借りてみたらこうだった!
ヒートシンク無しでも速いM.2 SSD、Plextorの最新型「M9Pe」の実力をテスト
自作PCにはヒートシンク無しモデルが良い?マザーボード独自の冷却機能も使ってみた text by 坂本はじめ
2018年4月16日 07:01
Plextor最新のNVMe SSD「M9Peシリーズ」。前回のレビューではPCIeカード型のM9Pe(Y)の性能を検証したが、今回はM.2カード版であるM9PeGとM9PeGNのレビューをお届けする。
Plextor M9Peシリーズは、東芝製の64層3D NANDを採用したPlextorブランドの最上位SSDであり、最大で度リード3.2GB/sec、ライト2.1GB/secというスペックを実現する最速クラスのSSD。
今回は、パフォーマンスの検証と合わせて、動作中の温度測定も行ったので、高性能なM.2 SSDをお探しのユーザーには、ぜひ参考にしてもらいたい。
Plextorブランドの新フラッグシップモデルとなるNVMe SSD
今回レビューするPlextor M9Peは、2016年に人気を集めた同社の「M8Pe」シリーズの後継製品にあたるNVMe SSDだ。
PCIeカード型の「M9Pe(Y)」、M.2カード型でヒートシンク搭載の「M9Pe(G)」、M.2カード型でヒートシンク非搭載の「M9Pe(GN)」、以上3タイプの製品をラインナップしている。
容量ラインナップは256GB、512GB、1TBの3種類。各モデルの共通仕様として、NANDフラッシュに東芝製の64層3D TLC NANDフラッシュ、コントローラにMarvell 88SS1093、インターフェイスにPCI Express 3.0 x4を採用。
Plextor M9Peシリーズ製品の主なスペックは以下の通り。なお、M9Pe(Y)のみRGBイルミネーション機能を備えている。
ヒートシンク有り無しの2モデルを検証、512GBモデルの性能を見る
今回テストするのは、ヒートシンクを搭載する「PX-512M9PeG」と、ヒートシンクなしの「PX-512M9PeGN」の2製品。いずれもM.2 2280準拠のM.2カードで、容量は512GB。違いはヒートシンクの有無のみだ。
今回のテストでは、Core i7-8700Kを搭載したIntel Z370環境でSSDのパフォーマンスをチェックする。テスト環境と機材については以下の通り。
リードは実測で3GB/sオーバー、最速クラスのM.2 SSD
それでは、PX-512M9PeGとPX-512M9PeGNのパフォーマンスをCrystalDiskMarkを用いて検証した結果を紹介する。
今回は3パターン(1GiB、8GiB、32GiB)のテストファイルサイズでベンチマークテストを実行した。両製品を区別しやすくするため、CrystalDiskMarkのテーマカラーを変更しており、ヒートシンク搭載モデルのPX-512M9PeGは緑色、ヒートシンクなしモデルのPX-512M9PeGNは青色としている。
Plextor M9Peシリーズの512GBモデルは、公称値でリード3.2GB/sec、ライト2.0GB/secとされている訳だが、テストファイルサイズ1GiB時のベンチマーク結果は、ヒートシンクの有無に関わらずほぼ公称値通りの結果となっている。
テストファイルサイズを大きくするとパフォーマンスの低下がみられ、リードは緩やかにといった感じだが、ライトは影響を受けやすいようだ。
ただし、ヒートシンクの有無によると思われるパフォーマンスの差が、今回のベンチマーク結果に見られないのはポイントだ。
M9Peは耐熱面での性能が向上?SSDの発熱とパフォーマンスへの影響をチェック
続いて、ベンチマーク実行中のSSDの温度についてチェックする。まずはCrystalDiskMark(テストファイルサイズ32GiB)実行前後のサーモグラフィ画像を見てみよう。
温度の測定はカード末端のNANDフラッシュ(画面上側)と、コントローラ(画面下側)の2点で行った。
