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Ryzen APUもNUCも小型PCを組むならM.2 SSD、高速・手軽でエアフローも邪魔しない!

Plextor M9P PlusをベアボーンキットやMini-ITX環境に組み込んでみた text by 坂本はじめ

M.2 SSDのコンパクトさや利便性が最大限活かされるのは小型PCで使用した時、実際に組み込みんで確認してみよう。

 近年、自作PC市場に一気に広まったM.2 SSD。NVMe対応品の速さが注目を集めがちだが、コンパクトなサイズと配線不要で扱える利便性を速度と両立できるのも大きな魅力だ。

 今回は、M.2 SSDの利便性や省スペース性に改めて注目。PCの自作を行う際にM.2 SSDを用いることで、組み立て作業や内部がどこまでシンプルになるのか、小型のMini-ITXケースやベアボーンキットに組み込んで利点を改めて確認してみよう。

 今回使用するM.2 SSDは「Plextor M9PG Plus」。同SSDはデスクトップPCのSSD換装レビューゲームでのレビューも行っているので、性能面に関してはそちらのレビューも合わせて見てもらいたい。

ヒートシンクの有無を選べる“分かってる仕様”の「Plextor M9P Plus」

ヒートシンクの有無で2タイプ用意されている。うちのマザーには立派なSSDヒートシンクが付いているので、ヒートシンク付きのSSDを買うのは引っかかる……という方もスッキリ

 PlextorのSSD「M9P Plus」シリーズは、キオクシアの96層3D TLC NAND「BiCS4」を採用し、リード最大3.4GB/s、ライト最大2.2GB/sを公称するモデル。

 接続インターフェイスはPCI Express 3.0×4レーン。拡張カード型とM.2型が用意されており、今回使用するのはM.2型だ。M.2型のフォームファクターは「M.2 2280」で、ヒートシンク搭載の「M9PG Plus」とヒートシンク非搭載の「M9PGN Plus」が用意されている。

 近年のミドルレンジ以上のグレードのマザーボードではM.2 SSD用の大型ヒートシンクが付属することが多い。これらはおおむね冷却性能が高く、デザイン上もボードの一部となっているのでSSDが浮いてしまうこともない。こうしたマザーと組み合わせるならM9PG Plusを選ぶ。ヒートシンクが付属しないマザーと組み合わせるならM9PGN Plusを選ぼう。

 検証には両バリエーションの512GBモデルを用意し、組み込むPCに合わせて適切な方を選択して使用した。

ヒートシンクを搭載するM9PG Plusの512GBモデル「PX-512M9PG +」
PX-512M9PG +のCrystalDiskMark実行結果。スペック通りのパフォーマンスを発揮している。
ヒートシンク非搭載のM9PGN Plusの512GBモデル「PX-512M9PGN +」
PX-512M9PGN +のCrystalDiskMark実行結果。ヒートシンクの有無以外に性能面での違いはない。

もう2.5インチSSDには戻れないM.2 SSDの省スペース性と利便性をチェック

 ここからは、M.2 SSDの省スペース性と利便性が生かせる事例を紹介していく。今回は、AMD Ryzen用小型PC自作キット「Desk Mini」、Intelの小型PC自作キット「NUC」、小型Mini-ITXケース「L80」を使用した環境の3パターンを用意。

 「M.2 SSDではなく、2.5インチSSDを使用するとどうなるのか」についてもチェックするので、省スペースPCの自作を考えているユーザーは参考にしていただきたい。

Ryzen向けの小型PC環境として用意した「ASRock DeskMini A300」。
Intelの超小型PC環境として用意した「NUC10i5FNK」。
自作PCの代表例としてコンパクトなMini-ITXケース「L80」も用意。

【ケース1】DeskMini A300で使ってみた

ASRock DeskMini A300

 まず紹介するのは、ASRockの人気の小型PC自作キット「DeskMini A300」への組み込み事例。

 Socket AM4に対応するDeskMini A300は、M.2 2280サイズのM.2 SSDと2.5インチSSDをそれぞれ2台ずつ搭載可能という、見た目以上にストレージを組み込める小型PC自作キットだ。

 極小PCを組むときに難関になるのが「組み込み難易度の高さ」だ。フル自作だとまだ事前に想像が付くかもしれないが、いわゆるベアボーンキットを利用する場合は意外と甘く見がちで、やってみたらとんでもなく大変ということも少なくなく、思った以上に分解しなければならない、ちょっとしたすき間に指が入らない、ケーブルの引き回しが困難、などなどのカベに遭遇する。

 しかし本製品の場合、1台目のM.2スロットへのアクセスはものすごく楽チン。M.2 SSDを搭載するためのM.2スロットは、マザーボードの表裏に1基ずつ搭載されており、最初の1台の組み込みについてはマザーボードを筐体から取り外すことなく、SSDをねじ1本で固定するだけで組み込むことができる。

