借りてみたらこうだった!
最安クラスで3年保証のSSD「Kingston SSDNow UV400」を試す
OS起動ディスク向けの高コスパモデル text by 坂本はじめ
2016年8月29日 00:01
今回取り上げるのは、KingstonのウルトラバリューSSD「SSDNow UV400」の480GBモデル。
店頭での販売価格は税込12,300円前後と最安クラスのSSDとして流通しており、コストパフォーマンスの高さも魅力の製品だ。
大手のメモリメーカーとして知られるKingstonが、コストパフォーマンスを追及して作りあげたTLC NANDフラッシュ搭載のエントリー向けSSD「SSDNow UV400」。その実力をチェックする。
KingstonのウルトラバリューSSD「SSDNow UV400」
今回レビューするKingston SSDNow UV400は、2016年6月に発売された同社最新のエントリークラスのSSD。
7mm厚の2.5インチ筐体に、Marvell製の4ch対応SSDコントローラ「88SS1074」と、TLC NANDフラッシュを搭載し、インターフェースにはSATA 6Gbpsを採用。エントリークラスの製品ではあるが、上位製品と同じ3年間の製品保証が付与されている。
KingstonのSSD製品には、スタンダードモデルの「SSDNow」と、高性能モデルの「HyperX」という、2つのブランドが存在している。SSDNow UV400は、スタンダードモデルのSSDNowシリーズ製品であり、ウルトラバリューを略した「UV」を冠する。KingstonのSSD製品の中で、コストパフォーマンスもっとも重視した製品として位置づけられている。
SSDNow UV400シリーズ製品は、容量ごとに120GB/240GB/480GB/960GBの4種類がラインナップされているが、記事を執筆した2016年8月時点では960GBモデルのみ未発売。なお、今回使用しているのは480GBモデルの「SUV400S37/480G」だ。
SSDNow UV400シリーズには、SSD単品のスタンドアローン版の他に、USB接続の外付けケースや3.5インチベイ用アダプタ、Acronis Data Migration Softwareのダウンロードクーポンなどが付属するバンドルキットが用意されているが、現在のところ国内で販売されているのはSSD単品のスタンドアローン版のみとなっている。
なお、スタンドアローン版でも、KingstonのウェブサイトからSSDユーティリティツール「Kingston SSD Manager」をダウンロードして使用できる。SSDのファームウェアアップデートやSSDの残り寿命を確認できるほか、Secure Eraseが実行可能なOSであれば、同機能を実行してSSDをリフレッシュすることもできる。
金属製筐体の7mm厚2.5インチSATA SSD、コントローラはMarvell製
パフォーマンスを確認する前に、まずはハードウェア構成についてチェックしてみよう。
SSDNow UV400シリーズが採用する7mm厚の2.5インチ筐体は金属製で、樹脂製のものより強度と放熱性が期待できる構成だ。熱伝導シートを介して直接筐体と熱的に接続されているのはコントローラとキャッシュ用のメモリのみで、NANDフラッシュは筐体と接していない。
コントローラは先述した通りMarvellの「88SS1074」。キャッシュ用のメモリには、Nanya製のDDR3L-1600対応256MBメモリ「NT5CC256M16CP-DI」を搭載している。
NANDフラッシュメモリは片面8枚ずつの合計16枚構成となっており、Kingstonの「FD32B08UCT1-10」を採用。SUV400S37/480Gのスペックから1枚当たり32GBのTLC NANDフラッシュメモリであることがわかる。
リードは最大で555MB/s、OS起動ディスクに適した特性を持つSSD
Kingston製品でもっともコストパフォーマンスを重視したSSDであるSSDNow UV400の性能がどの程度なのか、ベンチマークテストでチェックしてみよう。
まずは定番ベンチマークテストのCrystalDiskMarkの結果から。ベンチマークテスト実行時のデータサイズを変更した3条件(1GiB/4GiB/32GiB)と、テストデータ「ランダム」と「全て0x00(0fill)」の2条件、合計6つの条件でテストを実行した。
テスト結果を確認すると、テストデータの種類(ランダム、0Fill)の違いによる有意なパフォーマンス差は見られないが、テストサイズによってスコアに大きな変化があることがみてとれる。
テストサイズ1GiBと4GiBで実行したテストでは、スペック値の読み出し550MB/secと書き込み500MB/secに近い結果をSeq Q32T1で記録しているが、テストサイズ32GiBでは書き込み速度が220MB/secと半分以下にまで落ち込んでいる。これはTLC NANDフラッシュを採用しているSSDの多くでみられる特性だ。
TLC NANDフラッシュを採用する最近のSSDでは、従来のSLCやMLC(2bit MLC)より書き込み性能の低いTLCの特性をカバーするため、フラッシュメモリの一部領域をSLCとして高速に動作させ、このSLC領域をキャッシュとすることで高いパフォーマンスを実現している。
だたし、キャッシュ容量は有限であるため、キャッシュ容量を超える連続した書き込みを行うと、TLCの書き込み性能をカバーしきれなくなるというものだ。SSDNow UV400ではSLCキャッシュモードの存在について特に言及していないが、SUV400S37/480Gベンチマーク結果から同様のキャッシュ機能を備えていると思われる。
なお、少なくとも連続書き込みでも4GiB程度までは大きな性能低下もなくベンチマークを実行できていることから、システムドライブなどとしては十分な能力を持っていると言ってよさそうだ。
次に実行したのはATTO Benchmark。ここでも、Total Lengthの値を標準の256MBの他に、4GBと32GBにそれぞれ設定した際のデータを取得した。
転送するデータサイズであるTotal Lengthのサイズが大きくなるほど転送速度が低下しており、特に赤棒で表記されている書き込み速度の落ち込みが大きいことが分かる。特に、Total Length 32GB時には100MB/sec近くまで低下しており、連続してデータを書き込み続けるという処理を苦手としているようだ。
最後はAS SSDの結果を紹介する。テストサイズは1GB、5GB、10GBの3通りでテストを実行した。
結果は先に紹介した2つのベンチマークテストと同様で、テストサイズが大きくなるに従い、書き込み性能が低下している。また、テストサイズ5GBでの速度低下はそこまで深刻なものでは無い点も、他のベンチマークテストの結果と似ている。
ウルトラバリューSSDであるSSDNow UV400はあくまでエントリーモデルであり、特性を見る限り、動画編集や撮影など、書き込み速度が重要となる用途ではより上位の製品を選択するべきと言える。逆に、読み込みが主体となるOSの起動ディスクなどの用途であれば、書き込み性能低下が顕在化するような状況はそう多くないので、高コストパフォーマンスSSDとして活躍してくれるはずだ。
ウルトラバリューSSDの名は伊達ではない性能・価格・保証とバランスの良いエントリーモデル
Kingston UV400 シリーズの480GBモデルは税込12,300円前後で購入できる安さが魅力のSSDだ。
Kingston製SSDの中でもっとも低コストなエントリー向けSSDでありながら、システム用SSDとして十分な性能が期待できるキャッシュ機能を備え、3年間の製品保証も付属している。ただ安いだけではない新世代のエントリー向け製品であり、ウルトラバリューSSDの名は伊達ではないと言ったところだ。
NVMeをサポートするハイエンドSSDの登場と、エントリー向けSSDへのTLC NANDフラッシュの普及に伴い、最近では同じSSDというストレージであっても性能や特性の違いがはっきりしてきた。これからは、単にSSDというくくりではなく、用途に合ったSSD選びが重要になるだろう。
[制作協力:Kingston Technology]
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