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27万円の最強ビデオカードはここまですごかった! RTX 3090を独自設計基板&クーラーで駆動するMSI最高峰モデルを試す
4Kゲーミングも超絶快適な「GeForce RTX 3090 SUPRIM X 24G」 text by 加藤勝明
2021年2月22日 00:00
NVIDIAのGeForce RTX 30シリーズの最上位モデル「GeForce RTX 3090」は、24GBものGDDR6Xメモリと組み合わせて使われるモンスターGPUだ。現時点の多くのユーザーの目標である4Kを超える、8Kゲーミング(基本的にDLSS 2.0併用)環境を構築したい人や、8K動画編集やCGレンダリングといった、ビデオメモリをとにかく多量に必要とする処理に使いたい人にとっては最高の装備と言える。
それだけにRTX 3090搭載カードはビデオカードメーカー各社の情熱とこだわりが凝縮された製品が多い。今回紹介するMSI「GeForce RTX 3090 SUPRIM X 24G」(以降RTX 3090 SUPRIM X)は、同社の技術を惜しみなく投入したフラグシップモデルだ。製品名の「SUPRIM」とは「最高」を意味する“Supreme”から来たものであるが、はたして本機は最高をうたうだけの実力があるのだろうか? さまざまなベンチマークを通じて検証していきたい。
デカさは正義だ!を地でいくマッシブなデザイン
RTX 3090 SUPRIM Xのカードサイズは336×140×61mm、重量は約1.85kgと、とにかく巨大で重い。NVIDIAのGeForce RTX 3090 Founders Edition(FE)がちょっとかわいく思えるほどだ。RTX 3090 FEは特殊形状のPCB+特殊な補助電源コネクタが特徴的だが、RTX 3090 SUPRIM XはロングサイズのPCBに8ピン電源×3構成となっている。フラグシップモデルだけあってクーラー(TRI FROZR 2S)の造形は細部まで作り込まれており、金属製バックプレートも非常に美しく仕上がっている。もちろん準ファンレス仕様なので、低負荷時はファンが停止するが高回転でもファンの風切り音はほとんど気にならない。空冷最強のRTX 3090が欲しいならこのクーラーの存在は非常に大きいといえよう。
クーラーの上部と表面、さらにドラゴンのエンブレム(裏面)がRGB LEDによって発光する機能や、物理スイッチで“Game”モードと“Silent”モードの2種類のビデオBIOSを切り換える機能を備える。ただ後者についてはSilentモードにしてもはっきり分かるほどの差がない設定にとどまっている(微妙にファン回転数やクロックが下がる程度)。3月以降にResizable BAR対応のビデオBIOSアップデートが予定されているので、Silentモードは万が一のときのためのバックアップ用BIOSとして考えることもできる。
補助電源が8ピン×3構成の理由は言うまでもなくファクトリーOCモデルだからであるが、本機の場合定格でブーストクロック1,860MHz設定、同梱のツール(後述)で“Extreme Performance”を選択することで1,875MHzにまで引き上げることが可能だ(RTX 3090 FEのブーストクロックは1,700MHz)。
この高いOC設定を安定させるために、カードのTGP(Total Graphics Power)はRTX 3090 FEの350Wより70W高い420Wに引き上げられている。つまりカード単体で“平均”420W前後消費するという意味になる。電源ユニットの推奨出力は850Wとなっているが、CPUもGPUもガッツリと回すなら1,000W出力が好適と言えるだろう。
基板両面の放熱を行なう工夫の数々
定格でTGP 350W、それをファクトリーOCで420Wに高めてあるため、GPUクーラーの作りもガッツリ気合いが入っている。詳しく見てみよう。
MSIはRTX 30シリーズからGPUに近い部分のヒートパイプは断面を角形にする工夫を取り入れているが、RTX 3090 SUPRIM Xでもこれを採用。GDDR6Xにも別途ヒートパイプを接触させることでカード上の熱を効率よく冷やす設計になっている。さらにバックプレートにもヒートパイプを追加することで、プレート全体をMOSFETやGDDR6Xの冷却に利用する設計がおもしろい。RTX 3090は性能もすごいが発熱量も大きいため、徹底的に冷やしていないと不安だという人には安心できる設計になっている。
同梱の「Dragon Center」はRTX 3090 SUPRIM Xに組み込まれたRGB LEDの発光制御のほかにGPU温度などの表示やワンクリックお手軽OC機能などが備わっている。ブーストクロック最大1,875Hzという設定を利用するなら、Dragon Centerのインストールが一番手っ取り早い。
ただこのDragon CenterでExtreme Performanceを選ぶとCPUの電源プランも同時に“高パフォーマンス”に変わる。Ryzen 5000シリーズの場合、省電力機能を活かすために“バランス”設定が最適となっているので、この挙動は少々お節介が過ぎるかもしれない。
またDragon Center上でSilentモードを選んだ場合、GPUがダウンクロックされるほか、CPUの電力モードが“省電力”に、ディスプレイのスリープも自動的に設定される。Dragon CenterのSilentモードは物理スイッチで選べるSilent ビデオBIOSとはまったくの別の設定であるなど、若干の分かりにくさを感じる。ソフト面まで含めてのさらなるブラッシュアップに期待したい。
定格でもFounders Editionを圧倒する性能を発揮!!