1本目のM.2スロットには基板表面からアクセスできるので、M.2 SSDをねじ止めするだけで取り付けが完了する。
筐体から取り出したマザーボードベースの全景。M.2 SSDを使うとストレージ関連のケーブルがなくなるため、内部は非常にスッキリする
マザーボードベースを筐体内に戻したところ。取り付けたSSD周辺には十分な空間が確保されており、エアフロ―面での不安は少なそう
2本目のM.2スロットはマザーボード裏面にあり、M.2 SSDの搭載には一旦マザーボードを筐体から取り外す必要がある。厚みの制限からM9PG Plusは搭載できなかった。

 一方、2.5インチSSDを組み込む場合、マザーボードの反対側にSSD本体を固定し、専用の電源+SATAケーブルでマザーボードとSSDを接続する必要がある。本キットの場合、専用設計品を使用することでケーブルがエアフロ―に与える影響を最小限に抑え、ドライブの取り付け位置もよく練られているなど、さまざまな工夫が施されており、2.5インチドライブも小型PCとしては使いやすく仕上がっているが、それでも極小環境で使うのはやはり手間ではある。

 その点、M.2 SSDを使うのならケーブルレスなので簡単かつスマートだ。意外に手間取るストレージの取り付けというハードルは、M9P Plusを採用することで一気にクリアできる。

2.5インチSSDは、マザーボードの反対側に取り付ける。1台目は側面からねじ止めできるが、2台目はマザーボードを外してマザーボード取り付け側からねじ止めする必要がある。
専用ケーブルの採用で配線は比較的シンプルだが、組み込み作業にはどうしても手間がかかる。

【ケース2】NUC (NUC10i5FNK)で使ってみた

第10世代Core搭載Intel NUC「NUC10i5FNK」にM.2 SSDを組み込む。

 近年のミニPCには、M.2 SSDのコンパクトさを前提として設計された製品が存在する。第10世代Coreプロセッサを搭載するIntel最新のミニPC“NUC 10”シリーズの「NUC10i5FNK」もそのひとつ。117×112×38mmというコンパクトな筐体を採用するNUC10i5FNKは、M.2 2280とM.2 2242サイズのSSDのみをサポートしている。

 NUC10i5FNKは、底板を外すだけでメモリスロットとM.2スロットにすぐアクセスできる内部構造を採用している。また、底板にはM.2 SSDと熱的に接続するためのサーマルパッドが貼り付けられており、ヒートシンクレスのM.2 SSDでも放熱しやすい。

 底板を外し、メモリとM.2 SSDを取り付けるだけで完成するNUC10i5FNKの組み立て作業は、非常にシンプルで簡単。NUC10i5FNKは基本的にヒートシンク非搭載のM.2 SSDを搭載する構造になっているため、今回はヒートシンクの無い「M9PGN Plus」を使用する方が良いだろう。

底板を外すだけで、メモリスロットとM.2スロットにアクセスできる。
底板にはM.2 SSD放熱用のサーマルパッドが標準添付されており、本体の底板自体がヒートシンクになる構造となっている。。
NUC10i5FNKに搭載するならM.2 SSDはヒートシンク非搭載の「M9PGN Plus」の利用がおすすめ。
メモリとM.2 SSDを搭載するだけで、NUC10i5FNKの組み立ては完了する。手軽さもM.2 SSDの魅力だ。

 NUC 10シリーズにはNUC10i5FNKのほかにも、M.2 SSDに加えて2.5インチドライブも使用できるモデルが用意されている(第10世代Core i3/i5/i7搭載製品がラインナップ)。フットプリントはいずれも2.5インチドライブより二回りほど大きい117×112mmだが、NUC10i5FNKが搭載可能ストレージをM.2 SSDのみとすることで小型化/薄型化を突き詰めて厚さを38mmに抑えているのに対し、2.5インチドライブ搭載モデルは厚さ51mmとなっている。

 超高速なM.2 SSDと容量単価の安いSATAのドライブの2台体制として汎用性を高めたいなら後者だが、なによりもサイズを重視したいということなら、1TBのM.2 SSDも買いごろの価格になってきているので、シングルドライブ構成の前者をチョイスしても使い勝手の面では問題ないだろう。

NUCのフットプリントは驚異的。2.5インチSSDと比較するとその小ささがよく分かる。
2.5インチ/M.2両対応のNUCにSATAのSSDを組み込んでみた。組み込みはさほど大変ではないものの、さすがに内部スペースの余裕は一切なくなる。

【ケース3】ミニPCの自作でも小さいことは大きなメリット

Mini-ITX規格を活用するコンパクトPCの自作でも、M.2 SSDのコンパクトさはメリット。

 ここまで紹介した2例はミニPCの自作キットだったが、パーツ構成の全てを自分で決定する自作PCにおいても、M.2 SSDのコンパクトさはメリットとなり得る。

 例えば、Mini-ITX規格のマザーボードを小型のPCケースに組み込むというシチュエーションの場合、ケース組み込み前のマザーボードにM.2 SSDを取り付けておくだけで、ストレージの組み込み作業が完了する。

