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オーバークロックメモリの基本と実際の性能、見れば全部わかるDDR4メモリ完全ガイド

OCメモリの仕様や設定法を確認、高性能メモリの使いこなし方編 text by 坂本はじめ

 DDR4メモリ完全ガイドの前編では、メモリを理解するのに必要な規格や指標について紹介した。

 後編となる今回は、JEDECの標準規格に縛られない「オーバークロックメモリ」の存在や、CPUやマザーボードといったシステム側の対応状況、製品としてはゲーミングに分類されるLED搭載メモリなどに関する基本的な部分を紹介する。

 メモリ製品は単純に性能の高い製品を選べば良いというものではない。システム側とのマッチングを考慮しなければ、高性能なメモリも十分な性能を発揮できなかったり、そもそも利用できない場合すらある。そのような問題を避けるためにも、今回の内容も前編と合わせて参考にしてみていただきたい。


メモリメーカーが独自に性能を向上させたオーバークロックメモリ

オーバークロックメモリにはオーバークロック時の動作設定がラベルに記載されている。
Crucial Ballistix EliteのDDR4-4000対応モデル。

 オーバークロックメモリは、メモリモジュールの製造メーカーが独自の裁量で、メモリチップのネイティブ対応メモリクロックを超えた動作を製品仕様に設定した製品だ。また、メモリタイミングに標準より小さな値を設定した「低レイテンシメモリ」もオーバークロックメモリに含まれる。

 これらのオーバークロックメモリの多くは、JEDECの標準規格に準拠した「スタンダードメモリ」より高速な動作仕様を実現しており、JEDEC標準規格にネイティブ対応したメモリモジュールがDDR4-3200動作までである一方、オーバークロックメモリはDDR4-4000を超える製品が販売されている。

 高性能な製品が多いオーバークロックメモリだが、その動作を実現するために動作電圧を引き上げている製品もあり、発熱の増加やシステム側にダメージを与えることもある。また、JEDECの標準規格から外れた動作を実現する関係上、システム側との互換性はスタンダードメモリよりも低い傾向がある点に注意が必要だ。

 モデルによっては動作確認が取れた組み合わせをバリデーションリストとして公開していることもあるが、CPUやマザーボード側の個体差や環境の違いで動作しないこともあり、安定動作が保証されているスタンダードメモリとは扱いが異なることを理解して使用してもらいたい。


オーバークロックメモリを動作させるためのXMP製品スペック通りに動作させるには設定値の読み込みが必要

 オーバークロックメモリで製品仕様通りの動作を実現するためには、原則としてマザーボードのUEFIなどでメモリの動作設定を行う必要がある。

 現在販売されているオーバークロックメモリのほとんどは、SPDとXMPという2種類のメモリプロファイルを備えており、SPDには多くのシステムで起動可能な標準規格に近い動作が記録され、オーバークロックメモリ本来の製品仕様はXMPに記録されている。

DDR4-3200対応のスタンダードメモリのSPD情報。下位互換のためDDR4-2666やDDR4-2400の設定値なども持っている。
DDR4-4000対応のオーバークロックメモリのXMP情報。JEDECの標準規格とは異なるメモリメーカーがカスタムした設定値が記録されている。

 ほとんどのマザーボードは、原則としてSPD情報を優先して読み取るため、互換性重視の動作仕様に基づいて設定が行われる。XMPのプロファイルが優先的に読み込まれると高クロック動作に対応できない環境ではPCが起動不能になるためだ。したがって、ユーザーはこれをXMP情報に基づいて設定を行うように設定を変更する必要がある。

DDR4-4000動作のオーバークロックメモリを搭載して起動したUEFI画面。初回起動時はSPD情報に基づいてDDR4-2666動作が適用される。
XMPに基づくメモリ設定を行うMSIの「A-XMP」を有効にして再起動したUEFI画面。メモリクロックがDDR4-4000動作になっている。

