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レイトレ対応大作を60fpsで、eスポーツタイトルを144Hz/WQHDでプレイしたいならRTX 3060が現実解だ!

MSI「GeForce RTX 3060 GAMING X 12G」で最新ゲーム5本の性能を測定 text by 芹澤 正芳

 2021年2月25日に発表されたNVIDIAのミドルレンジGPU「GeForce RTX 3060」。一番の特徴はGDDR6 12GBという大容量ビデオメモリの搭載だろう。これは、上位モデルのRTX 3080の10GB、RTX3070/3060 Tiの8GBを超える容量だ。フルHD解像度でもビデオメモリの使用量が8GBを超えるゲーム(Microsoft Flight Simulatorなど)が存在しているだけに、これは大きな強みになるシーンもある。また、CPUとビデオメモリのデータ転送を効率化するResizable BARに標準対応しているのが特徴だ。

 その一方で、CUDAコア数は3,584基、メモリバス幅は192bitと、一つ上位のRTX 3060 TiのCUDAコア数4,864基、メモリバス幅256bitからかなりカットされている。ビデオメモリは大容量だが総合的な性能は「序列どおり」と見るべきところ。

 とは言え、RTX 3060はフルHDならレイトレ対応の重量級ゲームを最高画質でプレイでき、軽めのFPSならWQHDでも高フレームレートを出せるだけのパワーがあることは分かってきている。発表当時の北米参考価格である329ドルからすると、現在の実売価格は惜しいところではあるが、そもそも現在はビデオカードを買いたくても買えないほどの品不足。その状況にあって、RTX 3060は比較的手に入れやすいほうである。

 今、メインストリームクラスのビデオカードが欲しいという方は、このRTX 3060搭載カードのなかからよいモデルを選ぶというのが現実的な解だ。

MSIのRTX 3060搭載カード「GeForce RTX 3060 GAMING X 12G」。実売価格は75,000円前後

 ここでは、MSIのRTX 3060搭載カード「GeForce RTX 3060 GAMING X 12G」のレビューをお届けしたい。GeForce RTX 2060とGeForce GTX 1070を加え、実ゲームのベンチを交えて性能をテストしていく。容易なビデオカードの乗り換えが難しい昨今。慎重な製品選びのための参考にしていただきたい。

高OC仕様でも静かで冷える大型クーラー

 MSIで「GAMING X」を冠する製品は、高い冷却力、それを活かしたファクトリーOC動作による高い性能、そしてRGB LEDによる演出も楽しめるハイグレードな製品だ。GeForce RTX 3060 GAMING X 12Gも同様で、RTX 3060の標準ブーストクロックである1,777MHzから1,837MHzにオーバークロックされている。

GPU-Zでの表示。Resizable BARに対応し、ブーストクロックが1,837MHzなのが分かる
Power Limitの上限値は+5.9%と低め。手動OCによる伸びしろは少なそう

 高OC動作を支える冷却システムも盤石と言える。高い冷却力と静音性を兼ね備える「TWIN FROZR 8」を採用しており、9cm径の大型ファンを2基備え、ブラケットから約2.6cm(筆者実測)も上方向に出るほど大型のヒートシンクが組み合わされている。

エアフローを集中させる9cm径のトルクスファン 4.0を2基搭載する
カードの歪み防止用のバックプレートは熱を拡散し、カードの冷却を補助する役割もある

 これによりゲームプレイ中でもGPU温度は63℃程度までしか上がらず、それでもファンの回転数は1,200rpm程度なので、動作音はほとんど気にならないレベルで静か。今回はバラック組みでテストしているが、高負荷時は簡易水冷クーラーのファンの音のほうが気になるほどだ。

 サイズは276×131×51mm、重量は996gと、RTX 3060搭載カードとしては大きく重い。前述のとおり背が高く、厚みも3スロット分あるので、内部スペースの狭い小型ケースでは入らないものもあるだろう。導入前にケースの仕様を確認しておきたい。RTX 3060搭載カードの補助電源は8ピン×1構成のものも多いが、本機は8ピン×1+6ピン×1構成。そこは高OCモデルなので仕方のないところか。

