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どこでもスマホ+デジカメで高品質配信!AVerMedia「BU110」で改造バカが出先ワンマン配信に挑戦!

text by 高橋敏也

 AVerMediaの新キャプチャデバイス、BU110は……小さい。そもそも外箱が小さい。7cm、5cm、14.5cm角の外箱にキャプチャデバイス本体とUSBケーブル2本、簡単なマニュアルのリーフレットが入っている。このコンパクトな外箱に入るデバイスなのだから、さぞかし本体も小さいだろうと引っ張り出して驚いた。確かに小さいのである。

 アルミ製のスタイリッシュな本体は85mm×43mm×17mmというサイズで、重量は何と約82gだと言う。嘘偽りなくポケットに入ってしまうサイズと重さのBU110だが、その実力は外観から受ける印象とはかけ離れたもの。HDMI入力を1080pの60fpsでキャプチャして、USB Type-C(USB 3.0対応)から出力する。そしてここがポイント、出力先はなじみ深いPCやMacでもいいのだが、Android搭載のスマホでもいいのだ。

 HDMI出力をキャプチャし、それをスマホに入力する。あとは対応するアプリがあれば映像を録画したりライブ配信したりをPCレスで行なうことができる。しかもBU110なら高品質に、コンパクトなシステム構成で行なうことができるというわけだ。では実際のところ、どういった構成で、どのような配信が実現可能なのか? やってみれば分かるさ! ということでやってみた!

小型軽量USBキャプチャデバイス、出先からの配信をPCレスで高品質に!

 まず何よりBU110のパッケージ内容だが、驚くほど小さくて軽いBU110本体に加え、シンプルなマニュアル、そして2本のUSBケーブルが付属している。1本はType-C to Type-Cケーブル、そしてもう1本はType-C to Type-A、どちらも長さが1メートルでUSB 3.0に対応している。BU110のUSBポートがType-Cなので、PCやスマホに接続する場合、どちらかのケーブルで接続することになる。なお、HDMIケーブルは付属していないので、各自のシステムに合わせたものを別途用意することになる。BU110のHDMIポートは標準サイズだ。

パッケージ内容はシンプル。本体、USBケーブル2本、そしてクイックマニュアル
コンパクトでシンブル、堅牢なBU110本体。SDメモリーカードと比較すると、その小ささが実感できる。重量何と約82g! なお本体右寄り、中央のラインはインジケータとしてランプが点灯する
Type-C-Type-C、Type-C-Type-AのUSBケーブル。どちらもUSB 3.0対応

 上記のようにBU110は入力インターフェースがHDMI、出力インターフェースがUSB 3.0となるのだが、USB 2.0で使用することも可能だ。エンコードはソフトウェアエンコードとなり、配信(録画)側にはそれなりの処理パワーが求められる。動作環境としてメーカーはデスクトップPCでIntel Core i5-4440 3.10GHz以上、ノートPCでIntel Core i7-4810MQ 以上を推奨している。また、ビデオカードに関してはデスクトップPCでNVIDIAのGeForce GTX 660同等以上を推奨しているが、こちらもあくまで推奨、ビデオカードもCPUも速ければ速いほどいい。スマホに関して言えば使用するアプリの対応状況に依存することになる。もちろんエンコードをスマホで行なうのだから、高性能であるに越したことはないが。

キャプチャ用のポートは標準のHDMI、USB出力ポートはType-Cとなっている
本体裏面には……何もない
OLYMPUS OM-D E-M1IIと比較してもこのとおり。逆に小さ過ぎて失くさないよう注意

 キャプチャ性能に関しては最大入力解像度がフルHD(1,920×1,080)の60fps、最大録画解像度も同様である。対応ビデオフォーマットはUSB 3.0接続時だとYUY2かMotionJPEG、USB 2.0接続時はMotionJPEGとなる。PC接続、スマホ接続いずれの場合もドライバは不要、USBデバイスとして認識される。配信などを行なうツールに関してはメーカーであるAVerMediaのサイトからPC版の「AVerMedia RECentral」をダウンロードして利用できるほか、PCやMacではサードパーティのツール、OBS StudioやXsplitなども利用可能だ。気になるスマホの対応アプリだが、公式サイトではAndroid版のVault Micro製、CameraFiもしくはCameraFi LIVEを紹介している。

