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MSI「H370 GAMING PRO CARBON」は自作トレンド満載のハイコスパマザーだ!

Mystic Light Syncで高性能PC環境をトータルコーディネイト text by 加藤勝明

 Intelの「Coffee Lake-S」こと第8世代Coreプロセッサは当初はモデル数が限られていたが、4月に新たに17モデルの発売が開始され、自分の要求スペックや予算に合わせた製品選びができるようになった。それとほぼ同時にリリースされたのが、H370やB360といった低予算自作向けのチップセットだ。

 これらのチップセットは、Z370の下位であるため、採用マザーボードは実売価格が安いことが武器。チップセットにUSB 3.1 Gen2(10Gbps)や無線LAN機能(CNVi)が統合されたことにより、これらを外部チップに頼っていたZ370マザーよりもコストを抑えられる、というわけである。Core i7-8700Kなどの「K付き」CPUによるオーバークロックやSLIには非対応だが、こうした機能を必要としない方も多いはず。その場合はむしろ安価なことのほうがありがたいだろう。

最新のH370チップセットを採用したMSI「H370 GAMING PRO CARBON」。実売価格は1万7000円前後

 H370チップセットを搭載したマザーは各社から多数リリース済み、機能的にもかなり差があるが、今回はバランスのよい機能を備えている上に、見た目をクールに演出できる今時の1枚としてMSI製の「H370 GAMING PRO CARBON」をチェックしてみたい。この製品は同社製のZ370搭載のミドルレンジクラスの製品と比べると、6,000円程度安い……ということは、CPUやビデオカードなどにその分予算を回せるということになる。高性能の“魅せるPC”が組みたい人にとっては、これはスルーできない1枚と言えるだろう。

後発だけによりシャープなイメージに

チップセットはH370。CPUやメモリのOCには非対応だが、Intel製チップセットとしては初めてUSB 3.1 Gen2対応コントローラを統合したほか、CNViと呼ばれる無線LAN機能(802.11ac)を統合している。ただ本機では、後者を利用するための通信用のM.2スロットは実装されていない

 このH370 GAMING PRO CARBONは、同社製の「Z370 GAMING PRO CARBON AC」の姉妹モデルにあたるスタンダードなATXマザーだ。黒ベースにシルバーをアクセントに入れたZ370版に比べ、このH370 GAMING PRO CARBONはよりトーンを抑えた、スッキリしたデザインに仕上がっている。

 後述するマザーのイルミネーションを魅せるには、マザーの自己主張は少ないほうがよいと考えることもできるだろう。バックパネル付近のヒートシンクの造形も、より洗練された印象になった。

電源回路はZ370版と同じ11フェーズだが、より安定性を追求したレイアウトに変更されている。そのため、Core i7-8700をフル稼働させても安心だ
USB Type-Cとその上の赤いType-Aがチップセット由来のUSB 3.1 Gen2だ。それ以外の赤いUSBポートはオンボードのASM1074に接続されたUSB 3.0だ
チップセット統合のUSB 3.1 Gen2はマザー上のこのコネクタからPCケースのフロントパネルに引き出せる。USB 3.1 Gen2非対応のPCケースの場合は、マザー端にあるUSB 3.0用のピンヘッダを利用しよう

 Z370版と比べ実売で6,000円程度安くなってはいるものの、同社のH370マザーでは最上位にあたる製品だけあって、堅牢性と耐久性に力を入れた設計となっている。大型ビデオカード設置時にも安心な「PCI-E Steel Armor」や、メモリ回路を独立させることで安定性を高める「DDR4 Boost」、そしてCPU側のM.2スロットにはSSDを過熱から守るための「M.2 Shield」が配置されている。

ビデオカードを設置する一番CPUに近いPCI Expressスロットは金属カバーで補強された「PCI-E Steel Armor」仕様だ。ハンダで強固にカバーごと固定してあるので、3スロット級の大型カードでもマザーやスロットが破損する心配は非常に少ない
M.2スロットはどちらもPCI Express Gen3 x4接続。NVMe対応のM.2 SSDやOptaneメモリーを接続することで快適なストレージ環境を構築できる。CPU側のM.2スロットにはSSDの放熱を促進するための「M.2 Shield」を装備。CPU側のほうには、一般的な80mmモジュールより長い110mmモジュールが装着できる

