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Seagateが日本でもSSDを本格展開、3.4GB/s超えの高速モデルをテストしてみた
NAS専用機能を備えたSSDも投入 text by 坂本はじめ
2019年7月10日 06:05
大手HDDメーカーとして知られるSeagateが、新設計のSSD製品を引っ提げ日本のSSD市場に本格参入する。
スタンダードモデルだけでなく、リード最大3.4GB/secを超える高性能NVMe SSDや、独自技術を盛り込んだNAS向けSSDまで用意されており、HDD同様に用途に合わせたモデルが投入される。
今回のレビューでは、SeagateのSSD製品群のラインナップを確認しつつ、自作PCユーザー注目のモデルとなるであろう高性能モデル「FireCuda 510 SSD」のパフォーマンスをテストする。
新たなSeagate SSDは3ブランド/4シリーズで展開ゲーマー向けSSDやNAS用SSDも
SSD市場に本格参入するSeagateが新たに投入するSSD製品だが、「BarraCuda」「FireCuda」「IronWolf」の3ブランドで展開される。
各ブランドの位置付けはHDDの同ブランドと同じで、BarraCudaはスタンダードモデル、FireCudaはゲーマー向けの高性能モデル、IronWolfはNAS向けモデルである。
3ブランドのうちBarraCudaでは、NVMe SSDの「BarraCuda 510 SSD」と、SATA SSDの「BarraCuda SSD」の2シリーズが用意され、全部で4シリーズのSeagate製SSDが投入されることになる。
Seagateは、SSD向けに最適化したユーティリティ「Seatools SSD」をはじめ、NVMe SSDのクローン作成やバックアップにも対応した「Seagate DiscWizard」、データ復旧サービスの「Seagate Recovery Service」などのサービスも提供する。
これらはHDD向けに提供されていたものと同等のサービスであり、大手ストレージメーカーならではの充実したサービスだ。こうした部分はSeagate製SSDの魅力であると言える部分であり、メーカーがHDD同様にSSDにも本格的に取り組んでいるのがわかる部分だ。
シリーズ毎に特徴とラインナップをチェック用途に合わせ3ブランド展開
用途別に異なる製品ブランドを用意するというHDDメーカーらしい形でSSD製品を投入するSeagate。各製品がどのような特徴とラインナップになっているのか、シリーズ毎に確認してみよう。
高速かつ大容量なゲーマー向けNVMe SSD「FireCuda 510 SSD」
Seagate FireCuda 510 SSDシリーズは、ゲーミングPCでの利用を想定して設計されたM.2タイプのNVMe SSDだ。フォームファクターはM.2 2280-D2であり、基板の両面にNANDフラッシュを実装している。
容量ラインナップは1TBと2TBの2モデル。3D TLC NANDを採用し、リード最大3,450MB/sec、ライト最大3,200MB/secという優れた転送速度を実現している。また、総書き込みバイト数が2,600TB(2TBモデル)と、コンシューマーモデル向けモデルとしてはかなり高い耐久性も特徴だ。製品保証期間も5年間と長い。
OS用SSDに好適なNVMe SSD「BarraCuda 510 SSD」
Seagate BarraCuda 510 SSDシリーズは、3D TLC NANDを採用したM.2タイプのNVMe SSD。NANDフラッシュを含む実装部品を片面にまとめており、薄型ノートPCなどにも搭載しやすいフォームファクターであるM.2 2280-S2に準拠している。
容量ラインナップは256GBと512GBの2モデルで、FireCuda 510 SSDよりも低容量をカバーしている。リード最大3,400MB/sec、ライト最大2,180MB/secとパフォーマンスは上々。PC用途では十分な耐久性も備えており、5年間の長期保証が付与されている。
安価で汎用性に優れる2.5インチSATA SSD「BarraCuda SSD」
Seagate BarraCuda SSDシリーズは、3D TLC NANDを採用した2.5インチ型のSSD。インターフェイスに6Gbps SATAで、7mm厚の筐体を採用している。
BarraCuda SSDの容量ラインナップは、250GBから2TBまでの全4モデル。リード最大560MB/sec、ライト最大540MB/secという6Gbps SATAの限界に近いパフォーマンスを実現しており、耐久性も2TBモデルでは総書き込みバイト数が1,000TBを超えている。
高い信頼性と耐久性を兼ね備えたNAS向けSSD「IronWolf 110 SSD」
Seagate IronWolf 110 SSDシリーズは、NAS向けに設計された2.5インチ型SSD。インターフェイスに6Gbps SATAし、7mm厚の2.5インチ筐体を採用している。
IronWolf 110 SSDの容量ラインナップは、240GBから3.84TBまでの全5モデル。。NASでの使用を前提に耐久性と信頼性に優れた3D TLC NANDを採用しており、総書き込みバイト数は最大7,000TB(3.84TBモデル)を実現し、信頼性指標のMTBFも200万時間を達成している。
