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HDD×14台でサーバーを構築、フルタワーケース「Define 7 XL」の高い拡張性を活用!
ハイエンドもサーバー用途も行けるFractal Designの最新EE-ATX対応ケース text by 坂本はじめ
2020年3月10日 06:01
今回のレビューで紹介するのは、Fractal Designのフルタワーケース「Define 7 XL」だ。
新時代の汎用PCケースを「定義(Define)」したFractal Designの最新モデルで、前回レビューしたミドルタワーケース「Define 7」の大型版といえる製品で、基本的な機能などは共通化されつつ、最大18台の3.5インチHDDや、EE-ATX規格のマザーボードを搭載できる驚異の収容能力を備えている。
今回、Fractal Designの新作フルタワーケースの外観と基本的な仕様を確認しつつ、実際に大量の3.5インチHDDを組み込んでみた。大量のHDDを搭載する際の注意点などと合わせて、Define 7 XLの優れた収容能力をチェックしてみよう。
EE-ATXやSSI-EEBに対応するフルタワーケース左サイドパネルの違いで3種類のバリエーションを用意
Fractal DesignのDefine 7 XLは、先日登場したミドルタワーケース「Define 7」をそのまま大型化したようなフルタワーケースだ。
本体サイズは240×566×604mm(幅×高さ×奥行)で、対応マザーボードはEE-ATX、SSI-CEB、SSI-EEB、E-ATX、ATX、microATX、Mini-ITX。
黒を基調としたDefine 7 XLにカラーバリエーションは存在しないが、左サイドパネルの違いによるバリエーションモデルが用意されている。バリエーションは3種類で、標準仕様の防音シート付き金属パネル(Solid)、強化ガラスパネル(TG Light Tint)、スモーク仕様の強化ガラスパネル(TG Dark Tint)。今回のレビューで紹介するは、強化ガラスパネル採用の「Define 7 XL TG Light Tint」だ。
静音と冷却を選択できる2種類のトップカバー、フロントやサイドにも防音シート装備
Define 7 XLの天板は、Define 7同様に着脱可能なカバーを採用しており、防音シートが貼付された標準カバーの他に、通気口を設けた冷却志向のカバーが同梱されている。
このトップカバー交換方式はコストが掛かる設計ではあるものの、ユーザーが静音性と冷却性の選択が可能であるだけでなく、継ぎ目のないスマートな見た目の天板を実現できる。汎用性とルックスを両立するトップカバーは、Fractal Designのこだわりが感じられるポイントだ。
また、サイドパネルとフロントパネルにも防音シートが貼付されており、静音性が意識された造りになっている。
天板前面に配置されたフロントパネルインターフェイスは、USB 3.1 Gen2(Type-C)、USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力。
ドアタイプのフロントパネルを採用、5インチベイにアクセス可能
Define 7 XLのフロントパネルは、ヘアライン仕上げのアルミパネルを装備したフラットなデザインを採用している。
フロントパネルは開閉可能なドア仕様で、開くことでフロント通気口用のダストフィルターと5インチベイにアクセスできる。Define 7同様、ヒンジの取り付け位置を変更することでドアの開閉方向を変えることも可能だ。
Define 7 XLの5インチベイは、標準ではファンステイとなっているため、利用するには同梱の5インチベイ固定用パーツに換装する必要がある。
5インチベイ固定用パーツを取り付けたDefine 7 XLでは、2つの5インチオープンベイを利用できる。5インチベイ用のベイカバーも一つ同梱されているので、オープンベイをひとつしか使わないユーザーも安心だ。
内装は「オープンレイアウト」と「ストレージレイアウト」を選択可能ストレージレイアウトでは最大18台もの3.5インチHDDを搭載可能
