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MSI「H370 GAMING PRO CARBON」は自作トレンド満載のハイコスパマザーだ!
Mystic Light Syncで高性能PC環境をトータルコーディネイト text by 加藤勝明
2018年6月19日 06:05
Intelの「Coffee Lake-S」こと第8世代Coreプロセッサは当初はモデル数が限られていたが、4月に新たに17モデルの発売が開始され、自分の要求スペックや予算に合わせた製品選びができるようになった。それとほぼ同時にリリースされたのが、H370やB360といった低予算自作向けのチップセットだ。
これらのチップセットは、Z370の下位であるため、採用マザーボードは実売価格が安いことが武器。チップセットにUSB 3.1 Gen2(10Gbps)や無線LAN機能(CNVi)が統合されたことにより、これらを外部チップに頼っていたZ370マザーよりもコストを抑えられる、というわけである。Core i7-8700Kなどの「K付き」CPUによるオーバークロックやSLIには非対応だが、こうした機能を必要としない方も多いはず。その場合はむしろ安価なことのほうがありがたいだろう。
H370チップセットを搭載したマザーは各社から多数リリース済み、機能的にもかなり差があるが、今回はバランスのよい機能を備えている上に、見た目をクールに演出できる今時の1枚としてMSI製の「H370 GAMING PRO CARBON」をチェックしてみたい。この製品は同社製のZ370搭載のミドルレンジクラスの製品と比べると、6,000円程度安い……ということは、CPUやビデオカードなどにその分予算を回せるということになる。高性能の“魅せるPC”が組みたい人にとっては、これはスルーできない1枚と言えるだろう。
後発だけによりシャープなイメージに
このH370 GAMING PRO CARBONは、同社製の「Z370 GAMING PRO CARBON AC」の姉妹モデルにあたるスタンダードなATXマザーだ。黒ベースにシルバーをアクセントに入れたZ370版に比べ、このH370 GAMING PRO CARBONはよりトーンを抑えた、スッキリしたデザインに仕上がっている。
後述するマザーのイルミネーションを魅せるには、マザーの自己主張は少ないほうがよいと考えることもできるだろう。バックパネル付近のヒートシンクの造形も、より洗練された印象になった。
Z370版と比べ実売で6,000円程度安くなってはいるものの、同社のH370マザーでは最上位にあたる製品だけあって、堅牢性と耐久性に力を入れた設計となっている。大型ビデオカード設置時にも安心な「PCI-E Steel Armor」や、メモリ回路を独立させることで安定性を高める「DDR4 Boost」、そしてCPU側のM.2スロットにはSSDを過熱から守るための「M.2 Shield」が配置されている。
サウンド機能はアナログとデジタルを分離した回路や、日本ケミコン製のオーディオコンデンサや金メッキコネクタなど、今や当たり前のクオリティのものが実装されているが、本機はオーディオ用ミドルウェア「Nahimic3」を追加することで、高音質と機能の両面を攻めている。Nahimic3はRealtekのHDオーディオコーデックドライバとは別にインストール可能なので、ゲームや動画の臨場感を追求したい人は導入すればよいし、システムを極力プレーンな状態で運用したい人は導入しなくてもよい。変に機能を押し付けないスタンスは好感が持てる。
ちなみに、Nahimic3の再生音質向上機能を利用するには、オンボードのサウンド出力端子を使用することが大前提。HDMIやDisplayPort経由、あるいはUSBオーディオには効かない点に注意したい。
今のマザーは光らせてこそナンボ
最近のマザーのトレンドと言えば、RGB LEDを利用したイルミネーションだ。とくに上位のゲーミングマザーでは「光らないマザーはマザーに非ず」といった感すらある。H370 GAMING PRO CARBONにも、マザー下部とチップセットのヒートシンクにアドレサブルなUnderglow LEDを備え、さらにPCケースやLEDテープを接続するためのピンヘッダも搭載されている。ピンヘッダは、テープ全体が同じ色で点灯する汎用的なLED制御仕様の5050規格に対応したもの、細かな発光制御が可能なLEDモジュールの規格であるWS2812BのLEDテープに対応するもの、さらにCorsairの「RGB Fan LED Hub」(同社のLED制御ハブ)を接続する専用ヘッダ、の3系統を搭載している。