また、IronWolf 110 SSDには、Seagate独自のドライブ監視機能「IronWolf Health Management (IHM)」に対応しており、IronWolf 110 SSDと同機能に対応したNASでは、SMARTよりも詳細なドライブ情報を取得できる。2年間の「Rescueデータ・リカバリ・サービス・プラン」が付与されているのもIronWolf 110 SSDの魅力だ。
なお、IronWolf 110 SSDはカタログスペックを見るうえで注意点がある。Seagateによると、IronWolf 110 SSDはエンタープライズ向けのモデルのため、公称値はコンシューマ向けモデルでは一般的なピーク時の速度ではなく、データを連続転送した際の速度を公称値として記載されているという。データ連続転送時の速度はピーク値よりは低くなるため、他のSSDとカタログスペックの速度は直接比較できない。
高速かつ動作温度も押さえ込んだ「FireCuda 510 SSD」ベンチマーク速度を温度を検証
Seagateのユニークな製品ラインナップの中でも、特に自作PCユーザーの注目を集めるであろう高性能NVMe SSD「FireCuda 510 SSD」のパフォーマンスをチェックしてみよう。
テストに用いたのはCore i9-9900Kを搭載したIntel Z390環境。室温26℃の環境下でCrystalDiskMarkを実行し、そのパフォーマンスと動作温度をチェックしてみた。
今回は、FireCuda 510 SSDの1TBモデル(ZP1000GM30001)と2TBモデル(ZP2000GM30001)の両方でテストを行った。
まずは1TBモデル(ZP1000GM30001)の挙動から見てみよう。
テストサイズ1GiB設定で実行したCrystalDiskMarkでは、シーケンシャルリードは3.4GB/secを超え、シーケンシャルライトも3GB/secを上回る優秀な結果だ。
テストサイズ32GiB設定では、シーケンシャルリードはテストサイズ1GiBと同様に3.4GB/secを上回った。シーケンシャルライトはSLCキャッシュの容量を超えたため、約1.2GB/secに低下している。
現在販売されているTLC/QLC NANDを搭載するNVMe SSDはほとんどのモデルがSLCキャッシュを活用しており、FireCuda 510 SSDに限らず、キャッシュが利用できる際にピーク性能が発揮される構造になっている。FireCuda 510 SSD以外の製品もキャッシュ容量を上回るデータの書き込みなどを行った際はこうした挙動となるので、異常というわけではない。また、書き込み性能が低下したとしてもシーケンシャルライトはSATA SSDの2倍以上で、高速となっている。
NVMe SSDは速度と同時に発熱がどの程度に抑えられているのかも確認すべきポイントだろう。
下はCrystalDiskMarkで32GiBテストを実行中の温度・速度推移の様子で、左が冷却ファンやヒートシンクによる冷却は行っていない状態、右が空冷ファンで風を当てて確実にサーマルスロットリングが起きないようにした状態のデータだ。
ピーク温度は68℃で、性能を考えると発熱は控えめな印象だ。また、冷却を行った際のデータと比べると発熱の影響による極端な速度低下なども見られず、テスト中はサーマルスロットリングが発生しなかった。
続いて2TBモデル(ZP2000GM30001)だが、こちらもテストサイズ1GiBの際の速度はシーケンシャルリードが3.4GB/sを超え、シーケンシャルライトも3GB/sを超えるかなり高速な結果となった。テストサイズ32GiBの結果もシーケンシャルリードは3.4GB/s超え、シーケンシャルライトは1GB/s超えとなった。
基本的には1TBモデル(ZP1000GM30001)と同じ傾向といえる。
2TBモデル(ZP2000GM30001)のベンチマーク中の動作温度だが、こちらはピークで66℃と若干1TBモデルよりも低くなった。
こちらも冷却ファンやヒートシンクによる冷却は行っていない状態と、空冷ファンで風を当てた状態で比較してみたが、サーマルスロットリングによる転送速度の低下が起きていないことが確認できた。
スタンダードモデルのBarraCuda 510 SSDも扱いやすく高性能なNVMe SSD
ここで、もう一つのNVMe SSDであるBarraCuda 510 SSDから、512GBモデルのベンチマーク結果も紹介しておこう。
ピーク性能こそFireCudaに及ばないものの、3.4GB/secを超えるリード性能を実現しながらもピーク温度は62℃にとどまっており、高性能かつ低発熱な扱いやすいNVMe SSDである。
こちらもCrystalDiskMark テストサイズ32GiBでベンチマーク実行中のモニタリングを行い、追加冷却の有無で結果を比較してみたが、サーマルスロットリングによる速度低下は見られなかった。
高性能と低発熱が特徴のNVMe SSD、Seagateならではの保証とサービスも魅力的
SeagateがSSD市場に投入するNVMe SSDのFireCuda 510 SSDは、PCIe 3.0 x4接続のNVMe SSDとしてトップクラスの性能を持ちながら、発熱も控えめで使いやすいSSDだ。
下位モデルであるBarraCuda 510 SSDも高性能かつ低発熱という特徴を備えており、高性能なSSDを求めるユーザーにとっての有力な選択肢となるだろう。
また、ストレージメーカーならではの充実した保証とサービスもSeagate製SSDの魅力だ。SeagateのSSD市場への本格参入は、安心して選べるSSDブランドが増えることにもなる。PCの新調やアップグレードに際してSSDの購入を検討しているのなら、Seagate製SSDを選択肢に加えてみてはいかがだろうか。
[製作協力:Seagate]