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こういうのでいいんだよ!ホビーに強い“駿河屋”の9700X+RTX 5070 Ti搭載「SURUGA 9000STi」は30万円の本格派ゲーミングPC

MicroATX仕様でベテランも納得の良バランス text by 芹澤 正芳

 ホビー系アイテムのショップとして知られる「駿河屋」だが、最近は良コスパのゲーミングPCを手掛けていることでも注目を集めている。ミドルタワー型のゲーミングPC「SURUGA 9000STi」もその一つだ。

 4K高画質でのゲームプレイも可能な基本性能に手堅いパーツ選択で30万円を切る価格を実現。“こういうのでいいんだよ”と思わせてくれる仕上がりだ。実ゲームでの性能評価も含めたレビューお届けしよう。

アッパーミドル構成の“実用的”ゲーミングPC

 「SURUGA 9000STi」は、ミドルタワーケースを採用するデスクトップ型のゲーミングPCだ。サイズは突起物を含まず約220mm×411mm×441mmとミドルタワーとしては比較的コンパクト。奥行きが短めなので設置しやすいのがポイントと言える。

駿河屋の「SURUGA 9000STi」。2025年6月上旬時点の販売価格は299,800円

 ゲーミングPCでもっとも重要なビデオカードには、NVIDIA最新世代の「GeForce RTX 5070 Ti」を搭載。Blackwellアーキテクチャーを採用し、CUDAコアを8,960基備えるRTX 50シリーズのアッパーミドルモデルだ。定格のブーストクロックは2,452MHzだが、搭載カードは2,497MHzまでオーバークロックされていた。ビデオメモリには高速なGDDR7を16GB搭載している。

 モンスターハンターワイルズの高解像度テクスチャパックを含めて最高画質設定は16GBのビデオメモリが求められるなど、最近のゲームでは8GBでは不足するシーンが増えているだけに、ここは重要なポイント。大容量ビデオメモリはLLM(大規模言語モデル)など一部AI処理においても必要になるので、ビデオカード活用の幅を広げてくれる存在でもある。

 RTX 50シリーズは1フレームから最大3フレームをAIによって生成するマルチフレーム生成を可能にするDLSS 4をサポートをしているのが大きな特徴だが、さらにRTX 5070 TiはハードウェアエンコーダーのNVENCを2基備えており、それを利用した高速エンコードが可能で動画編集にも強い。

GPU-Zでの表示。GeForce RTX 5070 Tiを採用している。ブーストクロックは定格から45MHz向上させた2,497MHzとなっていた
ビデオカードにはGIGABYTE「GeForce RTX 5070 Ti WINDFORCE OC SFF 16G」が搭載されていた。補助電源は16ピン×1仕様だ

 CPUは、AMD最新世代のRyzen 9000シリーズのアッパーミドルレンジ「Ryzen 7 9700X」を搭載。Zen 5アーキテクチャーを採用し、8コア16スレッド、最大5.5GHzとゲームプレイには十分なスペック。デフォルトのTDPは65Wと低いので、消費電力や発熱も小さい。良コスパのCPUとして人気のモデルだ。

CPU-Zでの表示。CPUにはRyzen 7 9700Xを搭載。8コア16スレッドで最大5.5Hz動作だ

 そのほかスペックは、メモリはDDR5-5600を16GB×2枚搭載で合計32GB、ストレージは1TBのPCI Express 4.0接続のM.2 SSDをそれぞれ搭載し、ゲームプレイに十分な容量を確保。試用した機種では、メモリはMicron「Crucial Pro」、SSDは同じくMicron「Crucial P3 Plus」という定番メモリをそれぞれ搭載しており、安心感のある構成。電源ユニットは80PLUS Gold認証の850Wで、トータルのスペックから考えると十分な出力と言える。

メモリは32GB搭載。テスト機ではCrucial ProのDDR5-5600 16GB×2枚を使用
SSDはPCI Express 4.0接続のM.2 SSDを1TB搭載。テスト機ではCrucial P3 Plusを採用
CrystalDiskMark 8.0.6の実行結果。シーケンシャルリードで5,199.48MB/s、ライトで4,698.85MB/sとゲームプレイには十分な速度
850W出力で80PLUS Gold認証の電源ユニットが標準搭載されている

 これらのパーツ群を収納するPCケースは、やや奥行きが短めのmicroATX仕様。パーツ構成がシンプルなこともあって内部はスッキリしている。CPUクーラーは空冷のサイドフローとして超定番のサイズ「虎徹 MARK3」を採用。天面の排気用ファンには静音性の高さで人気のXPG VENTO 120が取り付けられているなど、なかなか自作PC好きのツボを突いたパーツ構成だ。背面にも排気用12cm角ファンが搭載されており、これも静音タイプ。なお、ネットワーク機能は2.5Gの有線LANで、Wi-Fiは搭載されていない。

