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1GB/s超えの高速NASを組むならNAS用SSD、「IronWolf 110 SSD」×4台で最速環境を目指してみた

SeagateのNAS用SSDで10GbE NASを構築 text by 坂本はじめ

「Seagate IronWolf 110 SSD」と「ASUSTOR AS7010T」で10GbE環境の快適さをテスト。

 HDDメーカー大手のSeagateがSSD市場本格参入に伴って投入した新製品群の中に、NAS用途での利用を前提に設計されたモデル「IronWolf 110 SSD」がある。

 NASで安心して使えるSSDを探しているユーザーにとって、HDDメーカーとしてNAS向け製品の開発に多くの実績と経験を持つSeagateが手掛けたIronWolf 110 SSDは非常に興味深い製品だろう。

 そこで今回、IronWolf 110 SSDを実際にNASに組み込み、10GbE環境を構築してそのパフォーマンスを確認してみた。SSD NASや10GbE対応NASの導入を検討しているユーザーには、ぜひともその性能をチェックしてみてもらいたい。

SeagateがNAS向けに設計した高耐久SSD「IronWolf 110 SSD」

 まずはSeagateのIronWolf 110 SSDが、どのようなSSDなのかを確認しておこう。

 SeagateのNAS向け製品ブランドである「IronWolf」を冠するIronWolf 110 SSDは、インターフェイスに6Gbps SATAを採用した2.5インチ型SSD。容量ラインナップは240GB~3.84TBまでの全5モデル。

NAS向けHDDと同じIronWolfの名を冠するSSD「IronWolf 110 SSD」。
筐体は表面・裏面ともに金属製で、放熱性に優れるものとなっている。

 IronWolf 110 SSDは、同社のエンタープライズ向けSSD「Nytro」シリーズをベースに、24時間/365日稼動のNAS向けSSDとして設計されたモデルだ。

 搭載NANDは3D TLC NANDで、総書き込みバイト数は最大7,000TB(3.84TBモデル)。筐体は金属製で、信頼性指標のMTBFも200万時間と高耐久仕様となっている。

 また、高い耐久性と信頼性を実現しているだけでなく、S.M.A.R.T.よりも詳細なドライブ監視機能「IronWolf Health Management(IHM)」や、2年間の「Rescueデータ・リカバリ・サービス・プラン」など、SeagateのNAS向けSSDならではの機能と保証サービスも備えている。

HDD版「IronWolf」の16TBモデル

●HDD版のIronWolfは16TBモデルが登場

 IronWolfはこれまでHDDで展開されていたブランドで、専用ファームウェアやRVセンサーなど、NAS向けの機能を多数採用している。最新となる容量16TBのモデルが今年7月に投入されており、こちらも改良が続けられている。

 今回紹介しているIronWolf 110 SSDは、これまでIronWolfシリーズで培ったノウハウが活かされたモデルとなっており、HDDのIronWolfと同じく、NAS向けに最適化された設計とファームウェアを特徴とする製品だ。

IronWolf 110 SSD×4台で10GbE NAS環境を構築ハイエンド環境でSSDの性能をテスト

 今回は、IronWolf 110 SSDを使って10GbE SSD NASを構築して、そのパフォーマンスをチェックする。まずはこの10GbE SSD NASの構築に使用した機材について紹介しよう。

 まず、肝心要のSSDにはIronWolf 110 SSDの960GBモデル「ZA960NM10001」を4台用意した。リード最大560MB/s、ライト最大535MB/sというパフォーマンスと、総書き込みバイト数1,750TBという優れた耐久性を兼ね備えたSSDだ。

IronWolf 110 SSDの960GBモデル「ZA960NM10001」を4台用意。
CrystalDiskMarkの実行結果。シーケンシャルリードの速度は6Gbps SATAの上限に近い速度が出ている。

 IronWolf 110 SSDを組み込むNASには、ASUSTORの高性能NAS「AS7010T」を用意した。高性能なデュアルコアCPUであるIntel Core i3を搭載した10ベイタイプのNASだ。

