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NEC VersaPro(VB-6)を500GB SSDに換装、堅牢なビジネスノートのSSDを強化

SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 浅倉吉行

 今回、SSD換装事例で紹介するノートPCは、NECの企業/官公庁向けの堅牢なビジネスノート「VersaProシリーズ」の中から、UltraLite タイプVB<VB-6>を取り上げたい。

 第8世代Intel Coreプロセッサーの4コア/8スレッドCPUを搭載し、メモリも8GB備え、PCIe 3.0 x4接続のSSDまで搭載してる製品面では今でも快適なモデルだ。耐圧に優れた筐体に長時間稼働可能なバッテリーなどを備え、業務用に設計されたモデルだ。

 だだし、業務用モデルなこともあり、あまりSSD換装の事例は見かけない。そこで、堅牢な業務用ビジネスノートもSSD換装が可能なのかチェックしてみようというのが今回のレビューの趣旨だ。

※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。

NECのVersaPro UltraLite タイプVB<VB-6>のSSD換装に挑戦、堅牢ビジネスノートを分解

 今回使用するNEC VersaPro UltraLite タイプVB<VB-6>は、型番「PC-VKT16Z6」として販売されていたモデルだ。現在は第10世代Intel Coreプロセッサーを搭載する後継モデルのVersaPro UltraLite タイプVB<VB-7>が販売されている。

 業務用モデルは個人がカスタムすることは考慮されていないが、VersaPro UltraLite タイプVB<VB-6>は、一応、分解可能な構造のモデルになっている。

 中古品として入手しているので、新品の時から若干の変更があるかもしれないが、基本的なスペックは、CPUに4コア8スレッドのCore i5-8265U(ベース1.6GHz/ブースト時3.90GHz)、メモリにDDR4-2400 8GB(オンボード/増設不可)、ストレージにM.2 NVMe SSD 256GBを備える。ディスプレイは13.3インチ/1,920×1,080ドット。

 Thunderbolt 3やUSB Type-C、IEEE802.11ac無線LAN/Bluetoothなどの機能も搭載しており、OSはWindows 10 Pro 64bit。

搭載されていたのは256GBのSamsung MZVLB256HBHQ-00L7

 搭載されていたSSDだが、今回の個体には256GBのSamsung MZVLB256HBHQ-00L7が装着されていた。M.2型のNVMe SSDで、容量は256GB。PCIe 3.0x4レーン接続の高速なモデルだ。

PCに搭載されていたSamsung MZVLB256HBHQ-00L7。
CrystalDiskInfoによるステータス。

換装に使うのは500GBのSamsung SSD 970 EVO Plus

 今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 970 EVO Plusの500モデル「MZ-V7S500B/IT」。最大速度リード3,500MB/s・ライト3,200MB/sのNVMe接続モデルで、インターフェイスはPCIe 3.0 x4レーン。

Samsung SSD 970 EVO Plus 500GB(MZ-V7S500B/IT)。
CrystalDiskInfoによるステータス。

 Samsung SSD 970 EVO Plusは250GB~2TBまでの4製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。

注意点その1

 ノートPC側のNVMe対応のM.2スロットにはx2レーン接続とx4レーン接続のモデルが存在し、ノートPC側がx2レーンまでのサポートの場合、x4レーン接続のNVMe SSDを搭載すると公称値の半分程度の速度までしか出ない。故障では無いのでこの点は覚えておこう。

古いSSDから新しいSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一式紹介

 ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。

 NVMe SSD用の外付けケースは税込4千円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。

換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう

 PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。

 今回使用しているSSD外付けケースはORICOのTCM2-C3-SV-BP。NVMe SSDに対応したUSB 3.2 Gen2接続のケースで、SSDの取り付けも比較的簡単だ。ケーブルはUSB Type-C/Type-CのものとUSB Type-C/Type-Aのものが付属している。

●1 SSD外付けケース「TCM2-C3-SV-BP」と換装するSSDを準備。
●2 SSD外付けケースはネジレスの構造なので、スライドさせて内部の基板を取り出す。熱伝導シートが付属しているので、コントローラ部分に接するように着けると良いだろう。
●3 SSDを基板のM.2スロットに装着する。
●4 基板にSSDをネジで固定する。「TCM2-C3-SV-BP」は裏側からネジで固定する仕組みになっている。
●5 基板にSSDを装着したらケースの中に収納し、熱伝導シートをケースのヒートシンク部分に張り付けふたを閉める。
●6 PCに接続すれば準備完了。

注意点その2

 M.2 SSD用の外付ケースは、NVMeのみに対応したモデル、SATAのみに対応モデル、NVMe/SATA両対応のモデルがある。購入時には使用するSSDに合わせ対応したモデルを購入しよう。

データの移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0なら簡単

 今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。

 Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。

●1 Samsung公式サイトのSSDツールとソフトウェアのページから「Samsung Data Migration 4.0」をダウンロードする。
●2 Samsung Data Migration 4.0をセットアップし、起動させる。
●3 画面下側にあるターゲットドライブの項目を指定する。移行先のSSD(今回はSamsung SSD 970 EVO Plus 500GB)を選択しよう。
●4 移行先のドライブのデータが全て消去される旨のダイアログが表示されるのでOKを選択。なお、安全にデータ移行時を行うため、他のアプリケーションを起動したり、ながら作業をするのはやめよう。
●5 進行状況はプログレスバーで表示される。移行前のSSDの使用容量は38GBほどだったが、データのコピーは約3分で完了。PC側の性能が高いのか、かなり高速の完了した。
●6 データのコピーが完了すると自動的にPCはシャットダウンされる。

注意点その3

 USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そうした際は、大概外付けケース側のUSBコントローラと相性が発生している可能性が高いので、ケースを変えるか、別のソフトでテストしてみると良いだろう。