それではいよいよベンチマークテストを進めてみよう。今回は以下の環境を用意した。比較対象としてRTX 3090のFounders Editionを用意した。GPUドライバは検証時点における最新版(GeForce 461.40)を使用し、マザーボードのBIOSはAGESA 1.2.0.0準拠のF33aに更新されている。なお検証時点ではResizable BAR対応のビデオBIOSが提供されていないため、今回のテスト結果はすべてResizable BAR非利用環境のものだ。
CPU | AMD Ryzen 9 5950X(16コア32スレッド) |
マザーボード | GIGA-BYTE X570 AORUS MASTER(rev. 1.0) (AMD X570) |
メモリ | G.Skill F4-3200C16D-32GTZRX (PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2)×2 |
SSD | GIGA-BYTE GP-ASM2NE6200TTTD [M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB]+ Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C [M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB] |
CPUクーラー | Corsair iCUE H115i RGB PRO XT (簡易水冷、28cmクラス) |
電源ユニット | Super Flower Leadex Platinum 2000W (2,000W、80PLUS Platinum) |
OS | Windows 10 Pro 64bit版 |
最初に定番の「3DMark」のスコア比べから始めよう。RTX 3090 SUPRIM Xは定格設定(Dragon Centerすら入れていない素の状態)のほかに、Dragon CenterでExtreme PerformanceとSilentモードにそれぞれ設定した際のパフォーマンスを比較する(Silent ビデオBIOSの検証は割愛した)。
RTX 3090 SUPRIM Xの定格とRTX 3090 FEを比較すると、当然ながら動作クロックが高めに設定されているRTX 3090 SUPRIM Xのほうがよいスコアを出している。ただ、RTX 3090 FEに対するリードは4%程度となっているため、その差が大きいとまでは言い難い。しかし少しでもゲームを快適に動かしたいと考えているなら、RTX 3090 SUPRIM Xは十分魅力的と言えるだろう。
このテストでは、3DMarkではRTX 3090 SUPRIM Xの定格とExtreme Performanceモードの間に明確な性能差は確認できなかった。一方のSilentモードに関しては大きなスコアダウンが確認できた。RTX 3090を使っているのにそのパワーを引き出せないSilentモードを使う意義があるのかと思うかもしれないが、「GPUパワーが必要ないときには省電力運用にワンクリックで切り換え可能」という運用方法を提案していると考えれば、評価できるポイントだ。
次にシステム全体の消費電力をチェックする。次のグラフはシステム起動10分後の安定値を“アイドル時”、3DMarkの“Time Spy”デモ再生中のピーク値を“高負荷時”としている。計測にはラトックシステム「RS-WFWATTCH1」を使用した。
RTX 3090 SUPRIM X定格とRTX 3090 FEの高負荷時の消費電力の差は64W。この差はTGPの差である70W(420W-350W=70W)にほぼ近い値だ。パフォーマンスが上がっている分、消費電力もしっかり増えていると言うべきだろう。さらにExtreme Performanceモードは定格よりも約6Wの消費電力増加が、Silentモードでは約116Wの消費電力低下が確認できた。
Extreme Performanceはクロックが引き上げられた結果スコアが伸び、それに見合う程度の消費電力増があると解釈できるが、Silentモードはスコアがほぼ半減したのに消費電力は定格に比して2割弱しか減っていない。このあたりは後ほど詳しく検証するが、SilentモードはCPUの省電力動作が狙いのようであり、GPUのPower Limitを下げることはあまり考慮されていないようだ。