オンボードのRGB LEDやLED用ピンヘッダの発光色やパターンはMSI製の制御用ソフト「Mystic Light」で制御できる。メモリモジュールやMSI製ビデオカード上にあるRGB LED、さらには液晶ディスプレイ側のLEDも、Mystic Light対応なら一括管理可能だ。
簡易OC機能はMSI製ビデオカードのみの対応
最後にMystic Light以外のソフトウェア的なポイントも一つ紹介しておこう。MSI製マザーとビデオカードを選択する意義の一つが簡易OC機能である「Gaming App」だ。Z370マザーだとワンクリックでCPUとGPUを同時にOCできるが、H370 GAMING PRO CARBONでは(K付きCPUであっても)ビデオカード側のクロックのみ調整される。ただ今回試した環境はWindows 10のApril 2018 Updateリリースすぐ後に構築したものだったせいか、Gaming App上でデフォルト設定の「Gaming」から、「OC」や「Silent」に設定に切り換えても、ベンチマーク中のGPUクロックの上限値に大きな差はみられなかった。
だがこのクロック調整以外にも、キーボードへのマクロ機能の提供やマウス感度の調整、そして液晶の色温度調整など、ゲーマーに役立つ機能がたくさん組み込まれている。このGaming Appだけは組み込んでおいてもよいだろう。
MSI製の湾曲ゲーミング液晶もいいぞ!
今回の検証を進める際、MSIからマザーとともに借⽤した同社製の湾曲ゲーミング液晶「Optix MPG27CQ」が、期待以上のすばらしさだったので簡単に紹介したい。
本機は、湾曲率1,800R、27型のVAパネルを採用し、リフレッシュレートは144Hz、応答速度最大1msのWQHD液晶である。4KやHDR1000液晶が今のハイエンド志向ゲーマーの理想形だが、4Kでまともなフレームレートを得られる環境が限られている上にHDR1000対応だと値段もべらぼうに高い。それならば、現行GPUでもフレームレートの稼ぎやすいWQHDにして、リフレッシュレートの高いものにしたほうが、コスパは当然高くなるのだ。ディスプレイ同期技術としてAMD系の「FreeSync」に対応する。
この液晶のポイントはPC本体とUSBケーブルで接続することで、液晶自体の設定をWindows上から実施できる仕組が用意されていることだ。OSDの操作性も悪くはないが、いちいち画面の背面にあるスティックに手を伸ばして調整するのはめんどう。そこで同社の「Gaming OSD」を導入してやれば、輝度やコントラストといった定番の設定だけでなく、Picture in Picture(PiP)/Picture by Picture(PbP)の設定もWindows上で変更できる。
OC不要ならベストのコスパを発揮するミドルレンジ
ハイエンド志向の強いZ370よりもコストに敏感なH370を搭載したマザーボードは、どうしてもZ370マザーに比べるとスペックや機能面で見劣りするだけでなく、デザイン面においても妥協を強いられるものが多い。だがこのH370 GAMING PRO CARBONは、適度にコストを抑えつつも、シャープで渋い「男の子が大好き」系なデザインで攻めたマザーに仕上がっている。CPUやメモリのOCは仕様上できないものの、第8世代Coreプロセッサを使った「見栄えのするPC」を適度な予算で組みたい人には最適な1枚と言える。
とくにMystic Light Syncに対応したPCパーツや周辺デバイスで固めれば、PCの雰囲気をトータルで演出しやすいのは◎だ。自分しか使わないPCにイルミネーションで飾っても……と考える人もいるだろうが、ライティングがそれっぽくなっただけでゲームに挑む雰囲気も変わるし、何より「俺のゲーミングPC環境を見せたい!」というときに絶大な効果を発揮する。Mystic Light Syncは自己満足と言い切ればそれまでだが、これを利用してほかのユーザーとつながるとっかかりになる、という点は大きい。一度試してはどうだろうか。
[制作協力:MSI]