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DLSS MFGやSmooth Motionが使える「ZOTAC GAMING GeForce RTX 5080 AMP Extreme INFINITY」をじっくり検証する

【新装第4回】RTX 50世代のオイシイところを探すべくじっくりテスト text by “KTU”加藤 勝明

ゲームベンチ連発!①RTX 20/ 30シリーズからのジャンプアップに注目

 ここからはゲームによるパフォーマンス検証となるが、フレームレートの計測環境について解説しておきたい。計測ツールには「CapFrameX」を使用するが、フレームレート算出の基準になる“フレームタイム(1フレームの処理時間)の定義”は「PresentMon」登場当時より使用されている「MsBetweenPresents」ではなく、最新β版より実装された「MsBetweenDisplayChange」を使用している。これはIntelのXeSS FGやNVIDIAのDLSS MFG処理下において、最低フレームレートやスタッターの頻度を正確に評価するための必要な変更となる。

 それでは各ゲームのフレームレートを検証する。解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)、WQHD(2,560×1,440ドット)、4K(3,840×2,160ドット)とし、画質は最高あるいはそれに準じる設定とした。

オーバーウォッチ 2

 まずはeスポーツ要素の強いゲームから検証をはじめる。ここではアップスケーラーもフレーム生成も使わず、ラスタライズ性能だけで対決を試みる。

 まず最初に試すのはオーバーウォッチ 2だ。ここでは画質“エピック”をベースにレンダースケール100%、フレームレート上限600fpsに設定。マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。

オーバーウォッチ 2:1,920×1,080ドット時のフレームレート
オーバーウォッチ 2:2,560×1,440ドット時のフレームレート
オーバーウォッチ 2:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 RTX 5080はさまざまなレビューにおいてRTX 4080 SUPERに比してパワーアップ感に乏しいという評価が出ているが、ファクトリーOCモデルであるRTX 5080 AMP Extreme INFINITYにおいてもRTX 4080との差は大きいとは言えない。特に解像度が低いと平均フレームレートの伸びが悪くなる。4KともなればRTX 4080の35%増しまで伸びるのだが、まだeスポーツシーンに耐えるフレームレートが出ているとは言い難い。

 ただRTX 2080やRTX 3080から見るとRTX 5080 AMP Extreme INFINITYの伸び幅はとてつもなく大きい。RTX 3080からはどの解像度でも平均フレームレートで70〜80%増、RTX 2080からともなれば200〜230%増が期待できる。こうして見るとTuring→Ampere(FP32専用ラインの追加)→Ada Lovelace(2次キャッシュの大増量)とCUDAコア周辺の強化が続いた所にAI処理性能に振ったBlackwellの方向性の違いがよく分かる。

オーバーウォッチ 2:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(左三つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右三つ。単位:fps)

 上の表は上のフレームレート計測時に観測されたTBPの平均値(解像度別)と、10ワットあたりのフレームレート、すなわちワットパフォーマンスの一覧(解像度別)である。オーバーウォッチ 2ではRTX 5080に仕事をガンガン与えて回せているのか、RTX 4080に比べると4KでTBPは60W程度増えている。RTX 3080がTBPの2番手どころか、フルHDではTBPがトップなのに驚くところだが、Ampere世代はプロセスルールが10nmから派生した8Nプロセスであることに加え、2次キャッシュが少ないなどの要因で消費電力が高止まりになっている。

 ただワットパフォーマンスという観点で考えるとRTX 5080 AMP Extreme INFINITYはRTX 4080より改善されている。つまり消費電力は大きくなったがその分フレームレートが出ているということになる。

Call of Duty (Black Ops 6)

 Call of Dutyは「Black Ops 6」を用いてけんしょうする。画質は「極限」に設定。オーバーウォッチ 2と同様にeスポーツ要素の強いタイトルであるためDLSSやフレーム生成は一切使用していない。ゲーム内ベンチマーク再生時のフレームレートを計測した。

Call of Duty (Black Ops 6):1,920×1,080ドット時のフレームレート
Call of Duty (Black Ops 6):2,560×1,440ドット時のフレームレート
Call of Duty (Black Ops 6):3,840×2,160ドット時のフレームレート

