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勝敗に響く、戦略・戦術のミス
~試合の流れを徹底解説!Revolレポート~
LJL SEASON2 ROUND9 Ozone Rampage vs Immortals 7th heaven
(2015/7/9 18:34)
Team Composition~両チームのチャンピオン構成~
Ozone Rampage(以下RPG)の構成は集団戦に長けた構成だ。
RumbleとOriannaとSivirはそれぞれ範囲攻撃に長けており、RengarはULTによる交戦能力をもっている。RengarとOriannaはそれぞれのULTを活かした相乗効果があり、集団戦を強引に開始する能力に長けたコンビと言えるだろう。またRengarとThreshは単体拘束能力に長けているため、チームの単体攻撃能力はそれほどでもないが、1人ずつ捕まえて倒していくことも可能だ。状況にあわせて集団戦と少数戦を行える、比較的万能な構成とも言えるだろう。
Immortals 7th heaven(以下7h)の構成は集団戦とスプリットプッシュに長けた構成だ。
VladimirとCorkiが範囲攻撃に長けており、ShenとRek'SaiとAlistarが範囲拘束能力に長けている。Vladimirは敵に与えるダメージを数秒間増加させる効果のあるULTがあるため、それをいかに多くの敵に当てることができるかが重要となる。さらにはShenとRek'SaiとVladimirはそれぞれ1対1に優れており、特に前者の2人は条件付きだがマップ全体を一瞬にして移動できるスキルをもっているため、それらを活かしたスプリットプッシュが可能だ。
In-Game
Lv1はお互いに敵のJungleに入るような動きはせず、スタンダードなレーンのマッチアップになった。
BotでSivirがミニオンの通り道をふさぐような動きをしているが、この動きをすることによってミニオンウェーブのコントロールが可能になる。常に自分たちのミニオンの数が少ないように調整できるため、結果的にミニオンウェーブが押される状態となる。こういった動きはスワップ時に行うものであるため、RPGは7hがスワップしてくると予想したのだろう。しかし今回はその予想は外れた。7hのSivirとAlistarがBotに現れるとすぐさま思考を切り替えた。
RPGはTopとBotのマッチアップが有利であることから、7hがそれを嫌ってスワップしてくると考えたのだろう。さらには7hは集団戦においてADCのMueki選手が大きなダメージ源となっている。彼にしっかりとGoldを稼がせるためにもスワップするのではないかと読んだのだろう。
同じ時間、Jungleのほうでも面白い動きがあった。TopのRumbleとJunglerのRengarが一緒にKrugと赤バフを狩っていたのだ。これは7h側も同様で、TopのShenとJunglerのRek'Saiが赤バフとRaptorを狩っていた。
2人で経験値を共有しながらJungleを狩ると1種類の中立モンスターではLv2になれないのだが、2種類の中立モンスターを狩ればLv2になることができる。またダメージをTopのChampionが受けることによってJunglerの体力を高く保つことができ、JunglerがLv3になった段階でGankを狙うことができるようになる。高い体力を維持できるので1人でJungleを開始するよりもリスクを低く保つことができるし、Gankの圧力を生みだすこともできる。一石二鳥と言えるだろう。しかし中立モンスターから得られるGoldを分配する形になるため、金銭面での若干のロスがあることには注意すべきだ。
Rengarが1度リコールして装備を整えたあと、Botへと向かい草むらで20秒ほど待っていた。これはGankを仕掛けるのを狙った動きではなく、Rek'SaiがBotを狙ってくると読み、それへのカウンターを狙った動きだと思われる。7hが序盤からBotを中心に試合を組み立てていくと考えていたのだろう。
しかし7hはTopとMidへGankしてサモナースペルの有利を作っていった。2つのレーンにおいて有利を作り出したことを考えると、7hが流れを作り出したと言えるだろう。
1つ目の転換点
7hはそのままBotの有利を作りにいく。Rek'SaiがBotにGankをしかけるが、Threshの素晴らしいプレイとRumbleの素早いテレポートによってカウンターをされてしまう。これによりTopで作っていた有利は消え去り、Botに不利がうまれてしまった。
