最新自作計画

42cmクラス簡易水冷「iCUE LINK TITAN 420 RX RGB」も使えるエアフロー抜群の冷却モンスターケース、CORSAIR「FRAME 5000D RS」を試す

【新装第10回/通算第88回】余裕のサイズ感と大型ファン標準装備のハイエンドケース text by 竹内 亮介

 CORSAIRが1月に発売した「FRAME 4000D」シリーズは、通気性を高めた外装と多数のケースファンでエアフローを強化した冷却重視型のPCケースだった。今回紹介するCORSAIRの「FRAME 5000D RS」シリーズでは、そうした「FRAME」シリーズの特徴をそのまま引き継ぎながらも筐体を大型化し、大型パーツへの対応をより強化した新モデルだ。

 各所にメッシュパネルを搭載して標準で14cmファンを4基搭載するなど高い冷却性能を誇る本機は、高性能なパーツを集めて強力なゲーミングPCを作りたいというユーザーにとって、見逃せない製品に仕上げられている。今回は、CORSAIRが新たにリリースした最大クラスの簡易水冷クーラーを用いて、ハイエンドCPU&GPUをブン回せる作例を作ってみた。

通気性と冷却性能にこだわった大型筐体

 FRAME 5000D RSの前面は、立体感のあるY字状の通気穴を無数に配したメッシュ状のパネルで、通気性の確保とデザインのアクセントになっている。また、天板だけでなく、一般的なPCケースではフラットなスチールパネルになっていることが多い電源ユニットカバーや右側面にも通気性のよいメッシュ構造を採用。エアフローにこだわっていることがよく分かる設計だ。

FRAME 5000D RS ARGB。大型のATXタワーケースだ
【主なスペック】
フォームファクターExtendedATX
前面USBType-C
標準搭載ファン14cm角 3基(前面)、14cm角 1基(背面)
搭載可能ファン20cm角 2基または14/12cm角 3基(前面)、
14/12cm角 1基(背面)、14/12cm角 3基(天板)、
14/12cm角 3基(右側面)、12cm角 2基(電源カバー上)、
14/12cm角 2基(底面)
最大搭載可能
ビデオカード長
450mm
最大搭載可能
CPUクーラー高
175mm
最大搭載可能
ラジエーター長
42cmクラス(天板)
ベイ3.5インチシャドー 2基
または2.5インチシャドー 6基
本体サイズ(W×D×H)250×556×542mm
重量約12.7kg
カラーブラック、ホワイト

 サイズの違いをスペックで比較してみると、FRAME 4000Dの奥行きは49cm、高さは48.6cmとどちらも50cmを切っており、やや大きめではあるが“ミドルタワーケース”の範疇に入るサイズ感だ。対してこのFRAME 5000D RSは、奥行きが55.6cm、高さが54.2cmと、かなりの大型だ。サイズ感的には“フルタワーケース”と言ってよいだろう。

 ラインナップは、アドレサブルLED搭載ファンを装備した「FRAME 5000D RS ARGB」と、通常ファンを装備する「FRAME 5000D RS」の2モデルとなる。今回は前者を試用している。

Y字状の通気穴が多数並んだ前面パネルは、FRAMEシリーズならではのデザインだ
天板はメッシュ構造で、こちらも通気性に優れる
電源ユニットカバーは内部を含めてメッシュ構造になっている

 大型の筐体を採用することによるメリットは、大型のパーツを利用しやすくなることだ。FRAME 5000D RSでは長さ45cmまでのビデオカードや高さ17.5cmのCPUクーラーに対応しており、大型の高性能パーツを問題なく利用できる。簡易水冷型CPUクーラーへの対応にいたっては、天板になんと42cmクラスの超大型モデル、そして前面や右側面にも36cmクラスラジエーターを取り付けられる。

 ケースファンの対応も充実している。前面には最大で20cm角ファンを2基搭載できるほか、前面、背面、天板、右側面(右側面側内部フレームの交換で対応)、さらには底面などさまざまな場所に14cmファンを搭載できる構造を採用する。組み込むパーツに合わせて冷却性能を拡張できるカスタマイズ性も、FRAME 5000D RSの魅力の一つだ。

