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DDR4メモリの“本当の性能”をあらゆる角度から徹底的に検証してみた
クロックやレイテンシ、チャネル数の違いや消費電力など、小ネタも併せて紹介 text by 坂本はじめ
2017年9月29日 12:20
前回レビューでDDR3メモリとDDR4メモリの違いについて様々なテストを行ったが、今回は対象をDDR4メモリに絞り、性能や疑問に思う部分を徹底的に検証してみたい。
現在のDDR4メモリは、DDR4-2133、DDR4-2400、DDR4-2666という3つの標準規格に準拠したメモリが流通している。規格上は数値が大きいほど高速ということになっているが、本当にそうなのだろうか。速度、容量、動作レイテンシ、動作チャネル、消費電力、互換性など、それらの要素がどう性能に影響するのか、テストできるものは可能な限り検証を行った。
DDR4メモリを購入する際、大は小を兼ねるで高速なモデルを購入すべきなのか、ピンポイントに自分が必要とする速度規格のメモリを購入すべきなのか、今回のレビューを是非メモリ選びの参考にしてもらいたい。
DDR4メモリの疑問を徹底検証DDR4-2133からDDR4-2666の4~16GBメモリを多数用意して一挙テスト
今回テストを行ったのは大きく分けて5項目、動作クロックとレイテンシのテスト、ゲーム/アプリケーションの実行性能、メモリチャネル/メモリインターリーブの効果検証、消費電力/互換性のテスト、メモリ容量によるパフォーマンス変化とRyzen系CPUにメモリが与える影響などだ。
【記事目次】
●動作クロックとレイテンシの関係(1ページ)
・動作クロック分高速となるDDR4メモリ、帯域幅を計測
・レイテンシの値が大きいのにDDR4-2666がレスポンスも最速?実測値を計測
・動作クロックとレイテンシの関係、動作クロックが向上すると応答速度も高速化される
・レイテンシを1詰めると性能は数%向上する?レイテンシの設定を変更して計測
●ゲーム・アプリケーションの実測値比較(2ページ)
・暗号処理では高速な規格が有利、DDR4-2666が大きくリード
・LGA2066ではゲームでメモリの性能差が出ない?オーバーウォッチとゴーストリコンでテスト
・LGA1151ではメモリの速度差がゲームの性能差に若干影響
・CPU内蔵GPUを使用した場合、メモリの速度はゲーム性能に反映される
・ゲームの挙動はかなり特殊?動作クロックのみを変更した際の実効性能もテスト
・レイテンシだけを変更した場合もゲームでは差が出にくい
●デュアル/クアッドチャネルの速度比較、インターリーブの効果(3ページ)
・メモリチャネルが増えると概ね枚数分の帯域が広がる
・4chメモリが性能を発揮するのは暗号処理、演算以外の用途は帯域幅の恩恵を受けにくい?
・メモリスロットは全て埋めた方が速くなるわけでは無い
・チップフル実装のメモリがより高速、メモリインターリーブの効果
●DDR4メモリの条件別消費電力、下位互換性のテスト(4ページ)
・動作クロックが下がるほど消費電量も下がるDDR4メモリ
・ランク数の多い方がやはり消費電力は大きい?