実ゲームでもRTX 3090 FEを上回るリアルな強さ
では実ゲームベースの検証を始めよう。まずは描画負荷の軽いゲーム代表として「Apex Legends」からスタートしよう。画質は最高画質設定とし、起動オプションでfps制限解除(+fps_max unlimited)とした。シーズン8から正式にUIに組み込まれたNVIDIA Reflexは“有効+ブースト”とし、射撃訓練場における一定の行動をとったときのフレームレートを「CapFrameX」で測定した。
Apex Legendsはfps制限を解除しても300fpsで頭打ちになってしまうため、フルHDでは(Silentモード以外)ほとんど誤差程度の差にしかならない。だが解像度を上げ描画負荷を上げると、徐々にRTX 3090 SUPRIM Xの優位性が浮かび上がってくる。とくに4Kでは平均fpsにハッキリとした違いが現われた。
ただしExtreme Performanceモードと標準設定の間には明確な差があるとは言いがたい。一方Silentモードに関しては標準設定に対して若干性能は下がるものの、3DMarkほど大きな低下ではないことが分かる。Silentモードがパフォーマンス与える影響は、ゲームによって大きな違いがあるようだ。
続いては「レインボーシックス シージ」で試す。APIはVulkanとし、画質は“最高”をベースにレンダースケール100%を追加。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを測定した。
まず今回の検証環境はAGESA 1.2.0.0準拠のBIOSを導入したマザーを使用しているが、このレインボーシックス シージをはじめ、いくつかのゲームにおいて、以前のBIOSよりも顕著なパフォーマンス低下傾向が確認できた。とはいえすべて低調というわけではなく、レインボーシックス シージの場合はベンチマークが走り始めるほんの2秒程度のシーンで激しいスタッターが出るというもの。今回の最低fpsの低さはAGESA 1.2.0.0が深く関係している。
さて肝心のフレームレートだが、ここでもフルHDではRTX 3090 FEとRTX 3090 SUPRIM Xの間に差はないが、解像度が高くなると差が付く傾向に確認ができた。ただ、Apex LegendsではSilentモードでも定格時より低いものの、わりとよいフレームレートを出せていたのに対し、レインボーシックス シージではとくに最低fpsの落ち込みほうがひどい(前述のAGESAの影響も強く出ている)。一方Extreme Performanceモードは定格に対し最低fpsで勝る部分があるものの、平均fpsでは大きな差は付かなかった。
続いては「F1 2020」で検証してみよう。画質は“Ultra High”とし、アンチエイリアスに“NVIDIA DLSS”を指定した。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測するが、計測条件は天候が“Very Wet”、コースが“Monaco”を利用している。
Silentモードを除外すれば、RTX 3090 SUPRIM XとRTX 3090 FEの間にほとんど差が付いていない。このゲームも比較的AGESA 1.2.0.0の影響を受けているためだと思われるが、OC設定が高くでも状況しだいでは力を発揮しきれないケースがあることが分かった。
続いては「Dirt 5」の出番だ。画質は“Ultra High”とし、動的設定変更系の機能は無効化している。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを測定した。
ここでもファクトリーOCモデルであるRTX 3090 SUPRIM XがRTX 3090 FEよりも高いフレームレートを出せているが、SilentモードでもFEにほぼ等しいパフォーマンスが出ている点は、F1 2020と対照的だ。こうしたパフォーマンス低下が少ないゲームを集中的に遊ぶ場合であれば、Silentモードを選ぶ意味はあるかもしれない。
「アサシンクリード ヴァルハラ」からは重量級ゲームでの検証となる。画質は“最高”とし、ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを測定した。