 スマホのアプリというと私も含めてPCメインの人間は多少距離を感じてしまうものだが、いざ使ってみるとこれが実に便利。基本的に「直感で使える」ものがほとんどなため、試行錯誤しているうちに使い方がマスターできる。基本的にCameraFi LIVEも同じだった。シンプルなインターフェースをあれこれ試しているうちに、気が付けば使えるようになっていた。なお、CameraFiは基本的にキャプチャ映像の視聴と録画が基本であり、ライブ配信などを行ないたい場合はCameraFi LIVEを使用することになる。CameraFi LIVEは基本無料のアプリだが、フル機能を使用したい場合は有料になる。定期購読アプリ、毎月課金なのでその点だけは注意してほしい。なお、本稿で使用しているCameraFi LIVEは課金版。無料版との大きな違いはフルHDサポート(無料版は720pまで)とウォーターマークおよび広告の非表示だ。

 さて、基本的にBU110はHDMI映像をキャプチャするUSBデバイスであり、PCと接続して同社から提供されるツール、RECentralを使えばキャプチャした映像をそのまま高品質に、あるいは別の映像とミックスしたり、テロップを入れながら録画、配信したりすることができる。だが、これは同社のほかのデバイスでもできることなのだ。コンパクトで軽量なBU110の得意技はやはり、スマホと連動した高品質配信ということになる。では具体的にBU110とスマホを活用した高品質配信とはどういったものなのか? 実際にやってみよう。

スマホから配信、しかも高品質!

 スマホを持てば誰でもYouTuber、はたまた配信者になれる、そんな時代である。しかしスマホだけで配信しようとするとカメラの制限でどうしてもカメラワークに制限が発生したり、音や映像の品質に満足できないこともあるだろう。とくに屋外での配信だとその傾向が強い。光が足りない、カメラの動きが悪い、凝ったことができない……。「もっと本格的にテレビ番組の現場レポートのような配信がしたい」、「通信環境が許す限り高品質な配信がしたい」。そんなことを考えているなら、AVerMediaのBU110とスマホの組み合わせを軸に機動的な配信システムを考えてみてほしい。

 では具体的にどんなシステムになるのか、実際にそれをやってみた。条件はきわめてシンプル、今現在私が使っているものを寄せ集めて、そこにBU110を組み込んで出先からの配信を想定したシステムを組んだのでる。実際に普段使っているスマホにCameraFi LIVEをインストールし、それをBU110と組み合わせる。カメラは高品質を意識したレンズ交換式のミラーレス、それに収録で以前使用したビデオカメラ用のガンマイク(に、近いもの)を載せ、グリップ代わりにミニ三脚を用意する。マイクやスマホの固定には、手持ちのアダプタを使用した。

【使用機材】

カメラ:オリンパス OM-D E-M1II(レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO)
ガンマイク:SHURE LensHopper VP83
スマホ:ソニー Xperia XZ Premium (G8142)
コンパクト三脚:Velbon CUBE(生産終了品)
そのほか:HDMIケーブル(カメラMicro HDMI、BU110側HDMI)、ホットシュー対応アダプタ、スマホホルダー、Type-Cケーブル(BU110付属品より短いもの)

文中にある機材一式。これだけでワイヤレスな高品質配信がどこからでも可能(ただしデータ通信ができること)

 上記の基材を組み合わせると、片手で持てる「BU110とスマホを組み込んだ」システムが完成する。重量はトータルで2kg弱と決して軽くはないが、片手で三脚部分を握って持って歩き回れるし、三脚を伸ばせば固定カメラとしても使用できる。電力を必要とするカメラ、スマホともにバッテリ駆動であり、出先で電源を確保する必要はない。さらにリアルタイム配信の通信にはスマホを利用している。できればスマホをしっかりしたWi-Fiに接続したいところだが、データ通信による配信も可能。そのため、本当にさまざまな場所からデジカメを使って手軽に配信することができる。

映像にも音声にも妥協しない機動性の高い配信システム。重量はギリギリ2kgを切る

 そしてこのシステム最大の特長は、いわゆるPinPで配信者をメイン映像に組み込むことができることだ。メインの映像はミラーレスカメラのHDMI映像をBU110でキャプチャしたものだが、そこにCameraFi LIVEの機能を使ってスマホのインカメラ(前面カメラ)の映像を組み込むことができる。「ピクチャー・イン・ピクチャー=PinP」ということだ。たとえばこういう状況を思い浮かべてほしい。あるイベントをレポートに来た配信者、イベントの様子をメイン映像として、そこに自分のレポートや感想を音声として混ぜ込む。だが、できればレポーターとしての配信者の表情も映像として組み込みたい。そんな状況にこのシステムは最適と言える。

