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DDR4-4400メモリでRyzen PRO 4000の性能を引出せ!DDR4-2666~4400まで性能を比較

CrucialのメモリはAPUと相性良し、高速動作も大容量もイケる text by 坂本はじめ

Ryzen PRO 4000シリーズAPUにオーバークロックメモリを組み合わせてパフォーマンスをテストしてみた。

 VRAMとしてメインメモリを間借りするCPU内蔵GPUのパフォーマンスは、メインメモリの速度に左右されることが知られている。

 特にAMDのAPUは高速メモリの恩恵を受けやすかったが、最新APUの「Renoir」こと第3世代Ryzen APU「Ryzen RRO 4000」においてもそうした傾向が見られるのか、Crucialのオーバークロックメモリを使ってテストしてみた。

DDR4-4400対応の超高速メモリでRenoirの限界にチャレンジ

 まずは、テストの主役となるメモリを紹介しよう。

 用意したメモリは、Crucialのオーバークロックメモリ「BLM2K16G44C19U4BL」。DDR4-4400動作に対応した16GBメモリの2枚組で、メモリタイミングは19-19-19-46、動作電圧は1.4V。

Crucial BLM2K16G44C19U4BL。DDR4-4400対応16GBメモリの2枚組。
メモリタイミングは19-19-19-46で、動作電圧は1.4V。メモリプロファイルの「XMP」に対応している。

 BLM2K16G44C19U4BLは、マットブラックの金属製ヒートスプレッダにアドレッサブルRGB LEDを搭載した「Ballistix MAX RGBシリーズ」の製品で、Crucial独自の「DDR4 Ballistix M.O.D.ユーティリティ」のほか、ASUS Aura SyncやMSI Mystic Light Syncといったマザーボードメーカーのユーティリティで、LEDイルミネーションの制御を行える。

ヒートシンク上部全体が光るLEDバーを搭載。
搭載されているLEDはアドレッサブルRGB対応。
DDR4 Ballistix M.O.D.ユーティリティやマザーボードメーカーのユーティリティでLED制御が可能。
製品パッケージはダークブルー風のカラーとなっている。

 オーバークロックメモリの中でもかなり高速な製品であるBLM2K16G44C19U4BLで、CPU内蔵GPUの性能向上具合をチェックするのは、デスクトップ版Renoirこと第3世代Ryzen APU「Ryzen PRO 4000シリーズ」、その最上位モデルのRyzen 7 PRO 4750Gだ。

 Ryzen PRO 4000シリーズにおいて、製品スペックとして標準対応しているメモリクロックはDDR4-3200までだが、メモリオーバークロックに対応したマザーボードと組み合わせれば、より高クロックのメモリを動作させることができる。今回のテストでは、メモリオーバークロックに対応するAMD B550チップセット搭載マザーボード「ASUS TUF GAMING B550M-PLUS」を用意した。

Ryzen 7 PRO 4750G。8コア16スレッドCPUと、8基のCompute Unit(CU)を統合したAPU。
マザーボードのASUS TUF GAMING B550M-PLUS。

APU環境のメモリ設定を再確認、オーバークロックメモリの性能を引き出すための下準備

 ひとまず、この機材でBLM2K16G44C19U4BLの対応メモリクロックであるDDR4-4400動作が実現できるのか試してみたところ、メモリプロファイルのXMPを読み込むだけであっさりDDR4-4400での動作を実現できた。ちなみに、Ryzen PRO 4000シリーズは高クロックメモリとの相性がかなり厳しいのだが、この結果は良い意味で期待を裏切られた。

Ai Overclock Tnerで「D.O.C.P」を選択すると、メモリのXMPに基づいてメモリクロックや電圧などが設定される。ただし、設定がCPUやマザーボードの動作限界を超えていれば安定して動作しない場合もあるので注意が必要だ。
DDR4-4400設定時のCPU-Z実行画面。CAS Latencyが20なのは、標準で有効なメモリ設定の「Gear Down Mode」により、CAS Latencyが奇数の場合は1つ大きな数値になるため。