・DDR4-2666はDDR4-2133でも使える、下位互換が確保されたDDR4メモリ
●メモリ容量別のパフォーマンス比較、Ryzenの特性(5ページ)
・Windows 10のキャッシュ機能を有効に使うなら8GB以上のメモリを搭載しよう
・Photshopで画像の加工を行うなら16GB以上を目安にしよう
・実はメモリ容量が多い方がファイルコピーも速い?写真データの転送時間を比較
・メモリの性能がCPU自体の性能にも影響するRyzen
テストは、現行定格動作のメモリとして入手できるDDR4-2133、DDR4-2400、DDR4-2666の3規格で、それぞれの項目で規格ごとに性能差が出るのかといった部分を中心に検証している。それぞれの規格の仕様は以下のようになっているので、まず覚えておいてもらいたい。
続いて、今回テストに使用している機材を紹介しよう。これらのテストを行うため、今回Crucialにご協力いただき、多数のメモリをお借りした。
以下が使用したメモリの一覧だ。速度はDDR4-2133からDDR4-2666まで、容量は4~8GBまで多数使用して様々な条件をテストした。
検証環境だが、LGA2066(X299)プラットフォームをメインに使用しているが、一部LGA1151(Z270)プラットフォームやSocket AM4(X370)プラットフォームも用いてテストを行った。
動作クロック分高速となるDDR4メモリ、帯域幅を計測
まずは、DDR4-2133、DDR4-2400、DDR4-2666の標準規格に準拠したメモリの帯域幅を比較してみた。テストでは各規格に準拠した16GBモジュールを4枚ずつ使用している。
メモリの帯域をDDR4-2133を基準に見てみると、DDR4-2400は約11%、DDR4-2666では約20%、それぞれメモリの帯域幅が増加している。
動作クロックが高速となる分、帯域幅も広がり高速となることが確認できた。
レイテンシの値が大きいのにDDR4-2666がレスポンスも最速?実測値を計測
クロックと併せてメモリ速度の指標になるのがアクセスタイミングだ。CLで表記されるキャスレイテンシの方が通りは良いだろうか。この値が小さいほどレスポンスが良く、大きくなるほど待ち時間が増えるとされる。
DDR4-2133はCL15、DDR4-2400はCL17、DDR4-2666はCL19が定格とされているが、どれだけ差が出るのか計測してみた。
実測値は、33.2nsec(ナノ秒)を記録したDDR4-2666が最も高速だった。DDR4-2666のメモリタイミング設定は比較した規格の中で最も不利といえるが、高クロック動作がこれを補ったようだ。
各規格の差は1nsecに満たないのでそれほどこだわらなくて良いとも言えるが、DDR4-2666対応メモリを購入して不利になることはない点は覚えていて損は無いだろう。
動作クロックとレイテンシの関係、動作クロックが向上すると応答速度も高速化される
動作クロックとレイテンシの関係はなかなか興味深いので、少し掘り下げてテストしてみた。
DDR4-2666規格のメモリを使い、タイミングを標準の「19-19-19-43」に固定したままメモリクロックだけをDDR4-2400とDDR4-2133に引き下げてテストする。レイテンシが同条件でクロックだけが向上した場合同性能が変化するかを見てみよう。
メモリ帯域はDDR4-2133を基準とすると、DDR4-2400で約11%増、DDR4-2666では約21%増となっている。また、レイテンシも顕著に変化しており、DDR4-2133基準でDDR4-2400のレイテンシは約94.3%、DDR4-2666では約90.2%にまで減少している。
この結果から、メモリの動作クロックの向上には、メモリ帯域の増加とレイテンシの短縮という2つの効果があることが分かる。
レイテンシを1詰めると性能は数%向上する?レイテンシの設定を変更して計測
動作クロックがメモリ全体の性能に影響することは先の結果からわかったが、動作クロックを固定してレイテンシだけを変更した場合、どういった影響が出るのかも検証してみた。
具体的には、動作クロックの設定をDDR4-2133に固定し、タイミング設定をDDR4-2400 (17-17-17-39)とDDR4-2666 (19-19-19-43)相当に緩め、それぞれの設定でテストを実行した。
メモリ帯域はタイミングが緩むほど僅かに減少している程度だが、レイテンシは「17-17-17-39」で約5.3%、「19-19-19-43」では約7.1%と、はっきり遅くなっている。
今回アクセスタイミングが詰められるオーバークロックメモリが用意できないためこのようなテストを行ったが、結果から推測すると、動作クロックを固定してレイテンシを小さくしていった場合、おそらく数%ずつ高速化されていくのではないだろうか。