 こちらもオーバーウォッチ 2と傾向が似ている。フルHDでは差が小さく、解像度を上げるほどに差が拡大する。RTX 4080とRTX 5080 AMP Extreme INFINITYに大きな差が見られないのもオーバーウォッチ 2と同傾向だ。Black Ops 6における最高画質設定(極限)だと実用になるのはWQHDまでであり、4Kでプレイしたいのであれば画質設定を下げるか、アップスケーラーやフレーム生成の利用を検討すべきだろう。

Call of Duty (Black Ops 6):ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左三つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右三つ。単位:fps)

 オーバーウォッチ 2に比べるとどのGPUもTBPがかなり下がっている。3DMarkのスコアなどからGPUパワーは十分高いことが分かっているため、GPUのパワー不足が原因ではない。Black Ops 6は特にRadeonに対する最適化が進んでおり、その反動としてGeForceにはあまり効率よく処理を回せていないため、結果としてTBPが減っていると考えることができる。ただこの検証においても、RTX 3080の消費電力は格別に大きく、4K解像度においてもRTX 5080 AMP Extreme INFINITYを上回っている。

ゲームベンチ連発!②DLSS FGやMFGを使うと……?

 ここからはレイトレーシングのほかにアップスケーラー(DLSSやFSR 3)やフレーム生成(DLSS FG)を積極的に使用する。DLSSの設定はすべて“クオリティ”に統一している。DLSS MFGは3フレームを挿入する“4x”設定とした。

Monster Hunter: Wilds ベンチマーク

 Monster Hunter: Wildsは公開されたばかりのベンチマークツールを利用した。画質は“ウルトラ”、レイトレーシング“高”に設定。今回使用したGPUのうちRTX 3080とRTX 2080はFSR 3“クオリティ”とフレーム生成を使用しているが、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYとRTX 4080はDLSS“クオリティ”とフレーム生成を利用している。ベンチマークシーン再生時のフレームレートを計測した。

Monster Hunter: Wildsベンチマーク:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Monster Hunter: Wildsベンチマーク:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Monster Hunter: Wildsベンチマーク:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 本稿の検証時点ではまだDLSS MFGに対応していないせいか、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYとRTX 4080の差は4K解像度でも20%弱と控えめである。RTX 3080やRTX 2080もFSR 3を利用することでフレーム生成が可能だが、それでもRTX 5080 AMP Extreme INFINITYのほうが1.5倍〜2倍(RTX 3080)もしくは3倍から7倍弱(RTX 2080)のフレームレートが得られる。特にRTX 2080はVRAM搭載量も8GBしか搭載していないため、画質を盛ってプレイすることは難しい。

Monster Hunter: Wildsベンチマーク:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左三つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右三つ。単位:fps)

 Monster Hunter: Wildsベンチマーク実行中のTBPの傾向を見る限り、オーバーウォッチ 2のようにフルにGPUを活用できていない印象が強い。その原因がレイトレーシングにあるのか、Monster Hunter: Wildsのエンジン側にあるのか判断できる材料はないが、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYに関してはまだまだTBPを積み上げられる余地はある。このゲームが今後DLSS MFGに対応することができれば、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYの価値がさらに高まることは確かだろう。

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077はゲーム側でDLSS MFGに対応したゲームだ。画質は“レイトレーシング:オーバードライブ”をベースとし、DLSSまたはFSR 3“クオリティ”、フレーム生成(MFGは4x)も有効化。DLSS環境では画質を向上させた“トランスフォーマー”ベースのモデルを利用しRR(レイ再構成)も有効化している。ゲーム内ベンチマーク再生時のフレームレートを計測した。

サイバーパンク2077:1,920×1,080ドット時のフレームレート
サイバーパンク2077:2,560×1,440ドット時のフレームレート
サイバーパンク2077:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 DLSS MFGに対応するRTX 5080 AMP Extreme INFINITYが強いのは言わずもがな。DLSS FG縛りのあったMonster Hunter: WildsベンチマークではRTX 4080の2割増し程度だったことを踏まえると、このゲームではRTX 4080の2倍以上のフレームレートを叩き出している。平均フレームレートのみならず最低フレームレート(正確には下位1パーセンタイル点以下の平均:1% Low)も上がっているため、よりカクつき感のない映像が“パストレーシング設定”で楽しめる。