 上記のスクリーンショットは、DDR4-4000動作対応のオーバークロックメモリをMSIのAMD X570搭載マザーボードで動作させた際のUEFIの画面だ。

 起動直後のメモリクロックはDDR4-4000ではなくDDR4-2666になっている。そして、XMPを読み取るMSI製マザーボードの機能である「A-XMP」を有効化して再起動した後は、XMPに記録された本来の製品仕様が反映され、DDR4-4000での動作が実現している。

 せっかくのオーバークロックメモリも、設定を怠ればスタンダードメモリと大差なかったり、それ以下の速度でしか動作しない場合ある。オーバークロックメモリを利用するときは、忘れずにメモリの動作設定を行おう。

Intel向けの「XMP」はAMD環境でも利用可能、マザーメーカーが独自サポート

 オーバークロックメモリの設定値が記録されている「XMP」はIntelが策定したもので、基本的にはIntelプラットフォーム向けの設定値となっている。

 ただし、AMD環境でも「XMP」の設定値を有効にできるよう、独自に対応機能を備えたマザーボードが現在は主流となっている。MSIを例にすると、同社が「A-XMP」と呼ぶ独自機能により、XMP対応メモリをAMD環境でも利用可能だ。


オーバークロックメモリを購入するときはかならずメモリキットで製造ロットの違いや新旧製品の混載はスタンダードメモリよりもシビア

オーバークロックメモリでは、組み合わせでの動作保証が存在するメモリキットの価値は大きい。
オーバークロックメモリを使用する場合は、使用したい枚数/容量がセットになったメモリキットを選ぼう。

 オーバークロックメモリは、メモリモジュールメーカー独自の動作設定で製品化されている。結果としてその動作仕様を満たせるメモリチップの供給は不安定であり、その時々で製品仕様を満たせる他のメモリチップに変更されることが珍しくない。

 そのため、同一型番のオーバークロックメモリであっても、メモリチップや基板の仕様が異なっていることは珍しくない。ただでさえ、標準規格から外れた高速な動作を実現するオーバークロックメモリにとって、こうしたスペック表にない仕様の違いが、動作不良の原因となりがちだ。

 こうした事情により、オーバークロックメモリにおいては、複数枚での動作が保証されているメモリキットの重要度はスタンダードメモリ以上に大きなものとなる。不良が発生して交換対応となった場合も、メモリキット全体をまとめて交換してもらえるため、仕様変更による組み合わせの問題が生じる心配もない。

 オーバークロックメモリを使用するのであれば、原則として必要な枚数とマルチチャネルへの対応が保証されたメモリキットを選択するべきであると覚えておいてもらいたい。


オーバークロックメモリにも製品としての保証はある動作しない場合はCPUやマザーボード側の要因もチェック

オーバークロックメモリのも製品としての保証はある。
高クロックメモリを使うのであれば、メモリ回路の設計の良さをアピールしているマザーボードもあるので、選ぶ際の目安にするのも良いだろう。

 オーバークロックメモリにも当然ながら製品保証や動作保証は存在しており、ほとんどのオーバークロックメモリは、そのメモリ自体が製品仕様通りに動作することを保証されている。

 ただし、現実的にはメモリが不良品ではない場合でも、製品仕様通りの動作を実現できないことは少なくない。動作不良の原因がCPUやマザーボードと言ったシステム側にある場合、メモリ側が正常でも高クロック動作はできないといったこともある。

 システム側が原因の動作不良は、メモリの製品保証や動作保証の対象外だ。この点はオーバークロックメモリもスタンダードメモリも変わらないのだが、標準規格を超えた高クロック動作や低レイテンシ動作を実現するオーバークロックメモリは、システム側の負担も大きいためこの手の問題が生じやすい。

 オーバークロックメモリで、メモリの製品保証がカバーできない組み合わせの問題による不具合を避けるためには、システム側の仕様をより慎重に吟味する必要がある。CPU側は個体性能次第なので運の要素が大きいが、マザーボード側は、上位グレードには高クロックメモリ動作をウリとするモデルもあるので、選ぶ際の目安にはなる。