 Ryzenの内部構造に詳しいユーザーなら既にご存知かもしれないが、RenoirベースのRyzen APUでは、メモリのクロック周波数「MCLK」と、Infinity Fabricの動作クロックである「FCLK」、メモリコントローラの動作クロック「UCLK」が連動している。DDR4-3600まではMCLKとFCLK・UCLKは同じクロックで同期しているのだが、それを超える高クロックメモリを使おうとすると、FCLKは最大2,000MHzまでしか上昇せず、UCLKはMCLKの半分のクロックになってしまう。

 実際、XMPの適用でDDR4-4400動作を実現したさいに取得したスクリーンショットでは、MCLKがDDR4-4400相当の約2,200MHzであるのに対し、FCLKは約2,000MHz、UCLKは1,100MHzになっている。

CPU-ZのDRAM Frequency(=MCLK)が約2,200MHzである一方、Infinity Fabric(FCLK)は2,000MHz、メモリコントローラ(UCLK)は1,100MHzで動作している。

 DDR4-4400動作でもMCLKとFCLK・UCLKを同期させたければ、手動で設定を行う必要がある。ASUS TUF GAMING B550M-PLUSでは「FCLK Frequency」という項目をMCLKと同じ数値に設定することで同期動作が実現可能だ。ちなみに、これらを完全同期させた状態がRyzen系のCPU/APUは最も性能が出やすいとされ、1:1モードなどと言われることもある。

 実際にDDR4-4400設定で同期動作を試してみたところ、FCLK Frequencyの設定だけでは起動自体は可能だったものの、安定した動作が得られなかったので、メモリコントローラなどの動作に影響する電圧「VDDCR SOC Voltage」を手動モードで1.35Vに昇圧すると、安定した動作が得られた。

FCLK FrequencyをMCLKと同じクロック(DDR4-4400なら2,200MHz)に設定すると、FCLKとUCLKをMCLKと同期させることができる。
VDDCR SOC Voltageは、メモリコントローラなどの動作に影響する電圧設定。今回の個体では1.35Vに設定する昇圧することでDDR4-4400メモリの同期モードで安定した動作を得ることができた。
DDR4-4400設定でFCLKとUCLKを同期させた場合。CPU-ZやHWiNFOにて、MCLK、FCLK、UCLKのすべてが約2,200MHzで動作していることを確認できる。

 メモリクロックやFCLK、UCLKの限界値や、その実現のために必要な電圧などはAPUの個体差やマザーボードの設計、BIOSバージョンなどに依存してくるので、同じ環境を揃えれば動作するとも言えない。ただ、Renoirにはこういう動作が可能な個体も存在していることは確かだ。

 また、今回のレビューではあえてクロックを非同期にさせた際のスコアも一部集計しているので、完全同期動作にどこまでこだわるべきかの参考にもしてもらいたい。

メモリクロックの違いがGPU性能にどれだけ影響するのかDDR4-2666からDDR4-4400までのパフォーマンスを比較

DDR4-3200以外の速度はDDR4-4400対応のBLM2K16G44C19U4BLのクロックを変えることでテストした。
DDR4-3200対応16GBメモリ2枚組「Crucial CT2K16G4DFS832A」。JEDEC準拠のスタンダードメモリで、メモリタイミングは22-22-22-53、動作電圧は1.2V。

 用意したRyzen 7 PRO 4750GとASUS TUF GAMING B550M-PLUSの組み合わせで、CrucialのDDR4-4400メモリ「BLM2K16G44C19U4BL」をスペック通りに使えることが確認できたところで、メモリクロックがAPUが備えるGPUの性能にどれだけ影響するのかをチェックしていこう。

 テストでは、先に紹介したDDR4-4400の同期モードと非同期モードのほか、BLM2K16G44C19U4BLでXMPを適用しない場合の標準動作である「DDR4-2666」、XMPを適用した上でメモリクロックのみを引き下げることで「DDR4-4200」と「DDR4-3600」でのテストを実施する。

 また、Renoirの標準メモリクロックであるDDR4-3200動作に対応した、JEDEC準拠のスタンダードメモリ「Crucial CT2K16G4DFS832A」も用意した。DDR4-3200については、こちらのメモリを使用してテストを行う。

