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NVIDIA最新GPU“GeForce RTX 2080 SUPER”の最高峰は4K快適でルックスも◎
MSI「GeForce RTX 2080 SUPER GAMING X TRIO」を第3世代Ryzenと組み合わせてテスト text by 芹澤正芳
2019年7月24日 06:05
フラグシップのGAMING X TRIOシリーズ
2019年7月2日に発表されたNVIDIAの新GPU「GeForce RTX 2080 SUPER」を搭載したカードが、7月23日午後10時より販売される。ここでは、その中からトリプルファンを備えるMSIのOCモデル「MSI GeForce RTX 2080 SUPER GAMING X TRIO」を紹介する。SUPERと置き換えになるRTX 2080との性能差に注目してほしい。
まずは、搭載GPUの「GeForce RTX 2080 SUPER」について触れておこう。GeForce RTX 2080に比べてCUDA、RT、Tensorの各コア数が増加、コアクロックは1,515MHzから1,650MHzに、ブーストクロックは1,710MHz(GeForce RTX 2080 Founders Editionは1,800MHz)から1,815MHzに、メモリデータレートも14Gbpsから15.5Gbpsに向上と底上げされており、強化版と呼ぶにふさわしい内容に仕上がっている。ビデオメモリに関してはDDR6 8GBと変わらない。
次にビデオカードの立ち位置。MSIは「VENTUS」や「ARMOR」など複数のシリーズを展開しているが、「GAMING X TRIO」はOC動作による高いパフォーマンスに加え、冷却力と静音性を兼ね備えるトリプルファン、MYSTIC LIGHT対応のRGB LEDを内蔵する“全部入り”のフラグシップモデル。性能とルックスの両方を求めている人にマッチしたシリーズと言っていいだろう。
GeForce RTX 2080 SUPER GAMING X TRIOは、そのGeForce RTX 2080 SUPERのブーストクロックを1,845MHzに向上させている。冷却システムにはTri-FROZR Thermal Designを採用。2種類の異なる羽根を交互に組み合わせて冷却効率を高めるトルクスファン 3.0を3基、気流をヒートパイプ上へと効率よく導く大型ヒートシンクなどが組み合わされており、連続動作時でも安定した冷却力と高い静音性を実現する。その実力は後述する動作クロックと温度の推移グラフで確かめてほしい。ちなみに、60℃以下の低負荷時にファンを停止させるZero Frozr機能も備えているので、普段使いの静音性を重視する方にも注目のモデルだ。
補助電源は8ピン+8ピンの構成だ。映像出力はDisplayPort 1.4が3基、HDMI 2.0bが1基、Type-C出力が1基という構成。性能面がモリモリのカードだけあってカード長は32.7cm、3スロット占有と“巨大”と言うべきサイズ感。30cmまでのビデオカードにしか対応しないPCケースもあるので、購入を検討している場合は事前に注意しておきたいポイントだ。
GeForce RTX 2080をしっかりと上回る順当な性能
次は実際の性能をチェックしていこう。今回はテストには話題の第3世代Ryzen環境(Ryzen 7 3700X)を使用した。シングルスレッド性能でライバルのIntel CPUを上回ることも多いこのCPUは、ゲーミング性能でも大いに期待できる。
マザーボードにはビデオカードと同じMSIのX570チップセット搭載モデルとしては最上位に位置する「MEG X570 GODLIKE」を使っている。その魅力は卓越したオーバークロック耐性。Core Boostと呼ばれるCPUへ高速な電源供給を可能にするMSI独自のOC設計を採用、メモリもDDR4 Boostという独自設計によってDDR4-4600のOCメモリにも対応する。19フェーズの強力な電源回路に加え、巨大なヒートシンクも搭載とまさに豪華絢爛な仕様だ。E3 2019に合わせて開催されたAMDのプレス向け説明会「AMD NEXT Horizon Gaming」において、16コアCPUにおける複数のベンチマークスコアのワールドレコードを達成していることからも、そのOC耐性の高さが分かる。
このほか、ハイレゾ認証を取得したサウンド機能やCPU温度やファンの回転数などハードウェア情報やメモリエラーなど起動時のトラブル情報を表示可能な有機ELパネル「Dynamic Dashboard」をメモリスロットに備えているのも便利。PCI Express 4.0 x4対応のM.2スロットを3基、それぞれにヒートシンクを備えているのに加えて、M.2スロットを2基増設可能なPCI Express x16接続の拡張カード「M.2 Xpander-Z」が付属。さらに10ギガビットイーサネット対応のネットワークカードも付属と妥協のないゲーミング環境を構築できる。
今回の比較対象はSUPERと置き換えになるGeForce RTX 2080とした。用意したカードはNVIDIA純正のGeForce RTX 2080 Founders Edition(以下RTX 2080 FE)。このRTX 2080 FEはブーストクロックが通常の1,710MHzから1,800MHzに高められているOCカードだ。