前面に3基、背面に1基と標準で4基もの14cmファンを備える
右側面の一部にもメッシュ構造を採用。右側面前方付近の内部パネルをファンマウンターに交換することで、12cmファンを最大3基追加することも可能
メッシュ構造の天板は、背面に引っ張ることで着脱できる構造だ。ファンマウンター部分は着脱できない

 また前面と天板には、組み込むファンのサイズに合わせて場所を移動できるレール式のファンマウンター「InfiniRail マウントシステム」を採用する。これは、小型ファン用のフレームが大型ファンによるエアフローを阻害しないようにするための仕組みだ。通気性の高い外装と合わせ、PCケース全体の冷却性能を極限まで高める設計となっている。

ファンマウンターは、レールを移動することで12cmおよび14/16cmファンに対応できる「InfiniRail」に対応

 こうした冷却性能へのこだわりとともに、最新パーツを使いやすくするための工夫も凝らされている。マザーボードベースには、裏面配線対応マザーボードを利用するためのホールが設けられている。大型で重量のあるビデオカードをしっかり支え、歪みを生じないようにするビデオカードホルダーは、ビデオカードの着脱を行う左側面から高さを調整できるようになっており、非常に使いやすい。

 また特徴的なデザインの前面パネルと防塵フィルターは、簡単に着脱できる。吸気口として使うことが多いためホコリがたまりやすい前面パネルや防塵フィルターを簡単に清掃できるので、メンテナンスもしやすい。

マザーボードベースは、裏面配線対応マザーボードに対応
前面パネルやその奥にある防塵フィルターは、簡単に着脱できる
マザーボードベースの裏側にはシャドーベイが取り付けられている
電源ユニットカバーは、メッシュをパネルでふさいだり、そのパネルにロゴをあしらったりといったカスタムも可能
ビデオカードホルダー。頭のプラスネジを緩めると高さが調整できる

大型ビデオカードや水冷クーラーも問題なく組み込みOK

 さて、ここからは実際に各パーツを組み込んでいこう。FRAME 5000D RSでは42cmクラスのラジエーターに対応するため、今回はCORSAIRの最新簡易水冷型CPUクーラー「iCUE LINK TITAN 420 RX RGB」を組み込んでみた。一般的な簡易水冷クーラーで用いられる長さ24~36cmのラジエーターを超える長さ42cmの超大型ラジエーターに、同じく一般的な12cmファンより一回り大きい14cmファンを3基組み合わせた高性能な簡易水冷型CPUクーラーだ。

CORSAIRのiCUE LINK TITAN 420 RX RGB。42cmクラスの大型ラジエーターと3基の14cmファンを備える

 水冷ヘッドには、三相モーターによる低ノイズ・高流量の高性能ポンプと銅製冷却プレートを備えた「FlowDrive」冷却エンジンを搭載し、CPUの発熱を効率的に吸収できる仕組みを備える。実際の冷却性能は後述するが、一般的な36cmラジエーターを使用した簡易水冷より一回り大型化されていることもあり、その冷却性能は非常に高いものがある。

 また、水冷ヘッドと付属のファンは、ファンやポンプの回転数、LEDの発光状況などを数珠つなぎで接続するだけでまとめて制御できる「iCUE LINK」に対応しており、組み込みは非常に楽に行えた。

24/36cmクラスの水冷クーラーで使用される12cmファン(写真左端のもの)よりも一回り大きい14cmファンを3基搭載
ファン側面の半透明パーツは着脱可能で、「ロゴあり」、「ロゴなし」が1つずつ装着されている。ロゴありパーツのほうはLED発光によりCORSAIRロゴが浮かび上がるデザイン
パッケージにはAMD用およびIntel用のリテンションキットが付属(写真左)。対応ソケットは、LGA1851/1700、AM5/AM4
水冷クーラーの接続と制御に必要なケーブル本数を抑える「iCUE LINK」に対応。iCUE LINKシステムハブを中心に、iCUE LINKケーブルで水冷ヘッドとファンをつなぎ、マザーボードとの信号のやり取りのためにUSBおよびCPUファンのヘッダーピンをそれぞれケーブルで接続。iCUE LINKの各製品への電源供給は、PCIe補助電源を接続したシステムハブを介して行う