 AS7010Tのネットワーク機能は標準だとGigabit LAN×2なので、10GbE NICを増設して10GbE対応NAS化する。今回はIntelの10GbE NICである「X550-T2」を搭載して10GbE化したが、AS7010Tは拡張カードのブラケットが独自仕様であるため、X550-T2付属のブラケットでは筐体に固定できない点には要注意。長期間使用するならオプションのASUSTOR AS-T10Gを使用すると良いだろう。

ASUSTORの高性能10ベイNAS「AS7010T」。
AS7010Tのディスクトレイは3.5インチ/2.5インチ両対応なので、IronWolf 110 SSDをそのまま固定できる。
Intelの10GbE NIC「X550-T2」。
Intel X550-T2はAS7010Tで10GbE NICとして利用できるが、特殊形状のブラケットを採用したAS7010Tの筐体に固定はできない。

 IronWolf 110 SSDを搭載した10GbE SSD NASと接続するPCには、Core i9-9900Kを搭載したIntel Z390環境を用意。

 テスト用PCには玄人志向の10GbE NIC「GbEX-PCIE」を搭載し、カテゴリー7準拠のLANケーブルを使ってNASと直接接続した。

玄人志向の10GbE NIC「GbEX-PCIE」。
カテゴリー7準拠のLANケーブルであるエレコムのLD-TWSシリーズ。今回はこのケーブルでPCとNASを直結した。

最高1.2GB/s、HDD搭載NASでは実現できないランダムアクセス速度3種類のRAIDレベルでベンチマークを実施

 それでは、IronWolf 110 SSDを使って構築した10GbE SSD NASのパフォーマンスをチェックしてみよう。

 テストでは、10GbEでNASと直結したPC側で、ベンチマークテストの「CrystaldiskMark」を実行してデータ転送速度を測定する。測定はNAS側で構築したディスクアレイのRAIDレベル毎に行い、今回はRAID 0、5、10の3種類で測定を実施した。

リード・ライトともに1GB/sを超えるRAID 0

RAID 0 ボリュームのステータス。利用できる容量は約3.42TB。

 まずは冗長性が無い代わりにパフォーマンスを高めたRAID 0 ボリュームのパフォーマンスからチェックする。

 RAID 0 ボリュームでのCrystalDiskMarkを実行した結果、テストサイズ1GiB時には、シーケンシャルリードが1,238.1MB/s、同ライトでは1,230.8MB/sを記録し、リードとライトがともに10GbEの上限値に近い数値に達している。

 テストサイズを32GiBにするとNASのDRAMキャッシュの効果が薄れるため速度が低下しているが、それでもシーケンシャルリードは1,069.1MB/s、同ライト1,209.5MB/sと、リード・ライトとも1GB/sを超える速度を実現した。

 シーケンシャルアクセスが高速なだけでなく、ランダムアクセス速度もHDD搭載のNASでは達成できない速度となっている。冗長性はないが、最高速を引出したい場合や、SSDの容量を最大まで使いたい場合はRAID 0が良いだろう。

RAID 0 ボリュームのCrystalDiskMark実行結果
テストサイズ「1GiB」
テストサイズ「32GiB」

RAID 5でも1GB/s超えのリードを実現、ライトは最大900MB/s

RAID 5 ボリュームのステータス。利用できる容量は約2.57TB。

 続いて確認するのは、冗長性と高い容量効率が魅力のRAID 5 ボリュームでのテスト結果だ。

 RAID 5 ボリュームでは、テストサイズ1GiBで実行したCrystalDiskMarkにおいて、シーケンシャルリード1,232.3MB/s、同ライトでは955.9MB/sを記録。書き込み速度が遅くなりがちなRAID 5 ボリュームでありながら、SSDの速度とNASの優れたCPU性能により優れたパフォーマンスを実現している。

 DRAMキャッシュの効果が薄れるテストサイズを32GiBでも、シーケンシャルリードは1,003.6MB/s、同ライト906.7MB/sを記録。大容量のデータアクセスでも1GB/sに近い転送速度を維持できることを示している。