TopとMidで有利を作っていたので、その有利をより押し広げるような動きをしたほうが堅実だっただろう。しかし7hは全てのレーンで有利を作り出すことを選択した。ThreshのスーパープレイがなければKillまでつなげられていた可能性があるだけに、惜しいともいえるが、リスクの高い選択肢であったことは間違いない。サモナースペルの有利を活かせる形ではなかった。
視界と有利の活かし方
Rek'SaiがWardを破壊するところから始まる。
このときVladimirは自陣のRaptorを狩りにいくところであり、BotのCorkiとAlistarは抑え込まれていた。つまりRek'Saiは孤立している状況だった。RPGはすぐさまRengarが反応し、それだけでなくBotにいたThreshも寄っている。Botで有利を作っていたThreshが、その有利を活かして相手のAlistarよりもさきに動いた形だ。そしてOriannaも参加してRek'Saiを倒すことに成功する。
このときRek'SaiがScutlerにかまわずにすぐさま引き返していたら生き残っていた可能性は高い。Vladimirが離れており、なおかつBotも不利な状況においてBot側の視界を無理にコントロールしたのが原因だろう。その小さな隙を見逃さなかったRPGは見事だ。
次は7hのBotの2人がダメージ交換で負けかけたところをShenがULTで手助けしたところから始まっている。
ShenはそのままMidへ寄りGankの機会をうかがっていた。このときBot側のリバーにRPGのWardはなかった。
しばらくしてからShenとRek'SaiはGankを諦め、TopやJungleに戻ることを選択した。そのタイミングでRengarがULTでGankをしかけてしまった。近くにShenがいたこと、さらにはRek'Saiの位置がわかっていないにも関わらず仕掛けてしまった。
そのミスを見逃すような7hではない。すぐさま反応しカウンターを決め、Rengarを倒す。その後Oriannaも判断ミスからか前に出てしまい、連続して7hがKillを奪い取った。
Shenの位置はMidの真ん中にWardを置いていたのでわかっていたはずだ。さらにはRengarのULTによる視界確保でも把握できただろう。計算外だったのはRek'Saiの存在だ。RPGも小さなミスが響いた形だ。
2つ目の転換点、そしてRPGの勝利へ
ドラゴンが復活したタイミングでRPGはBotで孤立しているCorkiにGankをしかけた。CorkiはFlashを使ってすぐさま離脱する。無傷でいなすことはできたが、サモナースペルを使わされてしまった。
そして、その状況で7hのRek'SaiとVladimirとAlistarはドラゴンを狩ろうとしていた。
Rumbleがテレポートを使って合流し、5人でBot側からドラゴンへ向かっている。これによってフラッシュを落としているCorkiは味方と合流することができない。7hの他のメンバーとCorkiの間をRPGが埋めている形になっている。フラッシュがあれば挟み込む陣形にして敵を釣ることもできただろうが、ない状況では大きなリスクを伴う。そしてそのリスクはADCが負うべきものではない。
そして7hはあくまでもドラゴンにこだわり続けた結果、RPGに集団戦をしかけられてしまった。
Corkiが孤立していて人数負けしている状況であり、なおかつRPGの集団戦の強みを全て受けてしまうような陣形になっている。OriannaのULTをVladimirとRek'Sai、Alistarがくらってしまい、そのミスとCorkiが集団戦に参加できていないことが響いてしまった。7hはドラゴンを確保できなかっただけでなくMidの1つ目のタワーも失ってしまった。RengarとOriannaという強力な交戦能力を持つ相手がいる中でMidのタワーを失ってしまったことは非常に痛かった。マップやミニオンウェーブのコントロールを失い、主導権を常にRPGに握られる展開にならざるを得ない。
その後はRPGが小さなミスはありつつも堅実に試合を運んでいき、見事な勝利をおさめた。
Conclusion
RPGと7hは高い実力をもったチームであり、そういった2チームの戦いとなるとやはり今回のようにミスが大きく響く試合展開になってしまう。
どこでリスクをとるのか、堅実に展開させていくのかどうか、そういった戦略的なゲームプランのところから、視界やレーンの状況を正確に判断する能力のような、その瞬間における戦術的なプランを共有するところまで、操作以外のミスが大きく影響していた試合だった。
ハイレベルな戦いにおいては、それらの要素が勝敗に与える影響はことさら大きくなる。今回のような強度の高い試合が繰り返し行われれば、日本のレベルはどんどん高まっていくことだろう。
[写真提供:SANKO]