 レイトレーシングによる視覚効果はゲームの本質的の楽しさに必須ではないが、濡れた地面やガラス表面に極彩色の風景が映りこむシーンはゲームへの没入感をさらに高めてくれる。ゲーム開発者が作り込んだ世界をしっかり味わいたいなら、DLSS MFGに対応するRTX 5080 AMP Extreme INFINITYはぜひとも欲しい装備と言える。

サイバーパンク2077:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)

 解像度がフルHDのような低負荷な設定ではRTX 5080 AMP Extreme INFINITYとRTX 4080のTBPの差は小さいが、解像度が高くなるにつれ差が徐々に開く。だがDLSS MFGによってRTX 5080 AMP Extreme INFINITYはフレームレートが大きく向上するため、ワットパフォーマンスはRTX 5080 AMP Extreme INFINITYが圧倒する。TBPの平均値ベースで見ればRTX 3080がRTX 5080 AMP Extreme INFINITYのすぐ後ろにいるという点が興味深い。

 ちなみに、ここで集計されているRTX 5080 AMP Extreme INFINITYのTBPは前述のTBPよりだいぶ低いように見えるが、この表は平均値であることに注意。前掲のTBPの度数分布分析をしたデータにおいても、TBPの平均値は339Wとこのデータとほとんど変わらない。

S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl

 S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobylは、NVIDIA Appで設定を変更することでDLSS FGをMFGにオーバーライドすることができるゲームだ。画質“ウルトラ”、DLSSまたはFSR 3 “クオリティ”およびフレーム生成も追加。ゲーム中最初に到達する拠点内において一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl:1,920×1,080ドット時のフレームレート
S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl:2,560×1,440ドット時のフレームレート
S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 今回の検証ではRTX 3080とRTX 2080は4K解像度ではVRAM不足からフレームレートが1ケタ台にまで落ちるため、該当箇所だけデータなしとなる。4K+最高画質設定で遊べるのは今回の検証ではRTX 4080以上となった。
 ここでもDLSS MFGの使えるRTX 5080 AMP Extreme INFINITYは強い。RTX 4080の段階でも4K+最高画質設定で平均60fpsはクリアできるが、激しい戦闘のことを考えると最低フレームレートが心もとない。RTX 5080 AMP Extreme INFINITYでDLSS MFGを効かせることで、心に余裕を持ってプレイできるのはうれしい。

S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)

 フルHDやWQHDではRTX 3080の消費電力が飛び抜けて高いが、設計が旧くフレームレートが伸びないためRTX 3080のワットパフォーマンスは非常に悪い。RTX 5080 AMP Extreme INFINITYはRTX 4080にやや積み増ししたようなTBP(あくまで平均値の話)だが、DLSS MFGのおかげでワットパフォーマンスはRTX 4080の2倍程度に伸びている。

Marvel Rivals

 Marvel RivalsもNVIDIA Appを利用してDLSS MFGにオーバーライド可能なゲームである。画質は“最高”、DLSS/ FSR 3 “クオリティ”に設定し、さらにフレーム生成(MFG 4x含む)も有効化。訓練場で一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Marvel Rivals:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Marvel Rivals:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Marvel Rivals:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 レイトレーシングが使えるゲームにしては描画負荷が軽めであるため、RTX 3080クラスでもFSR 3のフレーム生成を利用することで数値上はそこそこのフレームレートが出せる。ただFSR 3の実装に難があるのか、それともGeForceとFSR 3の組み合わせが問題なのかは不明だがRTX 3080とRTX 2080はテスト中ずっとスタッターが出ていると判定されてしまう。スタッターのない(≒ラグの少ない)描画に期待したいならDLSS FGの使えるRTX 4080か、DLSS MFGの使えるRTX 5080 AMP Extreme INFINITYを選ぶのが今回の検証におけるアンサーとなるだろう。特にRTX 5080 AMP Extreme INFINITYはDLSS MFGのおかげで4K解像度においても非常になめらかな描画が得られている。

