特集、その他

「VRChat」やるならWindows MRがお得?VR用HMDを比較してみた

HTC VIVEやOculus Riftも合わせてチェック text by 坂本はじめ

 VRChatはVRヘッドセットが無くてもプレイすることが可能だが、その世界をフルに楽しむためには必須なデバイスだ。

 映像の奥行き感などが大きく変わり、操作方法もVRデイバス向けにかなり異なる。これらの変化が没入感を高めることに寄与しており、VRヘッドセットの有無で別のアプリケーションになるといっても良いくらいだ。

 そこで、今回は、VRChatで利用できるVRヘッドセットから、HTC VIVE、Oculus Rift、Acer AH101を紹介する。VRChatで使用する限りではあるが、実際に使ってみると3機種ともに映像面ではかなり快適に楽しむ事が可能で、大きな差は無いことがわかった。

 それではどんな部分に差が出てくるのか、機器としての特徴や使用感をそれぞれ紹介するので、VRChat用のヘッドセット選びの参考にしてもらいたい。

映像に加え、動きのトラッキング機能もバッチリなHTC VIVE

HTC VIVE

 HTC VIVEは、VRChatが推奨する2つのVRヘッドセットのうちのひとつで、コントローラセットの標準モデルが税込7万円前後で販売されている。

 ヘッドセット本体には、画面解像度2,160×1,200ドット(片目あたり1,080×1,200ドット)で90Hz駆動の有機ELパネルを搭載。ヘッドホン接続用の3.5mmイヤホンジャックを備えており、マイクは本体に内蔵している。

 コントローラとして、左手用と右手用のモーションコントローラ1対が付属。バッテリー内蔵タイプで、USB充電に対応する。

左右合計で2,160×1,200ドットの有機ELパネルを搭載。
ヘッドホン接続用に3.5mmオーディオジャックを備えており、付属のイヤホンの他、市販のヘッドホンを利用できる。
本体のケーブルはHDMI、USB2.0、電源ケーブル。PCとの接続には付属の「リンクボックス」を経由する。
ヘッドセットとPCを中継するリンクボックス。PCからの映像出力はHDMI 1.4、またはMiniDisplayPort(1.2)で行える。
モーションコントローラ。バッテリーは内蔵式で充電はUSBで行う。

 HTC VIVEの特徴とも言えるのが、外付けトラッキングセンサーの「ベースステーション」だ。2基のベースステーションをプレイエリアとなる範囲の対角線上に配置することで機能する仕様で、頭よりも上の高さ(推奨2m以上)に設置する必要がある。

 室内に2m×1.5mのクリアなスペースを確保できれば、2基のベースステーションによってルームスケールプレイエリアを構築することが可能で、別売りのVIVEトラッカーを複数購入すれば、頭や手だけで無く、脚や腰の動きも反映できるフルボディトラッキングも可能になる。これによってVRChat内でダンスなどを踊ることも可能だ。

トラッキングセンサーのベースステーション。
トラッキングセンサーはプレイエリアの対角線上、かつ床面から一定以上の高さ(推奨は2m以上)に設置する。

 実際にHTC VIVEを使ってみると、自分の頭の動きに連動する視界やオブジェクトとの距離感といった視覚的効果に加え、モーションコントローラによって自らの手を使ってオブジェクトを操作しているという体感が得られた。

 これらによってもたらされる没入感は、2Dディスプレイでの表示や、マウスとキーボードでの操作で得られるものとは一線を画すものだ。VRChatはVRヘッドマウントディスプレイの有無で別物になるので、是非VRヘッドマウントディスプレイ有りで体験してみて欲しい。

 また、モーションコントローラによってアバターの手や腕を使った表現の幅が広がることもVRChatにおいては重要だ。自らの没入感だけでなく、ユーザー同士のコミュニケーションをより豊かなものにすることが出来る。

 今回は試せなかったが、VIVEトラッカーを用いたフルボディトラッキングが行えれば、ボディランゲージによる表現の幅はより一層豊かなものとなるだろう。

トラッキングセンサーをなるべく低コストで導入したいならOculus Rift

Oculus Rift

 VRChatが公式に推奨しているもうひとつのVRヘッドセットが「Oculus Rift」だ。Oculus VR公式サイトにて、コントローラの「Oculus Touch」とのセットが5万円(税、送料別)で販売されている。

 ヘッドセット本体であるOculus Riftには、画面解像度2,160×1,200ドット(片目あたり1,080×1,200ドット)かつ90Hz駆動の有機ELパネルを内蔵。側面にヘッドホンを備え、マイクも内蔵されているので、別途ヘッドセットを用意する必要が無い。

 Oculus Touchは、左手用と右手用のモーションコントローラが1対になっており、それぞれ単三電池1本で駆動する。

90Hz駆動の有機ELパネル(2,160×1,200ドット)を搭載。
標準でヘッドホンが付属しており、マイクも本体に内蔵されている。
本体下部には瞳孔間距離(IPD)を調整するスライダーを備えている。
本体から伸びるケーブルはHDMIとUSB3.0。
モーションコントローラのOculus Touch。
左右それぞれ単三電池1本で駆動する。