 このほかの組み込んだパーツは、下の表で紹介しているとおりだ。CPUクーラーが強力なモデルなので、CPUはAMDのAM5対応CPUの中でもっとも発熱が大きい「Ryzen 9 9950X」を選択。それに見合うビデオカードとして、NVIDIA GeForce RTX 5080を搭載した「ZOTAC GAMING GeForce RTX 5080 SOLID」を選んだ。一般的なPCゲームユーザー向けのPCとしては、ハイエンド構成と言えるCPU/GPUの組み合わせだ。

【今回の構成】
CPUAMD Ryzen 9 9950X
(16コア32スレッド)
マザーボードASRock B850 Pro RS WiFi(AMD B850)
メモリCORSAIR Vengeance RGB DDR5
CMH32GX5M2B6000Z30K(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 5080 SOLID
(NVIDIA GeForce RTX 5080)
SSDCORSAIR MP600 ELITE CSSD-F1000GBMP600EHS
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
電源ユニットCORSAIR RM850x Shift
(850W、80PLUS GOLD)
CPUクーラーCORSAIR iCUE LINK TITAN 420 RX RGB
(簡易水冷型、42cmクラス)
AMD Ryzen 9 9950X
ASRock B850 Pro RS WiFi
ZOTAC GAMING GeForce RTX 5080 SOLID
CORSAIR MP600 ELITE(1TBモデル)
CORSAIR Vengeance RGB DDR5(16GB×2)
CORSAIR RM850x Shift

 実際に各パーツを組み込んだ状況は、こちらの写真のとおりだ。FRAME 5000D RSは奥行きや高さが50cm以上ある大型ケースなので、長さが約33cmもあるビデオカードを組み込んでも、かなり余裕がある。また簡易水冷型CPUクーラーのファンはマザーボード上部を覆い隠すことはなく、ケーブルを挿したり、整理したりといった作業で苦労する場面はない。

組み込み後のケース内部を左側面から見たところ。大型ケースなので内部にはかなり余裕がある

 また今回は42cmラジエーターを固定するために、天板のレールを移動したが、PCケースの前面と背面にあるレールの固定ネジを緩めてレールの間隔を空けるだけであり、非常に簡単な作業だった。ただ、EPS12V電源ケーブルをマザーボードベース裏面に引き回すためのスペースがかなり狭く、今回の組み合わせではマザーボードを取り外さないとかなり厳しい状態。EPS12Vケーブルはマザーボードと簡易水冷型CPUクーラーを固定する前に通しておいたほうが作業ははるかにしやすかった。

簡易水冷型CPUクーラーは天板に組み込んだ。あまり余裕はないが、それでも窮屈な印象は受けない。取り付け作業は天板上部側から楽々行える
マザーボード上部のコネクターが、簡易水冷型CPUクーラーのファンで隠れてしまうことはないが、コネクターにアクセスするには少々手狭だ。また、組み込み後にケーブルを背面側へ通すのはかなり難しい
前面に3基、背面に1基、天板に3基で合計7基の14cmファンはなかなか見応えがある
ビデオカードホルダーで支えることで、重さのあるビデオカードをまっすぐな状態に保てる
電源ユニットをドライバーなしで仮止めできる2本の手回しネジはひそかに便利

 マザーボードベース裏面の様子はこちら。標準のケースファンは数珠つなぎのケーブル配線と整理が終わっている。また簡易水冷型CPUクーラーはiCUE LINK対応なので、こちらの接続もかなり楽々。簡易水冷型CPUクーラー搭載で7基ものファンを利用する作例ながら、ケーブル整理作業の負担は驚くほど小さかった。

裏面配線の様子はこちら。マザーボードベース中央の面ファスナーを使ってケーブルをまとめると、キレイに整理できる

 マザーボードベースには要所に面ファスナーを装備しており、電源ケーブルなども合わせてスムーズにまとめられる。また、フレームやマザーボードベースなどには無数の穴が開いており、これにケーブルタイを通すことでケーブル整理用の経路を新しく作ることも可能だ。特に後者はほかのPCケースではあまり見かけない設計で、なかなか便利だと感じた。