Define 7 XLのケース内部には、左右のサイドパネルを外すことでアクセスできる。左側面がマザーボードなどの主要パーツの収納スペースで、右側面は配線やストレージ用のスペースとなっている。
Define 7 XLの内装はモジュラー化されており、ケースフロント側に配置された「ストレージプレート」の位置を変更することで、水冷パーツや大型ビデオカードの搭載に適した「オープンレイアウト」と、多数のストレージデバイスを搭載できる「ストレージレイアウト」を選択できる。
Define 7 XLのストレージレイアウトは、最大で18台もの3.5インチドライブと5台の2.5インチドライブを搭載できる。記事執筆時点で最大容量の3.5インチHDD(16TB)を用いれば、最大で288TBものストレージ容量を実現可能だ。
ただし、Define 7 XLに付属するストレージトレイは、3.5/2.5インチ両対応トレイ×6個、2.5インチ専用トレイ×2個、3.5/2.5インチ両対応マルチブラケット×2個であり、ストレージレイアウトの最大搭載量を実現するにはオプションパーツを購入する必要がある。
最大480mmサイズのラジエーターを搭載可能、Define 7 XLの冷却システム
Define 7 XLは、トップ、ボトム、フロント、リアの4か所にファンステイを備えており、冷却ファンや水冷ラジエーターを搭載できる。標準搭載の冷却ファンはFractal Designの140mmファン「Dynamic X2 GP-14 Fan」で、フロントに2基、リアに1基の合計3基が付属している。
4か所のファンステイは、いずれも120mmと140mmファンに対応しており、ボトムは2基、リアは1基、フロントとトップは140mmファン×3基または120mmファン4基まで搭載できる。搭載可能な最大ラジエーターサイズは、ボトムが280mm、リアが120mm、フロントとトップが480mm。
リアを除くファンステイ搭載箇所には、先に紹介しいたフロントパネルのダストフィルター同様にダストフィルターが設けられており、ケース内へのほこりの侵入を抑制している。これらのフィルターはツールレスで着脱可能であり、手軽にフィルターを掃除できる。
また、ケース右側面上部には、冷却ファンを一括管理するユニット「Nexus+ 2 PWM Fan Hub」を搭載。冷却ファン接続用に4ピンファンコネクタ×3個、3ピンファンコネクタ×6個を備えたこのユニットは、SATA電源コネクタからの電力を各ファンへ供給し、マザーボードから取得したPWM信号に基づいてファン制御を行う。
オプション利用で最大23台のドライブが搭載可能なDefine 7 XL最大搭載時はトップのファンステイにもHDDを搭載
フルタワーケースならではの収容能力を誇るDefine 7 XLだが、そのスペックの中でも最大18台もの3.5インチHDDを搭載できるストレージレイアウトのHDD収容能力は際立っている。そこで、今回はオプションパーツを使用して最大積載を実現してみた。
用意したオプションパーツは以下の3種類だが、使用したのは3.5/2.5インチ両対応トレイ2枚組「FD-A-TRAY-001」を5セットと、3.5/2.5インチ両対応マルチブラケット「FD-A-BRKT-003」を1セットで、2.5インチ専用トレイ2枚組「FD-A-BRKT-001」は今回使用していない。
配線などはさておき、3.5インチHDDをDefine 7 XLに搭載できるだけ搭載してみたものが以下の写真だ。ケースの右側面には、ストレージプレート部分に11台、ボトムのストレージケージに4台で、合計15台のHDDが搭載されている。こちら側に搭載したHDDは全て3.5/2.5インチ両対応トレイを使って搭載している。
残る3台は、トップのファンステイに3.5/2.5インチ両対応マルチブラケットを使って固定している。マルチブラケットは、固定穴が120mmファンのねじ穴位置と同じであるため、このようにファンステイに取り付けることができる。
14台の3.5インチHDDでストレージサーバーを組んでみた水冷クーラーを併用する際の注意点やケースのケーブルマネジメントの優秀さを確認
実際にDefine 7 XLへ18台のHDDを組み込めることを確認できたところで、マザーボードなどほかのPCパーツを組み込み、大量のHDDを搭載したPCを構築してみた。
