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ファン4基標準装備に目を引く木製プレートで12,000円はお買い得!?MONTECH「XR WOOD」

【新装第8回/通算第86回】特徴的なルックスと優れた実用性の本格派 text by 竹内 亮介

 今回取り上げるMONTECHの「XR WOOD」は、ATX対応のミドルタワーケースだ。前面に3基、背面に1基と合計4基もの12cm角ファンを標準で備えながら実売価格が12,000円前後と、買い得感が非常に高いのが魅力だ。

 奥行きや高さが50cm以内の比較的コンパクトなATXケースだが、天板には36cmクラスのラジエーターを装着できたり、長さ42cmまでのビデオカードを組み込めたりと、拡張性にも優れる。今回はこの買い得感の高いPCケースを検証し、注目部分を主に写真で紹介していこう。

デザインにもこだわり、内部は広く組み込みは容易

 XR WOODでは、前面の上部と下部にウォールナット製のプレートを付けている。こうした木製のプレートのおかげで、全体的に落ち着きのあるデザインになっており、高級感も醸し出している。最近はこうした木材をデザインのアクセントに使うPCケースが昨今いくつか登場しているが、XR WOODもこれらの製品の中では比較的価格が安いことも特徴だ。

左側板は、組み込んだパーツを眺めて楽しめる強化ガラス製
主なスペック
フォームファクターATX
前面USBType-C
拡張ベイ3.5インチシャドー×1、3.5/2.5インチシャドー×1、2.5インチシャドー×1
標準搭載ファン12cm角×3(前面)、12cm角×1(背面)
搭載可能ファン14cm角×2または12cm角×3(前面)、
14/12cm角×1(背面)、
14cm角×2または12cm角×3(天板)、1
2cm角×2(右側面)、
12cm角×3(電源カバー上)
搭載可能
ビデオカード長
420mm
搭載可能
CPUクーラー高
175mm
搭載可能
ラジエーター長
36cmクラス(天板)
本体サイズ(W×D×H)230×475×456mm
カラーブラック、ホワイト
木製プレートは前面の上下にはめ込まれている
天板側の木製プレートにはメーカー名の「MONTECH」が彫り込まれていた
右側面沿いにフロントポートを装備。この価格帯でType-Cコネクターを装備するのはめずらしい

 標準で4基の12cm角ファンを備えるのは前述したとおりだが、そのすべてがアドレサブルLEDに対応しており、美しいイルミネーションを楽しめる。それぞれのファンはデイジーチェーンですでに接続済みであり、マザーボードには、ファンケーブルとLEDケーブルを1本ずつ接続すればよい。また右側面や電源ユニットカバーなど、さまざまな場所にファンを増設するためのファンマウンターを用意している。

前面に3基、背面に1基のアドレサブルLED対応12cm角ファンを備える
標準搭載のケースファンはデイジーチェーンで接続済みなので、この2本をマザーボードに接続すればよい
右側面のファンマウンター付近は、外気を取り込むためのメッシュ構造になっている
天板にはマグネット式の防塵フィルターを装備する
写真だけでは分かりにくいが、メッシュ構造の電源ユニットカバーにはファンを固定するためのネジ穴がある
3.5インチHDD用のシャドーベイユニットを前面に近い底部に装備
シャドーベイユニットは着脱可能な構造だ

 実際に組み込んでみると、メインパーツを組み込むエリアはかなり広く、大型のパーツを組み込んでも窮屈になることはなさそうだった。ただ、今回の検証用に組み込んだサイズの「MUGEN6 BLACK EDITION」のように大型のヒートシンクを備えるCPUクーラーだと、EPS12Vコネクターを後から挿すのは難しい。フルプラグインタイプの電源ケーブルを先に挿しておき、後から電源ユニット側にコネクターを挿すようにすると作業は格段に楽になる。