 はたまた誰かにインタビューしているシーンを配信したいとする。取材対象にメインカメラを向けるのはいいとして、インタビュワーである配信者も声だけでなく、自身の表情も見せていきたい。上記のシステムはそんなニーズにも適している。もちろんインタビューのときだけカメラを固定にし、インタビュワーと並んでメイン映像に入るという手はある。だが、そのときカメラやアングルを操作するのは誰なのか? という話でもあるのだ。別の言い方をすると今回組んだシステムは「一人で全部やる配信」、すなわち外部からのソロ配信にも最適ということなのである。

毎度おなじみツクモパソコン本店。ターゲットは3階にあるキャプチャ王国。手には今回組んだ配信システムがある

 では今回組んだシステム、実際の使い勝手はどうなのか? 組んだ当人、すなわち私が実際に使ってみなければ話にならないということで「外から配信」してみた! BU110がキャプチャデバイスということで、キャプチャならキャプチャにちなんだ場所でしょうという流れになり、BU110をはじめとするAVerMedia製品を取り扱っている(ここ重要)ツクモパソコン本店3階にある「ツクモキャプチャ王国」を取材するというシチュエーションで今回のシステムを活用してみた。

事前の機材組み立て、いわゆる「店開き」。構成がシンプルなので店開きも店じまいもスピーディに行なえる
キャプチャ王国の王様(?)である菅原さんにインタビュー。スマホのインカメラで私の顔も配信画面にPinPされている。キャプチャ王国のみなさんには、お世話になりました!
ここでTips。BU110の固定方法だが、三脚の適当な場所に面ファスナーで固定すると便利。結束バンドや両面テープなどで固定してもいいのだが、着脱を考えるとこれが一番スムーズに行なえるようだ

 さて、実際に配信を行なって注意点が分かってきた。ざっとまとめると以下のようになる。

通信スピードとのマッチングを優先する

 今回のシステムではキャプチャにBU110を使い、スマホを配信デバイス兼通信デバイスとして使っている。スマホに関しては私が日常的に利用しているソニーのXperia XZ Premium、ドコモのSIMカードを入れた状態だ。ツクモパソコン本店の周辺だと「4G+」の表示があり、十分な通信スピードを確保できたのだが(秋葉原ですからねえ)、それでもあえて1080p(16:9、フルHD)にはしなかった。

 というのも画質設定をHighにして1080pの配信テストを事前に行なったところ、フレームレートがやや低くなり動画のカクツキが目立つ場面が増えることが分かったのだ。このため画質はHighのまま、解像度を1080pから720pに落としたのだ。それでも配信の画面が乱れたり、カクつくことが何度かあった。通信スピードが変化するタイミングなどでその現象が発生していたように思う。

 通信スピードによっては解像度、画質設定ともにかなり落とさなくてはならないと思う。逆に十分なスピードのWi-Fi回線を使える場合は、最高画質の配信が可能となる。この辺りは現場で実際にテストして決めて行くしかない。

CameraFi LIVEはPlayストアからダウンロード、インストールできる
基本無料だが、広告を消して高度な機能を使用したい場合は月間購入する
YouTubeなどはアカウント情報で配信を開始できるが、ニコ生の場合はRTMPを手動で入力して配信することになる(ニコ生の場合、配信枠を確保してから放送を開始する)
BU110はUSBデバイスとして認識される
USBデバイス、すなわちBU110でキャプチャしているHDMI映像(音声含む)をメイン映像にする
画面右下の歯車アイコンでセッティング画面が表示される
解像度は有料版ならフルHDまで設定できる。データ転送スピードが確保できない場合は、無理をせずに720p以下にした方がいい
配信映像のクオリティに関しても、データ転送スピードに応じて設定を変更する
画面を右からスワイプするとカメラの設定が表示される
Xperiaのカメラを追加する。PIPをチェックするとピクチャ・イン・ピクチャとなる
しかし、初期状態だとアウトカメラが表示されるので……
画面上部中央のカメラマークをタッチしてインカメラに切り換える
ちなみにメインカメラ(この設定だとVIDEO 2)は「AVerMedia USB Device」すなわちBU110となっている(もちろんXperiaのカメラとメインを入れ替えることもできる)
配信開始。なお、非公開で配信を開始すると、YouTubeに映像を録画することができる。後から編集して公開するといった使い方も可能なのだ

機動力重視=軽く、コンパクトに

 今回のテーマは「出先からの高画質配信」ということだったので、カメラはあえてミラーレスのハイエンド機を使用した。十分なデータ通信スピードが確保できればその高画質をより活かせたのだが、スマホ+ミラーレスでの4G配信の実例ということでご理解いただきたい。さて、通信スピードに合わせてクオリティを大きく下げた場合はカメラの画質は活きてこない。それならば割り切ってもっと軽いカメラにするという手もあるだろう。