Marvel Rivals:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左三つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右三つ。単位:fps)

 RTX 3080の平均TBPが突出しており、そのすぐ後をRTX 5080 AMP Extreme INFINITYが続いている。ワットパフォーマンスに関してはDLSS MFGに対応できるRTX 5080 AMP Extreme INFINITYがもっとも良好なのは言うまでもない。

SILENT HILL 2

 SILENT HILL 2もNVIDIA AppでDLSS MFGへのオーバーライドに対応している。画質は最高設定、レイトレーシングも有効化。DLSS/ FSR 3は“クオリティ”およびフレーム生成を有効化。新規ゲーム開始直後の展望台から山を下り最初のカットシーン直前までのコースを移動する際のフレームレートを計測した。

SILENT HILL 2:1,920×1,080ドット時のフレームレート
SILENT HILL 2:2,560×1,440ドット時のフレームレート
SILENT HILL 2:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 フルHDやWQHDならFSR 3のフレーム生成の力も手伝ってRTX 3080でも楽しめるパフォーマンスが出せるが、4Kともなればカクつきが気になって精神的によろしくない。DLSS FGの使えるRTX 4080なら4Kでも行けるが、DLSS MFGを活かしたRTX 5080 AMP Extreme INFINITYのフレームレートの前にはかすんでしまう。もっと性能を出したければRTX 5090でDLSS MFGを活用するしか手はない。

SILENT HILL 2:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位:W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位:fps)

 TBPの傾向に大きな変化はない。RTX 5080 AMP Extreme INFINITYのワットパフォーマンスはRTX 4080の約2倍に到達している。

ゲームベンチ連発!③RTX 50シリーズの秘奥義「Smooth Motion」を使う

 ここまでの検証結果だけを見ると、RTX 5080はDLSS MFGがなければRTX 4080から大きく進歩していないという結論にたどり着いてしまう。だがRTX 50シリーズにはDLSS FGに対応していないゲームであってもドライバー側でフレーム生成を実施できるSmooth Motionに対応している。いわばAMDのAFMF 2(AMD Fluid Motion Frames Technology 2)のGeForce版といったところだ。ただAFMF 2は旧世代のRadeonにも広く門戸が開かれているのに対し、Smooth Motionは現時点でRTX 50シリーズのみが対象となっている。RTX 40シリーズにも解放されるという“噂”もあるが、NVIDIAがSmooth Motionをどう育てていきたいのかまったくもって不明である。

CAP/Smooth Motionの設定はNVIDIA Appで行う。DLSS FGに対応していないゲームもフレーム生成が可能になる。ただしまだ不具合も多いので、そのあたりは覚悟しておこう。特にオーバーレイ表示を利用している際は「RTSS」の最新β版を導入しないと高確率で不具合が出るので注意
CAP/Smooth Motionの説明を見ると、対応ゲームはDirectX 11または12を利用しているゲームのみ、という制限がある。またフレーム生成にはAI、すなわちTensorコアを利用しているとも読める。AI性能を強化したRTX 50シリーズから解放するというのはこの辺の仕様によるのかもしれない

 そこでここから先はDLSS FGに対応していないゲームを利用して検証する。RTX 5080 AMP Extreme INFINITYではSmooth Motionをオンにしたデータも加えている(グラフ中では“SM on”と表記)。

Dead Space (2023)

 まずはリメイク版Dead Spaceで検証しよう。画質は最高設定とし、DLSS“クオリティ”に設定。シナリオ序盤に訪れる無重力ハンガーエリアを移動する際のフレームレートを計測した。

Dead Space (2023):1,920×1,080ドット時のフレームレート
Dead Space (2023):2,560×1,440ドット時のフレームレート
Dead Space (2023):3,840×2,160ドット時のフレームレート

 Smooth MotionがなければRTX 5080 AMP Extreme INFINITYの平均フレームレートはRTX 4080の3〜16%増しと寂しい結果に終わってしまうが、Smooth Motionを付与することで素の状態よりも40〜60%フレームレートが伸びる。最終的にRTX 4080に対しては55〜70%平均フレームレートを伸ばすことが可能になる。