現行CPUの対応メモリクロックとメモリチャネルを再確認Intel環境、AMD環境それぞれに最適なメモリを選ぼう

Intel/AMDの主要CPUの対応メモリを再確認。

 現代のCPUにはメモリを制御するメモリコントローラが内蔵されており、そのCPUがどういった仕様のメモリを利用できるのかはCPU内蔵メモリコントローラの仕様に大きく左右される。

 IntelとAMDのCPUで内蔵メモリコントローラがサポートするメモリのスペックは異なるが、いずれの場合もCPU仕様を超えるスペックのメモリを利用した場合の動作保証は存在しない。

Intel製CPUの対応メモリ

 Intel製CPUは、製品仕様において「メモリクロック」「最大メモリ容量」「メモリチャネル数」「ECCメモリ対応」などが規定されている。これらの仕様はCPU製品グレードによっても異なっている。

 いくつかの代表的なIntel製CPUの対応メモリを表にまとめてみた。ここに記載されているスペックは、Intelが保証する仕様であり、これを超えるメモリクロックでの動作はIntelの保証対象外となるが、必ずしも不可能という意味ではない。

AMD製CPUの対応メモリ

 AMD製CPUは、製品仕様において「最大メモリクロック」「メモリチャネル数」などが規定されているのだが、対応メモリクロックについては、搭載メモリの枚数やランク数によって異なるという、少々やっかいな仕様が存在する。

 代表例として、第1世代から第3世代までのRyzenの対応メモリクロックについての仕様を表にまとめてみた。これがAMDが動作を保証するスペックであり、特に第2世代までのRyzenは、枚数やランク数が増えると高クロックでの動作が困難になるというメモリコントローラの仕様が伺える仕様となっている。

 なお、枚数やランク数が増えると高クロック動作が困難になるというのはRyzenに限った話ではない。特にオーバークロックメモリなどを利用する場合には、なるべく少ない枚数とランク数で必要な容量を満たすことが、安定した動作を実現する可能性を高めるのに有効だ。


Intelチップセットでオーバークロックメモリを使う際の注意AMDチップセットは現状制限なし

Intel環境の場合Z系やX系のチップセット以外ではオーバークロックメモリの動作が大きく制限される。

 メモリとCPUを接続することになるマザーボードには、メモリの動作を左右する大きな要素が2つ存在している。ひとつは「チップセットの仕様」で、もうひとつが「マザーボードの対応メモリ」だ。まずはチップセットの仕様について紹介しよう。

 メモリコントローラがCPUに内蔵された現在、チップセットとメモリは直接接続されてはいないものの、チップセットのグレードによってメモリの動作に制限が掛けられている場合がある。より具体的に言えば、CPU内蔵メモリコントローラの仕様を超えたメモリクロックを設定できるか否か、すなわちメモリのオーバークロックの可否が決定する。

 IntelとAMDの主要なチップセットにおける、メモリのオーバークロックの可否をまとめた表が以下のものだ。AMDは基本的にチップセットレベルでメモリのオーバークロックを制限していないのに対し、IntelはX系とZ系の上級チップセット以外ではメモリのオーバークロックが制限されている。

 メモリのオーバークロックが制限されたX系とZ系以外のチップセットでは、原則としてCPUの内蔵メモリコントローラがサポートするメモリクロックが設定可能な最大メモリクロックとなる。例えば、Core i9-9900KをH370チップセットで使用した場合、DDR4-4000のメモリを用意しても最高でDDR4-2666動作のメモリとしてしか使用できない。

 Intel環境の場合、高クロックなメモリ用意しても、チップセットとの組み合わせ次第でその性能をフルに発揮できない組み合わせもあることには注意しよう。


オーバークロックメモリを使用する際はマザーボード側の表記にも注意

マザーボードの製造された世代やチップセット、グレードなど、同じDDR4メモリスロットでも対応状況は様々。
上位マザーボードなどは動作するメモリの最大クロックを「(OC)」として記載していることもある。メモリの最大容量は最高クロック時に搭載可能なメモリ容量というわけではない点にも注意。