もともとこのゲームのベンチマーク機能は結果(とくに最低fps)がブレやすい傾向があるのでおおまかな傾向を見る程度に捉えていただきたいが、このゲームではRTX 3090 SUPRIM XのExtreme Performance/定格/Silentモードのどれを使ってもフレームレートにほとんど差が出なかったのがおもしろい。定格とSilentの間に差が出ないのだから、RTX 3090 FEともほとんど差が付かないのは当然と言える。WQHD以上になるとRTX 3090 FEの平均fpsがグラフ上では下がっているように見えるが、どの条件でもブレの範囲として片付けてもよい程度の差であるのも見逃せない。SilentモードでCPUが省電力モードになっても、GPUそのものの馬力でほぼ押し切っているようだ。
続いて「Horizon Zero Dawn」だが、こちらは画質“最高画質”設定でゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを測定している。
同じ重量級ゲームでもアサシンクリード ヴァルハラとHorizon Zero Dawnではまったく傾向が違っている。こちらの場合はRTX 3090 SUPRIM XのほうがRTX 3090 FEよりもわずかにフレームレートが高くなるほか、Silentモードでは3DMarkやレインボーシックス シージのようにパフォーマンスに強く影響が出ている。また、Extreme PerformanceモードはフルHDやWQHDでは定格とほとんど差が出ていないが、4Kになるとしっかり差が出てくる点が興味深い。わずか0.1Gbpsとはいえ、VRAMをOCしていることが効いているようだ。
注目度が高いレイトレーシング、DXR(DirectX Raytracing)対応のゲームで検証してみよう。まずは「Call of Duty:Black Ops Cold War」で試す。画質は最高設定(ただしスクリーンスペースリフレクションのみ“低”)とし、さらにレイトレーシングはすべて“ウルトラ”、DLSSを“パフォーマンス”設定とした。「CapFrameX」を利用してステージ“フラクチャー・ジョー”をプレイした際のフレームレートを測定した。
このゲームではフルHDやWQHDではRTX 3090 FEとRTX 3090 SUPRIM Xの差は見られないが、4KになるとOC設定の高さが効いてフレームレートに差が付いた。また、Silentモードでも定格とほとんど変わらない。
続いては直近に発売された「The Medium」で試してみよう。画質はプリセットの“高”をベースにしているが、レイトレーシングは“ウルトラ”、アンチエイリアスはDLSS“低”を追加している。このゲームのキモである2画面分割が初めて出てくる“ニワ保養所”のステージを使い、一定のコースを移動したときのフレームレートを「CapFrameX」で測定した。
Horizon Zero Dawnに近い結果となった。すなわちRTX 3090 SUPRIM X定格対RTX 3090 FEでは動作クロックの高いRTX 3090 SUPRIM Xが勝るが、SilentモードでCPUに足かせをはめると一気に性能が下がる。Extreme PerformanceモードはフルHDやWQHDでは効果が見えてこないが、4Kになると効果が見えてくる……といったあたりだ。
最後に試すのは「サイバーパンク2077」だ。画質は“レイトレーシング:ウルトラ”をベースにDLSS“パフォーマンス”を明示的に追加。群衆密度も最大に設定している。
検証はゲーム内の一定のコースを車で移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。
サイバーパンク2077の結果はThe Mediumに近い傾向の結果が得られた。フルHDとWQHDでフレームレートに大差が付いていないのは、AGESA 1.2.0.0の影響だと思われる。ただRTX 3090 SUPRIM Xであればどの解像度設定においても良好なフレームレートを得られるだろう。ただアラサカビル周辺のように多量の歩行者が集まるようなシーンでは、ここで示されているような最低fps付近でのプレイを余儀なくされる点は覚悟しておきたい。
ハイパワーを支える「消費電力 420W」とどう付き合うか