 「Samsung Data Migration 4.0」を利用した際の外付けケースとの相性に関しては別記事で紹介しているので、そちらも参照してもらいたい。

背面パネルのツメが非常にかたいので注意、VersaProの分解は慎重に

 ここからはNEC VersaPro UltraLite タイプVB<VB-6>の分解になるが、工具はプラスドライバーとヘラが必要になるので準備しておこう。

 SSD換装時はPCを必ずシャットダウンした状態で行う必要があるので注意。機器の破損や故障を防ぐため、誤って休止などの状態で分解しないように気を付けてほしい。

 NEC VersaPro UltraLite タイプVB<VB-6>の背面パネルはネジとツメで固定されている。ネジ自体は簡単に外せて、パネルから外れない構造にもなっているので便利だ。ネジを外した後のツメが問題で、ヒンジの周りは外しやすいものの、手前側に向かうにつれてかなりかたくなる。手前側に固定のネジが無いので、その分ツメでかたく固定されているようだ。樹脂製のヘラを使っていれば問題ないと思うが、PCを壊さないよう隙間を広げるときはゆっくりと作業を行って欲しい。

●1 VersaPro UltraLite タイプVB<VB-6>の背面パネル側。
●2 ネジを外すのは簡単、パネルから外れないようになっており紛失することも無いのは便利だ。
●3 ネジを外したら隙間にヘラを入れてパネルを固定するツメを外していこう。
●4 パネルの手前側のツメはかなりかたいので注意。かなり力を入れることになるが、ゆっくり行えば壊さず外せるだろう。

 背面パネルを外せればSSDへのアクセスは簡単だ。SSDはネジと熱伝導シートで固定されており、ネジを外した後、少し持ち上げるようにしてSSDを引き抜けば外れる。

 SSDは水平にスロットに差し込むタイプで、取り外しも取り付けも特に困ることは無いだろう。SSDを換装したら背面パネルを元に戻し、起動を確認すれば作業は完了だ。

●5 VersaPro UltraLite タイプVB<VB-6>の内部。
●6 ネジを外してSSDを取り外す。M.2スロットはSSDを水平にスライドさせて外すタイプ。
●7 SSDは熱伝導シートでも固定されており、SSDがズレないようになっていた。SSDを外す際は若干持ち上げるようにして行うと良いだろう。
●8 新しいSSDを装着してネジを固定する。
●9 背面パネルのツメをしっかり固定し、その後にネジを締めれば作業は完了。
●10 PCが正常に再起動すれば成功だ。

 冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。

 とはいえ、ストレージ以外の部分に不満が無いのであれば、PCを買換えるよりも、SSD換装はコストパフォーマンスがアップグレード方法になる。業務用のモデルであっても構造次第では今回のようにSSD換装が可能であり、一考の余地はある。

業務用ノートPCもモデルによってはSSD換装が可能容量が少なくなったらアップグレードを検討する価値あり

 実際にSSD換装を行い、前後でどのように変わったのかも紹介しよう。

容量は倍に増加、約430GBのフリースペースを確保

 まずは容量の面だが、256GBから500GBへのアップグレードなので劇的に変化したわけでは無いが、それでも空き容量は約200GBから約427GBとなっており、空き容量は倍以上に増えている。

 これくらいあればちょっと大きめのファイルを置いたりしても困ることは少ないだろう。もちろん、1TBや2TBに換装すればより大きな空き容量を確保できるので、大容量ファイルを扱うことが多かったり、PCを長く使いたいといった場合には、より大容量のSSDに換装すると良いだろう。

換装前の256GB SSD「Samsung MZVLB256HBHQ-00L7」。
空き容量は200GBほど。
換装後の500GB SSD「Samsung SSD 970 EVO Plus 500GB(MZ-V7S500B/IT)」
空き容量は427GBほどあり、オフィスワークなどで利用する分には困ることはないだろう。

シーケンシャルアクセスはリード・ライトともに3GB/s超え

 NEC VersaPro UltraLite タイプVB<VB-6>に元々搭載されていたSSDの「Samsung MZVLB256HBHQ-00L7」だが、PCIe 3.0x4接続のSSDとしてはかなり性能が高く、換装の前後で速度は勝ったり負けたりといった状況になっている。

 ただし、換装後のSamsung SSD 970 EVO Plus 500GBはリード・ライトともにシーケンシャルアクセスは3GB/sを超えており、性能のバランスはこちらの方が優れていると言える。

 M.2型のNVMe SSDは500GB~1TB以上のモデルがそのシリーズの最高スペックになっていることが多く、250GBクラスの製品はライトの公称値が低いモデルが多い。速度的な性能を求める場合は、500GB以上のSSDを選ぶと良いだろう。

換装前の256GB SSD「Samsung MZVLB256HBHQ-00L7」。
リードの速度は3GB/s超えで使っていて困ることは無い。
換装後の500GB SSD「Samsung SSD 970 EVO Plus 500GB(MZ-V7S500B/IT)」
リードライトともにPCIe 3.0 x4レーン接続モデルらしい3GB/s超えとなっている。

 ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって延命などを図れるメリットは大きい。

 今回とりあげたNEC VersaPro UltraLite タイプVB<VB-6>は、スペックも高くかなり快適に動作するモデルなので、絶対的に性能が足りないといった状況になるまで長く使いたいユーザーも多いと思われる。SSD換装は速度的な性能を上げるといった用途だけでなく、愛着のあるPCをより長く延命するといったことにも有効だ。ストレージの空き容量不足に悩むようになったら、PC買換えの前にSSD換装も対策として考えてみてもらいたい。

[制作協力:Samsung]