 サウンド機能はアナログとデジタルを分離した回路や、日本ケミコン製のオーディオコンデンサや金メッキコネクタなど、今や当たり前のクオリティのものが実装されているが、本機はオーディオ用ミドルウェア「Nahimic3」を追加することで、高音質と機能の両面を攻めている。Nahimic3はRealtekのHDオーディオコーデックドライバとは別にインストール可能なので、ゲームや動画の臨場感を追求したい人は導入すればよいし、システムを極力プレーンな状態で運用したい人は導入しなくてもよい。変に機能を押し付けないスタンスは好感が持てる。

 ちなみに、Nahimic3の再生音質向上機能を利用するには、オンボードのサウンド出力端子を使用することが大前提。HDMIやDisplayPort経由、あるいはUSBオーディオには効かない点に注意したい。

高品質なオーディオグレードコンデンサを備えたサウンド回路。「Audio Boost 4」と書かれたシールドの下にRealtek製のHDオーディオコーデックが設置されている
FPSやRTSなどのゲームのジャンルごとに低音や高音強調を最適な値にセットしたり、バーチャルサラウンド効果を追加するサウンド用ミドルウェア「Nahimic3」。同社のノートPCなどでもおなじみのものだ
Nahimic3にはキーボードやパッドのボタンに特定の効果音を割り当てることができる。ゲーム配信中に自分で「合いの手」を入れたいときに役立つ機能だ

今のマザーは光らせてこそナンボ

 最近のマザーのトレンドと言えば、RGB LEDを利用したイルミネーションだ。とくに上位のゲーミングマザーでは「光らないマザーはマザーに非ず」といった感すらある。H370 GAMING PRO CARBONにも、マザー下部とチップセットのヒートシンクにアドレサブルなUnderglow LEDを備え、さらにPCケースやLEDテープを接続するためのピンヘッダも搭載されている。ピンヘッダは、テープ全体が同じ色で点灯する汎用的なLED制御仕様の5050規格に対応したもの、細かな発光制御が可能なLEDモジュールの規格であるWS2812BのLEDテープに対応するもの、さらにCorsairの「RGB Fan LED Hub」(同社のLED制御ハブ)を接続する専用ヘッダ、の3系統を搭載している。

 オンボードのRGB LEDやLED用ピンヘッダの発光色やパターンはMSI製の制御用ソフト「Mystic Light」で制御できる。メモリモジュールやMSI製ビデオカード上にあるRGB LED、さらには液晶ディスプレイ側のLEDも、Mystic Light対応なら一括管理可能だ。

CPUソケットの近くにある「JCORSAIR1」ピンヘッダ。ここにCorsair製「RGB Fan LED Hub」を接続し、そこからCorsair製のRGB LED内蔵ファンに接続すると効率よく配線できる
MSI製プロダクトにおけるRGB LED制御用ソフト「Mystic Light」。「Mystic Light Sync」に対応したデバイスなら、MSI製以外の製品でもイルミネーションの制御が可能になる。図中「デバイスを同期」の下にある四つのアイコンが、Mystic Light Syncに対応したデバイスを示している
今回テストしたパーツで実際に発光させてみたところ。全デバイスの発光色がキッチリと揃っている。また、デバイスごとに発光のパターンを変えることももちろん可能だ。組み込んだビデオカードは同社GTX 1070 Ti搭載カード「GeForce GTX 1070 Ti GAMING 8G」。ファンガードの部分の発光は赤オンリーだが、カード上部のドラゴンのロゴ部分がMystic Light Syncに対応
今回試用したPCケースとディスプレイ。PCケースは、強化ガラスボディとLEDファンが目を引く「MAG PYLON」。標準で3基搭載するRGB LEDはMystic Light Syncに対応する。ディスプレイは湾曲ゲーミング液晶「Optix MPG27CQ」(詳細は後述)
キーボード&マウスはMSI製「Vigor GK40 COMBO JP」を使用。キーボードのキーバックライトに仕込まれたRGB LEDとマザーのRGB LEDの発光色とシンクロさせることができる

簡易OC機能はMSI製ビデオカードのみの対応

 最後にMystic Light以外のソフトウェア的なポイントも一つ紹介しておこう。MSI製マザーとビデオカードを選択する意義の一つが簡易OC機能である「Gaming App」だ。Z370マザーだとワンクリックでCPUとGPUを同時にOCできるが、H370 GAMING PRO CARBONでは(K付きCPUであっても)ビデオカード側のクロックのみ調整される。ただ今回試した環境はWindows 10のApril 2018 Updateリリースすぐ後に構築したものだったせいか、Gaming App上でデフォルト設定の「Gaming」から、「OC」や「Silent」に設定に切り換えても、ベンチマーク中のGPUクロックの上限値に大きな差はみられなかった。