実際にPCパーツを組み込んだところ。ビデオカードなどの拡張カード用を含めて内部のスペースは非常に広い。ハイエンドパーツを組み込める余裕は十分あり、作業かなりしやすいだろう
強化ガラス製の左側板はツールレスで、簡単に着脱できる
マザーボード上部のEPS12Vコネクター付近。天板との隙間は約2.5cmで、ここだけはスペース的にかなり狭い。後からケーブルを挿すのは至難の業だ
マザーボードベース裏面の様子だ。中央部分にケーブルをまとめて整理するような構造になっている
中央上部と中段にある面ファスナーでしっかり固定できる
前面ファンや背面ファンにはLEDが組み込まれており、メッシュ構造と防塵フィルターを装備した前面パネル越しに淡く光が広がる

 またLian Liの簡易水冷型CPUクーラー「GALAHAD II TRINITY」を天板に固定したところ、問題なく取り付けは可能だった。ラジエーター部分の長さが約40cmとかなり大きめなモデルなので、前面部分と背面部分の余裕はそれほど大きくない。とはいえ斜めにしないと内部に入らない、天板のネジ穴とラジエーターのネジ穴が合わないので正しくネジ止めできないなどのトラブルはなかった。36cmクラスの簡易水冷型CPUクーラーの取り付けで問題が発生することは、おそらくないだろう。

3基の前面ファンのおかげで各パーツもしっかり冷却

 最後に実際にパーツを組み込んだときの検証結果を紹介しよう。組み込んだパーツの構成は以下の表のとおりで、おおむねミドルローのゲーミングPCクラスだ。XR WOODの実売価格を考えると、ハイエンドクラスの高性能パーツよりは、こうしたパーツ構成で利用するほうが自然だろう。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 9700X(8コア16スレッド)
マザーボードAsrock B850 Pro RS WiFi(ATX、AMD B850)
メモリCFD販売 W5U5200CS-16G(PC5-41600 DDR5 SD-DIMM 16GB×2)
ビデオカードZOTAC GAMING
GeForce RTX 4060 Ti 8GB Twin Edge
SSDWestern Digital WD_Black SN850X NVMe SSD
WDS200T2X0E[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB]
CPUクーラーサイズ MUGEN6 BLACK EDITION
(サイドフロー、12cm角)
電源ユニットCorsair RM850e 2025(850W、80PLUS GOLD)

 温度計測は「OCCT 14.0.6」を使用し、室温は23.1℃。グラフ中の 「アイドル時」は起動後10分間の平均的な温度、「動画再生時」は動画配信サイトで1時間の動画を再生中の平均的な温度で、主に軽作業時の温度変化を見るためのもの。

 「3DMark時」は3DMarkに含まれる「Time Spy Stress Test」を実行中の最大温度、「モンスターハンター時」は「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」を1時間ループ実行したときの最大温度である。どちらも長時間のゲームプレイ時の状況を見るためのものだ。「Cinebench時」はCinebench R23実行時の最大温度で、CPU負荷が高いときにどうなるかを見ている。

各部の温度

 CPU温度は、アッパーミドルレンジのCPUを使ったこともあり、連続的な負荷がかかるCinebench時でも空冷で63℃とかなり低い。3DMarkやモンスターハンター時は最大温度こそ70℃を超えるものの、実行中は55~60℃を推移している。いずれにしても安心できる温度と言ってよいだろう。

 GPUの最大温度についても、3DMark時で72℃、モンスターハンター時で66℃とこちらもかなり低い。それほど大きなGPUクーラーを搭載していないビデオカードだが、前面に装備する3基の12cm角ファンによりたっぷりと外気を取り込めることが、ビデオカードの冷却によい影響を与えているものと思われる。

1万円台前半のケースとしては秀逸の完成度

 内部は広くて扱いやすく、大型のパーツを組み込んでもトラブルはほとんど発生しない。また標準装備のケースファンが多いため冷却性能は高く、今回のようなローミドルクラスの構成でなくてもきちんと冷やせそうな印象はある。

 12,000円前後という実売価格とは思えない実力派。初心者から上級者まで幅広くオススメできるPCケースと言ってよいだろう。