 ディスプレイ出力はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1×1だ。RTX 30シリーズでは、HDMI 2.1が採用されており、HDMIでの4K/120Hz表示に対応しているのもポイントと言える。

補助電源は8ピン+6ピン構成で、カードの後ろから約6cmの位置。コネクタの周囲はスッキリしていて電源ケーブルは挿しやすい
ディスプレイ出力はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1×1
LEDはファンの中央部に二箇所と上部に一箇所だけと大人しめだ
総合ユーティリティの「DragonCenter」で発光パターンや色を調整できる

レイトレ性能の進化を感じるベンチ結果

 それではベンチマークテストに移ろう。比較対象は、デュアルファン/OC仕様のGeForce RTX 2060搭載カード、トリプルファン/OC仕様のGeForce GTX 1070搭載カードの2枚だ。なお、GeForce RTX 3060 GAMING X 12GはResizable BARをすべて有効にした状態でテストを行なっている。テスト環境は以下のとおりだ。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
マザーボードMSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570)
メモリMicron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL
(PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2)※PC4-25600で動作
システムSSDKingston KC600 SKC600/1024G
(Serial ATA 3.0、1TB)
データSSDCFD PG3VND CSSD-M2B1TPG3VND
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
CPUクーラー28cmクラス簡易水冷クーラー
電源NZXT E Series E850 NP-1PM-E850A
(850W、80PLUS Gold)
OSWindows 10 Pro 64bit版

 まずは定番3Dベンチマークの「3DMark」から見ていこう。RTX 2060に対してDirectX 11ベースのFire StrikeやDirectX 12ベースのTime Spyでは約10%の上昇。レイトレーシング性能を見るPort Royalに関しては、RTX 30シリーズではRTコア(レイトレーシング用のコア)が第2世代に進化していることもあり、約20%の上昇を見せた。GTX 1070はRTコアを持たず、レイトレーシングがとりあえず動くという程度であるため、Port Royalのスコアは低い。

3DMarkの計測結果

 次に消費電力をチェックする。ここではパーツごと消費電力の計測ができる電源ユニットのNZXT E Series E850と、専用モニタリングアプリ「NZXT CAM」を使って、GPU単体の消費電力を測定している。OS起動10分後をアイドル時、3DMark-Time Spyデモモード実行時の最大値を3DMark時とした。

ビデオカード消費電力の計測結果

 標準設定のカード電力で見るとRTX 3060が170W、RTX 2060が160W、GTX 1070が150Wではあるが、今回の測定ではRTX 3060とRTX 2060がほぼ同じで、GTX 1070が一番大きくなってはいる。ただし、今回使用したカードがいずれもOCモデルであることは留意いただきたい。

 では一番気になる実ゲームでの性能をチェックしていこう。まずは軽めのFPSから。「レインボーシックス シージ」はゲーム内のベンチマーク機能を利用して測定、「Apex Legends」は起動オプション“+fps_max unlimited”を指定し、トレーニングモードで一定の動作をした際のフレームレートをCapFrameXで測定した。

レインボーシックス シージの計測結果
Apex Legendsの計測結果

 軽めのFPSなら4Kでも平均60fpsを超え、十分快適にプレイできる。WQHDなら144Hzなどの高リフレッシュレート液晶も活かせるフレームレートを出せるのが分かる。勝負にこだわる人にも十分オススメできる性能と言えるだろう。

 重量級のゲームとして「アサシンクリード ヴァルハラ」を試してみる。ゲーム内のベンチマーク機能を利用して測定した。レイトレーシング非対応ながら、高い性能を求めるゲームだ。最高画質だとフルHDで平均60fpsを超えたのは、GeForce RTX 3060 GAMING X 12Gだけ。最新のAAAゲームを遊ぶには、旧世代のミドルレンジGPUでは厳しいことを示している。

アサシンクリード ヴァルハラの計測結果

 次は、レイトレーシング性能を見てみよう。「ウォッチドッグス レギオン」はゲーム内のベンチマーク機能を利用して測定、「サイバーパンク2077」は街の中で一定の動作をした際のフレームレートをCapFrameXで測定した。いずれもDLSSは“バランス”に設定している。GTX 1070はレイトレーシングは有効にできたものの、DLSSには非対応なので、このテストからは除外した。