 マザーボードにおいてメモリの動作を左右する二つ目の要素「マザーボードの対応メモリ」とは、そのままマザーボードの製品仕様に規定された対応メモリのことである。

 一般的に、マザーボードの製品仕様には利用可能なメモリの規格や容量、メモリクロック、ECCの有無、XMPの対応などが記載されている。基本的には、ここで記載されている仕様が利用できる最大のスペックということになるのだが、いくつかの注意点が存在する。

 まず、対応メモリクロックに関しては、単に「DDR4-3200」と記載されている場合と、「DDR4-3200(OC)」と記載されている場合がある。この場合、(OC)と付与された後者のメモリクロックに関しては、オーバークロック動作での対応という意味であり、その動作自体をマザーボードメーカーが保証している訳では無い点に注意が必要だ。

 また、対応メモリ容量が「最大128GB」と記載されている場合、それはあくまで最大容量であって、どのメモリクロックでもその容量を搭載できることが保証されている訳では無い点にも注意したい。

マザーボードで使えるメモリの手がかりとなるメモリサポートリスト

MSI MEG X570 ACEを例にすると、対応メモリのリストが公開されており、オーバークロックメモリも含めた対応状況が確認できる。

 主要なマザーボードメーカーは、各製品でメモリ動作テストの結果を記載した「メモリサポートリスト」を公開している。

 これを参照することで、4枚挿しが不可能になるメモリクロックや、大容量メモリが利用できるメモリクロックの目安を得ることができる。

 メモリサポートリストは、そこに記載されたメモリとの組み合わせを保証するものでは無く、あくまで目安にできる程度のものではあるのだが、オーバークロックメモリの利用などを検討しているユーザーにとっては、重要な手がかりとなるだろう。

安定動作を狙うならCPU/マザーボード側の対応状況も知ってメモリは選ぼうスタンダードメモリでも実質オーバークロック状態になることも

 スタンダードメモリとオーバークロックメモリがそれぞれどのような性質の製品なのか、そしてCPUやマザーボード側の対応メモリを踏まえた上で、メモリ選びで問題が起こりにくい選択とはどのようなものなのか。

 結論から言えば、CPUとマザーボードの対応メモリの範囲内で、JEDEC標準規格にネイティブ対応したメモリモジュールを選択することが、もっとも組み合わせの問題が起こりにくい選択である。

 単にJEDEC標準規格のメモリを選べば良いかと言えばそうでもなく、DDR4-3200ネイティブ対応のメモリをIntel環境で使うことは「メモリのオーバークロック」となるし、それが4枚構成なら第3世代RyzenでもCPUの動作保証外となってしまう。より安全をとるなら、CPUとマザーボードの対応メモリについてよく把握しておくべきだ。

 自作PCにおいて、各パーツの組み合わせはユーザーの責任であると同時に自由でもある。各パーツの仕様を十分にチェックして高性能なオーバークロックを利用すれば、その性能の恩恵にあずかれる訳で、実際に少なくないユーザーがオーバークロックメモリを使用して安定動作を実現している。

 安定をとるにせよ性能をとるにせよ、知らずに選ぶのと知ったうえで選ぶのとでは、心構えから違ってくるはずだ。メモリとそれに対応するシステム側の仕様を理解した上で、メモリの選択に臨んでもらいたい。


高クロックメモリを導入した際のメリット、実際に効果を確認してみた

Core i9-9900KS/MSI MEG Z390 ACE(Intel Z390)環境でOCメモリの効果をテストしてみた。

 ここまでは、メモリを選ぶための基礎的な知識については紹介してきた。ここからは応用編として、現在のメモリ製品に関連した情報を紹介していく。

 まずは、そもそも高クロックメモリがどのような場面で効果を発揮するのかテストした結果を紹介しよう。

 このテストでは、Intelの8コアCPU「Core i9-9900KS」を搭載したIntel Z390環境で、DDR4-2133、DDR4-3200、DDR4-4000の3種類のメモリクロックで様々な処理を実行し、そのパフォーマンスの変化を検証した。メモリ以外のテスト環境については以下の通り。

