ニュース
ラジエーター隔離デザインの新型ケースが年内にも発売!「DeepCool EXPO 2025」が開催
2025年7月23日 00:05
7月19日に新製品発表イベント「DeepCool EXPO 2025」がLIFORK秋葉原IIで開催された。開催協力は代理店のアユートとアスク。CPUクーラーやPCケースを中心とした新製品紹介に加え、北京のDeepCool本社からプロダクト担当者を招いての開発秘話「プロダクトマネージャーが明かす開発の舞台裏」も披露された。
会場にはCOMPUTEX 2025で発表され18日に発売されたばかりの空冷CPUクーラー「ASSASSIN VC ELITE WH」や、Micro ATXケース「CH160 PLUS」/「CH170 PLUS」、25日((金)発売予定の水冷内蔵ATXケース「GENOME III」といった新製品を展示。また、発売前の注目モデルとして、水冷CPUクーラーの360mmラジエーターをケース上部に隔離したミドルタワーケース「CL6600」もデモ機が用意されていた。
ベイパーチャンバー採用の空冷クーラーや“HyperSplit”構造のケースなど、新製品が多数紹介・展示
新製品紹介では、発売したばかりのASSASSIN VC ELITE WHやCH160/170を中心に、COMPUTEX 2025で発表された製品を紹介。
空冷CPUクーラーに関しては、ASSASSINシリーズで採用しているベイパーチャンバーについて紹介。250Wを超えるTDPのCPUを効率的に冷却することを念頭に設定したという。ASSASSINシリーズに関しては、空冷を好んで使うユーザーに向けた現行の上位モデルとしてASSASSIN VC ELITE WHと、液晶ディスプレイ搭載の「ASSASSIN IV VC VISION」を挙げた。このうちASSASSIN VC ELITEについては、次の開発秘話セッションにおいて旧モデルからの改善点が説明された。
発売前の空冷CPUクーラーとしては、2025年第4四半期発売予定の「AK G2」シリーズを紹介。電源投入時に逆回転してクリーニングを行なう「0-RPMスタートアップ」機能や8秒以内に動作する「ACT」機能、温度モニタリングを行なう4分割ディスプレイの搭載、LGA1851およびAM5ソケットへの対応、専用ユーティリティ「DeepCreative」による制御が行なえる点が特徴となっている。
水冷クーラーとしては、液晶ディスプレイ搭載のフラッグシップライン「SPARTACUS」と現行世代のゲーミング向けモデル「LQ360 ULTRA」を紹介した。このうち前者のSPARTACUSについては480×480ドットの3.1型液晶、本機からの新型ポンプ/新設計ファンやアルミ合金ポンプヘッド、最大420mmの大型ラジエーターの搭載を予告している。こちらも第4四半期までに発売予定。
このほかミドルレンジ「LM」シリーズの新製品として、8月発売予定の新製品を告知。SPARTACUSと同じ新世代のポンプと2.4型液晶ディスプレイ、12cm ARGBファンを装備している。
PCケースの現行製品としては、CH160/170 PLUSと「CH260 Digital」「CH270 Digital」を紹介。いずれもMicro ATXまで対応する。このうちCH160 PLUSについては「CH160」と同様、上面に運搬用のハンドルを備えており、会場でも関連アクセサリとしてキャリングバッグの「Casefree」を展示していた。
25日発売予定の水冷搭載ケース「GENOME III」は、420mmラジエーターの簡易水冷機構やフロントパネルから見られるリザーバー、5.5型液晶ディスプレイなどを搭載したフラッグシップモデルという位置付け。日本では2016年頃に販売していた「GENOME」および「GENOME II」から久々に登場した後継モデルとなる。
年内発売予定のモデルとしては、簡易水冷CPUクーラーのラジエーター部分を完全に隔離した「CL6600」を紹介。多くの簡易水冷CPUクーラーはケース内の空気を上面から排気するエアフローだが、構成によってはこのときGPUから発生した熱風を多少なりとも取り込んでいるため、ラジエーターの温度が高くなりやすい構造だった。CL6600では、ラジエーターとファン部分だけをケース外に出し、また電源もケース下部に仕切ることでこの問題の解決を図っている。
「HyperSplit」と名付けられたこの構造がもたらすCPUの冷却効果について、来日したプロダクトディレクターのOscar Li氏によれば、ケース内にラジエーターがあるときと比べておよそ4℃ほど低下させることに成功したという。
冷却ファンの新製品では、第3四半期発売のARGB LED内蔵ファン「FL」シリーズを紹介していた。新製品の「FL14」は長寿命ベアリングを採用するほか外観デザインに変更を加えている。
ベイパーチャンバーの搭載の要は“熱分布の偏りの解消”、建築デザインが着想元のCL6600
