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高解像度ゲームが最大4割高速に、MSIのGeForce RTX 2080で新世代カードの性能をチェック
DLSS対応ゲームは4K/60fpsが現実的に、レイトレーシング対応にも期待 text by 坂本はじめ
2018年9月26日 06:05
NVIDIAから最新鋭GPU「GeForce RTX 20 シリーズ」が登場した。リアルタイムレイトレーシングを可能にするRTコアや、深層学習を活用するアンチエイリアシング「DLSS」と言った新機軸を取り入れた新GPUは、ゲームにおける映像表現に革新をもたらすことが期待されている。
今回はGeForce RTX 20 シリーズのひとつ、GeForce RTX 2080を搭載するMSI製ビデオカード「GeForce RTX 2080 GAMING X TRIO」を使って、新GPUの実力をチェックしてみよう。
レイトレーシングやDLSSがサポートされて初めて真価を発揮するモデルではあるが、既存のゲームでも前モデルから大きく性能が向上する例もあるので、是非参考にしてもらいたい。
MSIオリジナル設計のオーバークロックモデル「GeForce RTX 2080 GAMING X TRIO」
MSIの「GeForce RTX 2080 GAMING X TRIO」は、GeForce RTX 20 シリーズのハイエンドGPU「GeForce RTX 2080」を搭載したビデオカード。
3基の冷却ファンを備えたオリジナルデザインのGPUクーラー「TRI-FROZR」を搭載しており、GPUのGeForce RTX 2080は、ブーストクロックが標準の1,710MHzから1,860MHzにオーバークロックされている。
ディスプレイ出力端子には、HDMI 2.0×1基、DisplayPort 1.4×3基、USB Type-C×1基を備える。USB Type-Cポートは次世代VRヘッドセット接続用規格「VirtualLink」に対応している。
昨今流行しているLEDイルミネーション機能も備えており、GPUクーラーのTRI-FROZRには、ユーザーが発光を変更できるRGB LEDが組み込まれている。LEDのコントロールは、MSIのLEDユーティリティ「Mystic Light 3」から行う。
Pascalから大きく進化したTuringアーキテクチャを採用最新GPU「GeForce RTX 20 シリーズ」の特徴
GeForce RTX 20 シリーズでは、GeForce GTX 10 シリーズで採用されていたPascalアーキテクチャから、内部構造を刷新したTuringアーキテクチャを採用しており、Pascalには無かったレイトレーシング用の「RTコア」や、深層学習用の「Tensorコア」が追加された。
レイトレーシングは視点側から光の軌跡を辿ることで、光源によって生じる影や映り込みの描画を行うレンダリング手法だ。非常にリアリティの高い表現を可能にする一方で、演算負荷の高さからリアルタイム性の高いゲームに適用するのは難しかったのだが、Turingで実装されたRTコアはそれを可能とする。
一方、深層学習用のTensorコアについては、ゲームにおける描画品質とパフォーマンスの向上につながる新たなアンチエイリアシング技術「Deep Learning Super Sampling (DLSS)」で活用される。
DLSSは、多くのゲームで採用されているテンポラルAA(TAA)に比べ、精細感を維持しながら効果的にジャギーを除去できる上、GPUがアンチエイリアシングに割いていたリソースを軽減することで、フレームレートの向上も期待できるという機能だ。
RTコアによるリアルタイムレイトレーシングと、TensorコアによるDLSSは、どちらもゲームでのグラフィックスをより高品質なものにする可能性を秘めた技術だ。どちらもゲーム側での対応が必要な技術だが、既に複数のゲームが対応を予定していることから、ゲーマーがこれらの恩恵を得られる日は近そうだ。
当然ではあるが、TensorコアはAI用途や画像解析など、GPU演算用途にも利用できる。現時点でコンシューマー向けの用途で活用されそうなのは超解像などの画像処理だが、近い将来、こうした機能が様々な用途で活用され、一般ユーザーにも恩恵をもたらしてくれるかもしれない。
GeForce GTX 1080からどの程度性能が上がったのかベンチマークでGeForce RTX 2080の実力をチェック
GeForce RTX 2080 GAMING X TRIOが持つパフォーマンスを、GeForce GTX 10 シリーズのハイエンド「GeForce GTX 1080」を搭載した「GeForce GTX 1080 GAMING X 8G」との比較でチェックしてみよう。
