度が低下
Point 4:見た目上の書き込み作業は終了。SLCキャッシュからTLC領域への転送は引き続き行なわれる

 この挙動を実証すべく行なったのが、上の消費電力推移を追うテストだ。このグラフを見ると分かるが、1度目と2度目の100GBの書き込みでは、書き込み終了後の10秒間のアイドルですぐに消費電力が低下している。つまり、“SLCキャッシュ内のデータを書き込み後すぐにはTLC領域に移動していない”ということを意味している。

 次に3度目の100GBの書き込みは、速度低下は発生しないが、アイドル時に消費電力がほとんど落ちていない。これは、SLCキャッシュを空けるためにデータをTLC領域に移動する作業をSSD内で行なっているからだ。そして4度目の書き込みでは、100GBのデータをすべて書き込む前に速度低下が発生している。これは、書き込み途中でSLCキャッシュが切れたため速度低下したものと推察できる。

性能が高い分発熱も大きいが、高温時の挙動にはひと工夫

 次にCFD PG4VNZシリーズの発熱についてチェックしてみよう。CFD PG4VNZシリーズは、性能が高い分発熱も大きい。このため、今回テストしたすべての容量のモデルでヒートシンクなしの状態ではサーマルスロットリングが発生しており、それによる速度低下が発生している。以下のテストは、あくまでもサーマルスロットリング発生時の挙動を見るためのもので、実際の使用時には、マザーボード付属のヒートシンクなどで冷却を行なうことが必須と考えてほしい。

CFD PG4VNZの1TBモデルの速度(左軸)と温度(右軸)の推移(横軸は連続書き込み容量)。最大速度で記録できたのは100GB強。その後は平均104MB/sまで速度が低下する。ヒートシンクなしではサーマルスロットリングが発動している
Point 1:連続書き込み量約100GBの時点で疑似SLC領域を利用した記録が終了
Point 2:ヒートシンクなしでは、最大温度が75℃に達し、サーマルスロットリングが発動
Point 3:疑似SLC領域を使わない場合の書き込み速度は平均1094.7MB/sだった
Point 4:ヒートシンクなしでは、サーマルスロットリングによって書き込み速度が低下した
CFD PG4VNZの2TBモデルの速度(左軸)と温度(右軸)の推移(横軸は連続書き込み容量)。最大速度で記録できたのは200GB強。その後は平均1,776MB/sまで速度が低下。また、ヒートシンクなしでは、サーマルスロットリングの挙動が見える
Point 1:約200GBの地点でSLC領域を利用した記録が終了
Point 2:ヒートシンクなしは、最大温度66度と高く、サーマルスロットリング発動の可能性もある
Point 3:ヒートシンクありでは、最大温度が42℃と低く保たれている
Point 4:ヒートシンクありでは、SLCキャッシュ切れ後の速度は平均1776.7MB/s
Point 5:ヒートシンクなしのSLCキャッシュ切れ後の書き込み速度はヒートシンクありの約半分
CFD PG4VNZの4TBモデルの速度(左軸)と温度(右軸)の推移(横軸は連続書き込み容量)。最大速度で記録できたのは400GB強。その後は平均1776MB/sまで速度が低下する。ヒートシンクなしでは、最大83℃まで上昇し、サーマルスロットリングが発動している
Point 1:約400GB記録したところでSLCキャッシュを利用した書き込みが終了
Point 2:ヒートシンクなしだと最大83℃まで温度が上がり、サーマルスロットリングが発動
Point 3:ヒートシンクありではサーマルスロットリングの発動は見られない。SLCキャッシュを使わないときの速度は、平均1771.2MB/sだった
Point 4:ヒートシンクなしではサーマルスロットリングによって速度低下が発生している

 また、CFD PG4VNZシリーズは、前モデルのPG3VNFシリーズと比較して温度管理機能に変更が加えられているようだ。PG3VNFでは、一定温度に達したら速度を急激に落として温度を下げ、余裕ができたらまた最大速度に移行するいわゆる“ストップ&ゴー”型であったのに対し、CFD PG4VNZシリーズは、温度を上げ過ぎないように持続的に速度を制限・維持する方向に調節されている。SSDにおいて発熱の大きさは製品寿命を縮めることになりかねない。CFD PG4VNZシリーズはより安全に長く使用できる方向に調整されているようだ。

CFD PG4VNZとCFD PG3VNFの2TBモデルの温度上昇時の挙動を比較してみた(横軸は時間経過)。CFD PG4VNZは、サーマルスロットリングが発動した後は高い温度にならないように速度制限を維持している。一方でCFD PG3VNFは、ストップ&ゴーを繰り返す挙動を見せる
Point 1:PG4VNZはサーマルスロットリング発動後、温度が急激上がらないように調整している
Point 2:PG3VNFはサーマルスロットリング発動後も急激な温度上昇と温度低下を繰り返している
Point 3:PG4VNZのサーマルスロットリング発動後の速度はPG3VNFをやや下回るが、速度は安定している
Point 4:PG3VNFはサーマルスロットリング発動後もストップ&ゴーを繰り返し、何度もサーマルスロットリングが発動する

大容量モデルは性能と耐久性確保に最適

 PCI Express 4.0対応SSDは現在のところ、1TBモデルが人気の中心。しかし、NANDメモリの世代が進み、低価格化が進んでいくことで、ラインナップが増えてきた2TBモデルがいずれ主流の座に付くことは間違いない。

 一方、いよいよ登場してきた4TBモデルについては、技術的にはこれまででも開発・製造することはできたものの、価格的にコンシューマ向け製品としては現実的ではなかった。しかし、(まだまだ高いが)以前に比べれば、低価格化も進みつつあり、4TBモデルをラインナップするメーカーも増えてきている。NANDメモリの価格しだいでは、8TBモデルもそう遠くない将来に登場する可能性もある。

 並列処理で速度を稼ぐSSDは、その原理上、大容量モデルのほうが高速化を行ないやすい。実際に現在のSSDは、最大性能を発揮するモデルがCFD PG4VNZシリーズのように2TBモデル以上の容量となるケースも出てきている。PCI Express 4.0はまだ若干だが高速化の余地も残されているほか、2022年にも登場する可能性が高いPCI Express 5.0では、さらに倍の帯域となる。このため、将来的には“4TB以上の製品が最大性能のモデルとなる”と言われても不思議ではない。

 加えて、SSDは物理的な空き領域が多いほど、速度低下が起きにくく、耐久性も高くなる。つまり、“できるだけ高速な状態で常時使いたいときは、記憶容量の大きい製品を使用した上で、多くの物理的な空き容量を確保して利用する”ことが、SSDの体感性能だけでなく耐久性を向上させるための秘訣。そういった意味でも、2TBや4TBなどの大容量モデルは、容量重視のユーザーだけでなく、パフォーマンス重視のユーザーにも悪くない選択肢と言えるだろう。

[制作協力:CFD販売]