 メモリは、DDR4-4000対応のオーバークロックメモリ「Crucial BLE4K8G4D40BEEAK」と、DDR4-3200対応のスタンダードメモリ「Crucial CT2K8G4DFS832A」を用意。それぞれ2枚ずつでテストを行い、DDR4-2133動作についてはCT2K8G4DFS832Aのメモリクロックを引き下げ、レイテンシなどもJEDEC準拠のDDR4-2133の値に設定してテストしている。

SiSoftware Sandra 20/20でメモリ性能をテスト、DDR4-4000のOCメモリはだいぶ高速

「SiSoftware Sandra 20/20」でメモリの帯域とレイテンシをチェック。

 ベンチマークテストの「SiSoftware Sandra 20/20」を使ってメモリ自体の性能を測定した結果、メモリ帯域幅はメモリクロックが上がるほど増加しており、最低クロックのDDR4-2133が22.85GB/sであるのに対し、DDR4-3200は約27%増の29.08GB/s、DDR4-4000では約60%増の36.62GB/sを記録した。

 メモリのレイテンシに関しても高クロックメモリが優位で、DDR4-2133の30.1ns(ナノ秒)に対し、DDR4-3200は約9割の27.1ns、DDR4-4000では約8割となる24.0nsを記録した。このように、高クロックメモリを用いることで、確かにメモリ性能が向上していることが確認できる。

CPU処理が中心のCINEBENCH R20ではメモリクロックの効果薄

Intel環境でのテストだが、CPU処理中心のベンチマークなどではメモリクロックがほぼ影響しないこともある。

 定番のCPUベンチマークであるCINEBENCH R20は、CPUのCGレンダリング性能を測定するテストだ。今回はメモリクロックの違いがどの程度スコアに反映されるのかを確認した。

 結果としては、各メモリクロックごとのスコア差は1%未満の誤差レベルであり、差がつかないという結果が得られた。メモリの帯域幅やレイテンシで確実に有利なDDR4-4000であっても、処理時間の大部分がCPUの演算時間であるCGレンダリングでは、メモリ性能がスコアを引き上げることは無かったようだ。

動画エンコードの性能のパフォーマンスを底上げ

エンコードする動画素材や設定によっても変わるが、メモリクロックが性能に影響することもある。

 近年のCPUコア数増加に伴い、動画エンコードは以前よりも高いフレームレートで処理を実行できるようになった。このエンコード速度の向上がCPUのメモリアクセスを増加させ、結果として動画エンコードは高クロックメモリが効く処理となっている。

 実際にTMPGEnc Video Mastering Works 7にて、x264で60秒の1080p60動画(3,600フレーム)の2パスエンコードを実行した結果、DDR4-4000は約5%、DDR4-3200は約3%、それぞれDDR4-2133よりもエンコード速度が向上した。

効果の大きさはゲーム次第ながら、メモリが効くタイトルでの効果はてきめん

「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」はメモリの性能差が出やすい。

 ゲームは採用しているエンジンなどの違いで、メモリが効くこともあれば効かないこともあるジャンルだ。今回はメモリ性能の影響が大きい「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」の実行結果を紹介しよう。

 ベンチマークテストはフルHD解像度(1,920×1,080ドット)の最高品質設定で実行した。結果は、DDR4-2133のスコアが18,700であったのに対し、DDR4-3200では約9%増の20,354、DDR4-4000は約17%増の21,960を記録した。

 先に述べた通り、ゲームはタイトル毎にメモリアクセスの頻度が異なるため、あらゆるゲームでファイナルファンタジーXIVほど大きなパフォーマンス向上が得られる訳では無い。また、当然ながらゲームの性能を最も大きく左右するのはGPUとCPUだ。メモリはこれらの性能を底上げする第三の要素と考えるべきだろう。


PCを鮮やかにするRGB LEDイルミネーション搭載メモリ他メーカーと連動できるかも選ぶポイント

CrucialのRGB LED搭載メモリ「Ballistix Tactical Tracer RGB」。

 近年はRGB LEDイルミネーションが流行しており、メモリも発行色やパターンなどを制御可能なRGB LEDを搭載した製品が登場している。

 流行初期にはメモリ基板とマザーボードをケーブルで接続して制御するタイプの製品もあったが、Crucialの「Ballistix Tactical Tracer RGB」に代表される現行のRGB LED搭載メモリはコードレス制御対応で、専用のLEDコントロールソフトや、各マザーボードメーカーのユーティリティでイルミネーションを制御できる。