ヒートシンク搭載モデルのPX-512M9PeGは、ベンチマーク実行前にNANDフラッシュが47.9℃、コントローラが56.9℃だった温度は、テスト完了直後にはそれぞれ57.7℃と66.3℃へとそれぞれ10℃近く上昇していた。
一方、ヒートシンク非搭載のPX-512M9PeGNは、ベンチマーク前の時点でコントローラ温度は80.7℃と高く、ベンチマーク後には94.3℃と表示された。カード末端のNANDフラッシュはテスト前48.2℃、テスト後57.4℃で、こちらはヒートシンク搭載モデルと大差ない温度だ。
続いて、HWiNFO64でモニタリングした、CrystalDiskMark実行中のSSD温度とデータ転送速度を確認しみよう。
ベンチマーク中のピーク温度は、ヒートシンク搭載のPX-512M9PeGが60℃、ヒートシンク非搭載のPX-512M9PeGNは74℃だった。
温度とは関係なくシーケンシャルアクセス時とランダムライトで転送レートがジグザグに大きく変動している。これはキャッシュ容量を超過したアクセスを行った際にみられる挙動だ。
キャッシュ要因の速度のバラツキがみられる一方で、サーモグラフィではコントローラ温度が90℃を超えていたPX-512M9PeGNでもサーマルスロットリングによるものと思われるパフォーマンス低下は見られない。
ヒートシンクなしモデルはマザーボードの独自冷却機能を利用可能
今回実施したベンチマークテストでは差がみられなかったとは言え、動作中の温度はヒートシンク無しモデルの方が明らかに高いのは事実だ。より周辺温度が高くなるPCケース内での運用では、放熱能力の違いがパフォーマンスに影響を及ぼす可能性は十分にあり得る。
では、放熱性に優れたヒートシンク搭載モデルを選ぶべきなのかと言えば、そうとも限らない。
昨今のマザーボードは、M.2 SSDを冷却するため独自の冷却機構を備えている製品が登場しており、その多くは独自のヒートシンクをM.2 SSDに搭載する形をとっているのだが、こうしたマザーボード独自のヒートシンクのほとんどは、PX-512M9PeGのようにヒートシンクを搭載したM.2 SSDでは利用できない。
つまり、ヒートシンクなしモデルであるPX-512M9PeGNの利点は、マザーボードが備えるM.2 SSD冷却用ヒートシンクが利用できる点にあるという訳だ。
実際にマザーボード独自のヒートシンクを使用した場合の一例として、ASUS PRIME Z370-Aが備えるM.2スロットを利用してパフォーマンスを測定してみた。
元々、サーマルスロットリングによる性能低下が発生していないため、ベンチマーク結果や転送レートに大きな違いは見られないが、ベンチマーク実行中の最大温度は50℃であり、標準状態の74℃を大きく下回った。
この温度はヒートシンク搭載モデルであるPX-512M9PeGが記録した60℃より10℃も低いものであり、マザーボードが優れたM.2 SSD冷却用ヒートシンクを備えているのであれば、ヒートシンク非搭載モデルの方が低い動作温度で運用できる可能性があることを示している。
ピーク性能に優れたNVMe SSD、ヒートシンクの有無はマザーボードに合わせて選ぼう
Plextor M9PeシリーズのM.2版は、ピーク性能に優れたSSDを求めるユーザー向けの製品だ。システムディスクやゲームインストール用のストレージとして優れたパフォーマンスが期待できる。
ヒートシンク搭載モデルM9Pe(G)と、ヒートシンク非搭載モデルM9Pe(GN)のどちらがより良い選択となるのかは、SSDと組み合わせるマザーボード次第で決まることになる。
独自のM.2 SSD冷却用ヒートシンクを持たないマザーボードであればM9Pe(G)、独自のM.2 SSD冷却用ヒートシンクを備えているならM9Pe(GN)を選ぶと良いだろう。
[制作協力:Plextor]
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