ウォッチドッグス レギオンの計測結果
サイバーパンク2077の計測結果

 結果は両タイトルとも似たような傾向。GeForce RTX 3060 GAMING X 12Gならば、レイトレーシングの効果を最大に設定してもDLSSと組み合わせれば、フルHDで平均60fps以上を達成できる。フルHDだけとはいえ、レイトレーシングの美しさを十分体験しながら快適にプレイできるフレームレートを出せるのはうれしいところで、RTX 2060とは大きな性能差を見せた。RTコアの進化ぶりがよく分かる結果と言える。

Resizable BARで性能は上がるのか?

 Resizable BARとは、CPUとビデオメモリのデータ転送量をアップさせることで性能向上を図る技術。AMDのRadeon RX 6000シリーズでは「Smart Access Memory」と呼ばれているものだ。RTX 3060を除くRTX 30シリーズは、先日配布が始まったvBIOSにより対応が可能になったが、vBIOSのアップデートという若干危険を伴う作業の手間がかかるのが難点。後発のRTX 3060は最初からResizable BARに対応しているので手間いらずだ。

 なお、Resizable BARを使うには、CPUとマザーボードの対応が必要になる点も忘れてはならない。さらに、バージョン465.89以降のGeForce Game Ready Driverが必要で、原稿執筆時点で対応するゲームは17タイトルに限られている。詳しくはNVIDIAのWebサイトをチェックして欲しい。

 今回はResizable BAR対応ゲームから、アサシンクリード ヴァルハラとウォッチドッグス レギオンでその効果を確認してみたい。テスト条件は上記と同じだ。

Resizable BARの有無によるアサシンクリード ヴァルハラのパフォーマンス比較
Resizable BARの有無によるウォッチドッグス レギオンのパフォーマンス比較

 Resizable BARを有効にすると、大幅ではないが効果を確認できた。とくにウォッチドッグス レギオンはすべての解像度でフレームレートの向上が見られた。アサシンクリード ヴァルハラはフルHDこそ効果は確認できるが、4Kでは平均フレームレートは変わらない。CPUとのデータ転送が効率化されても、高解像度でプレイするにはそもそもGPUパワー自体が足りないためだと考えられる。ウォッチドッグス レギオンも高解像度ほど効果が弱くなっている。

 GPUパワー不足で薄めではあったものの、効果があることはひとまず確認できた。あとはレイトレーシングやDLSS同様、対応タイトルが増えることを願うばかりである。

高負荷時でも余裕で冷える冷却システム

 最後にゲームプレイ時のGPUクロックと温度の推移をチェックしていこう。サイバーパンク2077を20分間プレイしたときのGPUクロックと温度をモニタリングアプリの「HWiNFO64」で測定した。

ゲームプレイ中の温度およびGPUクロックの推移

 GPUクロックはおおむね1,800Hzから1,875Hzの間で推移した。公称のブートクロック1,837MHzを上回るクロックで動いている時間が長かった。また、温度は最大64℃でほぼ63℃で安定。高クロック動作でも安定して冷えている。これなら長時間のゲームプレイも安心と言えるだろう。

高性能・高冷却・静音性の三拍子揃ったRTX 3060搭載カード

 GeForce RTX 3060 GAMING X 12Gは、冷却システムTWIN FROZR 8によって高OC動作ながら、静かで冷える環境を実現。それだけにRTX 3060搭載カードとしては大きめだが、ゲーマーにとってGPUの性能を引き出しつつ、安定動作してくるのは何より重要なポイントではないだろうか。

 RTX 3060はRTX 30シリーズでは、一番下に位置するが、それでもフルHDなら高いフレームレートを出せる。手ごろな価格になったことで一気にゲーミング液晶の人気となっている“フルHDでリフレッシュレート144Hz~165Hz”な製品と組み合わせるビデオカードとしてはピッタリと言ってよいだろう。

[制作協力:MSI]