 DLSS MFGと異なるのは最低フレームレートはあまり伸びていないため、ある程度カクつきを抑えられる設定を探し出し、その上でSmooth Motionを有効化するのがよいだろう。

Dead Space (2023):ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左三つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右三つ。単位:fps)

 RTX 5080 AMP Extreme INFINITYのTBPに注目すると、フルHDやWQHDではSmooth Motionの状態にかかわらずTBPはほぼ同じだが、4Kになると逆にSmooth MotionオンのほうがTBPが若干低くなる。

 一般にフレームレートが上がるということはGPUの仕事量が増えているのでTBPも増えるものだが、この結果からはSmooth Motionをオンにするとこのセオリーに反する傾向が見えてくる。つまりSmooth Motionをオンにした場合、素のフレームレートを下げGPUパワーに余力を作った状態でフレーム生成を行っていると推察される。

BIOHAZARD RE:4

 BIOHAZARD RE:4では画質はレイトレーシングを含め最高設定とした上でFSR 2“クオリティ”に設定。シナリオ序盤に訪れる無重力ハンガーエリアを移動する際のフレームレートを計測した。

BIOHAZARD RE:4:1,920×1,080ドット時のフレームレート
BIOHAZARD RE:4:2,560×1,440ドット時のフレームレート
BIOHAZARD RE:4:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 BIOHAZARD RE:4はDLSS FGに対応していないため、フレームレートを出すにはAFMF 2が使えるRadeonが絶対的な優勢を誇っていた。だがRTX 5080 AMP Extreme INFINITYにおいてSmooth Motionをオンにすることにより、オフ時に比較して70〜80%平均フレームレートをさらに積み上げることができる。最低フレームレートがあまり動かないのはDead Space (2023)と同傾向だが、Smooth MotionをオンにすることでRTX 4080を含めた旧世代GeForceに圧倒的なアドバンテージを確保することに成功している。RTX 3080では最高画質設定では4K解像度でのプレイはなかなか厳しい(主にVRAM不足)ものがあるが、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYであれば4Kでも高フレームレートでのプレイが期待できる。

BIOHAZARD RE:4:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左三つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右三つ。単位:fps)

 Dead Space (2023)よりもSmooth MotionをオンにしたときのTBP減少がよりハッキリと数値に表われている。AFMF運用のノウハウにフレームレートを少し抑えてGPU負荷下げた状態のほうがフルパワー運用時よりもカクつきにくいという知見があるが、Smooth Motionはこれを最初から組み込んでいるものと推察される(だからSmoothという名称を付けたのだろう)。Smooth MotionをオンにすることでRTX 5080 AMP Extreme INFINITYのワットパフォーマンスはRTX 4080の2倍近くまで上昇する点に注目したい。

Tom Clancy's The Division 2

 最後にもっと古めのゲーム(かつベンチマーク機能があって手がかからない)のTom Clancy's The Division 2で検証しよう。APIはDirectX 12、画質“ウルトラ”をベースに垂直同期をオフに設定した。このゲームはDLSSやFSRには非対応なのでレンダースケールは100%設定である。ゲーム内ベンチマーク再生時のフレームレートを計測した。

Tom Clancy's The Division 2:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Tom Clancy's The Division 2:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Tom Clancy's The Division 2:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 Smooth Motionのない状態ではRTX 5080 AMP Extreme INFINITYは精彩を欠く結果しか出せていない。特に解像度が低いと最低フレームレートですらRTX 4080に一歩およばない。だがSmooth Motionをオンにすると平均フレームレートが一気に伸び、RTX 4080の50〜80%増にまで到達する。最低フレームレートにあまり影響がないのは、Smooth Motionの仕様によるものと思われる。

 Smooth MotionがなくてもRTX 3080やRTX 2080に対しては劇的な性能の改善が期待できるが、DLSS FGやMFG対応が絶望的な昔のタイトルであっても、RTX 50シリーズ導入のメリットはあると言えるだろう。