PCケースの内部。奥行きは短めだが配線はキレイにまとめられておりスッキリしている
CPUクーラーにはサイドフローの定番、サイズの虎徹MARK3をが採用されていた。天面と背面に排気用の12cm角ファンも備える
ビデオカードはサポートステイでしっかりと固定されていた。これなら輸送も安心と言える
天面にはヘッドホン出力、マイク入力、USB 2.0×2、USB 3.2 Gen 1×1が備わっている
背面には映像出力のほか、2.5Gbpsの有線LAN、Thunderbolt 4、USB 3.2 Gen 2、USB 3.2 Gen 2 Type-C、USB 3.2 Gen 1×2、USB 2.0×2、サウンド入出力などが搭載されている

人気ゲームを4K最高画質でも余裕で楽しめる

 ここからは、実際の性能をチェックしていく。まずは、CGレンダリングでシンプルにCPUパワーを測る「Cinebench 2024」、PCの基本性能を測る「PCMark 10」を試そう。

Cinebench 2024の計測結果
PCMark 10の計測結果

 Cinebench 2024のマルチコアで1,183ptsは、シングルコアで134ptsはRyzen 7 9700Xとして順当なスコアだ。しっかりと性能を引き出せている・PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動の“Essentials”で4,100以上、表計算/文書作成の“Productivity”で4,500以上、写真や映像編集“Digital Content Creation”で3,450以上が快適度の目安となっているが、すべて2倍以上のスコアを出した。ゲーミングだけではなく、幅広い処理を快適にこなせるパワーを持つ。

 続いて、実ゲームで性能を見ていく。定番のFPSとして「オーバーウォッチ 2」を試そう。botマッチを観戦した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定した。

オーバーウォッチ 2の計測結果

 4Kの最高画質でも平均142.3fpsを達成。4K/144Hzのゲーミングモニターを使っても、その性能を十分に活かせると言える。

 続いて、DLSSによるアップスケールとフレーム生成には対応するが、マルチフレーム生成には非対応かつ描画負荷の高いタイトルとして「モンスターハンターワイルズ」をピックアップした。公式ベンチマーク実行時のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。

モンスターハンターワイルズ ベンチマークの計測結果

 最高画質設定は16GB以上のビデオメモリを求めるが、本機に搭載されているRTX 5070 Tiならそれを満たしているのに加えて、高い基本性能によって4Kでも平均98.9fpsを達成。快適にプレイが可能だだろう。

 次に、マルチフレーム生成のDLSS 4に対応したタイトルを試そう。ここでは「サイバーパンク2077」と「The Last of Us Part II Remastered」を用意した。サイバーパンク2077は内蔵ベンチマーク機能を実行、The Last of Us Part II Remasteredはジャクソンの一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。

サイバーパンク2077の計測結果
The Last of Us Part II Remasteredの計測結果

 サイバーパンク2077のレイトレーシング:オーバードライブは強烈に描画負荷の高いパストレーシング処理が入る設定だが、マルチフレーム生成の効果もあって4Kでも平均132.3fpsと余裕で快適にプレイできるフレームレートが出ている。The Last of Us Part II Remasteredはビデオメモリ容量を求めるタイトルだが、こちらも4Kで平均246.6fpsと高いフレームレートを出した。ここでも16GBのビデオメモリが効いている。

CPUとGPUの温度とクロックもチェック! 冷却力は非常に高い

 最後にサイバーパンク2077を10分間実行したときのCPUとGPUの温度をシステム監視アプリの「HWiNFO Pro」で測定した。CPU温度は「CPU (Tctl/Tdie) 」、GPU温度は「GPU Temperature」の値を追ったものだ。室温は24℃。

CPU/GPU温度の推移

 CPUは平均70.7度、GPUは平均67.1度と強力なエアフローと言える構成ではないがゲーミングにおける冷却力は十分だ。長時間のプレイでもまったく心配のいらない温度となっている。特にGPUの温度は低く、3連ファンの大型カードによる冷却力は高い。

なかなか通好みもするツボを押さえた構成それだけに誰にでもお勧めしやすい

 Ryzen 7 9700XとRTX 5070 Tiの組み合わせで30万を切るゲーミングPCは、それだけでコストパフォーマンスは高いと言える。それに加えて、メモリ、SSD、CPUクーラー、ケースファンに定番の人気パーツを採用するなど、安さだけではないこだわりが感じられる構成だ。

 派手さはないが手堅い作りで、幅広いユーザーにオススメできる。駿河屋のゲーミングPC、今後も注目していきたい。