 DDR4-3200は現在のスタンダードメモリでは最速となる規格で、APUと組み合わせて使用することも多いモデルだろう。このため、APUでもスタンダードメモリの最上位クロックが正常動作するのかと、オーバークロックメモリとの差を見るためのテストに加えた。

 テストするメモリクロック毎の動作設定は以下の通りだ。

SiSoftware Sandra 20/20でメモリの動作をチェック

 まずは、SiSoftware Sandra 20/20でメモリ関連のベンチマークテストを実行して、メモリの帯域幅やレイテンシをチェックしてみた。

 「メモリ帯域幅」と「レイテンシ」の結果は、CPUコアがメモリにアクセスしたさいのパフォーマンスだ。

 基本的にはメモリクロックが上がるほど帯域幅が増加し、レイテンシは小さくなっている。唯一の例外は、MCLKとUCLK・FCLKを非同期で動作させている「DDR4-4400 (非同期)」で、同期モードより帯域幅が3%低下し、レイテンシは26%も増加、結果として一つ下のメモリクロックであるDDR4-4200を下回る結果となっている。CPUとメモリの経路上にあるInfinity Fabricやメモリコントローラのクロックが、メモリアクセス時のレイテンシに大きく影響することがわかる結果だ。

メモリ帯域幅 (SiSoftware Sandra 20/20)
メモリレイテンシ (SiSoftware Sandra 20/20)

 「GPUメモリ帯域幅」は、GPUコアがメモリにアクセスした場合のメモリ帯域幅だ。

 こちらではDDR4-4400 (非同期)の帯域幅はDDR4-4200を上回っており、メモリクロック通りの順で並ぶ形となっている。また、帯域幅の差はCPUからのアクセスよりも拡大しており、もっとも高速なDDR4-4400の56.0GB/sと、DDR4-2666の34.5GB/sの間には約62%もの大差がついている。

GPUメモリ帯域幅 (SiSoftware Sandra 20/20)

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

 それでは、ゲームベンチマークである「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」で、メモリクロック毎のパフォーマンス差をチェックしてみよう。テスト時の画面解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)で、描画品質は「標準品質(デスクトップPC)」。

 最高スコアを記録したのは同期モードのDDR4-4400で、そのスコアである「6,766」は、DDR4-2666を約37%上回り、Renoirの標準メモリクロックであるDDR4-3200にも約23%の差をつけている。一方、非同期モードのDDR4-4400はDDR4-4200のスコアを下回っており、FCLKやUCLKが低いことによるデメリットはゲームベンチマークにも反映されることが分かる。

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

フォートナイト

 つづいて、バトルロイヤルTPS「フォートナイト」で、リプレイ機能を利用して同一シーンのフレームレートを測定してみた。テスト時の画面解像度はフルHDで、3D解像度は「100%」。描画品質は「低」で、グラフィックスAPIは「DirectX 12」。

 同期モードのDDR4-4400がもっとも高い平均フレームレートとなる95.7fpsを記録しており、これはDDR4-2666より約26%、DDR4-3200よりも約14%高い数値だ。一方、非同期モードのDDR4-4400はDDR4-4200を2%ほど下回っており、全体で3番手の数値となっている。

フォートナイト (v14.50)

超高クロックで4枚挿しはできる?大容量メモリは使える?APUにコスパの良いメモリは?Renoir世代のAPUでちょっと実験してみた

 以上の結果から、DDR4メモリのクロックが高いほど高性能となる傾向は見ることができた。せっかくなので、今回テストした環境を使い、Renoirとメモリの組み合わせのテスト結果を紹介する。

 使用環境に限定される可能性はあるのだが、Renoirで動作したメモリ組み合わせや設定の一例として、メモリ選びの参考にして欲しい。

[Q1] DDR4-4400メモリは4枚挿しも行ける? [A1] DDR4-4000×4枚挿しまでOK

DDR4-4400メモリの4枚挿しにチャレンジ。

 今回テストで利用したCrucialのDDR4-4400メモリ2枚組「BLM2K16G44C19U4BL」を2セット用意して、DDR4-4400メモリの4枚挿しでどこまで動作するのかをテストしてみた。