さて、ここまで実ゲーム中心で見てきたが、さすがRTX 3090といった感じの強烈なデータが得られた。AGESA 1.2.0.0の影響で微妙に奮わない場面もいくつか見られたが、総じて現時点で最高峰の性能であることに疑いはない。その一方で、RTX 3090 SUPRIM Xの「消費電力 420W」に腰が引けてしまう人もいるのではないだろうか。しかし、歴代ハイエンドGPUを使い続けてきた筆者(編集部注:筆者の自腹です)の立場からあえて言わせていただけば、消費電力を言い訳に至高の体験を逃してしまうのはあまりにももったいない。
ガツンとくる消費電力自体は850Wや1,000Wクラスの電源で受けて止めていただくとして、電力あたりのパフォーマンスを追求する楽しさがあることも確か。そこで、RTX 3090 SUPRIM XのPower Limitを下げることで消費電力を抑制したらどうなるかを検証してみたい。GPUのPower Limitを抑えれば性能も低下するため、性能低下と消費電力低減の最適バランスはどこかを考える必要がある。
今回Power Limit制限には定番「Afterburner」を利用する。Power LimitとTemperature Limitが連動しないよう、両者の連動を切った上で設定した。定格(100%)からスタートし、Power Limit 90%/80%/70%/60%設定(グラフ中ではそれぞれ“PL○○%”と略記)で検証する。PL90%にすると420W×0.9=378W、PL60%なら420W×0.6=252Wまで下がる計算になる。
消費電力の計測はCPUやマザーの影響を排除して、ビデオカード単体の消費電力を正確に計測することができるNVIDIA製のツール「PCAT」を使って検証を行なう。
次のグラフは、「サイバーパンク2077」を4Kでプレイ状態で15分程度放置したときのビデオカード単体の消費電力(Total Board Power、TBP)の推移を示したものだ。TBPはNVIDIAの言うところのTGP(Total Graphic Power)とほぼ同じ意味だが、本稿では、TGPは“NVIDIAがスペック表内で使うカード全体の消費電力”を示す場合に、TBPは“PCATでカード全体の消費電力を測定した値”を示す場合にそれぞれ使用している。
もっともクロックの高いExtreme Performanceモード(上図では“Extreme”表記)が一番TBPが高くなることは容易に想像が付いたが、実際PCATで測定するとRTX 3090 SUPRIM X定格に最大4W程度しか変わっておらず、平均値でも誤差程度しか変わっていない。このあたりはリスクとの兼ね合いもあるだろうが、せっかくのフラグシップモデルなのだから、Extreme Performanceモードではもっとガツンと攻めの姿勢を見せていただきたいところだ。いずれの設定においてもRTX 3090 SUPRIM Xは瞬間最大で470W消費(GPU-Zの表記と一致)するため、電源ユニットはそれなりに強力なものを用意しておきたい
そしてRTX 3090 SUPRIM XのPower Limitを下げるごとにTBPも連動して低下。PL60%だと定格時より166W低くなることが確認できた。「420W」に不安を感じるなら、Power Limitを下げて運用すればよいのだ。
また、SilentモードのTBPの推移を見ると、ときどきスパイクのように一気に下がることが確認できた。詳しい原因までは把握できていないが、このTBP低下とほぼ同じタイミングでフレームレートの低下が感じられる。これまで見てきたベンチマークの結果も合わせて考えると、Silentモードで消費電力を絞るくらいなら、ゲームの挙動に悪影響をおよぼしにくいPower Limitを下げる設定のほうがよいと言えそうだ。
ではPower Limitを下げたときにパフォーマンスにどの程度の影響が出るか検証してみよう。まずは「3DMark」のスコア比べで検証する。ここではExtreme Performanceモードは検証から除外している。
まず一番スコアが高いのが定格なのは当然として、Power Limitを下げるほどに少しずつスコアが低下する。定格時のスコアに対し1割減のラインまで許容する場合は、PL80%までがなんとか許容できるPower Limit下げ設定と言えるだろう。
続いては実ゲームの検証だが「レインボーシックス シージ」、「アサシンクリード ヴァルハラ」、「サイバーパンク2077」の3本に絞って検証する。ベンチマーク手法や設定は前述のものと同じものを使用している。
