最新自作計画

木を活かしたデザインだけじゃない!最新&便利ギミックを完備したLian Li「LANCOOL 217」

【新装第11回/通算第89回】木目調と使いやすさが融合したPCケース text by 竹内 亮介

 最近は、デザインのアクセントとして「木」を使うPCケースが増えている。金属や強化ガラスを使うミドルタワータイプのPCケースと比べると、デザインに木目の自然さや素材の柔らかさ、優しさをプラスできることもあり、ユーザーからも注目を集めている。

 ここで紹介するLian Li Industrialの「LANCOOL 217」でも、木を効果的に使うことで高級感を醸し出している。しかしLANCOOL 217のすごさはこうしたデザイン面だけではない。自作PCの最新環境にマッチした組み込み用ギミックをほぼ網羅しており、組み込みやすくメンテナンスもしやすい、実に使いやすいPCケースに仕上がっている。

高級感のあるデザインと先進の構造を融合

 LANCOOL 217は、Lian Liの冷却重視型PCケース「LANCOOL」シリーズの最新モデルだ。冒頭でも述べたとおりフロントパネルの周囲と天板に木を組み合わせた特徴的なデザインを採用する。ブラックモデルには深みのあるウォールナット材、ホワイトモデルには明るいバーチ材と、全体的なイメージになじみやすい素材を使用していることもあり、どちらも高級感がある。

今回試用したホワイトモデルでは、本体色とマッチした明るい色合いのバーチ材を組み合わせている。実売価格は18,000円前後
【主なスペック】
フォームファクタExtendedATX
前面USBType-C
標準搭載ファン17cm角 2基(前面)、14cm角 1基(背面)、
12cm角 2基(電源ユニットカバー)
搭載可能ファン17cm角 2基または14/12cm角 3基(前面)、
14/12cm角 1基(背面)、14cm角 2基または12cm角 3基(天板)、
12cm角 3基(電源ユニットカバー)、12cm角 2基(底面)
搭載可能
ビデオカードの長さ
380mm
搭載可能
CPUクーラーの高さ
180mm
搭載可能
ラジエーターの長さ
36cmクラス(天板)
ベイ3.5インチシャドー 2基、3.5/2.5インチシャドー 2基、
2.5インチシャドー 5基
本体サイズ(W×D×H)238×482×503mm
重量9.25kg
カラーブラック、ホワイト

 今回借用したモデルはホワイトモデルで、内部のファンやケーブルもホワイトで統一されており、塗装もしっとりとしていて非常に美しい。そうした「美しい白」にアクセントとして組み合わされたバーチ材の効果は高く、たたずまいのよさも感じる。長年PCケースを見ているが、こういう要素を備えるPCケースがとうとう出てきたんだなあ、と感慨深い。

内部や組み込まれているケースファンもホワイトだ
ブラックモデルでは色みの濃いウォールナット材を使用

 LANCOOLシリーズらしい冷却性能へのこだわりも魅力の一つだ。前面に大型の17cm角ファンを2基、背面に14cm角ファンを1基、さらには電源ユニットカバー上に12cm角ファンを2基と、標準で5基ものファンを装備する。天板にも12cm角ファンを3基追加可能と、冷却拡張性はかなり充実している。

前面には17cm角というほかのケースではあまり見かけないサイズのファンを装備。背面ファンは14cm角サイズだ
電源ユニットカバー上に12cm角ファンを2基装備する

 またファンを簡単に着脱できる構造もおもしろい。一般的なPCケースでは、ドライバーを使って四隅のネジを外して、目的の場所にファンを移動してまた四隅をネジ止めして、という作業が必要だ。しかしLANCOOL 217では、一般的なケースファンに付属の専用マウンターを付けるだけで、ファンのみをギュッとスライドするだけで着脱できるようになる。

 前面と天板にメッシュ構造を採用するほか、左右側面の下部もメッシュ構造になっている。電源ユニットカバー上のファンが、ビデオカードに向けて吹き付ける方向で取り付けられているため、ここが吸気口として機能するのだろう。標準で5基も装備するケースファンと合わせて、強力なエアフローで各種パーツを冷却できる。