電源ユニットは、各種ケーブルを側面から引き出す「RM850x Shift」なので、組み込みやメンテナンス時に電源ユニットを引き出さなくても作業できる
前面に搭載している3基の14cmファンは、ファンケーブルとLEDケーブルが接続済みの状態だった
マザーボードベースを裏側から見たところ(写真左)。多数の穴が開けられており、面ファスナーやケーブルタイでケーブルをまとめるのにも使える。iCUE LINKシステムハブにはマグネットが仕込まれており、裏面側の配線しやすく目立ちにくい場所に貼り付けておける(写真右)
前面パネル下部のポート類。この位置のポートは、PCを机の上に設置したときに使いやすい

高いパフォーマンスと冷却性能、静音性を兼ね備える優れたケース

 このように強力なパーツをムリなく組み込めるFRAME 5000D RSだが、実際の性能はどうだろうか。PCMark 10 Extendedや3DMarkといった基本性能を計測できるおなじみのベンチマークテストの結果をまとめたのが下のグラフだが、ScoreはハイエンドゲーミングPCらしく非常に高い。

PCMark 10 Extendedの計測結果
3DMarkの計測結果

 さらに「サイバーパンク2077」や「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」を、解像度は4K(3,840×2,160ドット)、グラフィックス設定は最高に近い状態でベンチマークモードを実行してみた。いずれの設定でも平均フレームレートは60fpsを超えており、体感的にも快適にプレイできる。さすがにこのクラスの構成なら、負荷が高いと定評のあるPCゲームも問題なくプレイできることが分かる。

サイバーパンク2077の計測結果
モンスターハンターワイルズ ベンチマークの計測結果

 こうした高いパフォーマンスを安定して引き出すためには、冷却性能も重要だ。下のグラフは、起動後10分間の平均的な温度を「アイドル時」、3DMarkのTime Spy Stress Test中の平均的な温度を「3DMark時」、モンスターハンターワイルズ ベンチマークを30分ループ実行したときの最高温度を「モンハンベンチ時」、Cinebench R23実行時の最高温度を「Cinebench時」として計測したものをグラフ化したものだ。温度計測ではOCCT 14.2.3を使用した。

各部の温度

 検証で使用したCPUは一般ユーザー向けでは最強クラスのRyzen 9 9950Xながら、42cmクラスの大型ラジエーターを備えるiCUE LINK TITAN 420 RX RGBを組み込んだこともあり、CPUに高い負荷が連続的にかかるCinebench中でも81℃とかなり低い。動作クロックは全コア5GHz前後で推移しており、テスト中に動作クロックが低下している様子はなかった。

 ゲームベンチ中のGPU温度もかなり低い。通気性のよい前面パネルと3基の14cmファンにより、前面から外気をたっぷりと取り込んでビデオカードを冷却できることが要因として挙げられる。

 また動作音もかなり小さかった。前面ファンと背面ファンをマザーボードのケースファンコネクターに接続した場合、アイドル時の回転数は500~600rpm前後。また天板のiCUE LINK TITAN 420 RX RGBのファンも、制御ユーティリティの「CORSAIR iCUE」上で回転数を見ると400rpm前後であり、少なくとも30~40cm離れた場所にいるなら無音に近い状態だ。

 検証のために各種ベンチマークテストを実行しているときの動作音はそれなりに大きくなるものの、そうした状況でも各種ファンの回転数は1,000rpm前後にとどまっており、うるさいと感じるほどではない。

ハイエンドパーツをパワフルに活用する環境に最適だが長く使える“確実な性能”は初心者にもオススメ

 以上の検証結果から考えると、高性能パーツをしっかりと冷却し、安定して利用できる優れたPCケースと評価してよいだろう。リッチな3Dグラフィックスを多用する最新PCゲームをバリバリプレイしたいPCゲーマーはもちろん、3Dグラフィックスのレンダリング、あるいはAIに関する業務に携わるユーザーにとっても魅力的なケースだろう。

 また、ちょっとサイズは大きめだがそれだけに組み込みやすさや汎用性は抜群であることを考えると、個人的には、ハイエンドケースではあるが初心者にも使ってみてほしい。どんなパーツでも余裕を持って組み込めるし、作業性を高めるギミックも多数搭載している。長く付き合える「最初のPCケース」とするのにオススメだ。