最新自作計画
木を活かしたデザインだけじゃない!最新&便利ギミックを完備したLian Li「LANCOOL 217」
【新装第11回/通算第89回】木目調と使いやすさが融合したPCケース text by 竹内 亮介
2025年9月19日 00:00
最近は、デザインのアクセントとして「木」を使うPCケースが増えている。金属や強化ガラスを使うミドルタワータイプのPCケースと比べると、デザインに木目の自然さや素材の柔らかさ、優しさをプラスできることもあり、ユーザーからも注目を集めている。
ここで紹介するLian Li Industrialの「LANCOOL 217」でも、木を効果的に使うことで高級感を醸し出している。しかしLANCOOL 217のすごさはこうしたデザイン面だけではない。自作PCの最新環境にマッチした組み込み用ギミックをほぼ網羅しており、組み込みやすくメンテナンスもしやすい、実に使いやすいPCケースに仕上がっている。
高級感のあるデザインと先進の構造を融合
LANCOOL 217は、Lian Liの冷却重視型PCケース「LANCOOL」シリーズの最新モデルだ。冒頭でも述べたとおりフロントパネルの周囲と天板に木を組み合わせた特徴的なデザインを採用する。ブラックモデルには深みのあるウォールナット材、ホワイトモデルには明るいバーチ材と、全体的なイメージになじみやすい素材を使用していることもあり、どちらも高級感がある。
フォームファクタ | ExtendedATX |
前面USB | Type-C |
標準搭載ファン | 17cm角 2基(前面)、14cm角 1基(背面)、 12cm角 2基(電源ユニットカバー) |
搭載可能ファン | 17cm角 2基または14/12cm角 3基(前面)、 14/12cm角 1基(背面)、14cm角 2基または12cm角 3基(天板)、 12cm角 3基(電源ユニットカバー)、12cm角 2基(底面) |
搭載可能 ビデオカードの長さ | 380mm |
搭載可能 CPUクーラーの高さ | 180mm |
搭載可能 ラジエーターの長さ | 36cmクラス(天板) |
ベイ | 3.5インチシャドー 2基、3.5/2.5インチシャドー 2基、 2.5インチシャドー 5基 |
本体サイズ(W×D×H) | 238×482×503mm |
重量 | 9.25kg |
カラー | ブラック、ホワイト |
今回借用したモデルはホワイトモデルで、内部のファンやケーブルもホワイトで統一されており、塗装もしっとりとしていて非常に美しい。そうした「美しい白」にアクセントとして組み合わされたバーチ材の効果は高く、たたずまいのよさも感じる。長年PCケースを見ているが、こういう要素を備えるPCケースがとうとう出てきたんだなあ、と感慨深い。
LANCOOLシリーズらしい冷却性能へのこだわりも魅力の一つだ。前面に大型の17cm角ファンを2基、背面に14cm角ファンを1基、さらには電源ユニットカバー上に12cm角ファンを2基と、標準で5基ものファンを装備する。天板にも12cm角ファンを3基追加可能と、冷却拡張性はかなり充実している。
またファンを簡単に着脱できる構造もおもしろい。一般的なPCケースでは、ドライバーを使って四隅のネジを外して、目的の場所にファンを移動してまた四隅をネジ止めして、という作業が必要だ。しかしLANCOOL 217では、一般的なケースファンに付属の専用マウンターを付けるだけで、ファンのみをギュッとスライドするだけで着脱できるようになる。
前面と天板にメッシュ構造を採用するほか、左右側面の下部もメッシュ構造になっている。電源ユニットカバー上のファンが、ビデオカードに向けて吹き付ける方向で取り付けられているため、ここが吸気口として機能するのだろう。標準で5基も装備するケースファンと合わせて、強力なエアフローで各種パーツを冷却できる。
最新トレンドへの対応も充実している。マザーボードベースは背面コネクター対応マザーボードに対応しており、必要な場所にホールが開いている。またビデオカードを下から支えるビデオカードホルダーを装備しており、高性能で重量のあるビデオカードを組み込んでも歪むことなくしっかり固定できる。
ちょっとおもしろいのが電源ボタンを天板と底面近くの2カ所に装備しているところだ。机の上に置いて使うなら下部のボタンを使えばいいし、机の下に置いて使うなら天板のボタンを使えばよい。最近のデザイン重視のPCケースだと、電源ボタンを下部に装備することが多く、今までどおり机の下に置いて使いたいユーザーにとっては使いにくいと感じることもあった。しかしLANCOOL 217なら、自分の好みのスタイルで設置できる。
組み込みやすさを高める工夫が満載
では実際に各パーツを組み込んでみよう。
両側板はツールレスで簡単に外せる。またメッシュ構造の前面カバーも上部を引っ張るだけで着脱できるため、ファンの交換やメンテナンス、防塵フィルターの清掃も簡単だ。
天板はメッシュ構造の防塵フィルターとファンマウンターの二重構造になっており、両方とも着脱可能だ。天板に簡易水冷型CPUクーラーやケースファンを増設したいときには非常に便利だし、大型の空冷CPUクーラーを利用している場合に、各種ケーブルを引き回したり、コネクターに挿したりしやすい。