 ただSmooth Motionは本当にゲームで有用かについてはまだ検証すべき部分が多々ある。高速で移動した際の画像の崩れ方やDLSS FGなどに比べE-Eシステムレイテンシーはどう変化するかなども検討すべきだろう。この点に関しては後進に委ねたい。

Tom Clancy's The Division 2:ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値(左三つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右三つ。単位:fps)

 TBPの傾向についてはBIOHAZARD RE:4と同じく、Smooth MotionをオンにすることでTBPは下がる。Smooth Motionは素のフレームレートを抑えた上でフレーム生成を行うという実装であることはほぼ間違いないだろう。

AMPLIFYとQUIETモードの違い

 ゲーム検証が終わったところで、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYに搭載された2種類のvBIOS、すなわちAMPLIFYとQUIETモードの違いについて少し掘り下げておこう。すでにAMPLIFYとQUIETモードでカード自体が消費するTBPに実質的な違いは出ないことを示したが、ここではGPU温度やクロック、ファン回転数といった要素に注目する。

 ここでの検証でもサイバーパンク2077を用い、プレイ中のデータを「HWiNFO Pro」を利用して取得する。データのサンプリングは500msごととし、ゲーム起動からサイバーパンク2077をプレイ状態で15分程度放置している最中に計測を実施した。システムはすべてバラック組とし、室温26℃前後の環境である。

サイバーパンク2077プレイ中のGPUクロックの推移

 まずGPUクロックはAMPLIFYでもQUIETでもほとんど変わらない。強いて言えばAMPLIFYのほうがクロックが高い傾向があるが、クロック変動が安定する辺り(グラフでは50秒以降)の差を見るとAMPLIFYとQUIETの差は12〜25MHz程度と非常に小さい。ちなみにこのクロック差が出る理由についてだが、GPU温度由来のPerformance LimiterフラグはQUIETモードでも立っていない。

サイバーパンク2077プレイ中のGPU温度およびVRAMのジャンクション温度の推移

 GPUおよびVRAMジャンクション温度に関してはハッキリとした差が観測できた。QUIETモードではAMPLIFYモードに+5℃程度温度が上乗せされる。ただQUIETモードであってもGPU温度は70〜75℃であるため、しっかりとケース内換気を行えばQUIETでも十分安心して使えるだろう。

サイバーパンク2077プレイ中のファン回転数の推移

 RTX 5080 AMP Extreme INFINITYのファン回転数センサーは2基検出できたが、Fan 1とFan 2の回転数はほぼ同じ値にシンクロしていることがこのグラフで示されている。AMPLIFYモードの場合1620〜1650rpm辺りで安定するが、QUIETモードでは1400〜1450rpmを変動する感じか。静音性を重視するなら文字どおりQUIETモード一択だが、AMPLIFYモードでも特にファンが騒々しいという印象はなかった(筆者の検証環境の場合電源やCPUクーラーのファン回転数のほうが大きいので、静音性の正確な評価はできない)。

動画編集に強いRTX 50シリーズ

 最後にクリエイティブ系アプリにおけるパフォーマンスも検証しておこう。

 まずはCGレンダリング系のテスト「Blender Benchmark」、「V-Ray Benchmark」で試す。Blenderのバージョンはv4.3.0、V-RayはGPUを利用する“RTX”“CUDA”をそれぞれ5分実施した。

Blender Benchmarkの計測結果
V-Ray Benchmarkの計測結果(5分稼働させた後の結果)

 CGレンダリング系テストでは、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYのパフォーマンスは今一つ。これは3DMarkやBlack Ops 6のようにRTX 50シリーズの強みを活用しないテスト結果に通じるものがある。V-Ray Benchmarkに関してはCUDAテストのスコアがRTX 4080どころかRTX 3080にすら負けているが、これはRTX 5090のレビュー時点から認識されている問題である。正しくRTX 50シリーズの評価をするにはV-Ray側の対応が必要だろう。ただしRTXテストに関して言えば、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYはキッチリと評価されていると言える。

 続いては「UL Procyon」の“Video Editing Benchmark”を試す。これは「Premiere Pro」を実際に動かし、4種類の動画のエンコード速度をスコア化するものである。エンコードデバイスはGPUを明示的に指定している。