ステージイベント「プロダクトマネージャーが明かす開発の舞台裏」では、Oscar氏とプロダクトマネージャーのLevi Li氏が登壇。Oscar氏は最新モデルのCPUクーラーで採用しているベイパーチャンバーと制御ユーティリティのDeepCreativeについて解説し、Levi氏はCH160およびCH260とCL6600のデザインコンセプトや開発の経緯について説明した。
DeepCoolがCPUクーラーにベイパーチャンバーを採用した経緯は、現行世代のCPUにおける消費電力の増大とヒートスプレッダ表面の熱分布に偏りが見られたことだという。ここでは従来の銅ベースは横方向に熱を伝えることが苦手で、ヒートパイプの位置が合っていないと効果的な冷却が難しいことを問題点として挙げている。またユーザー側の調整負担も無視できないと話した。
ベイパーチャンバーのメリットについては、接触面全体で熱を素早く均一に拡散できることと、「面から点」の接触により幅広いCPUに対応しやすい点にあると説明。さらにベイパーチャンバーを採用するにあたって行なった施策として、「高温に強く膨張しにくい独自素材の開発」「上記の流れをスムーズにする構造設計」「密閉性の高い溶接技術の採用」を挙げた。
ベイパーチャンバーの採用に関連して、ヒートパイプの配置についても触れている。空冷CPUクーラーの「AK」シリーズで採用している新冷却構造「CTT 2.0(Core Touch Technology 2.0)」では、ヒートパイプの形状を変更してパイプ同士の接触密度を26%増やし、熱伝導効率を12%向上させた。最新世代のCPUではヒートスプレッダのごく一部が高温になる傾向があることから、接触密度と熱伝導効率の両方を上げることで、冷却性能の強化を図ったとしている。
DeepCreativeについては、温度と負荷のモニタリングのほか、より詳細に冷却機構を制御できる点をアピール。ここではBIOSによるファン制御と比較し、PCの用途に応じた効率的なファンコントロールや、CPU温度/ノイズ/消費電力をターゲットとした複合的な制御基準、UEFIに入る必要のない利便性などを優位点として紹介している。
動作モードについては手動で設定可能な「スリープ」「オフィス」「ゲーム」「OC」の4種類を用意したほか、性能優先の「AI-S」と静音優先の「AI-D」を用意。モードのみ選択しておけば、ソフトウェアの側で最適な設定を見つけてくれるという。
DeepCreativeはWindows 10/11向けで無料配布中。8月には新バージョンの公開を予定している。
DeepCool製ケースのプロダクトマネージャーを務めるLevi Li氏はCH160が生まれた背景について「Mini ITXケース市場にある製品のバランスの悪さ」があると説明する。形状や価格に多様性はあるものの、性能と冷却の両立ができている製品は少なく、特にサイズを優先するあまり冷却性能が不十分だったり、対応パーツの制限が厳しいケースが気になったという。
そこでLevi氏は、新しい小型ケースを開発するにあたり「高性能タワー型空冷が搭載できる」「高性能GPUが搭載できる」「効率的なエアフロー設計を行なう」といった方向性に沿って開発に着手。長さ305mmまでのGPUがライザーケーブルを使わずマザーボードに直挿しできることや、「ASSASSIN」シリーズなどDeepCoolのフラッグシップ級空冷クーラーが搭載できることにこだわった。
エアフローは前面/底面吸気に上面排気とし、SFX電源をマザーボードと横並びに配置する構造とした。これによって、底面から上面に向けてCPUクーラーを経由する形でのエアフローを確保している。
CH160に関してはこのほか、ハンドル試作時の運搬試験を行なうにあたって、様々な素材を試したなどのエピソードを紹介した。
水冷CPUクーラーのラジエーターを隔離したHyperSplitは、CL6600が持っている大きな特徴の1つだが、Levi氏によれば、こうした構造の着想は建築デザインだという。建築では独立した空間が通路によって接続され、全体として機能する空間が成立している。CL6600では、このコンセプトをPCに置き換え、熱源ごとに内部構造を分け、それぞれのチャンバーを「廊橋」によって接続することで電力/信号/冷却のやりとりを行なうという発想を出発点に開発を始めたという。
開発には3年の年月を要したといい、様々な試行錯誤の結果、ラジエーターを上部に隔離し、電源をケース下部に収容する3モジュール構造となった。これによってGPUと電源を2つの空間に分け、CPUもほかの熱源からの干渉を受けることなく独立して冷却できるようになっている。
Levi氏はCL6600を「DeepCool(製ケース)の構造設計における考え方の"ジャンプ"といえる存在であり、単なる新製品ではない」と位置付けている。今後は本機の構造をベースに、様々な製品ファミリーへの展開も計画しているという。