ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

歴史上の人物と会話を楽しみながら麻雀が打てる光栄の『麻雀大会』

この頃の光栄お馴染みの、厚みのあるパッケージにソフトとマニュアル、解説書が収められています。ラスベガスのカジノのような雰囲気を醸し出しているのは、中央に描かれたバニーキャラのためかもしれません。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、1987年末に光栄から発売された、ちょっと変わった麻雀ゲームの『麻雀大会』を取り上げます。

当初はあまり特色があるようには見えなかったソフトですが、途中で延期のお詫びが欄外に載ります。その後に掲載されたバージョンからは、実際に発売された作品と毛色がほぼ同じ広告になっていました。

 麻雀ゲームはRPGやアドベンチャーゲームと比べると作りやすいためか、マイコン時代から定番ソフトとして、さまざまなソフトハウスからリリースされていました。初期の頃は、本来は4人集まらなければ遊べない麻雀が一人でもプレイできるというだけで売れたのですが、時代が下ると共に特徴を求められるようになり、制作陣は頭をひねることとなります。

 そういったなかで生まれた麻雀ソフトとしては、インチキ無しの正統派を謳った『麻雀悟空』、マンガの登場キャラクターをパソコンゲーム上で再現した『ぎゅわんぶらぁ自己中心派』などが有名ですが、今回取り上げた光栄の『麻雀大会』は、同社が得意とする歴史シミュレーションゲームに登場するキャラクターたちが大勢参戦して、歴史上の有名人・著名人と卓を囲むことができるというのをウリにしていました。

最終的には、このような派手な広告が掲載されています。発売まで結果的には約3年ほどかかっていることを考えて広告を見ると、ただの麻雀ゲームとして埋もれさせるわけにはいかない!という気合いが伝わってくるようです。

 本作は当初、1985年4月に発売されたパソコン雑誌に“新発売!!”として広告が初登場したのですが、その時は「有名人と麻雀大会。メンバー選びが決まったら、ルールはお望みしだい。おまけにシャミセン、オチョクリ、泣き麻雀、おこって笑っても~~~~こんな麻雀見たことない!!」という説明文で、掲載されていた写真も芸能人や政治家と思われる人物CGでした。その後、1986年3月に発売された4月号から、発売延期のお詫びが掲載されると、しばらく広告が出てこなくなります。

 改めて登場したのは、1986年7月に発売された8月号になってから。この時期は、『信長の野望 全国版』と一緒に“近日発売”として載っていたのですが、『信長の野望 全国版』は1986年末に発売されたものの、『麻雀大会』だけは近日発売のままでした。しばらくは近日発売として広告が載り続けましたが、1987年12月中旬にようやくリリースされ、日の目を見ることとなります。価格は9,800円で、当初はいくつかの機種で発売予定だったものの、最終的にはPC-9801シリーズ向けのみとなりました。そんな本作は、プロデューサーをシブサワ・コウさんが、開発を『ウルトラ四人麻雀』や『プロフェッショナル麻雀』を手がけたシャノアールの周藤淳さんが担当する作品となっています。

雀荘モードでは、プレイヤーが対局相手を15人から自由に選べます。相手の所持金によっては、提示されたレートでは安すぎ・高すぎるために対局を断られてしまうことも。なお、対局を始める前に差しウマを賭けることもできました。

 ゲームを始めるとプレイヤーには所持金として1万円が与えられるのですが、これを誰よりも早く100万円に増やすことが目的です。そのためには雀荘で稼いだり、大会に参加して優勝賞金をかっさらうなど、ひたすら勝たなければなりません。対戦相手となるのは、同社の歴史シミュレーションゲームに登場するキャラクターを始めとした、歴史上の有名人物15人(シブサワ・コウさんが歴史上の有名人物かどうかはさておき)。織田信長や諸葛亮などは既発売のゲームに登場していましたが、勝海舟(『維新の嵐』)やナポレオン(『ランペルール』)などは、その時点では発売されていないタイトルに登場するキャラクターだったので、一足先に新作ソフトリリースを予見するもの、という意味もあったのかもしれません。

対局中は、顔アイコンの隣に吹き出しが表示され、賑やかな感じで進みます。その表情も、笑ったり泣いたり怒ったりとバリエーション豊かで、見ていて飽きません。

 操作方法はシンプルで、カーソルキーやテンキーの左右で牌を選択するほか、鳴いたりロンなどのアクションが起こせるときは牌が点滅し、そこでカーソルの下やテンキーの2を押すとメニューが表示されて、そこから行動を選ぶだけ。ルールも、雀荘モードであればかなり柔軟に設定することができるので、いわゆるローカルルールを設定しまくって楽しむこともできます。

大会モードはトーナメント形式で争われ、1回線の上位2名が準決勝に、準決勝の上位2名が決勝に進出できて、決勝戦のトップが優勝となり賞金を獲得できました。開始前には、優勝と準優勝するキャラを予想しての馬券購入も可能です。勝負に負けても、馬券で儲けることができれば100万円には近づくので問題なし!?

 ゲームを始めたばかりの時は大会の優勝賞金は0円となっているのですが、これは雀荘で対局を繰り返すことで増えていくので、最初は彼らが首を縦に振るレートを提示して雀荘で対局を重ねていく必要がありました。対局数をある程度重ねると大会の賞金も増えていくので、満を持して大会に挑み、優勝すれば賞金を一気に稼ぐことが出来ます。ちなみに、ゲームが進めば雀荘での提示できるレートも増えていくので、より効率的に儲けられるだけでなく、大損してしまうことも……

雀荘モードであれば、南場でノーテンだった場合の親は流れるのか?といったものから五筒開花はアリ? など、ルールをかなり柔軟に設定することができます。

 本作の特徴は、対局中に吹き出しとして表示される各キャラの性格を反映した発言でしょう。対局相手は、ユーモアあふれるさまざまな“おしゃべり”をするため、黙々と打つというよりは、雀荘で対局しているかのような雰囲気を味わえます。発言内容もキャラクターによってまちまちで、ダジャレを連発する人がいたかと思えば手の内を大げさにバラして相手の動揺を誘う人物もいるなど、非常に多彩でした。このあたりは、ソフトに同梱されているマニュアルにキャラクターの詳細紹介が書かれているので、それを読んでいるだけでも楽しくなれます。

成績表では、プレイヤーの平均順位や流局テンパイ率、和了率など、細かなデータを参照することができます。あなたの打ち方が、これで明らかに。

 歴史上の有名人・著名人が対局相手となる以外、ゲーム内容はオーソドックスな麻雀ゲームで、開発をシャノアールが手がけているだけあって思考ルーチンもしっかりしています。もちろん、コンピュータが山牌を覗いたり積み込み、プレイヤーの手牌を覗くといったイカサマは一切行っていなくて、純粋な思考アルゴリズムとバランス調整のみで各キャラクターの特徴も出していました。今遊んでも、徹夜するくらいには夢中になれる1本なのは間違いありません。実際、画面写真を撮影だけするはずが、気づけば半日ほど経過していたので……。

 本作はこの後にシリーズ化され、続編となる『麻雀大会II』が発売されますが、これはまた次の機会に取り上げたいと思います。

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