 トラッキングセンサーは外付けの「Oculusセンサー」で、本体とOculus Touchを利用する際は2基のセンサーを利用する。この時、センサーの配置はプレイヤーの正面方向に2つのセンサーを1~2mほど離して配置する。

 Oculusセンサーは単体でも販売されており、3基目のOculusセンサーを設置することでルームスケールプレイエリアを構築することができる。

トラッキングセンサーのOculusセンサー。本体とOculus Touchを使用する場合は2個必要。
2基のOculusセンサーはプレイヤーの正面に横並びに配置する。センサー間は1~2m離して配置する。

 モーションセンサーの設置場所やプレイエリアの設定などはHTC VIVEの方が自由度が高く感じられたが、セットアップが完了してしまえば、公式に推奨されているだけあって、Oculus RiftでもHTC VIVEと遜色のないVR体験が得られた。

 公式に提供されているモーショントラッキングの拡張性ではHTC VIVEに及ばないが、モーションコントローラを使ってVRChatをプレイする限りにおいては、必要十分な機能をより安価に提供してくれるVRヘッドセットであると言える。

 HTC VIVEよりもコストを抑えつつ、モーショントラックキングもしっかり行いたいといった場合に選ぶと良いだろう。

実はVRChatに最適?より安く、より手軽に使えるのはWindows MRヘッドマウントディスプレイ

Windows MRヘッドセット「Acer AH101」

 Windows MRヘッドセットは、マイクロソフトがWindows 10で提供するWindows Mixed Realityに対応したヘッドマウントディスプレイで、マイクロソフトの基本仕様に準拠する形で複数のメーカーから発売されている。今回用意したのはAcerの「AH101」で、安値店では税込3万8千円前後で販売されている。

 ヘッドセットは、画面解像度は2,880×1,440ドット(片目1,440×1,440ドット)、90Hz駆動の液晶パネルを搭載。また、トラッキング用カメラを本体に内蔵しており、先に紹介した2製品のような外部トラッキングセンサーを必要としない。

 AH101には左手用と右手用のモーションコントローラが付属する。コントローラはそれぞれ単三電池2本で駆動し、PCとBluetooth 4.0で接続することによって機能する。なお、PC用のBluetoothアダプターは付属していないので、Bluetooth機能を持たないデスクトップPCなどでは別途Bluetoothアダプターを用意する必要がある。

90Hz駆動の液晶パネル(2,880×1,440ドット)を搭載。
本体にマイクやヘッドホンは備えていないが、3.5mmオーディオジャックを備えている。
本体正面両端にトラッキングカメラを搭載。これにより外付けセンサー無しでの動作を実現している。
本体のケーブルはHDMIとUSB3.0。フル解像度かつ90Hzで動作させるにはHDMI 2.0以降での接続が必要。
モーションコントローラ。Bluetooth 4.0でPCと接続し、単三電池2本(左右計4本)で駆動する。
Bluetoothを備えていないデスクトップPCで利用する場合、Bluetoothアダプターを別途用意する必要がある。

 Windows MRヘッドセットはVRChatの推奨VRヘッドマウンドディスプレイでは無いが、「Windows Mixed Reality for SteamVR」をインストールすることによりVRChatがプレイ可能となる。

 また、Windows MRヘッドセットにはマイクやヘッドフォンが非搭載なので、VRChatのプレイには別途ヘッドセットやマイクを用意する必要がある。

「Windows Mixes Reality for SteamVR」をインストールすることで、VRChatをはじめとするSteamVRタイトルがプレイ可能となる。
AH101を使いVRChatでボイスチャットを楽しむには、マイクやヘッドホンを別途用意する必要がある。AH101のオーディオジャックは4極に対応しているので、4極ステレオミニプラグを採用したヘッドセットが利用可能だ。

 公式にはVRChat対応ヘッドセットではないWindows MRヘッドマウンドディスプレイだが、支障が出るのはデフォルトでコントローラのキーアサインが適したものになっていない点だけだ。

 コントローラのキー割り当ての設定すれば、公式推奨のVRヘッドセット2機種にも劣らないVR体験が得られ、HDMI 2.0で接続すれば映像面に関しても他の2機種と遜色は無い。

 フルボディトラッキングを提供するHTC VIVEのような拡張性が無いものの、外部センサーを設置することなくVR体験が得られるのはWindows MRヘッドセットの長所だ。場所もとらず、再設置の手間も無しと、VRChatを手軽に楽しむ面ではベストに近いVRヘッドマウンドディスプレイだ。

 ボイスチャットを重視するユーザーや、椅子に座ったままVRChatを楽しみたいユーザーには、とても費用対効果の高いVRヘッドマウンドディスプレイと言える。今回紹介したモデルの中でも特にお勧めできる製品だ。

[Amazonで購入]