マザーボードのM.2スロットにSSDを搭載。SSD用ヒートシンク付きのマザーボードには「M9PGN Plus」がおすすめだ。
M.2冷却用ヒートシンクを取り付けてストレージ搭載作業は完了。
ベアボーンキットやNUCに比べると電源やスイッチ/入出力端子のケーブルが目立つものの、M.2 SSDを用いることで、スマートな内部構造を実現。
M.2 SSD周辺の様子。側面に設けられたスリットが至近なので、M.2 SSD用ヒートシンクを活かすエアフロ―は確保できそう

 一方、2.5インチSSDを使う場合、マザーボードの組み込みとは別にストレージをベイに固定する作業が必要となる上、SATAケーブルと電源ケーブルの配線を行う必要も生じる。ケーブルまでアイデアが練りこまれた極小ベアボーンキットやNUCとは異なり、PC自作で広く用いられる汎用的なケーブル類を利用することになるため、ケーブルの取り回しは専用ケーブルを使う場合に比べると自由度が低く、仕上がりの美しさもかなり気を遣わないとなかなかきれいにならない。また、前述のとおり小型筐体ならではの作業のしにくさにも影響してしまう。

 さらに悩ましいのは、ケース内部の構造だ。今回選んだ製品の場合、2.5インチシャドーベイがCPUクーラー直上に設けられているため、ここにSSDを取り付けるとCPUクーラーの一部を覆い隠すことになってしまう。Intelの付属クーラーを使用した場合、CPUクーラーと取り付けたSSDのクリアランスも狭い。極小PCの場合、CPUクーラーのファンがケース内全体のエアフロ―に及ぼす影響が大きいので、CPUクーラー周辺のスペースが狭苦しくなること、ケーブルをきれいにまとめるのがなかなか難しいことの2点は、エアフロ―の面でマイナス要因となるだろう。

 その点、ケーブルレスでストレージが組み込めるM.2 SSDの場合は、こういったマイナス要因は一切なく、エアフロ―や配線の美しさはすべて解決できる。組み込み作業自体も簡単なので、ケーブルの引き回しや作業のしにくさに頭を悩ませることもなく、スマートに仕上げられるだろう。

マザーボードの組み込み作業とは別に、SSDをフレームのシャドーベイに取り付ける作業が必要。
専用ケーブルが用意されている自作PCキットと違い、SATAケーブルと電源ケーブルの2本を配線する手間とスペースも悩ましい。
SSDを取り付けたフレームをケースに戻したところ。SSDを取り付けたことにより、CPUクーラーが一部隠れてしまっている。
CPUクーラーとSSDのクリアランスは狭い。もっと薄いCPUクーラーを試すという手がなくはないが、いずれにしても難点ではある

小型筐体でM.2 SSDを使って放熱に問題ない?

実際にDeskMini A300にNVMe SSDを組み込んでテストを行なってみた。パフォーマンスと発熱に注目。

 以上で紹介した事例のように、小型筐体への組み込みが圧倒的に楽なM.2 SSDだが、発熱が大きいと言われるM.2 SSDを小型筐体に組み込んでも大丈夫なのか心配なユーザーもおられるだろう。

 結論から言えば、ミニPCへの組み込みであればM.2 SSDの発熱には十分に対処可能だ。

 最初の事例として紹介したDeskMini A300とM9PG Plusの組み合わせでは、ベンチマークテストのCrystalDiskMarkでスペック通りのパフォーマンスを発揮することが可能で、なおかつSSDの動作温度も最大45℃程度と十分に低い数値に抑えられていた。

DeskMini A300とM9PG PlusでのCrystalDiskMark実行結果。OSが入った状態でも、ほぼスペック通りのパフォーマンスを発揮している。
CrystalDiskMark実行中のSSD温度は最大で45℃まで上昇した。サーマルスロットリングが作動する心配のない温度だ。

 今回のように、DeskMini A300のようにSSD冷却機能を持たない環境にはヒートシンク搭載モデルのM9PG Plus、SSD冷却機能をもったNUCやMini-ITXマザーボードにはヒートシンクレスのM9PGN Plusと言った具合で使い分ければ、ミニPCでもM.2 SSDを動作に支障のない温度で運用できる。

ミニPCで特にメリットが大きいM.2 SSD、エアフローや手軽さを優先するなら積極的に選びたい

 コンパクトで配線不要というM.2 SSDの特徴は、ミニPCの組み立て作業における手間や難易度を簡略化できる。これはベンチマークテストからだけでは測れない、M.2 SSDの魅力であると言えるだろう。

 2.5インチのSATA SSDと比べると、M.2 SSDはやや高価ではあるものの、性能に加えて利便性でも勝るとなれば、価格差以上の価値を見出すのは難しくない。特にメリットが大きいミニPCでの利用はもちろん、タワー型PCの自作などでも、M.2 SSDの利便性に注目してみると良いだろう。

[制作協力:Plextor]