 LEDを搭載しているからと言って、性能や信頼性が高くなるというものでは無いが、内装まで自分好みにカスタマイズしたPCなら愛着もひとしおというもの。RGB LED搭載メモリを選ぶ際には、コードレス制御である点と、同期発光させたいマザーボードなどと同じ制御規格に対応しているのかに注目しよう。

CrucialのLEDユーティリティ「DDR4 Ballistix M.O.D.ユーティリティ」。同社のメモリが搭載するRGB LEDの発光を制御できる。
CrucialのRGB LED搭載メモリ「Ballistix Tactical Tracer RGB」は、マザーボードメーカーのイルミネーション機能との連携が可能。


オーバークロックメモリは「高さ」にご用心、ヒートシンク搭載メモリの注意点

ヒートシンク搭載メモリモジュールは「高さ」が増していることが多い。

 性能を重視してメモリクロックや動作電圧を高く設定しているオーバークロックメモリの多くは、その仕様によって大きくなる発熱への対処のため、放熱用のヒートシンクを搭載している。

 これらヒートシンクのデザイン性もメモリ選びにおける一要素となり得るものなのだが、これらのメモリはヒートシンクを搭載しないメモリモジュールより、「高さ」の寸法が大きくなっている点に注意が必要だ。

 ヒートシンクを搭載したことで高さが増したメモリモジュールは、大型の空冷CPUクーラーや小型PCケースのシャーシと干渉が発生する場合があり、最悪の場合は干渉が原因で組み合わせ不能になってしまう。

 見落としがちな問題だが、発生した場合の結果は致命的だ。大型のヒートシンクを搭載したメモリモジュールを選ぶ場合は、ケースやCPUクーラーとの干渉が発生しないか十分に検討するべきだろう。


高クロックメモリが動作しない場合はどうする?動作する上限を探る方法

高クロックメモリが動作しない場合、手動で動作クロックのみを落として動作の限界値をテストすることができる。

 性能を追求して高クロック動作のメモリを購入したものの、システム側の力不足によりメモリを製品仕様通りに動かせないということは起こりうる。

 このような場合、どう対応すればいいのかと言えば、動作可能なところまで「メモリクロック」を引き下げることだ。JEDEC標準に準拠したメモリのSPD情報には、下位のメモリクロックに対応する動作仕様が書き込まれており、マザーボードによってはメモリクロックを引き下げれば自動的にその動作設定が反映される。

 動かなかったのがオーバークロックメモリであれば、XMPを適用した状態で、UEFIの設定項目メモリクロックだけを引き下げる。この際に重要なのは、XMPを適用していることと、電圧やメモリタイミングなど、メモリクロック以外の項目の設定は変更しないことだ。

 メモリクロックだけを任意で引き下げるこれらの設定であれば、メモリの製品保証を損なうことなく動作可能なメモリ設定を引き出すことができる。製品保証にこだわらないのであれば他の手段、例えばシステム側やメモリの電圧調整やメモリタイミングの調整などもあるが、まずはメモリクロックの引き下げで妥協できないかを確認すべきだろう。

メモリの選択肢は多種多様、悩ましくも選択の楽しみもあるのがメモリ選び

 前後編に渡ってお届けしたメモリガイドもここまで。基礎的な部分のみの紹介に絞ったが、それでも項目数はかなりの数になった。

 ここまで読破したユーザーなら、メモリのスペック表から製品仕様を読み解き、システム側の対応メモリの重要性を認識したうえで、メモリを選ぶことができるはずだ。メモリ製品は多種多用であり、その中からどんなメモリを選ぶのかを選択するのは大変ではあるが、一方で自分のこだわりで選べるパーツの一つでもある。

 安定か、性能か、はたまたイルミネーションやヒートシンクのデザインか、様々な要素の中から自分なりの価値観でメモリを選ぶ楽しみを見出してもらえれば幸いだ。

[制作協力:Crucial]