UL Procyon:Video Editing Benchmarkの総合スコア
UL Procyon:Video Editing Benchmarkにおけるエンコード時間その1。出力設定 H.264&フルHDでのテスト
UL Procyon:Video Editing Benchmarkにおけるエンコード時間その2。出力設定 H.265&4Kでのテスト

 RTX 50シリーズの特徴の一つに、4:2:2 10bitカラーフォーマットに対応したNVEnc/NVDecの搭載というものがあるが、本検証時点におけるVideo Editing Benchmarkではこのカラーフォーマットは利用していない。しかしGPUエンコード速度に関しては従来のGeForceより明確に速く、特にH.265のエンコード速度においてRTX 3080やRTX 2080に対し大きなアドバンテージを確保している。RTX 4080との差は小さいが、前述の4:2:2 10bitカラーフォーマットの素材を直で扱いたければRTX 50シリーズ以外の選択肢はない。

 最後にUL Procyonの “AI Text Generation Benchmark”で大規模言語モデル(LLM)を利用したAIのパフォーマンスを比較してみよう。大小四つの学習モデルに対し七つのテキスト生成タスクを課し、その際出力されるトークン(単語)生成スピードおよび最初のトークンまでの待ち時間からスコアを導き出すというものである。どのGPUにおいても同じ学習モデル、同じAPI(ONNX)を利用している。

UL Procyon:AI Text Generation Benchmarkの計測結果。学習モデルの重さはPhi-3.5-mini-instructが一番軽く、LLama-2-13Bがもっとも重い
UL Procyon:AI Text Generation Benchmarkにおけるトークン生成スピード(OTS:Output Token Speed)。テストごとに平均値で集計している
UL Procyon:AI Text Generation Benchmarkにおける最初のトークンまでの時間(TTFT:Time to First Token)

 LLMでパラメーター数の多い学習モデルを本気で扱いたいならVRAM量の多いRTX 5090一択、という身もフタもない結論になるが、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYも従来の80番台GeForceに比してLLMのパフォーマンスが格段に向上していることは確認できただろう。特にパラメーターの多いLLama-2-13Bを使用した場合は、RTX 3080やRTX 2080はVRAM不足でギブアップするし、より規模の小さいLLama-3.1-8Bでもトークン生成スピードおよび応答性についても明確な差が見られる。

 RTX 50シリーズのTensorコアはFP4に対応することでAI処理性能を大きく伸ばしているが、メジャーなAIアプリでFP4が採用されるまでは、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYのAIパフォーマンスはRTX 4080よりややよい程度に止まるということは覚えておきたい。

問題は「入手できるか否か」だ

 以上でRTX 5080 AMP Extreme INFINITYのレビューは終了である。残念なことに、現状のRTX 50シリーズは検証の内容しだいで“RTX 4080やRTX 4080 SUPERと大差ない”から“RTX 4080のほぼ2倍”まで評価が揺れてしまう点は留意すべきところ。ファーストレビュー時はDLSS MFGだけがRTX 5080のゲームパフォーマンスを盛り上げる材料でしかなかったが、現時点ではSmooth Motionという強い武器もある(トラブルフリーとはいかないのが惜しい)。DLSS MFG対応ゲームが今後増えることで、ポジティブな評価も増えてくることだろう。

 唯一の懸念点は消費電力(TBP)が大きいこと。RTコアやTensorコアも総動員するような状況では16ピンケーブルに400W以上流れることを覚悟したシステム作りが求められることだろう。一応パッケージには8ピンケーブルからの変換ケーブルが同梱されているが、RTX 5080 AMP Extreme INFINITYを運用するのであれば良質な設計のATX 3.1対応電源ユニットを組み合わせ、ケーブルの曲げやケース内換気などにも気を配ることを強く推奨する。

 重量級ゲームを4K&最高画質で楽しみたいと考えているなら、このRTX 5080 AMP Extreme INFINITYを欲しいものリストのトップに据えてみてはどうだろうか。人気過ぎてリストに入れても購入ボタンを“ポチれない”かもしれないが……。

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