 今回のシステムだと2kg弱。カメラをもっと軽いものにすれば機動力が増すはずだ。

カメラを小型軽量のものにすると、機動性がグッと工向上する。GoProと外部マイクを組み合わせてみた
GoProの内蔵マイクだとさすがに音的にはプア。なので外部マイクの接続は必須と思ったほうがいい(映像のみ重視というなら話は別だが)
映像を重視してより小型軽量なシステムというなら、スタビライザーと組み合わせてもいい
ビデオカメラとの組み合わせも考えてみたが、重量的なメリットはあまりなかった

スマホのバッテリが最重要

 今回組んだシステムで、バッテリの減りが一番早かったのは案の定スマホだった。カメラには大型のバッテリが入っているし、マイクは単3形電池だがそもそも消費電力は大きくない。BU110はバスパワーで動作するのでバッテリを必要としない。そう、エンコードとデータ通信を行ないながら、バスパワーでBU110に電力を供給するスマホはバッテリの減りがそうとうに早い。

 かと言って充電に使用すべきUSBポートにはBU110が接続されているため、使いながら充電というわけにもいかない(ほとんどの場合、そうだと思う)。長丁場のイベントなどをライブ配信したい場合は、スマホのバッテリ残量に十分注意したい。状況によってはセカンドのスマホを用意する、あるいはスマホではなくPCからの配信(電源を接続して)に切り換えるといったオペレーションを考えておくといいだろう。

サウンドクオリティにも配慮

 今回は基本的に高品質な映像の配信をテーマとしたのだが、「高品質な配信」の中には動画だけでなく音声も含まれる。そしてとくにライブ配信の場合は音声が重要視される場合も多い。実は最近のデジタルカメラ、ビデオカメラが搭載している内蔵マイクの品質はかなり高いレベルにある。それを活用してもいいのだが、今回はあえて外部マイクを使ってみた。というのもカメラ内蔵マイクの場合、周囲の状況によって「音を拾い過ぎる」場合もあるからだ。この音声に関しては試行錯誤を求められる部分なのだが「こういったシステムもある」という程度に覚えておいてほしい。

シーンに合わせて活用したいBU110

 今回、BU110を紹介するにあたってなぜ「外からの配信(あるいは収録)」を行なったのか? ぶっちゃけた話、BU110がコンパクトで軽いからである。持ち歩くのがまったく苦にならない軽さとサイズ、その見た目からは想像できない高画質なキャプチャ性能。それを活かすシーンはやはり野外での配信(収録)だと確信したからだ。

 もちろん何度も書いてきたとおり、BU110はノートPCやデスクトップPC用のキャプチャデバイスとして使っても便利である。カメラだけでなくPCのHDMI出力をキャプチャしたり、ゲームコンソール機のプレイ映像をキャプチャしてもいい。しかしさすがは定番キャプチャデバイスメーカーのAVerMedia、ほかにも優秀なキャプチャデバイスが揃っている。以前私が紹介した拡張カードタイプのLive Gamer HD 2 C988なら、PCに内蔵することができる。ベストセラーのAVT-C875ならPCを使わずに家庭用ゲーム機やPCのゲーム動画を録画することができる。

 「適所適材」というならBU110は「モバイルキャプチャデバイス」として大活躍してくれるはずだ。本稿で紹介したように高画質なカメラとスマホ、そしてBU110を組み合わせてライブ配信してもいいし、動画サーバーに録画しておき後から編集してアップロード(共有、公開)してもいい。講演会や発表会などに持ち込んでもジャマにはならないはずだ。

RECentral 4を使えばキャプチャ映像の録画や配信を簡単に行える。PinPやクロマキーといった機能も充実している。AVerMediaのサイトからダウンロードできる
対応サイトならすぐに配信を開始できるし、RTMPを指定して配信することもできる

 繰り返しになるがAVerMediaのキャプチャデバイスは多彩なラインナップを誇っている。その中にあってBU110は「小型軽量」という点で際立った存在だ。ぜひその特長を活かした用途を考えていきたい。

イベントなどを定位置から配信、有線のネットワークに接続できるならこういったシステムのほうがいいだろう

<改造バカがBU110とミラーレスで配信した映像はこちら!>

※Youtubeで非公開生配信した映像をカット編集したものです

[制作協力:AVerMedia]

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