フレームには専用の固定穴が用意されており、専用のマウンターを付けた状態のケースファンを簡単に着脱できる
左右側面の下部はメッシュ構造になっており、吸気口として機能する

 最新トレンドへの対応も充実している。マザーボードベースは背面コネクター対応マザーボードに対応しており、必要な場所にホールが開いている。またビデオカードを下から支えるビデオカードホルダーを装備しており、高性能で重量のあるビデオカードを組み込んでも歪むことなくしっかり固定できる。

 ちょっとおもしろいのが電源ボタンを天板と底面近くの2カ所に装備しているところだ。机の上に置いて使うなら下部のボタンを使えばいいし、机の下に置いて使うなら天板のボタンを使えばよい。最近のデザイン重視のPCケースだと、電源ボタンを下部に装備することが多く、今までどおり机の下に置いて使いたいユーザーにとっては使いにくいと感じることもあった。しかしLANCOOL 217なら、自分の好みのスタイルで設置できる。

マザーボードベースは、裏面コネクター対応マザーボード用のホールを装備する
天板手前に装備する電源ボタン。起動時は白のLEDが光る
左側面手前に装備する電源ボタン。前面ポートはこちらに装備する

組み込みやすさを高める工夫が満載

 では実際に各パーツを組み込んでみよう。

 両側板はツールレスで簡単に外せる。またメッシュ構造の前面カバーも上部を引っ張るだけで着脱できるため、ファンの交換やメンテナンス、防塵フィルターの清掃も簡単だ。

 天板はメッシュ構造の防塵フィルターとファンマウンターの二重構造になっており、両方とも着脱可能だ。天板に簡易水冷型CPUクーラーやケースファンを増設したいときには非常に便利だし、大型の空冷CPUクーラーを利用している場合に、各種ケーブルを引き回したり、コネクターに挿したりしやすい。

天板は、背面近くのちょっとはみ出した部分に手をかけて上に引っ張れば外せる
ファンマウンター部分も着脱可能な構造だ

 もう一つおもしろいのが、電源の向きを90度回転して組み込める機能だ。ケーブルを上方向に引き出せるLian Liのフルプラグイン電源ユニット「EDGE GOLD」シリーズのみの対応となるが、ケーブルを挿す面を右側面向けに設置することで、電源ユニットを外すことなく電源ケーブルを簡単に着脱できる。

 また一般的な電源ユニットを利用する場合は付属する3.5/2.5インチシャドーベイユニットを1基しか組み込めないが、このEDGE GOLDシリーズを利用すれば2基組み込めるため、より多くのストレージを利用できるようになる。メンテナンスと拡張性を強化できるおもしろい機能だ。

Lian Liの電源ユニット「EDGE GOLD 1200 WT+HUB」。LANCOOL 217との組み合わせで活きるギミックが便利
天板のメッシュカバーはマグネット式で、簡単に外して清掃できる
横向きで設置すると、このように右側面方向から電源ケーブルを着脱できる

 下の写真は、今回用意したパーツを実際に組み込んだものである。奥行きは48.2cm、高さも50.3cmあるミドルタワーケースなので、内部は十分に余裕がある。大型の空冷CPUクーラーやビデオカードを組み込んでも、干渉することはない。また天板部分が着脱できる構造なので、狭苦しい環境で電源ケーブルを挿したり引き回したりする必要がない。

内部はかなり広いため、大型のCPUクーラーやビデオカードを組み込んでも余裕がある
ビデオカードホルダーはビデオカードを下から支える構造
マザーボード下部にピンヘッダーケーブルやファンケーブルを挿す場合は、このようにファンを一時的に外すとよい