Power Limit低下に伴い最低fpsも平均fpsも徐々に下がることが分かる。レインボーシックス シージではPL80%が定格の1割減ラインとなっている。
Silentモードでフレームレートにほとんど影響を受けなかったアサシンクリード ヴァルハラでは、フルHDではPL60%でもベンチマーク結果に大差は付かなかった(実ゲームだと影響のあるシーンが出るかもしれないが……)。ただ解像度が高くなりGPUバウンドが強くなるど、Power Limit下げ設定がフレームレートにしだいに影響してくることが分かる。つまりフルHDではGPUやCPU以外の部分がボトルネックになっているようだ。
Silentモードが一人負け状態のサイバーパンク2077では、Power Limit下げ設定の影響はフルHDやWQHDではほとんど見られない。言い換えればフルHD〜WQHD環境であれば、Silentモードを使うよりもPower Limit下げ設定を使ったほうがよい結果が得られるということになる。
熱対策はやはり強力。GDDR6Xメモリの放熱も有効に機能
最後にGPU温度やクロックの実測値などをチェックしよう。先にサイバーパンク2077を利用してPCATでTBPを計測したときと同じ手法/設定を利用しているが、アイドル状態からゲームを起動し、15分程度放置したときの情報を「HWiNFO」で追跡した。部屋の温度は25℃、バラック状態でテストしている。
今回観測されたRTX 3090 SUPRIM XのGPU温度は最高で73℃。しかも定格とExtreme Performanceモードに温度的な差はない。性能に差もなければ、GPU温度もまた差がないのである。Extreme PerformanceモードのPower Limitが100%より上に設定されていれば差が付いたはずだが、今回は安全重視のチューニングがなされていると言えそうだ。
一方RTX 3090 FEとRTX 3090 SUPRIM Xを比較するとRTX 3090 FEのほうがGPU温度が低いことが読み取れるが、RTX 3090 SUPRIM Xのほうが動作クロック設定が高いのだから、温度が高いのはある程度納得がゆく。ただRTX 3090 FEの温度とPL90%時の温度はほぼ同レベルだが、RTX 3090 FEのTBPが平均360Wなのに対し、RTX 3090 SUPRIM XのPL90%は平均387W。消費電力が30W近く増えているのにGPU温度が同じなのだから、RTX 3090 SUPRIM XのTRI FROZR 2SクーラーはFEよりも冷えるクーラーであることが示されていると言ってよい
だがRTX 3090 SUPRIM Xの冷却性能を語る上でもう一つ見ておきたいデータがある。それはHWiNFOのv6.42から追加された「GDDR6Xのジャンクション温度」だ。
ここではRTX 3090 SUPRIM Xの定格が最大88℃なのに対し、RTX 3090 FEは98℃まで上昇している。ジャンクション温度、つまりチップ内で局所的に観測された最高温度なのでGDDR6Xメモリそのものの温度とするのは間違いだが、いずれにせよGDDR6Xに専用のヒートパイプを追加するMSIの冷却に対するこだわりがこの結果を導いたと言える。これから暖かくなるに従い冷却も厳しくなるが、RTX 3090 SUPRIM Xならばより安心して使えることだろう。
ラストを飾るグラフはGPUクロックの推移だ。RTX 3090 FEは1,840MHz辺りで上下しているのに対し、RTX 3090 SUPRIM Xは1,935MHz付近で安定している。
ハード設計は万全で性能も冷却も問題なし!付属ツールと設定値には改善の余地も
RTX 3090は、これまでのGeForce各製品や、RTX 30世代の下位モデルに比べるととんでもなく高価なGPUなのだが、24GBものビデオメモリがもたらす余裕は超高画質でゲームを楽しみたいゲーマーにとってはぜひとも欲しいアイテムだ。その点今回取り上げたRTX 3090 SUPRIM Xは高いファクトリーOC設定のおかげで、さらにゲームのパフォーマンスを引き上げることに成功している。クーラーの性能も高く、PCケース内の換気さえ気を付ければ夏場でも安心して運用できるだろう。今買える最高級のゲーミングまたは映像/動画編集向けビデオカードが欲しければ、RTX 3090 SUPRIM Xを検討することをオススメしたい。
[制作協力:MSI]