実際のゲームを使ってパフォーマンス比較を行う前に、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」と「DLSS対応版FINAL FANTASY XV ベンチマーク」の実行結果を紹介する。
4k解像度(3,840×2,160ドット)かつ描画品質を「最高品質」に設定して行ったファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでは、GeForce GTX 1080が「6,975」で「とても快適」との評価だったのに対し、GeForce RTX 2080は「8,896」を記録して最高評価の「非常に快適」を獲得した。
今回試したDLSS対応版のFINAL FANTASY XV ベンチマークはDLSSのデモ用バージョンで、4k解像度かつ最高画質設定でDLSSとTAAの品質差を見る内容となっている。なお、Tensorコアを持たないGeForce GTX 1080は、DLSSを利用できないのでTAAのみで測定を行った。
TAAを利用したGeForce GTX 1080のスコアは「2,678」に対し、同じくTAAを利用したGeForce RTX 2080のスコアは約27%高い「3,390」、DLSSを利用したGeForce RTX 2080のスコアは約75%も高い「4,683」を記録した。
同条件での3割近い性能向上でも十分な進化と言えるが、より高品質な映像を実現しながら7割以上もの性能向上を実現したDLSSとGeForce RTX 2080。多くのゲームでDLSSが利用できるようになることを期待せずにはいられない結果だ。
高解像度ゲームではGeForce GTX 1080から最大4割性能が上がる例も実際のゲームでフレームレートをチェック
実際のゲームにおけるGeForce RTX 2080のパフォーマンスをGeForce GTX 1080と比較していこう。
今回のテストでは、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー 」、「モンスターハンター:ワールド」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」の3タイトルで比較を行った。
シャドウ オブ ザ トゥームレイダー
シャドウ オブ ザ トゥームレイダーは、2013年にリブート作品として登場した「トゥームレイダー」から続く3部作の完結編として、9月14日に発売されたばかりのタイトルだ。
パフォーマンス比較にはグラフィック調整用のベンチマーク機能を利用した。WQHD(2,560×1,440ドット)と4kの2種類の画面解像度でテストを行い、4k解像度では描画品質プリセットの「最高」と「高」の2通りの結果も取得した。なお、アンチエイリアシングには標準設定であるTAAを利用している。
GeForce RTX 2080はGeForce GTX 1080より32~41%高いフレームレートを記録している。WQHD解像度では最高描画設定でも余裕で60fpsを上回り、4k解像度でも描画品質「高」であれば58fpsという十分にプレイアブルなフレームレートを記録している。
本作はGeForce RTX 20 シリーズの特徴でもあるリアルタイムレイトレーシングとDLSSへの対応が予定されている。今後のアップデートでこれらの機能が利用できるようになれば、描画品質とパフォーマンスの両面でGeForce RTX 2080の優位性が増すことになるだろう。
モンスターハンター:ワールド
世界レベルでの大ヒットタイトルとなった、モンスターハンターシリーズ最新作「モンスターハンター:ワールド」。そのPC版でも、WQHD解像度と4k解像度で比較テストを実施した。
描画品質設定はプリセットで設定しており、両方の画面解像度で「最高」に設定してテストを行った他、4k解像度では「高」でもテストを実施した。
GeForce RTX 2080は、GeForce GTX 1080を29~41%上回るフレームレートを記録している。WQHD解像度は余裕で60fpsを超え、4k解像度で描画品質プリセットを最高にした場合でも30fpsを超えるフレームレートを達成している。
モンスターハンター:ワールドは30fpsでの動作も想定して作られているゲームであるので、画質を優先して4k解像度でプレイするという選択もアリだろう。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONは、「究極のFINAL FANTASY XV」として4k解像度やHDR10に対応し、高精細で美しいグラフィックスを前面に押し出したタイトルだ。