RAID 5 ボリュームのCrystalDiskMark実行結果
テストサイズ「1GiB」
テストサイズ「32GiB」

RAID 10でもリード性能は1GB/s超、RAID 5を凌ぐランダムライト性能を実現

RAID 10 ボリュームのステータス。利用できる容量は約1.71TB。

 最後にチェックするのは、RAID 1とRAID 0を組み合わせて冗長性と高速性を確保するRAID 10 ボリュームのパフォーマンスだ。

 CrystalDiskMarkを実行した結果、テストサイズ1GiBでのシーケンシャルアクセス性能は、リードが1,236.4MB/s、ライトは706.4MB/sだった。テストサイズを32GiBに変更した場合でも、リード1,228.6MB/s、ライト702.2MB/sで、シーケンシャルアクセス性能については大きく変化していない。

 RAID 5と比べるとシーケンシャルライト性能ではやや不利だが、DRAMキャッシュの効果が薄いテストサイズ32GiB時のランダムライト性能で2倍近い性能を発揮している。

 容量の面でRAID 0やRAID 5より不利になるが、細かいファイルのやり取りが多い場合や、冗長性と速度のバランスを取りたい場合などにはRAID 10を選択するのも良いだろう。

RAID 10 ボリュームのCrystalDiskMark実行結果
テストサイズ「1GiB」
テストサイズ「32GiB」

NASシステム全体の信頼性を高める「IronWolf Health Management」詳細なステータスをNASに送ることでより安全な運用が可能に

NASシステム全体の信頼性を高める「IronWolf Health Management」をサポート。

 NAS向けSSDであるIronWolf 110 SSDのユニークな特徴である監視機能の「IronWolf Health Management(IHM)」は、ドライブの詳細なステータスをNASと共有することで信頼性の高い動作を実現する。

 S.M.A.R.T.などよりもより多くの情報をNASに送ることで、NASは何かしらの問題が発生した際に、それが障害が発生する兆候なのか、外的要因などによりたまたま発生したエラーなのかなどを判断し、データを守るために適切なタイミングでユーザーにアラートをだしたり、データを保護することができる。

 なお、この機能を利用するには、対応するドライブと対応するOS/ファームウェアを搭載したNASが必要だ。IronWolf 110 SSDは登場して間もないこともあり、今回テストに用いたASUSTORのAS7010Tはまだ未対応で、IHMの機能を利用することはできなかった。

 ただし、ASUSTORによると、今後のアップデートでAS7010TはIronWolf 110 SSDに対応予定であるとしており、遠からずIronWolf 110 SSDのユニークなステータス監視機能を活用できるようになるはずだ。

 以下の画像はIHM対応の14TB HDD「ST14000VN0008」をAS7010Tで使用した際のものだが、対応環境が整うと、ドライブを「IronWolf」とNASが認識し、独自機能が利用可能になる。

NAS側でIHM対応ドライブと認識されると、ドライブのマークがIronWolfロゴになる。
IHM対応ドライブとして認識されていると、ディスクドクターからIHMによるスキャンの実行や、スケジュールスキャンの設定が行える。
ASUSTORのNASでは、IHMのスキャン結果からドライブの温度や作業量の推移を確認できる。年単位での推移の確認が可能で、長期のログデータが記録される。

DRAMキャッシュの効かない大容量アクセスでも高速なSSD NAS性能と信頼性を両立したいユーザーのためNAS向けSSD「IronWolf 110 SSD」

 4台のIronWolf 110 SSDで構築した10GbE SSD NASは、1GB/sクラスのシーケンシャルアクセス性能を実現し、その高速性をしっかりと発揮することができた。

 NASに搭載されたDRAMキャッシュの効果が薄いテストサイズ32GiBで実行したCrystalDiskMarkでも優れたパフォーマンスを発揮しており、大容量のデータアクセスでも高速性を維持できるのは、単体ストレージとしても高性能なSSDを使っているからこそだ。

 NAS用途で安心して使える高い耐久性と信頼性に、今後のNASのアップデートでIHMによるディスク管理が加われば、IronWolf 110 SSDは高い性能と信頼性を兼ね備えたSSD NASの構築に最適な選択肢のひとつとなるだろう。

[制作協力:Seagate]