 もう一つ、Lian Liの簡易水冷型CPUクーラー「Galahad II Trinity SL-INF」の36cmモデルを組み込んだ状況がこちら。天板とマザーボードの隙間は約6cm確保されており、簡易水冷型CPUクーラーはマザーボードにかぶることはない。また天板のファンマウンターが着脱できるため、ラジエーターの装着やケーブルの引き回しも容易に行える。

36cmクラスのラジエーターを組み合わせた簡易水冷型CPUクーラーを組み込んでも、天板のスペースは余裕があった

 マザーボードベース裏面の配線用スペースは、実測値で約3cmだった。普通のPCケースと比べると広めで、ケーブル整理は楽だった。天板近くにはファン/LEDハブを搭載しており、標準装備のファンはすでに接続済み&経路も整理された状態だ。ケーブルを通しやすい場所に多数の面ファスナーを装備しており、ケーブルを整理しやすくしているのも好印象である。

裏面配線の様子。ケーブルを整理しやすい場所にあらかじめ面ファスナーやフックを用意しており、そのルートに従うだけでキレイにケーブルを整理できる
ファン/LEDハブを備えており、標準装備のケースファンはすでに接続済みの状態だった
付属の3.5/2.5インチシャドーベイユニットは底面に最大2基組み込める

高性能パーツもしっかり冷却できる万能のPCケース

 実際にパーツを組み込んで各部の温度を検証したのが下のグラフだ。組み込んだパーツは下記の表のとおりで、おおむねアッパーミドルのゲーミングPCと言ってよいだろう。今回は大型空冷CPUクーラーと簡易水冷型CPUクーラーを組み込み、CPUとビデオカードの温度変化を見た。

【組み込んだパーツ】
CPUAMD Ryzen 9 9900X
(12コア24スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX B650-A GAMING WIFI
(AMD B650)
メモリCFD販売 W5U5600CS-16G
(PC5-44800 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti SUPER
Trinity Black Edition 16GB GDDR6X
SSDSandisk WD_Black SN850 NVMe
WDS100T1X0E-00AFY0[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
電源ユニットLian Li EDGE GOLD 1200 WT+HUB
(1,200W、80PLUS Gold)
CPUクーラー(空冷)サイズ MUGEN 6 BLACK EDITION
(サイドフロー、12cm角 2基)
CPUクーラー(水冷)Lian Li Galahad II TRINITY SL-INF
(簡易水冷型、36cmクラス)

 アイドル時は起動後10分間の平均的な温度で、Cinebench時はCPU負荷が高い「Cinebench R23」マルチスレッドテスト実行時の最高温度だ。MHWilds時は「モンスターハンターワイルズ ベンチマークテスト」を30分ループ実行中の最高温度で、PCゲームの長時間プレイ時を想定している。温度計測にはOCCT 14.2.6を使用し、CPU温度は「CPU(Tctl/Tdie)」、GPU温度はビデオカードの「GPU Temperature)」を計測してグラフ化した。

空冷クーラー使用時の各部温度
水冷クーラー使用時の各部温度

 空冷環境ではMHWilds時に80℃半ばに達する状況はあるが、これは最大値であり平均的には70℃前後で推移していた。GPU温度も76℃前後と低めで安定しており、PCゲームは安心してプレイできるだろう。水冷時はCPU温度がさらに下がり、MHWilds時の最高は73℃、平均温度は64℃だった。ファンが増えたことでエアフローもさらに強化され、GPU温度も空冷時に比べて3℃低下している。冷却性能は十分に高い。

 多くのケースファンを標準で装備して冷却性能が高く、組み込みに関する便利機能も充実したLANCOOL 217。最近のPCケースに求められるほぼすべての要素を集約しており、この機能性を持つPCケースが18,000円前後で購入できるというのはかなりのコストパフォーマンスの高さだ。

 また重さも9.25kgと、こうした機能が充実したミドルタワーケースの中では比較的軽く、組み込み作業やメンテナンスがしやすいのもうれしい。自作PCをはじめる初心者から、高性能なゲーミングPCを作りたい上級者まで、誰にでもお勧めしやすいPCケースと言ってよいだろう。