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最強の“光らないB550マザー”でRyzen 9 5950Xの実力を引き出す!超堅牢な電源回路のMSI「MEG B550 UNIFY」を検証する
text by 清水 貴裕
2020年12月7日 00:00
耐久性や安定性にフォーカスし、LEDの発光演出をあえて採用しないという質実剛健な作り込みが多くのユーザーに支持されるMSIの「UNIFY」シリーズ。今回紹介する「MEG B550 UNIFY」は、B550チップセットを搭載する最新モデルで新設計の電源回路を搭載する意欲作だ。
新設計の電源回路はウルトラハイエンドクラス
“MEG”を冠するMSIの最上位ラインナップのうち、X570やZ490の「UNIFY」シリーズでは、ハイエンドモデルの「ACE」とほぼ同じ電源回路設計(ウルトラハイエンドモデル「GODLIKE」の回路をベースにフェーズ数を少し減らしたもの)が採用されており、アッパーミドル帯というクラスを上回るリッチな仕様が人気の一因となっていた。
しかし、最新作の「B550 UNIFY」では上位モデル流用の設計ではなく新設計となっていると言う。メニ―コア対応を強化する最適化を図った「Core Boost」技術を採用した14+2フェーズの電源回路には、Infineon Technologies製のPWMコントローラと90A対応のPopwer Stage(MOSFET)が採用されている。
フェーズダブラ-を使わないダイレクト駆動となっている点にも注目だ。これまで並列実装(DRPS)や高性能なフェーズダブラーを推してきた同社が手掛ける初のダイレクト駆動仕様のポテンシャルは気になるところ。電源回路の設計はウルトラハイエンドクラスに相当するレベルの高さとなっており、後ほどテスト結果を詳しく紹介する。
電源回路のヒートシンクは「UNIFY」シリーズでおなじみの冷却スリットが入った大型のものが装備されており、ヒートパイプで上部とI/Oカバー側が連結されている。サーマルパッドに7W/m・Kの高性能なものが採用されている点も見逃せない。
M.2 SSDもしっかり冷やす。WI-Fi 6、フロントUSB 3.2 Gen2もサポート
ストレージ冷却へのこだわりも注目ポイントで、4基搭載されているM.2スロットには「M.2 double-side Shield Frozr」というアルミニウム製のヒートシンクが装備されている。
M.2スロットの配列は上から3段目までがPCI Express 4.0対応の「Lightning Gen 4 M.2」スロットとなっており、最大64Gb/sという高速な転送速度を誇る。最下段はPCI Express 3.0となっているので注意。
オーディオ機能はRealtek ALC1220をベースとし、ノイズの影響を受けにくい独立設計を採用している。左右のチャンネルを別のレイヤーに実装するなど徹底的なノイズ対策を実施。高品質なオーディオグレードコンデンサや金メッキコネクタを採用しS/Nは120dBとなっている。
ネットワーク機能は有線の2.5GLANとしてRealtek 8125B-CGを採用するほか、無線LANにはIntel Wi-Fi 6 AKX200を採用。USBポートはリア部分に合計8基と、フロントパネル向けに合計7基という仕様。リアだけでなくフロントにもUSB 3.2 Gen 2 Type-Cが搭載されている。
電源回路にウルトラハイエンドクラスのコストをかけつつも、そのほかの実装も最新のトレンドをフォローしつつ十分充実しているのは高く評価できる。
高品質な電源回路はやっぱり発熱が小さい!
合計で16フェーズを備える電源回路はCPUコア単体で14フェーズが実装されている本機。この実力のほどをRyzen 9 5950Xを使ってテストしてみよう。
CPU | AMD Ryzen 9 5950X (16コア32スレッド) |
メモリ | G:SKILL F4-3200C14D-16GTZRX (PC4-25600、8GB×2)、 |
ビデオカード | MSI GeForce GTX 1650 4GT LP(NVIDIA GeForce GTX 1650) |
SSD | Micron Crucial MX500 CT1000MX500SSD1/JPA (Serial ATA 3.0、1TB) |
電源 | ENERMAX MaxTytan EDT1250EWT (80PLUS TITANIUM) |
クーラー | MSI MAG CORE LIQUID 360R (簡易水冷、36cmクラス) |
グリス | 親和産業 OC Master SMZ-01R |
OS | Winsows 10 64bit版 |
室温 | 24℃前後 |
そのほか | CPU温度とMOS温度:OCCT 7.04のモニタリング欄の値、 アイドル時:Windows起動10分後の値 |
90A品のInfineon製のPower Stageや「Titanium Choke III」の恩恵か電源回路部分の発熱は非常に小さい印象だ。銅箔層を分厚くした「2oz Thickened Copper」の効果か高負荷時の基板温度も低い。実装部品の発熱が小さいのに加えて、基板全体がヒートシンクのように機能してしっかりと放熱できているようだ。
OCCT CPU Linpackを1時間実行するとOCCTのモニタリング欄のMOSFET温度は35℃から50℃、赤外線カメラ「FLIR ONE」によるサーモグラフィ画像内でもっとも高い部分の温度は37.1℃から52.4℃へ上昇。16コアのRyzen 9 5950Xを1時間フルロードした値としてはかなり低い。
手動オーバークロックを試してみたところ、全コア4.5GHzでCINEBENCH R20の完走に成功。マルチスレッドのスコアは11,658pts、シングルスレッドのスコアは582ptsとなった。定格の最大ブーストである5GHz前後よりも低くなるためシングルのスコアは奮わないが、マルチは高いスコアを叩き出している。このときのCPU電圧は1.30VでCPU温度は最大98.1℃まで上昇し、消費電力値は341Wを記録した。
性能を重視する場合はPrecision Boost Overdriveを使用したほうが、シングルスレッドとマルチスレッドの性能を両立できるのでお勧めだ。
徐々にクロックを上げていったため15回ほど連続で実行したが、最終的にMOSFETの温度は52℃で、サーモグラフィ画像でも56.8℃と発熱の小ささを確認できた。堅牢かつ低発熱な電源回路を備える本製品は、定格での長期間安定動作からOCまで余裕を持って対応可能な懐の深さが魅力的。チップセットとしてはミドルレンジのB550ではあるもののマザーボードの設計は最新のものなので、長くマザーボードを使いたい人やスコア狙いのオーバークロッカーまで満足できる仕上がりと言えるだろう。
[制作協力:MSI]