今回構築するPCは、Ryzen Threadripper 3970Xを搭載したAMD TRX40環境。マザーボードの「ASRock TRX40 Taichi」が備える8ポートの6Gbps SATAに加え、玄人志向の拡張カード「SATA3I10-PCIe」を使って、合計18ポートの6Gbps SATAを用意した。その他、使用したパーツは以下の通り。
SATAポートはDefine 7 XLの3.5インチHDD最大搭載数分を確保できていたのだが、実際に組み込んでみたところ水冷クーラーのチューブ長がフロントのファンステイからCPUソケットまで届かなかったため、トップのファンステイに搭載せざるを得なかった。
このため、水冷ラジエーターと引き換えにトップファンステイにマルチブラケットで固定する3台を取り外し、さらにラジエーターとの干渉を避けるためにストレージプレート最上段の1台も取り外したため、HDDの搭載数は14台となった。
HDDを最大数搭載しようとした場合、水冷クーラーなど他のパーツと干渉することもあるので、大型のハイエンドパーツを中心にPCを構築する際などは注意してもらいたい。
今回、14台のHDDへの配線を行うにあたっては、14本のSATAケーブルと、SATA電源コネクタを増やすため「ペリフェラル→SATA変換3分岐」と「SATA2分岐」を各2本ずつ使用した。
手探りで組んだこともあり、今回組んだPCは電源周りの変換/分岐ケーブルのチョイスが完璧ではない部分もあるが、こうしたケーブルを利用することで、より美しくPCを組むことができる。特に、最大11台のHDDが近距離で配置されるストレージプレート部分は、3分岐や4分岐のケーブルを用いるとスマートに組めるので、ケーブル1本あたりの電源容量に気を付けつつも、積極的に利用したいところだ。
また、SATAケーブルは50cm~100cmの長さを使用したが、70cmが一番使いやすく、100cmだとやや余ると言った印象だった。今回は一般的なフラットケーブルのSATAケーブルを用いたが、これほどの台数を組み込むのであれば、ラウンドタイプのケーブルを使うのもおすすめだ。
HDDを大量搭載することがあれば、参考にしてもらいたい。
配線スペースのゆとりが大きなメリット、ケーブルが大量でもスマートな配線が可能
若干想定外なこともあったものの、組みあがったPCが以下の写真だ。SATAケーブルは時間をかければもう一段階綺麗にまとめることができるが、Define 7 XLは配線スペースにゆとりがあることもあり、それほど時間をかけなくてもある程度綺麗に配線をまとめられる。
さらに、Define 7 XLは両側面にボトム部分を隠すシュラウドを装備しているため、ボトム部分さえ隠せば意外とすっきりまとまっているようにも見せることができる。
Windows上からもディスクがしっかりと認識されているか確認したが、14ドライブしっかり認識し、フォーマットなども問題なく行えることを確認した。これだけ台数があると、デバイスとドライブの表示などは見ていて面白い。
なお、拡張カードに接続したHDDは、拡張カード側の帯域幅により速度の上限値が決まるため、同時利用した際に最高速度が出せる台数に制限がかかる。接続したドライブを全数同時に利用しても最高速を維持したい場合などは、より高速なインターフェイスカードなどが必要になるので、ファイルサーバー構築の際は工夫してみてほしい。
Fractal Designが定義する新時代の汎用フルタワーケース「Define 7 XL」
Define 7 XLは、印象通りDefine 7をそのまま大きくしたようなフルタワーケースだ。
冷却性と静音性のどちらを重視するのかをユーザーが選択でき、シンプルな構成の魅せるPCから、多数のストレージや光学ドライブを搭載した実用性重視のPCまで構築できる。一言で言えば、ユーザー好みのPCが構築できるPCケースだ。
巨大なフルタワーケースであるDefine 7 XLは、ミドルタワーのサイズで素晴らしい汎用性と収容能力を実現したDefine 7ほど万人向けのPCケースでないことは確かだが、ストレージレイアウトで多数のHDDやSSDを組み込みたいユーザーや、サーバー向けマザーボードを使った個人用ワークステーションを構築したいエンスージアストには、魅力的なPCケースであると言えよう。
[制作協力:Fractal Design]