 だがこのクロック調整以外にも、キーボードへのマクロ機能の提供やマウス感度の調整、そして液晶の色温度調整など、ゲーマーに役立つ機能がたくさん組み込まれている。このGaming Appだけは組み込んでおいてもよいだろう。

MSI製マザーに付属する便利機能は「MSI App Manager」からすべてアクセスできる。RAMディスクを管理する「RAMDisk」やオンボードの優先LANの帯域調整を行なう「Gaming Lan Manager」などのアイコンが見える
MSI製の便利機能の中でゲーマーにもっとも有効と思われるのがこの「Gaming App」。H370マザーの場合は、MSI製ビデオカードのGPUクロックを「OC」、「Gaming」、「Silent」の3段階で変更できる

MSI製の湾曲ゲーミング液晶もいいぞ!

 今回の検証を進める際、MSIからマザーとともに借⽤した同社製の湾曲ゲーミング液晶「Optix MPG27CQ」が、期待以上のすばらしさだったので簡単に紹介したい。

 本機は、湾曲率1,800R、27型のVAパネルを採用し、リフレッシュレートは144Hz、応答速度最大1msのWQHD液晶である。4KやHDR1000液晶が今のハイエンド志向ゲーマーの理想形だが、4Kでまともなフレームレートを得られる環境が限られている上にHDR1000対応だと値段もべらぼうに高い。それならば、現行GPUでもフレームレートの稼ぎやすいWQHDにして、リフレッシュレートの高いものにしたほうが、コスパは当然高くなるのだ。ディスプレイ同期技術としてAMD系の「FreeSync」に対応する。

「Optix MPG27CQ」。湾曲率1,800Rのおかげで27型でも抜群の没入感が得られるだけでなく、周辺部へ視線を振ってもピント合わせの負担が平面よりも軽減されている点に注目
映像入力はDisplayPortとHDMIで行なう。USB 3.0のハブ機能はこのディスプレイ本体の制御用の接続も兼ねている
ディスプレイ手前部分および裏面にはイルミネーション機能を備える。なお、ディスプレイ前面のイルミネーションは単なる飾りではなく、PC側に「SteelSeries Engin 3」を導入しておくことで、「CS:GO」など一部のゲームにて弾薬やHPなどの状況に応じて発光色を変えることができる

 この液晶のポイントはPC本体とUSBケーブルで接続することで、液晶自体の設定をWindows上から実施できる仕組が用意されていることだ。OSDの操作性も悪くはないが、いちいち画面の背面にあるスティックに手を伸ばして調整するのはめんどう。そこで同社の「Gaming OSD」を導入してやれば、輝度やコントラストといった定番の設定だけでなく、Picture in Picture(PiP)/Picture by Picture(PbP)の設定もWindows上で変更できる。

OSDの操作はこのスティックで行なう。押し込むと選択、上下左右でメニュー項目の移動やモード切り換えができる
ゲームのジャンルや利用シーンごとに輝度や色温度などの設定をセットしたり、PiP/PbPを有効・無効化したりできる「Gaming OSD」。Optix MPG27CQとPC本体をUSBケーブルで接続してから導入しよう。
背面の設定用スティックによく使う機能を割り当てることも可能。モード切り換えや入力ソースをよく切り換える人にオススメ

OC不要ならベストのコスパを発揮するミドルレンジ

 ハイエンド志向の強いZ370よりもコストに敏感なH370を搭載したマザーボードは、どうしてもZ370マザーに比べるとスペックや機能面で見劣りするだけでなく、デザイン面においても妥協を強いられるものが多い。だがこのH370 GAMING PRO CARBONは、適度にコストを抑えつつも、シャープで渋い「男の子が大好き」系なデザインで攻めたマザーに仕上がっている。CPUやメモリのOCは仕様上できないものの、第8世代Coreプロセッサを使った「見栄えのするPC」を適度な予算で組みたい人には最適な1枚と言える。

 とくにMystic Light Syncに対応したPCパーツや周辺デバイスで固めれば、PCの雰囲気をトータルで演出しやすいのは◎だ。自分しか使わないPCにイルミネーションで飾っても……と考える人もいるだろうが、ライティングがそれっぽくなっただけでゲームに挑む雰囲気も変わるし、何より「俺のゲーミングPC環境を見せたい!」というときに絶大な効果を発揮する。Mystic Light Syncは自己満足と言い切ればそれまでだが、これを利用してほかのユーザーとつながるとっかかりになる、という点は大きい。一度試してはどうだろうか。

[制作協力:MSI]