今回は4k解像度向けの高解像度テクスチャパックを適用した状態で、WQHD解像度と4k解像度でフレームレートの測定を行った。描画品質設定はプリセットで「最高」を選択しているが、描画品質とは別要素として実装されているGameWorksの4オプション(HairWorks、VXAO、Turf Effects、ShadowLibs)について、4k解像度のみ無効にした際のフレームレートも測定した。
GeForce RTX 2080は、GeForce GTX 1080を18~31%上回るフレームレートを記録した。WQHD解像度ではGameWorksオプションをフル活用しても60fpsを上回り、4k解像度でも余裕をもって30fpsを上回っている。
記事執筆時点でのFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONはアンチエイリアシングにTAAを活用しているが、デモンストレーション用ベンチマークに実装されたDLSSへの対応が予定されている。
ベンチマークでは、TAAからDLSSに切り替えることで約38%もパフォーマンスが向上しており、これと同じレベルでフレームレートが向上すれば、4k解像度でも多少設定を調整すれば60fpsを実現できる可能性がある。早期のDLSS対応を期待したい。
なお、先日のイベント時に、NVIDIAがDLSSに対応することで4K/60fpsでのプレイが可能になる予定のタイトルを公開していたので、そのスライドも紹介しておこう。こちらのリストにはFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONも含まれている。4Kでゲームを遊びたいというユーザーは、ゲームがDLSSに対応するかどうかといった点も注目して置いた方が良いだろう。
かなり冷えるMSIオリジナルのGPUクーラー「TRI-FROZR」、静音モデル/高冷却なモデルが欲しいユーザーは要チェック
最後に、今回テストに用いたGeForce RTX 2080 GAMING X TRIOのMSIオリジナル要素についてチェックしてみよう。
まず何よりも目を引くのは、2.5スロットを占有する3連ファン仕様の大型GPUクーラー「TRI-FROZR」だ。デュアルボールベアリングを採用した3基のトルクスファンは、セミファンレス機能の「Zero Frozr」をサポート。90mmファンは動作温度60℃以下でファンが停止、二つの100mmファンは動作温度56℃以下でファンが停止する静音設計となっている。
TRI-FROZRはどの程度GeForce RTX 2080を冷やせているのかチェックすべく、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークを4k解像度で実行した際のモニタリングデータをグラフ化してみた。
ベンチマーク中のピークGPU温度は68℃で、GPU Boost動作の基準となる温度ターゲットの83℃までにはかなりの余裕がある。実際、GPUクロックは1,900MHz前後で一貫しており、熱の影響によるスロットリングとは無縁だ。
これだけしっかり冷却できていながらも、ファンスピードは最大で1,129rpmまでしか上がっておらず、高負荷状態でも高い静粛性を実現していた。
GeForce RTX 2080 GAMING X TRIOは基板もオリジナル設計のものを採用しており、10+2フェーズの電源回路を備える他、補助電源コネクタは標準の8ピン+6ピン仕様より75W多い電力を供給可能な8ピン2系統仕様を採用している。
こうした電源供給周りで余裕のある設計は、仕様通りのオーバークロック動作での安定性を確保するだけでなく、ユーザーが自己の責任においてオーバークロックを行う際の助けにもなるだろう。
高解像度ゲーミングを身近なものにするGeForce RTX 2080の実力最適化が進めばさらなる性能向上も
リアルタイムレイトレーシングという新機軸のインパクトが強いGeForce RTX 20 シリーズだが、そのハイエンドモデルのGeForce RTX 2080は、それを抜きにしてもGeForce GTX 1080を圧倒する性能を備えたGPUだ。
DLSSやレイトレーシングと言った今後に期待できる要素があるだけでなく、純粋にGPUとしての性能も高まった新世代のハイエンドGPUがGeForce RTX 2080だ。特にDLSSは対応することで大きく性能向上することがわかっているので、対応ゲームが増えることを期待したい。
また、今回のテストで使用したMSIのGeForce RTX 2080 GAMING X TRIOは、高負荷状態でも動作温度にはゆとりがあり、静音かつ最高性能を維持して動作可能。高性能クーラー搭載モデルを求めるユーザーには有力な選択肢となるはずだ。
WQHD以上の解像度でグラフィック品質にこだわりたいゲーマーにとって、GeForce RTX 2080は魅力的なビデオカードと言えるだろう。
[制作協力:MSI]