テストには、定番3Dベンチマークの3DMark、人気MMORPGのファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク、重量級のFPSとしてFar Cry New Dawn、軽めのゲームとして人気バトルロイヤルのフォートナイト、レイトレーシング対応タイトルとしてシャドウ オブ ザ トゥームレイダーを使用した。
【検証環境】
CPU: AMD Ryzen 7 3700X(8コア/16スレッド、3.6GHz)
マザーボード: MSI MEG X570 GODLIKE(AMD X570)
メモリ: G.Skill F4-3600C19D-16GSXW(PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2、※PC4-25600で動作)
ストレージ: Micro Crucial P1 CT1000P1SSD8JP[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]
OS: Windows 10 Pro 64bit版
室温:24℃、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:3DMark-Time Spyデモモード実行中の最大値、電力計:ラトックシステム REX-BTWATTCH1、Far Cry New Dawn:内蔵ベンチマークで測定、フォートナイト:プレイグラウンドのリプレイデータ再生時のフレームレートをOCATで測定、シャドウ オブ ザ トゥームレイダー:内蔵ベンチマークで測定
スコアとして結果が表示される3DMarkとFF14を見ると、RTX 2080 FEに比べておおむね3~6%の性能向上が見られる。負荷が高い処理ほど性能の向上率は高い傾向にあるようだ。なお、FF14のフレームレートを見てみると、各解像度とも平均5フレームほどの向上が見られた。
続いてFPSゲームの結果を見よう。Far Cry New Dawn(内蔵ベンチマークで測定)はさすが重量級のゲームだけに4Kでは平均60fpsに届いていない。RTX 2080 FEとの差は約3フレームレートと伸びてはいるが、それほど大きくはない。フォートナイトはプレイグラウンドのリプレイデータをOCATで測定した。フルHDとWQHDで10フレーム以上の性能アップを確認。高リフレッシュレートと組み合わせて、少しでもフレームレートを稼ぎたいという場合にはうれしいポイントと言えるだろう。4Kで平均60fpsを超えられた点にも注目したい。
最後にレイトレーシング(DXR)やDLSSについてチェックしておこう。シャドウ オブ ザ トゥームレイダーでは、DXRはレイトレースシャドウクオリティという項目で用意されている。内蔵ベンチマークを使って、DXRを最高設定にした場合とOFFにした場合をチェックした。最高設定では、画面から見えない光源に対してまでリアルな影の表現を行なうため、一気に負荷は高まる。さすがにGeForce RTX 2080 SUPER GAMING X TRIOでも4Kでは平均60fpsを維持できない。フレームレートを優先するなら、OFFでプレイするのもアリだろう。
ちなみにフルHDの解像度が1,920×1,200ドットになっているのは、DLSSはこの解像度からしか有効にできないため。DLSSは高負荷時のアンチエイリアス処理の高速化が主な役割なので、対応ゲームでも解像度がWQHDからしか有効にできないケースが多い。参考までにアンチエイリアス処理をDLSSではなく、TAAにした場合のフレームレートも掲載しておく。高解像度時のフレームレートが大きく変わっているのが分かるだろう。
高クロック動作しても静かで冷える
シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(DXR最高設定、4K解像度)を約30分動作させたときの動作クロックと温度の推移を「HWiNFO」で記録した。参考までにRTX 2080 FEの数値も掲載している。動作クロックを見ると、ほぼ1,965MHzで動作。スペック上のブーストクロックは1,845MHzなので、実クロックの安定値は100MHz以上高いのが分かる。強力な冷却環境があるので、Power Limit(消費電力上限)に余裕を持たせてあると推測される。
その証拠に連続動作させてもGPUの温度は64℃をほぼキープ。ファンの音はほとんど気にならないレベルだ。参考に掲載したRTX 2080 FEのほうが動作クロックが低いにもかかわらず、温度は高い。しかも、ファンの音も本製品よりもうるさく感じるレベルだった。Tri-FROZR Thermal Designの優秀さがよく分かる。
OS起動後10分後をアイドル時、3DMarkのTime Spyデモモード実行時の最大値を高負荷時としてシステム全体の消費電力も測定した。推奨電源が650W以上ということもあり、高負荷時は384Wとさすがに高い。アイドル時の数値が高めなのは、ビデオカードの問題と言うよりもテスト環境で使っているRyzen 7 3700Xの傾向が出ていると思われる。
GeForce RTX 2080 SUPER GAMING X TRIOは強力な大型冷却システムのおかげで、OCモデルながら高い冷却性能と静音性を両立できている。しかも、ファンの周囲やカードの上部にはRGB LEDが内蔵されており、写真映え、SNS映えもバッチリ。GeForce RTX 2080 Tiに続くシリーズトップクラスの実力を持つ製品という位置付けを考えると、性能も見た目もリッチな仕様が欲しいところ。GeForce RTX 2080 SUPER搭載ビデオカードの導入を考えているなら、チェックして損はないだろう。
[制作協力:MSI]