もう一つおもしろいのが、電源の向きを90度回転して組み込める機能だ。ケーブルを上方向に引き出せるLian Liのフルプラグイン電源ユニット「EDGE GOLD」シリーズのみの対応となるが、ケーブルを挿す面を右側面向けに設置することで、電源ユニットを外すことなく電源ケーブルを簡単に着脱できる。
また一般的な電源ユニットを利用する場合は付属する3.5/2.5インチシャドーベイユニットを1基しか組み込めないが、このEDGE GOLDシリーズを利用すれば2基組み込めるため、より多くのストレージを利用できるようになる。メンテナンスと拡張性を強化できるおもしろい機能だ。
下の写真は、今回用意したパーツを実際に組み込んだものである。奥行きは48.2cm、高さも50.3cmあるミドルタワーケースなので、内部は十分に余裕がある。大型の空冷CPUクーラーやビデオカードを組み込んでも、干渉することはない。また天板部分が着脱できる構造なので、狭苦しい環境で電源ケーブルを挿したり引き回したりする必要がない。
もう一つ、Lian Liの簡易水冷型CPUクーラー「Galahad II Trinity SL-INF」の36cmモデルを組み込んだ状況がこちら。天板とマザーボードの隙間は約6cm確保されており、簡易水冷型CPUクーラーはマザーボードにかぶることはない。また天板のファンマウンターが着脱できるため、ラジエーターの装着やケーブルの引き回しも容易に行える。
マザーボードベース裏面の配線用スペースは、実測値で約3cmだった。普通のPCケースと比べると広めで、ケーブル整理は楽だった。天板近くにはファン/LEDハブを搭載しており、標準装備のファンはすでに接続済み&経路も整理された状態だ。ケーブルを通しやすい場所に多数の面ファスナーを装備しており、ケーブルを整理しやすくしているのも好印象である。
高性能パーツもしっかり冷却できる万能のPCケース
実際にパーツを組み込んで各部の温度を検証したのが下のグラフだ。組み込んだパーツは下記の表のとおりで、おおむねアッパーミドルのゲーミングPCと言ってよいだろう。今回は大型空冷CPUクーラーと簡易水冷型CPUクーラーを組み込み、CPUとビデオカードの温度変化を見た。
CPU | AMD Ryzen 9 9900X (12コア24スレッド) |
マザーボード | ASUSTeK ROG STRIX B650-A GAMING WIFI (AMD B650) |
メモリ | CFD販売 W5U5600CS-16G (PC5-44800 SDRAM 16GB×2) |
ビデオカード | ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti SUPER Trinity Black Edition 16GB GDDR6X |
SSD | Sandisk WD_Black SN850 NVMe WDS100T1X0E-00AFY0[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB] |
電源ユニット | Lian Li EDGE GOLD 1200 WT+HUB (1,200W、80PLUS Gold) |
CPUクーラー(空冷) | サイズ MUGEN 6 BLACK EDITION (サイドフロー、12cm角 2基) |
CPUクーラー(水冷) | Lian Li Galahad II TRINITY SL-INF (簡易水冷型、36cmクラス) |
アイドル時は起動後10分間の平均的な温度で、Cinebench時はCPU負荷が高い「Cinebench R23」マルチスレッドテスト実行時の最高温度だ。MHWilds時は「モンスターハンターワイルズ ベンチマークテスト」を30分ループ実行中の最高温度で、PCゲームの長時間プレイ時を想定している。温度計測にはOCCT 14.2.6を使用し、CPU温度は「CPU(Tctl/Tdie)」、GPU温度はビデオカードの「GPU Temperature)」を計測してグラフ化した。


空冷環境ではMHWilds時に80℃半ばに達する状況はあるが、これは最大値であり平均的には70℃前後で推移していた。GPU温度も76℃前後と低めで安定しており、PCゲームは安心してプレイできるだろう。水冷時はCPU温度がさらに下がり、MHWilds時の最高は73℃、平均温度は64℃だった。ファンが増えたことでエアフローもさらに強化され、GPU温度も空冷時に比べて3℃低下している。冷却性能は十分に高い。
多くのケースファンを標準で装備して冷却性能が高く、組み込みに関する便利機能も充実したLANCOOL 217。最近のPCケースに求められるほぼすべての要素を集約しており、この機能性を持つPCケースが18,000円前後で購入できるというのはかなりのコストパフォーマンスの高さだ。
また重さも9.25kgと、こうした機能が充実したミドルタワーケースの中では比較的軽く、組み込み作業やメンテナンスがしやすいのもうれしい。自作PCをはじめる初心者から、高性能なゲーミングPCを作りたい上級者まで、誰にでもお勧めしやすいPCケースと言ってよいだろう。