 なお、「BLM2K16G44C19U4BL」は2枚1組でのDDR4-4400動作が保証されているメモリキットであり、本来それを2セット用意したからと言って4枚でDDR4-4400で動作することは保証されておらず、高速なオーバークロックメモリをメモリキット以外の組み合わせで使うことは本来推奨されていないことをご承知いただきたい。

 結果としては、4枚挿しでのDDR4-4400動作は同期モードを問わず不可能で、設定を適用するとBIOSの起動すら不可能だった。

 起動可能かつ安定した動作が得られたのは「DDR4-4000」動作で、このメモリクロックであれば電圧を手動調整することなく同期モードでの動作も可能だった。筆者手持ちのメモリで、Renoirに4枚挿しして安定するオーバークロックメモリはほとんど存在しないので、DDR4-4000という高クロック動作が可能という結果には驚きだ。

DDR4-4400メモリ「BLM2K16G44C19U4BL」を2セット用いた4枚挿しでは、DDR4-4000(同期モード)での動作が可能だった。

[Q2] APUで大容量メモリはどこまでいける? [A2] DDR4-3200 32GB×4枚の128GBで正常動作

1枚32GBのDDR4-3200メモリ4枚で合計128GB。

 DDR4-3200動作の32GBメモリ2枚組「CT2K32G4DFD832A」を2セット用意し、32GB×4枚で128GBメモリの構築に挑戦してみた。

 使用したメモリがJEDEC準拠のスタンダードメモリであるため、メモリ周りの設定を一切行うことなくDDR4-3200かつ128GBメモリを利用することができた。Renoirに128GBのメモリを搭載するのが現実的な構成であるのかはともかく、Mini-ITXマザーボードのようにメモリスロットが2本しかないマザーボードでは、このあたりのメモリを選択してみるのも良いだろう。

DDR4-3200動作の32GBメモリ×4枚による128GB。今回の環境ではメモリ周りの設定を一切行わなくても、メモリのスペック通りかつ同期モードで動作した。

[Q3] APUでコスパが高いメモリはどのあたり? [A3] DDR4-3600が性能と価格のバランス良

DDR4-3600動作の16GBメモリ2枚組「Crucial Ballistix BL2K16G36C16U4W」。

 CrucialのDDR4-3600動作の16GBメモリ2枚組「BL2K16G36C16U4W」を使ってみた。ゲーマー向けメモリブランド「Ballistix」のBL2K16G36C16U4Wは、マットホワイトのアルマイトで仕上げられたアルミニウム製ヒートスプレッダを備えるオーバークロックメモリだ。

 このメモリでは、DDR4-4400メモリと同じようにXMPを適用することで、DDR4-3600かつ同期モードでの動作を実現できた。

 DDR4-3600までのメモリは、特別な設定を行わなくてもMCLKとFCLK・UCLKが同期モードで動作するので、手間がかからないという点で手軽に使えるメモリだ。価格的にも税込2万円程度から購入できるので、Renoirでオーバークロックメモリとの組み合わせに挑戦するなら、このあたりがバランスの取れた選択肢となるだろう。

Renoir世代APUでも高クロックメモリは性能向上に効果あり性能を引出すならメモリにこだわれ!

 ベンチマークやゲームでのテスト結果から、Renoirでも高クロックメモリを使うことでGPU性能が向上するという法則は最新モデルでも通用するものであり、DDR4-4400までは性能向上が頭打ちにならないことが確認できた。RenoirではMCLKとFCLK・UCLKが同期しているか否かも重要ではあるが、基本的には高クロックなメモリを使った方がGPUの性能をより引き出せると考えて良さそうだ。

 もちろん、オーバークロックメモリが安定して動作するかは、APUの個体差やマザーボードの設計やBIOSバージョンなどにも左右される。BIOSのアップデートで改善してきてはいるものの、発売当初のRenoirはオーバークロックメモリとの相性が非常に厳しく、筆者はメモリの組み合わせに手を焼かされていた。そんな中、今回のテストでCrucialのDDR4-4400メモリが素直に高クロックで動作したことには正直驚かされた。

 Renoirが依然として組み合わせるメモリに注意を払うべきAPUであることには変わりないが、今回のテスト結果がAPUを使うユーザーの参考になれば幸いだ。

[制作協力:Crucial]